古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

株式会社ラインウッド

全国古民家再生協会大分第一支部・支部長 中島 眞知児

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職人さんとお施主さんをつなぎたい。

古民家アイコン

大分県で設計・施工・キッチン設計などを行う株式会社ラインウッドの中島さんは、海外生活の経験から日本の古民家、そして古材に興味を持ち、古民家リノベーションと古材業の世界に足を踏み入れました。海外の建築事情のお話から料理のお話、そしてデザインやファッションのお話まで、多岐にわたる貴重なエピソードを伺いました。

インタビュー

アメリカの生活

──
あの、サイトとか色々拝見したんですけど、結構いろんなことをされてらっしゃいますよね。今回、古材倉庫を立ち上げたってことですけど、ベースは設計とオーダーキッチン設計ですか。
中島
はい。あと建築業の許可もあって。
──
あ、じゃあ工務店でもありつつ、デザインと設計も重視されているって感じですか。その中で特にキッチンに力を入れてらっしゃって、そのような中で古民家、古材をスタートされたと。
中島
そうですね。
──
なるほど。何から聞こうかな。僕ちょっとね、とりあえずキッチンの話をしたくてしょうがないんですよ。僕、世の中のキッチンでいいなって思ったものに出会えなかったんですよね。特にうちは古民家なんで、合うものが無くてショールームとかいろいろ行ったんですけど、全部一緒じゃないですか。ぶっちゃけ。
中島
そういうのって日本だけなんですよ。
──
え、そうなんですか。
中島
私はアメリカにいたので、そもそも輸入住宅の設計をしてきたんですけど、アメリカではキッチンメーカーはあってもシステムとかはないんですよね。
──
へぇーっ。
中島
今の日本の家って床とかこだわるじゃないですか。無垢にするとか、壁は塗りにするとか、梁はこうだとかやってるのに、なんでキッチンだけ工場で作るんだろうっていうのが、私のすごく疑問で。
──
分かるっす(笑)。例えば古民家の施工例とか、かっこいいやつがあるじゃないですか。いいなって思うんですけど、キッチンの時だけ、いやそれはちゃうやんって。毎回ポンって既製品置いただけの、全然周りと調和してないキッチン。もちろん仕方なく置いてるんだろうけど、そこだけツルンってなってて、ピカピカってなってて。キッチンは基本、清潔感は大事だと思うんですけど…
中島
はい。
──
さっきサイトで施工例見させて頂いて、本物のことをやってるなって思ったんですよ。キッチンだけじゃなくて、文脈が本物というか、例えばキッチンについてる窓とかも輸入サッシを使われてたりするじゃないですか。すごいなって思ってたんですけど、今のお話聞いて納得しましたね。もともとアメリカに行かれてたということで。
中島
私のおじいちゃんがね、宮大工だったんです。
──
あ、そうなんですか。
中島
はい。弟子抱えた大工で、戦後、土木の会社してたんですよね。で、じいちゃんが作る家は全部一緒で……私には一緒に見えたんですよ。それは芸がないなと思って(笑)。それで自分でやろうと思って大工になりたいって言ったら、女はダメだって。女は汚れがあるから、大工にはなれんって言われたんですよ。
──
今あかんやつですね(笑)。
中島
それで絵描きになれって言われて。
──
絵描き。
中島
でもその絵描きっていうのは設計っていうことだったんですよ。女は絵描きならいける、でも大工はできんと言われて、母はものすごい反対して「看護師になれ」って。それで結局、看護師の学校を受けるから、建築の学校も受けさせてくれって言って、両方を受けたんです、高校の時に。
──
へえーっ。
中島
それでもう大学から建築に行ったら絶対反対されると思って。工業高校に行ったんですよ、私。
──
ほー。
中島
それから輸入の仕事をするようになって、アメリカに行って。それから独身のときに家立てたんですね、自分で。
──
ほんとですか!
中島
はい。その時まだじいちゃんは生きてたんですけど、うちは父が早く亡くなってね。じいちゃんが戦争行ってるもんですから、毛唐の家を勉強しに行くんかとか言って、散々反対されたんですけど。
──
「毛唐」って久々に聞きました(笑)。
中島
(笑)なんですけど、できた私のアメリカの家を見て、これは理にかなってるって。
──
へえーっ。
中島
で、結局全部木でやってるので、無垢だと。それで納得してもらって、応援してくれてて。
──
なるほどー。
中島
ちなみにじいちゃんが建てた家を見たら、欄間が一つずつ違ってたんです。欄間も全部掘ってたんですよ。それぞれの家のストーリーを欄間に入れてたんですね。
──
うわ、すごいな。
中島
私、アメリカでも古い家しか触ってないので、日本はなんでこんなに壊すんだろうっていうふうに思って。なんかペタペタ工業製品で作ったお家を、だいたい30年とか40年ぐらいで壊してまた建てていくっていう。アメリカは築100年ぐらいはもう普通なんです。
──
ですよね。
中島
輸入住宅してた時と今の古民家してる時、そこの感覚があんまり変わらなくて。
──
いやー、そこを経由して今、っていうのは。多分普通の人たちと全然感覚が違うと思うんですよね。僕も自分がなんで古民家に住めたのかなと思ったら、若い頃に海外にちょっと行っているので、やっぱり日本の感覚が必ずしも正しいとは限らないっていう、根っこがその時にできたのかなって思うんですよね。
中島
そうかもしれませんね。

インタビュー

文化をミックスする

──
デザインも多分、日本ばっかり見てたら同じデザインしか出てこないけど、中島さんのって本当いろんなスタイルがあって、カントリーチックなものもあれば、本当にセレブなキッチンもあったりして、面白いなと思って。これは楽しいなっていう、キッチン一つにしても、そこに歴史と文化をちゃんと分かって作ってらっしゃるんだなと思って、なんかちょっとびっくりしました。
中島
ありがとうございます(笑)。大工さんが作る感覚とちょっと違うかもしれないですけど、私はいろんな国見て、フランスの古いもの、アメリカの古いもの、日本の古いものってやっぱり同じなんですよ。トラディショナルっていう軸で。
──
分かる。
中島
なのでこれらをミックスすると,今の人のスタイルにぴったり合うんだと思ってて。
──
いやあ、そうですよ。
中島
おっちゃんたちがすると、大きい梁になんかこうドシーンとした日本の伝統的な感じが、あるじゃないですか。
──
そうなんですよねぇ。僕もやっぱりアメリカ、フランス、イギリス、スリランカやインドの建物も好きだったり、あと、沖縄の文化も好きなんで、そういう自分の好きなものをぐちゃぐちゃってまとめて、いろんなところに盛り込んでるんですけど、本当におっしゃるように、基本、古いもので統一するとまとまるんですよね。
中島
そうなんですよ。だから新しいものを入れるより、いろんな国のトラディショナルなものを集めると、すごーく相性が良くて。建物にしてもインテリアにしても。
──
あれ何なんでしょうね。
中島
ドイツなんか行くと茅葺きが多いんです。田舎の方だとストローっていうか一人で作った断熱材が茅でできてたり。本当に日本って感じ。
──
そうなんや。
中島
イギリスだとティンバーフレームだから、ほんとに古民家なんです。アメリカも真ん中の方に行くとまだポストアンドビームなんで、伝統構法なんですよ。
──
へー。
中島
要は土と木と、自然のものしかないわけですから。日本の古民家もドイツの古民家も、そこら辺にあったものを使ってどうすればいいだろうって考えたものが家だから。ヨーロッパもたまたま石だっただけであって、田舎に行くとやっぱりティンバーフレームなんです。
──
僕、イギリスの田舎町にいたんですけど、レンガ造りばっかりやったんですよね、で、今思ったらそれは多分町中ってことですよね。住宅地があって、駅があって。でも車に乗って郊外なんかに行くとそうなってくるんですね。
中島
そうです、そうです。
──
知らんかった。
中島
あと色の話もあるじゃないですか。いろんな国の人と話してると、日本人は色使いが素晴らしいって言うんですよ。着物の紫なんかは、イギリスはとても高貴な色だったりするんですけど、シルクロードを通って、日本のお色とイギリスの高貴なお色、ロイヤルブルーとかもそうなんですけど、それがすごく似てるんです。染料も多分5つぐらいしかなくて、自然から取れるものを組み合わせて作ってあるんですね。だからどうやったら作れるかっていうのは結構同じなんですよ、世界中。
──
面白いなあ。
中島
だって素材が自然のものしかないから。だから逆に、日本の古民家はこうである、みたいな固定観念は違和感があって。なので私がお手伝いするうちは、いろんな国のものをもっともっと入れていきたいなと思ったりしています。
──
なるほど。よくわかりました。そうなんですよ。結局「古民家」っていう言葉も、僕本当に古民家ってめちゃめちゃ毎日使ってますけど、古民家っていう言葉はやっぱり一つのところに押し込んでしまう危険性もあって。だってそもそも「古民家」っていう概念もなかったですからね。ただの家ですから、本来は。
中島
トラディショナルハウスってことでしょう。
──
そうそう。伝統って何種類もあって。結局あれって最初はただの好みだと思うんですよね。好みが集積されたというか、当然当時は技術もないし材料もないから、ある程度のところには集約されていくんですよね、歴史的に。とは言え今から住む以上はやっぱり伝統だけじゃなく、生きたものにしてあげたい。それこそキッチンを現代風にしたりとか、今のテクノロジーをその中に入れていくっていうのは、僕は当然のことだと思ってるんですよ。そうなった時に、じゃあどんなキッチンを入れたらいいのかって、本当に大きな古民家再生の中の一部分ですけど、そういう部分をちゃんとできる人とか、ちゃんと提案できる人っていうのは本当になかなかいない。
中島
そうなんでしょうね。

インタビュー

キッチンは人それぞれ

──
僕、今回はキッチンのお話メインになるんかなって、とりあえず思ってたんですよね、でも中島さんがそこの1段、2段上のお話されるから、なんかすごいなと思って。
中島
家作りですごく違和感があったのがキッチンだったんですよ。
──
ですよね(笑)。
中島
他はこんな取っ手がどうとか、照明が、床が、とかやってるのに、キッチンだけなんでショールームで簡単に決めちゃうのか。それも料理を作れない人の女の子たちが案内してるんですよ。じゃあこのコンロってどういう機能があるのって訊いたら、えーっと、カタログに載ってると思います、とか言うんですよ。使ったことない人、料理できない人は売っちゃダメよって。
──
ほんとですね。
中島
そもそも、同じ規格で工場で作られたものを2時間ぐらいで決めること自体がすごく違和感があるんです。キッチンは使う人の身長も違うし、作るものも、飲む酒も違うわけじゃないですか。だから、ご主人さん何飲みます? 奥さん何飲みます? 子どもたちがいつもどんな生活してる? っていうのを、集約されたちっちゃいものに入れ込んでいくわけですよ。
──
ふんふん。
中島
その人のことを知らずに、その人が毎日使うものを、よく売ったり買ったりできるなあなんて思って。だから誰もしないんだったら,私がやろうと。
──
いやー、その通りっすね。僕も料理好きなんで仰ることよくわかるんですけど、コンロの間隔一つにしても、このメニュー作るときにこの鍋とこの鍋とこのフライパンを使うから、この距離やったら乗らへんやん!とかいう話、それがその人の好物やったらどうすんねんみたいなね。なんか言われてみたら本当そうですよね。あんな既成のものをパッと選んで。
中島
私も例えば圧力鍋を使って時短でどういう風にこのお料理を作ろうかとか毎日思ってるから、そういうその人のそれぞれのやり方とそれぞれの好みがあるじゃないですか。それを何も聞かずに、はいこちらはこうなりますとかやってること自体が。
──
そうですよねえ。
中島
イタリアなんか行くと、本当に料理ってほとんどペティナイフで作るんですよ。
──
そうなんですか。
中島
トマトなんかこうやってお鍋の上で料理することが多くって、でもそりゃそうですよね。
──
わかる(笑)。包丁いらんすよね、イタリア料理って。
中島
ですよね。コンロの周りだけいろいろ調味料があって。お魚さばくのも外でさばいたりとかするし。トスカーナの方とかね。だからそれぞれの土地できっちりと違うんですよ。
──
はいはい。
中島
で、古民家も昔は土間でお野菜洗って、おくどがあって、水場がちょこっとあったりしましたけど、今は食生活が違うじゃないですか。私はイタリアン好きだしフレンチも好きだし。そしたらそれに対してのいろんな道具もいるのに、そういう食生活を聞かずにキッチンを選ばせることがすごく違和感があるんですよ。
──
僕も基本イタリアンすごい好きで、あと中華も作るんですよ。なので絶対プロパンじゃないとダメなんです、僕は。
中島
あ、分かります。私もそう。
──
ほんとですか?
中島
ガス派なんです(笑)。
──
まじすか。僕は中華鍋も振るし、鉄板をメインで使っていて、パスタはアルミパン使うんですけど、4人前やから、4人前でパスタ作る時かなりでっかいアルミパンがいるじゃないですか。そんならその時点でコンロの横に置けるものとかが決まってくるし、全然違いますよね。でもその代わり仰るように、刻むところってそんなにいらないんですよね。
中島
そうなんです。
──
僕の家のキッチンは、お金も無いし、いいキッチンがとにかくなかったので、解体した家についてた30年くらい前のやつをそのままポンって置いて、周りに色々作ってもらったんですよね、友達に。だから普通にプロパン使えてるんですけど、今メーカーのショールーム行ったらプロパンの発想ゼロじゃないですか。その時点でもうどれも選べないですよね。
中島
とろ火が良くないんですよ。IHは。
──
そうなんですか。
中島
ドイツ製だったらもうちょっといいんですけど。煮物なんてしようもんなら、もう全然だめ。火力が強すぎるんです。
──
へえー。

インタビュー

料理の英才教育

中島
私は煮豆とかメキシコの豆料理もするんですけど、そういう煮物が多い人にはガスをお勧めしてます。あと男の子がいるご家庭にもガスがいいと思う。火を見て育たない男の子はダメよって。
──
おおー。うちの子供たちも料理するんですけど、ちょうど昨日も鉄板でチャーハン作ってもらって。ガスだから危ないという考え方もありますけど。
中島
うちは大学生なんですけど、ちっちゃい頃から子供用の包丁を買わなかったんですね。代わりにすごくいい包丁を、名前を刻んで小学校1年生の時にプレゼントしたんです。切れてもね、骨で止まるからって。
──
怖い(笑)。
中島
いい包丁はね、痛くないの、切れても。それで小さい頃は、もうこうやって、絶対切るもんかってやってましたね。
──
すごいなー。英才教育や。
中島
18歳の時かな、ママちょっとワイン送ってくれる? って言われて、「ワイン飲むの?」って言ったら、違う、ビーフシチュー作るのにワインないと決まらなくて、って。
──
すごいな!
中島
買いなさいよそのくらいって言ったら、俺まだ18だからって。
──
マジか。すげえな。いやほんとそういうの財産ですよね。
中島
うちにキッチンのキャビネットあるんですけど、ご飯の器とかの場所を、子供の身長に合わせて高さを全部変えてきたんですよ。
──
へぇー。
中島
だから今日、私が料理作ったら何がいるかっていうのが分かる。フォークとナイフとお箸、お箸置きっていうのは、自分で全部セッティングしてもらってきたから。だからお料理だけは、本当に英才教育しました。
──
素晴らしいな。いや僕も子供用包丁買ったんですよね、最初。でも何回か使ってね、いや、これ良くないなと思って。
中島
うんうん。
──
昨日もね、本当にあの、めちゃくちゃ切れるガチの銘入りの包丁を使わせて、お前これマジで気をつけろよ、マジで気をつけろよって言って渡して肉を切らせたんですけど、そういうのってさっきの火の話ともつながるんですよね。やっぱり危ないこと、危ないものが身近にないと逆にそれを扱えないんですよね。
中島
たとえば震災になっても火を使う、火で何かが作れるっていうことを誰も教えられないわけですよ。で、電気が止まったらご飯も炊けない。
──
はいはい。
中島
でも火があればなんとか生活ができる。その時に火を扱うのは男なんです。ジェンダーレスの時代ですけど、そういうところは男は男、女は女だと思ってて。生活の中にもスピリットみたいなのあるじゃないですか。で、生活の中に、家の中にそういうものっているんじゃないかな。だから古民家のね、大工さんたちが大好きなんですよ。
──
ああ、なるほど。その文脈で。
中島
この間も、差し金を反対にしたら勾配を取れるんやって教えてもらって。あんた、そんな計算せんでも、差し金ひっくり返せばいいんよって言われて「うそ!」っていう。
──
あの人達はそういう世界の最たるものですからね(笑)。

インタビュー

私はトランスレーター

中島
いま戸田さんが古民家の海外移築でアメリカに来てるでしょ。その戸田さんの講演会に行った時に伺ったんですけど、最初とにかく運ぶこと、作ることを一生懸命に考えてたら、ビザ取るの忘れてたらしいんです。それで一回向こうに材料を持って行ったら、ビザが無いからそこから先は一切口出しちゃいけない、見るだけっていうことになって。
──
えぇ…
中島
だからもう絶対にできないって思ってたら、なんか腰袋にちゃんと大工道具持って、英語で書いた辞書みたいなのを持って、日本の建築が頭に入った大工がいて、自分たちのスピードよりもっと短く上棟したっていう話を聞いて、私涙出ちゃって。
──
すごっ!
中島
「アメリカにはラストサムライがいました」って。
──
すごいなあ。
中島
私、こういうことなんだと思って。なんかね、日本もアメリカも何も変わらないなって。フランスもイギリスも。でも、こういう本物をちゃんと伝えないとってすごく思いますね。
──
ああ、だから古民家に興味をお持ちになったってことですよね。
中島
そうですね。私、自分のことをトランスレーター(翻訳者)だと思っていて。
──
ほう。
中島
大工さんってすごい技術持ってるでしょ。私は設計とデザインもしてるから、大工さんの頭とお金出す人の頭を……たとえば「アンティークな棚付けて」と言うじゃないですか。それを簡単にやろうと思ったら、集成材をパッと付ければいいでしょ。でもそこにこだわる人って、もうちょっとアンティークな素朴な古い感じで…ってなるじゃないですか。
──
はいはい。
中島
私は、じゃあここを300の600で小口は60mmで角をR30とって、一回ステインで塗装して、もう一回拭いて、後からペーパーでやって、ブラケットこうやって…というのを図面に起こすわけですよ。
──
おー。
中島
そうすると大工さんは、なんだこれめんどくせえことするんかいって言いながら、これならわかったわって言って、イメージしたものが出来上がるわけです。だから私は単なるトランスレーターだと思っています。
──
いや、その役目の人がね、いない。本当にいない。自分自身も困ってたんですよ。例えば大工さんに写真見せるじゃないですか。で、こんな感じで…って言って、向こうも、ああ、OKOKってなるんだけど、お互い違うとこ見てるんですよね。
中島
そうなんですよ。映像が一致してない。そこを専門用語にトランスレートするんです。
──
それって仮に建築士の方が入ったとしても、その建築士の方にその感覚がないとわかんない。中島さんは海外に行ってバランス感覚を身につけてらっしゃるのが大きいですよ。デザイン的に、いやそうじゃないんだけどっていうところが伝えられないし、わかってもらえないんですよね、まず。
中島
あと出せるお金とやりたいことのバランスも大事で、立派なものにお金かければいいわけじゃないですからね。そこのバランス感覚は、やっぱり見てきたからできることだと自分では思っています。
──
そうなんですよ。結構みんな、いい材料を使えばいいっていう発想じゃないですか。でも多分アメリカ行かれてるから、そうじゃなくて、いやここはもう集成材でいいやんみたいな、塗ったらいいんだから、っていう感覚があるか無いか。でも多分大工さん的には、こんな目立つところにこんな安いもん使ってとか、ここはもっといい木を使わんとダメだとか、ありますよね。でもここはチープでもいいっていう提案ができるのは、施主としてはありがたいですよ。そういうところに、アメリカのDIY精神みたいなものが入ってると思うんですよね。

インタビュー

古民家宿KANAMEの話

中島
私、宿をしているんです。今。
──
はいはいはい。
中島
「KANAME」っていう大分の古民家宿なんですけど。
──
あ、これか。おー、かっこいいですね。
中島
これ予算すっごい安くできてるんですよ。本当に予算なくって。
──
いやでも、わかる。あのね、この換気扇とか、分かります(笑)。
中島
予算ないからそれも業務用の使って、アイランドキッチンも古いタンスの上に天板乗せてたりして。だから半分DIYなんです。そこに自分のスタイルを入れ込みつつ、いろいろごまかしながらやってます。
──
混ざってますよね。面白い。
中島
そう(笑)。ぐちゃぐちゃに混ざってて、面白いんですよ。
──
これは海外の方にも喜ばれるんじゃないですか。
中島
そうなんです。ここのアイランドキッチンに外国人の方々が集まって飲んでるっていう。すごく居心地がいいみたい。
──
ですよね。なんかね、住みたい感じがするな。短期で1日体験する分には本当に昔のトラディショナルな日本の伝統みたいな感じでもいいと思うんですけど、これは例えば1週間とか、ずっとここをベースにしたいって感じがしますね、これ見れたらね。緊張感がいい意味ではないんですよ。
中島
フランス行くとね、アパルトマンを10日くらい借りて、そこから1日だけいいホテルに行くんです。普段は食材買って、住んでるように生活する。自分がフランスに住んでるっていうイメージを持ちながらキッチンで料理をする、っていうのがやっぱりすごく嬉しくて。
──
分かる。
中島
だから海外の方も日本に来て、道の駅に行って、その土地のものを買って料理をして、みんなでゆっくり出かけずにワイワイするのってすごく楽しいと思うんですよ。だから、なんか宿っていうんじゃなくて、フランスのアパルトマンみたいな、日本の住んでる人と同じ生活をできるような宿にしたかったんです。
──
このお宿は実際そうなってると思うんですよ、海外の方が日本の家を買って、それなりに自分の感覚も入れながら直したらこうなりました、みたいな家になってる。アウェー感ないと思うんですよね。でも欄間があって、畳があって、ちゃんと低い窓があって、竿縁天井で、みたいなね。いやーこれ、いろんな人に受けるんじゃないかな。
中島
でも、あんまりお金かかってないですよ。同業者に金額言ったら「嘘でしょ?」って。
──
このテイストやからできるんですよ。僕いつも古民家リノベーションの金額を聞かれるんですけど、反対にいろんな人に聞いたら、4~5000万円って返ってくる。僕はそれにずっと疑問で、いや俺、1千何百万で、しかも屋根入れてそれくらいやったけどな…みたいな。それはなぜかというと、たぶん中島さんと同じ考えで、ここは別にこのままでいいよねとか、これは拾ってきたやつでいいやんみたいなことをやってるからなんですよね。で、それは妥協してダサいものを入れるんじゃなくて、いや、このままの方がかっこいいっていう。その感覚を僕このお宿に感じました。だから分かりますよ。そんなかかんないやろっていう。
中島
旅館業するんだったらいいんだけど、空き家をどうやってDIYで住むかって考えたときに、みんなそんな3000万も4000万も出せないから、空き家の解決はその感覚じゃ絶対できないんですよ。
──
そうですね。
中島
やっぱりそこは、私はバランスだと思っていて。この宿を見てもらって、それほどお金かけなくてもこのレベルにはなるから…っていうのはどんどん伝えていきたいかな。
──
そういうのも本当に今から古民家リノベやろうと思っている人にはすごいありがたいというか励まされるアドバイスですよね。やっぱり基本的にすごいかかるよ、新築くらいかかるので覚悟してくださいね、っていう声は本当に多いんですけど、もちろん新築くらいかけたら家はできるんだけど、お金がない場合に、お金がないんだったらここは手を抜いてここに力入れましょうとかね。そういう提案って職人さんにはなかなか難しいですよね。
中島
そう思います。だから私は職人さんとお施主さんの間に立つ人になりたいんです。
──
僕は本当に身をもって体験したけど、力の入れるところと抜くところ、その塩梅が難しい。
中島
宿の2階の梁のところに照明吊るしてるんですけど、職人さんが見て、うわーこの照明すごいなって言うから「それ4000円ですよ」って言ったら、え?って。それは全然IKEAですけどって(笑)。
──
(笑)
中島
IKEAもふんだんに使うと安っぽく見えるけど、ちょっとポイントで使ったり、そこのバランス感覚が…
──
そうそう。ここでこれ使っても大丈夫やろうっていう感覚、ありますよね。安っぽいんだけど、ここで使うと多分そう見えへんな、とかね。
中島
そうなんです。
──
ファッションでもありますもんね、僕こないだお会いしたおしゃれな人がめっちゃ高そうなかっこいいやつ着てるから、すいません、それどこで買ったんですかって訊いたら、GUですって言われて(笑)。
中島
(笑)その話で言うと、私、木村拓哉さんが売れた根本的な部分って、ハイブランドと古着を組み合わせたスタイルなんじゃないかなって。そういうスタイリストがいたんですよ。その人が木村拓哉を作ったんだと思う。
──
そうなんや。
中島
超ハイブランドと古着を交ぜて彼の身体に着せたんです。そういうミックス加減がうまくいくと、うわーってなるんだと思うんですよ。
──
その感覚を持ってる中島さんってのはそれだけで貴重な存在だし、かつ広い視野を持って職人さんとお施設さんの架け橋になってもらえるっていうのも本当に心強いですね。
中島
ありがとうございます。
──
そういえば今後は古材にも力を入れていくんですよね。古材倉庫もつくられて。
中島
そう。やっぱり最初の時のキッチンと同じで、誰もやらないんだったらやってやろうっていう気持ちです。大分にそういうストックルームがなかったから、壊されて捨てられてきた木、この土地でもう一回命を吹き込める木を……それらが燃やされるのを見ちゃったら燃やせないですよね。見なきゃよかったっていう。見ちゃったらもう無理です。
──
ああー。
中島
これ誰もやらないんだったら自分がやる、大分で古材のストックルーム作って、もう一回そこに命を引き込む手伝いができるんだったら自分がやろうっていう、その思いだけでスタートしたので、先はどうなるか分からないです(笑)。
──
いやでも古材を自社で持たれるというのはお客さんにとってはすごいメリットですよ。いやあ、中島さん、キッチン専門の方かと思ったら全然古民家ガチ勢でしたね(笑)。貴重なお話ありがとうございました!
中島
(笑)

おわり

施工例







株式会社ラインウッド

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代表 中島 眞知児
営業時間 10:00~18:00
水曜定休
事業内容 オーダーキッチン設計・デザイン・施工
・国内外のキッチン機器・用品販売
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リフォーム
インテリアコーディネイト
取扱機器のメンテナンス 他
住所 〒870-1151 大分市大字市550-1
Tel.097-529-8055
Fax.097-529-6808
公式サイト https://line-wood.com/

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