能登半島地震レポート・その4
今回で最終回です。
前回までの記事はこちら。
前回までに語ったのは、地震に対しては建物どうこうではなく、単純に「運」の要素が大きすぎる、ということでした。
がしかし、それでもどうにか、少しでも知恵や工夫でどうにかならないのか、と思いますよね。
なので最後に僕は「地盤」の話をしようと思います。
僕はその1で「地震対策は地盤がすべて」と書きました。
「あとは運」とも。
地盤ということでいうと、よく新築で行われる「地盤改良」がありますよね。
基礎を打つ前に、地面を掘って、砕石みたいなのを流し込んで、転圧かけて、カッチカチにするやつ。
僕も離れの新築にはそういうのを念のためにやってもらいましたが、今回能登を走って思ったのは、なんかもうそういうレベルじゃないんですよね。
家の下の土をちょっと固めたところで、地球からすれば皮膚の皮1mmだけが固くなったみたいなもんですよ。
地盤ってもっとどうしようもないスケールなんです。


珠洲市。
震度6強の直撃を受けたエリアです。
が、
走った感じ、震度7の輪島市よりも被害が大きいように見えました。
帰宅後に調べてみたところ、珠洲市は旧耐震基準の家が多く、輪島市では新耐震基準の家が多かった、ということらしいです。
これまでさんざん「運」とか「地盤」とか言ってますが、もちろん旧耐震と新耐震では建物の強度が違います(古民家はまた別)。なので統計的に「全壊」「半壊」という区別でいくとその違いは出てくる。
でも全壊だろうが半壊だろうが、家は住めないし、人だって打ち所が悪ければ死ぬんですよ。
「エリア」という括りで見た場合、そういうのは細かい差、ということになってしまうんですよね。
それで話を戻しますが、
珠洲市は震度6強にも関わらず、震度7の輪島市よりも被害が大きい印象を受けた、それは建物の耐震基準というよりも、地面がぐにゃぐにゃになっていたり、川から向こうが一気に更地になっていたり、何か「まとめて」ダメになった、という感じが強かったのです。
ぐにゃぐにゃの道を走りながら、僕の隣に座った建築士さんが呟きました。
「やっぱり海沿いはあかんなあ……」

そうなんです。
僕らの第一印象がそれでした。
砂地なんだろうな、と。
だからこんなに電柱がぐにゃぐにゃしてるんだと。
大元の地盤が緩ければ、その上の薄皮一枚にいくら地盤改良を行ってもあまり意味はないのかもしれません。
ただしこれはあくまで現地を車で走っただけの僕らの感想です。

そしてまた、とにかくどんな土地でも海沿いはダメだ、ということでもなさそうです。
この写真のように、あるポイントから向こうが全部ダメ、という風景に何度も出会いました。
川のこちらは家が残っている。
川の向こうがみんな倒壊している。
これがなぜなのかは、やっぱり地質学的な話になってくる気がします。
みんな倒壊している中でも、一軒だけぽつんと残っているような家もいくつかありました。
これもパッと見た限りですが、そういう家は新しめで、真四角で、総二階の、ほんとにサイコロのような家でした。
これは耐震に詳しい方に聞いた話ですが、建物はバランスが大事ですよと。
重心が低くて、壁のバランスが良いものが地震に強い。
これはまあ間違いなく言えることだと思います。
海沿いの家は僕もずーっと憧れ続けています。
この珠洲市を歩きながら、元々はどれほど素晴らしい街だったんだろうと思いを馳せ、この土地に生まれ育った人を羨ましく思いました。
海沿いの街に暮らす、ということで得られる幸福感は大きいです。
地盤が弱いからといって、じゃあガチガチのコンクリートジャングルに住めば幸せなのかというと、そうでもない気がします。
だから答えなんかないんですよ。
海を見て暮らしたいと思う人はリスクを負いながらサイコロハウスを建てればいいし、少しのリスクも負いたくないなら一度も地震が来たことのない土地でコンクリートの家を建てればいいと思います。
ただ今回、珠洲市は浸水被害も多かったみたいなので、そういう土地はさすがに避けるべきだとは思います。
地盤、ということでいうとあと一つ、事例を紹介します。
珠洲市は海沿いでしたが、じゃあ山なら大丈夫なのかというと、そうでもなかったです。
山にある家の多くは、開発された住宅地に建っています。
つまり山の斜面を削って、平らにして、そこに家を建てるわけです。
削るだけじゃなくて同時にその削った土を使って盛土をするんですね。そしてそこに家を建てると。
ここまで読んで、第一回目の記事を思い出せた方は素晴らしい。
そう。
盛土は崩れる。

盛土をして、それが崩れないようにコンクリートの擁壁で固めても、地震で大きく揺さぶられると土が隙間を見つけて流れ出して、結果、こうなるようです。
足元の土が流れ出したら当然その上の建物はアウト。
もちろん全ての山の全ての住宅でこうなるわけではないですが、可能性はゼロではないです。
山に建つ家もまた、海沿いと同じく、素晴らしい眺望などのメリットがいろいろあります。
だからこれも、この可能性をどこまで踏まえてどんな土地、どんな家を選ぶか、ですね。
はい。
ということで全4回にわたりお届けしました能登半島地震レポート、いかがでしたでしょうか。
僕は完全に部外者で何かできるわけでもないですが、せめてそれを同世代の人や次の世代に伝えて、何か一つの教訓でもシェアできたら、と思います。
そしてこれが一番大事なことですが、
ご覧のように2025年3月現在、能登半島は復興の兆しがまだ見えていません。
これをお読みの方々のうち、何か能登に対してアクションが取れる方はぜひ取っていただきたい。
住民の方々が一日でも早く元の生活を取り戻すことができるよう、心よりお祈りしております。