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古民家リノベーション体験談45 コンクリート基礎のこと

【前回までのあらすじ】憧れの地鎮祭をやったのでもう思い残すことはない

無事に終わった地盤改良。
お次はその上に基礎を作っていくという作業ですが、皆さん「基礎」って知ってます?
刑事訴訟における検察官による「公訴の提起」ではなく、長野県南部の郡および地域名称でもありません。
基礎です。
「基礎」というその名の通り、建物の安全性の根本に関わる、重要ポイント。家全体を支えるコンクリートの塊です。

基礎

たぶん皆さん、家を見る時にその足元のことなんか気にしたこともないと思いますが、この「基礎」の有無が、古民家と現代の家との大きな違いです。
ぱっと見はそんなに変わらないんですが、実は全然違うんです。
ボクシングで例えるなら、世界ヘビー級チャンピオンと、一週間寝てない世界ヘビー級チャンピオンくらい違います。
あ、分かりにくいですか。
えっとじゃあヘビー級チャンピオンと、合気道の達人? みたいな感じ。
基礎というのは、地震と戦う気満々です。かかってこいやァと煽りつつガードをガチガチに固めている状態です。どんなパンチを食らっても耐えるタフネス。それが基礎。
対して、古民家は基礎が無いんですね。
目の前にいるのは完全に足腰の弱ったおじいちゃん。
地震さん、そんなおじいちゃんに無慈悲な右ストレート!!
ひどい!! 鬼!!
しかし次の瞬間、宙を舞ったのは殴った方の地震さんだった!!
一体何が起きたのか…!?
みたいな。
ようするに、基礎が無い古民家は、合気道の達人みたいに相手の力を受け流す作りになっているのです。
それすなわち「免震構造」。
で、
そういう家は1950年以降、違法扱いになって建てられなくなりました。
現代の家はすべて「耐震構造」です。
なので現代の新築は全部基礎がついています。ガチガチに固めた基礎に、家を固定するのです。

【参考】うちの縁側。古民家はコンクリート基礎がなく地面に直接建てられている(石場建て)。※瓦は気にしないでください

石場建て

【参考】うちの離れ。新築はコンクリート基礎がある。※瓦は気にしないでください

コンクリート基礎

家の足回りについては基礎がある方が絶対に安全・安心だとよく誤解されますが、伝統構法の「免震構造」もなかなかのもので、どっちが良いということではないと思います。すなわち「みんなちがって、みんないい。」なんですが、この話は近々まとめコンテンツとして詳しく解説しますね。

さて基礎の話に戻りますと、基礎は、間取りによって形が決まります。
基礎の形を見れば、ざっくりどんな間取りなのか分かる場合もあります。
なので今から家を新築する人は、僕みたいなゲスい人間が建築中の基礎だけの家の横をチャリで通りがかった時に、ほっほーあそこがリビングね。そんであそこが風呂場と。え~でもそれだったら逆の配置の方がよくな~い? とか勝手に色々思われることを覚悟しておいてください。

基礎伏図

これがうちの離れの基礎伏図です。
ちんまい家なのでこのサイズ。東がお風呂と洗面所で、西が8畳の和室。北は廊下。
なんとなく配置が分かるでしょ?
基礎の壁は、柱を支える役目があるので、柱のあるところに作られます。つまり、部屋の形になるということですね。こういう形のコンクリートの塊の上に家が建つのです。
ちなみに、べったりと地面全部にコンクリートを敷くこの「ベタ基礎」の他、柱のある壁に沿って最小限のコンクリートを設置する「布基礎」と呼ばれる工法もありますが、今はベタ基礎が主流です。

ベタ基礎

さて。
古民家再生をうたっているこのブログで、この人なんでコンクリート基礎について長々語っちゃってんのキモいんだけど、と思ってらっしゃる皆様。
関係ないと思うでしょ。
ノンノン。
大アリですよ。
基礎のことを知らなければ、いざ自分が古民家再生する時に、工務店さんに「古民家は耐震性がないから、耐震化の見積も入れておきましたよ。まずジャッキアップで躯体を持ち上げて、ベタ基礎にします。これは今の家では絶対にやってることなので、もう絶対にやった方がいいですね」とか言われた時にね、基礎のことを知らないと「何言ってるか分かんないけどぜひお願いしますゥ!!」ってなるじゃないですか。
いや別にベタ基礎にしてもいいんですけど、自分でちゃんと分かった上で判断したいじゃないですか。
工務店さんの言うままに施工したとして、いざ地震が来て、何かあった時に、
「お前が言ったからこうなったんだ!! 謝罪と賠償を!!」とかなっちゃうじゃないですか。
それって不幸じゃないですか。
その時に自分に最低限の知識があれば、「基礎ねぇ…まあ現代の技術はすごいから、金かかっても耐震化しておこうかな」とか「古民家に基礎なんかいらないっすよ。このままでいいっすよ。うちは免震でいきますわ」とか、自分の責任で選べるじゃないですか。
自分で決めたら、自分で調べるし、何があってもまあ自分のせいだからしょうがねえって思えるじゃないですか。
結局、人生なんてほんとは全部自己責任ですからね。
配偶者のダメなところに文句言えば言うほど、「いや、選んだんお前やん」というブーメランが胸に刺さりますからね。
…何の話や。
とにかく、古民家再生だろうが新築だろうが基礎周りのことは知っておいた方がいいよってことです。
現代の技術か、伝統の知恵か、どっちに舵を切るかって話ですから。

そしてこの選択は、実は建物の工法にも大きく影響を与えるのですが、その話はまた次回。

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