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古民家に住んでますvol.6 溝口家来訪の巻

先日、といっても一ヶ月前になりますが、「古民家に住む人々」でご紹介しました先輩の溝口さん一家がうちに遊びに来てくれました。
溝口さん一家は東京から隠岐諸島に「親子島留学」制度で期間限定の移住をしていたのですが、その期間が終わり、東京に帰ることになって、途中で立ち寄ってくれたのでした。
溝口家、5人家族。大原家、4人家族。
合わせて9人で過ごした一泊二日が、何かとても良かったので、古民家のことも含めてその一部をご紹介します。

まず何より、9人だろうが10人だろうが余裕の古民家の「収容力」ですわね。
普段は慣れてしまって何も感じませんが、一家族増えたくらいじゃ生活空間に全く変化が起きないのはすごいと思いました。
そりゃそうです。
常にでっかい部屋が3部屋余ってますもの。
庭も充分ありますもの。
子供たちが走り回ろうが、棒きれを振り回そうが、ダンゴムシを投げようが、大人の空間をキープできる(※)のは素晴らしい。(※ただし子連れの来客時のみ)

子供たちにとっても、それぞれが好きな場所で好きなことをしているので、のびのびと過ごされていらっしゃいます。

土間

で、ご飯になると「ご飯やで-!」の呼び声でわらわらと集まってくる。
ご飯は大勢で食べると美味しいですね。
うちはちゃぶ台で食べてるので、来客時には座敷から座卓を持ってきてちゃぶ台の横に適当に置けば、9人の食卓が完成です。

ちゃぶ台でご飯

ちゃぶ台、マジおすすめですよ。
特に小さいお子さんがいるお家には。
子供は膝に乗ってくるし、食べた後は寝っ転がれるし。
キッチンには夫婦二人で食べる時用にイギリスアンティークの食卓テーブルセットがありますが、あのツイストレッグの椅子の、これ直角ちゃうんかと思うほどピッシーと直立した背もたれの角度、そこから垣間見える貴族社会の規律正しさ。ちゃぶ台はその真逆のゆるふわスタイルです。
おかげで「メシ食ってる時に踊るな!!」とか「寝るな!!」とか怒号が飛び交ってますけども。

食事のあとはそのままゲーム。
いやー自堕落。
3歳の子に『ONE PIECE 海賊無双2』をガン見させることの是非は置いといて、食卓と居間がシームレスで、ゆるーいです。
眠くなったら誰かに座布団投げてもらってそのままそこで寝てよし。
「ここは座って正面にあるテレビを見るところ!」
「ここは食事をするところ!」
「ここはおもちゃで遊ぶ場所!」
みたいなのがどうも性に合わなかった僕は、こういう空間づくりを選びました。それは「古民家」が最も得意とするところです。

食後のゲーム

さて、ONE PIECEを知らない子供たちが黄猿を見て「ピコ太郎つよい! ピコ太郎がんばれ!」と叫んでいる間、僕たち大人は別のリビングでゆったりコーヒーを飲んでいます。
うちにはリビングが3つあるのでそういうことも可能なのです。
リビングが3つ。
もちろん僕がお金持ちというわけではありませんよ。古民家を買ったら勝手についてきたんですよ。
しかも古民家を買ったといっても実質0円で、払ったのは土地代だけですから。
古民家リノベーションには1500~2000万円くらいかかりますけど、その結果得られるのが、リビングが3つある家。
古民家に住めば、そんな豊かな時代の恩恵を、今の時代でも充分に味わって暮らすことが可能なのです。

土間

土間で日光浴するパイセン。
古民家は壁の少ない構造により、住環境が常に自然に晒されています。
晴れれば明るく、曇れば薄暗く、雨が降ればむわっとする湿度の高い風が部屋に入ってきます。
そういった印象は基本的にアンコントローラブルなものですが、それを不便・不都合と捉えるか、自然の恩恵だと捉えるかによって、古民家という建物の捉え方も人によってはずいぶん違うんだろうなあと思うのです。

僕は、太陽の恵みも、曇天の陰影も、雨の日の湿度も青白い光も、ぜんぶ好きです。
そういうタイプの人は、古民家に住めば間違いなくハッピーになれるでしょう。

子供風呂

かわい~。
僕は常日頃、自分の子供に対して人前で絶対に「かわい~」などと言わないよう厳しく自分を律していますが、
かわい~☆
メンズキッズ×4です。ポークビッツ4本です。
このお風呂は新築した離れにあるので、サイズの制約をうけておらず、広めです。
僕は古民家再生において、お風呂は無理に内部に作らなくてもいいんじゃないかと思っています。
古民家には設備として元々お風呂がないですから。

就寝

お風呂のあとは就寝。
いつも使っていない座敷に布団を3組敷きましたが、ビジュアルが完全に旅館です。
こうした自分たちの家財道具を一切持ち込まない「座敷=客間」という空間は、いつからか日本の家から失われていきました。
僕の90歳のおばあちゃんが住んでいる家は築50年ほどですが、そこにも座敷という客間があり、いつも綺麗にしつらえられています。
自分の家すべてがゆるゆるプライベート空間だけになったのはいつからなんでしょうか。
客間はプライベート空間ではありません。「外部」に属する空間です。
子供が立ち入ったら怒られるんです。
そういうピリッとした空間と、前述のようにゆるーい空間が混在する家で、子供たちは「社会」をなんとなく学んできたのではないでしょうか。

ともあれ、翌朝「すっごく眠れた」と言ってもらえただけで、ホスト冥利に尽きるってもんですよ。
客間があって良かった。

大家族で一泊二日を過ごした後。
なんか僕は不思議な感覚にとらわれていました。
やっぱり原始的な感覚というものが、古民家には元々含まれているのかも知れません。
たくさんの人がいるので、普段は閉めている建具を開け放すんです。すると座敷、仏間、キッチン、居間、子供部屋、土間が一つの空間になります。ということは、どこからでも家のすべてを見渡せるわけです。
キッチンの椅子に座りながら、座敷で寝ている先輩も、土間でマンガを読んでる子供たちも、居間でコーヒーを飲んでる母親たちも眺めることができる。
その感じってなんかすごいんです。
うまく言葉にできませんが、少なくとも僕らが普段考えてる「家」という感じではありませんでした。
何というか…「古くて大きなものの中にいる」という感覚。
安心感がすごい。
昔、人々はこうやって暮らしてたのかもなぁと思いました。

翌日、溝口さん一家は東京に向けて出発しました。
車であちこち回りながらの帰京だそうです。
離島での暮らし、東京での暮らし、この変化は3人の子供たちにとっては本当に貴重な体験でしょう。
一体彼らは将来どんな暮らしを望んで、どんな家に住むのかしらと、去っていく車に手を振りながら僕は色々想像したのでした。

おわり

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