古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

イーハトーブ建築工房

全国空き家アドバイザー協議会福岡県嘉麻支部・支部長 川尻陽介

対応エリア福岡県全域

福岡県嘉麻支部の対応エリア福岡県嘉麻市全域

山に入り、木を切る

古民家アイコン

福岡県福岡市、イーハトーブ建築工房代表の川尻さんは、古民家再生協会福岡連合会として嘉麻市の空き家問題に取り組みつつ、町おこしとして林業を通じた「木育」を推進していこうとしています。フィンランドの世界から見た古民家の暮らしは自然の豊かさに満ち、そこにかつてあったはずの日本の生活は「木」に囲まれたものでした。

インタビュー

畜産業界から建築業界へ

──
川尻さんって工務店さんなんですよね?
川尻
はい、工務店ですよ。大っぴらにしてないだけで。
──
なんで大っぴらにしてないんですか(笑)。
川尻
建築業許可もありますよ(笑)。
──
というか、なんであちこち飛び回ってるんですか?
川尻
自分の経験を活かしたり、いろいろこう、知見を得るというか。そのためにいろいろ回ってる感じです。
──
行く先々で仕事されてるじゃないですか。それって何のお仕事なんですか。
川尻
工務店と、不動産屋さんの仕事です。管理業みたいなのをやってたりとか。現場の工程チェックって言えばいいのかな。そういうのをやってます。
──
例えば普通の工務店さんみたいに、一般ユーザーの新築とかもされたりするんですか。
川尻
やってますよ。でも今はリフォームが多いです。
──
あー、やっぱり。今はどこもリフォームメインですよね。
川尻
そうそう。自分は元々、工務店の前はゼネコンに勤めてたんで、RCとかもできますよ。
──
おお、そうなんですね。その工務店のさらに前は…
川尻
大学がこの前に地震で被災した東海大学の、農学部なんですよ。
──
あ、そうなんや。
川尻
そう。そこで畜産学をやってて。
──
そうでした。まず畜産に行かれて…
川尻
伊藤ハムっていう大手の会社に入って、いろいろ営業で店舗回りしているうちに内装に興味を持って。
──
ああ。店舗の内装。
川尻
それで、建築やろうかなって。
──
へぇーっ。
川尻
最初に派遣で入ったのが大林組。そこで現場監督しながら資格取って、二級建築士取って、工務店に勤め始めたと。そういう経歴です。
──
ほえー。何か惹かれるものがあったんですかね。興味を持ったのが肉とかじゃなくて、店舗という…
川尻
まあ元々焼き物とか好きだったんですよ。とんかつ屋さんとか行ったら織部焼とかがあったりして。
──
え、でも焼き物から建築ってつながらなくないですか。
川尻
あ、だからタイルとか、内装ですよね。
──
あ、なるほど!デザインってことか。
川尻
そうそうそう。デザイン。
──
だってあれですもんね、川尻さん、毎年フィンランドのデザインウィークに通われてて。
川尻
そうそう。やっぱ建物+デザイン、インテリア。

インタビュー

フィンランドのデザインウィーク

──
そっかそっか。あ、じゃあもうこのタイミングでお聞きするんですけど、そのデザインウィークって何なのか教えて欲しいんですけど。
川尻
ようは見本市みたいなもんですよね。フィンランド中のその年の流行が集められて。ジャンル的には色々あって、音楽とかアウトレットなんかもあったりするんですけど、僕が見てるのはインテリアとか内装とか。
──
なるほど。
川尻
食のデザインってことで、食べ物も扱うし。
──
へぇーっ。
川尻
それが一ヶ月くらいあって、僕は大体二週目と四週目を見るんですけど、二週目が一般の人たちの需要を満たすようなアウトレットだったり、来年の見本市だったり。だから何だろ、消費者向けのフリマみたいな感じ。で、もう一つが業務的なやつ。毎年5日間ぐらいで行くんですけど、基本的にどっちかしか見れないんですよ。だから各年で交互に行ってる感じかな。まあでも、どっちかというとその業務用の方が多いかもしれないですね。
──
それって建材とかなんですよね。
川尻
あ、そうそう。建材もあるし、インテリアもあるし。
──
タイルとかめっちゃ出そう。
川尻
タイルと、あと、年によって変わるんですけど、壁紙とか。
──
ああ、壁紙。僕いつも思うんですけど、タイルと壁紙に関しては圧倒的に海外の方が種類が豊富で、かわいいものが多くて、でもめっちゃ高いという。国内のは保守的なものが多いなあという印象です。
川尻
まあ、保守的というより、伝統的なデザインを踏襲してるんでしょうね。
──
北欧ってデザイン性が高いじゃないですか。引き算のミニマルデザインじゃなくて、足し算もすごくて。
川尻
やっぱり僕らより家に居る時間が長いからですね。冬場とかは特に。
──
あー!なるほど!!
川尻
やっぱ鬱屈した気分をどう晴らすか、というところから発想が始まってるんで。
──
すげー!
川尻
だから僕らには思いつかないような派手な柄だったり、景色が無い中でお花がいっぱいあったらいいなって。
──
うわー、めっちゃ勉強になった……
川尻
そうそう。あとは照明もあるんですよ。窓の形をした、壁に取り付ける照明。
──
何ですかそれ。
川尻
窓の外がずっと暗いじゃないですか。
──
え、まじで?
川尻
LEDでじわじわっと明るくして、陽射しが入ってる感じにできるんですよ。
──
すごいな~。
川尻
やっぱ病むって言いますからね。日が当たらんのって。
──
やっぱそうなんや。
川尻
北欧は薬屋さんとか、ビタミン剤も充実してるんです。おかしくならないように。
──
そうなんやー。あれってやっぱ慣れるもんじゃないんですね。
川尻
そうそう。僕も向こうには9月くらいに行くんですけど、まあ暗いですよ。
──
あー。
川尻
もう日本の冬よりちょっと早く暗くなる。
──
やっぱそれあるよなあ。日照って。あると思う。日本でも南国と東北じゃ違うと思うし。
川尻
日の入りが二時間くらい違うと思うんですよ。

インタビュー

縁側のような場所をつくりたい

──
あのね、僕いつも思うんですけど、古民家ってよく暗い暗いって言われるじゃないですか。でも「いや、暗いか?」って思うんですよね。これ分かります?
川尻
(笑)
──
暗いところは暗いけど、いやでも縁側に行けば明るいし…って。
川尻
暗いところもほの暗いというか。たぶん今の日本人の基準がLEDとか蛍光灯になってて、明るすぎるんですよね。
──
あー、そうか。それから比べて暗いって言ってんのかな。
川尻
そうだと思います。
──
それから比べりゃ暗いけども。でも日照でいえば、今の窓が小さくて少ない家よりはずっと陽射しが入ってくるので。縁側に行けばほぼ外ですからね。
川尻
僕が古民家のどこが好きかって、やっぱ縁側なんですよ。庇が深いっていう。今の家ってほぼ庇が無いじゃないですか。
──
はいはい。
川尻
半分外、みたいなところで喋ったりする文化が無いじゃないですか。でもそれが日本の風景で、ちょっと涼しいところでお茶を飲むっていう。そういうのを生活の中に復興させて、子供が遊ぶ、友達が遊びに来る、みたいな空間をつくりたいと思ってます。
──
フィンランドってそういうのはできないんですかね。
川尻
あ、逆に夏場は日が沈まないんですよ。南のヘルシンキでも夜が2時間くらいですよ。
──
そうなんですか!白夜ですね。
川尻
そうそう。
──
それはそれでまた別の病み方しそう(笑)。
川尻
その時はみんな日に当たりたいから、フィンランドの大聖堂に階段が何十段もあるんですけど、そこに人がずらっと座って、いつまでもひなたぼっこしてるんですよ。
──
なるほどなあ。建物ってやっぱりその国の季候が生み出すもんじゃないですか。伝統的な建物っていうのは。だからフィンランドの家って、さっきの壁紙にしても、そういう暮らし方に適した形に進化するわけで。
川尻
うんうん。
──
日本もやっぱり縁側っていうのは、誰かが命令して作らせたわけじゃなくて、やっぱこれが一番、この国で暮らすのに気持ちいい形っていうことで多分できたと思うんですよね。
川尻
そうですよね。
──
なんかそれを後々の理屈でガラッと変えてしまったんだけど、気候自体は変わってないですからね。そんなに。
川尻
若干暑くなったくらいですね。日本の家屋って、湿気のある暑さに対してつくられてるので、その辺をうまくやれたらいいなと思いますけどね。

インタビュー

五右衛門風呂の記憶

──
川尻さんのご実家は普通の家ですか。
川尻
実家はそうですね。でも母方の実家は古民家です。元々は大きな家で、住みづらくなって減築を重ねて今は小さくなってますけど。
──
じゃあ子供の頃から親しんでいた感じですか?
川尻
そうですね。暑いのに縁側で寝てたり。風とかが心地良いんですよね。
──
うんうん。
川尻
うちは縁側の外にちっちゃい池があって、鯉とかがいたんですよ。それを見ながら。
──
おお、めちゃめちゃいいな。貴族みたい(笑)。
川尻
そんなにでかい池じゃないですけどね。
──
僕も小学生の頃に一番仲良かった友達が古民家だったんですよ。それで僕もやっぱり縁側でジャンプ読んでましたね。雨の日にも開けっぱなしやったから、雨粒見上げながら。そういう幼少の体験が、大人になって古民家に引き寄せられる遠因にもなってるんかなと思います。
川尻
そうですね。うちは五右衛門風呂もあったし。
──
おー。
川尻
縁側を通って離れの風呂に行くんですよ。
──
ええなー。
川尻
今はもうおばあさんが高齢になったから普通のお風呂になってますけど、それまでは薪で。沸かしすぎると熱くなっちゃうやつです。
──
あれ温度調節ってどうやるんですか。
川尻
それは火を弱めるしかない。燃えてるやつをちょっとどかすみたいな。
──
あれってツーマンセル、二人組でしか入れないんですよね。
川尻
そうそう。
──
五右衛門風呂もそうですけど、僕を含めてそれを体験していない、知らない人が本当に多くなってきて。僕こないだSNSに投稿しましたけど、今の人は「縁側」を知らないんですよね。「このスペース」っていう言い方をする。温泉旅館のこのスペースが好き、という。
川尻
はいはい。あれは広縁の名残ですよね。旅館の部屋で広縁を再現している。
──
あれも本当ならずっと二階縁側が続いてたんですよね。それを完全個室にするためにぶった切って、残された部分。そういうのが忘れ去られつつある。
川尻
学校で習うことがすべてみたいになっちゃってて。そういう人がまた親になって、というサイクルですね。
──
親にも誰にも教えられてないんですよ。

木の良さを伝える必要性

川尻
いま町おこしで「木育」をやってて。木の良さを伝えるっていう。
──
ほー。
川尻
それで木のおもちゃ作りとかを体験講座でやるんですけど、結構ね、子供じゃなくてその親が一生懸命やるんですよ。
──
へぇー。
川尻
やったことないから。
──
なるほどね。まず親が知らんのか。
川尻
そうそう。ああいうのをやるのも古民家再生協会でやるのって大事かなと思いますね。
──
僕はこういう暮らしをはじめてもう長いから忘れそうになるんですけど、普通に暮らしてたら生の木に触れる経験ってなかなか無いんですよね。
川尻
うん。
──
木目でも全部プリント合板だったりするし。
川尻
今はどの家も大壁だから木が表に出てくることはないんですよね。
──
壁も床も、家具でさえ基本はプリントですよね。だから指先で感じる本物が無いんですよ。
川尻
これも町おこしの話なんですけど、今やってる嘉麻市っていうのは中山間地なんですよ。そこの林業研究会というところにちょっとお手伝いに行くようになって。
──
はい。
川尻
そこの林業家育成の事業になぜか加わることになって。
──
へぇーっ。
川尻
だからこれからは時間があったら、山で木を切ることに…
──
木こりですね。ますます何やってる人か分からない(笑)。
川尻
(笑)その山は建材用の木なんですよ。例えば化粧垂木をつくるために植えた木ばっかり、みたいな。
──
へぇー。
川尻
木がおんなじ太さで並んでるんですよね。でもそれが、もう伝統的な建築をやらなくなったから、もうそれらの木が使えないんです。
──
なるほどね。
川尻
それって前の世代が次の世代のために植えたものですよね。それが使われなくなるのはやっぱ、なんか罪深いなと思ったり。だからそれを活用する仕事ができたらいいなと思う。
──
そっかー。
川尻
それと、林業に関わる人たちって、そういう木の命を奪って我々建設業者に渡しているって言うんです。そういうのを聞くと、これは建築家としてちゃんとやっていかないとだめだと思うんですよね。
──
はいはい。やっぱ見ちゃったらね。現場をね。
川尻
うん。だからその、やっぱり林業を知ることによって、古民家をもっとちゃんとやろうぜ、みたいな気持ちが芽生えて。
──
あー。そうなんや。それはほんとにそうかも。
川尻
やる気が何倍にも膨れ上がりましたね。
──
そもそも古民家に興味を持ったタイミングっていつぐらいなんですか。何かきっかけとかがありました?
川尻
やっぱりさっき言った幼少期くらいじゃないですか。ただ実際的に古民家に本腰を入れようと思ったのはコロナがきっかけです。
──
ほー。
川尻
それまでは主にマンションリフォームとかをやらせてもらってたんですけど、でもコロナで一切会えない状況になって。その時には他の要素もいろいろあったんですけど、やっぱなんか自分の中で大事なものを扱っていきたいという気持ちが生まれて、それでって感じです。
──
わかる。わかるぞ(笑)。大事なもの、って考えたら古民家になりますよね。僕も40過ぎたくらいから、このまま人生を終えるってどうなん?という思いが出てきて。残りの時間を大事なものに使っていきたいなって。
川尻
もちろん商売として仕事をして食べていくわけですけど、町おこし、林業なんかを通じて得たものというのは、一生を賭ける価値があるのかなと。
──
うん。
川尻
だから繁忙期じゃない時に山で木を切ってみて、その木の大切さを知るとかね。
──
今、大工さんでも山に入って木を切ったことのある人ってほとんどいないでしょ。
川尻
そうそう。

それぞれの震災現場

──
経験とか体験ということで言うとね、これもちょっとお聞きしたかったんですけど、震災の現場にいろいろ行かれてるじゃないですか。
川尻
そうですね。東日本の時は、僕の当時の会社関係で福島に縁があったんで、どうなってるのかと見に行ったのがきっかけです。それで片付けの手伝いとかして。
──
はいはい。そのあと熊本にも行かれてますよね。
川尻
熊本は僕の大学が近くにあって、自分が住んでた下宿を片付けるお手伝いをして。その頃にはもう建築の経験値があったからいろんなアドバイスができましたけど。
──
なるほど。その時って、現場ってどんな状況だったんですか。特に古民家の被災状況とか。
川尻
うーん、古民家ってことで言うと、現代建築ってまあ、壊れないんですよ。中途半端に。
──
ほう。
川尻
なので、全壊判定が出ないんですよ。ひび割れて明らかに家として使えないのに、傾いてませんよねって。
──
なるほどー。だから「ユンボでちょっと間違えて体当たりしてくれ」みたいな話が…(笑)
川尻
そうそう(笑)。
──
伝統構法の古民家もぺちゃんこになりにくいというか、生存空間が残りやすいって話は聞いたことがあるんですけど。
川尻
やっぱじんわり倒れていくみたいな柔構造なんで。人の命を守る建物。でもそれが機能しない場合がある。
──
はい。
川尻
阪神淡路の時にも言われたんですけど、シロアリであるとか。湿気でやられているとか。ようはメンテですよね。構造材がだめになってるから、ぐしゃっと壊れるという話もあります。
──
なるほど。
川尻
実際、阪神の時は学生だったんで見には行けてないんですけど、そういう話は聞きました。
──
僕は西宮近辺の大学だったんで、被災直後の街を歩いて学校に通ってましたよ。人の家の屋根の上を歩いたり、傾いたビルの真下で電車待ったりしましたけど、まあぶっちゃけ、あのレベルの地震来たら全部潰れますよね(笑)。
川尻
(笑)
──
あんなん残ってる方がおかしいもん(笑)。
川尻
高速も倒れてましたからね。
──
だから僕はもうずっと地震のことは気にしていて、同じことを言い続けてるんですけど、川尻さんも今度能登に行かれるじゃないですか。僕もこの三日後に行きますけど、報道が無いこととか、復興が遅れてることとか、自分の目で見ておきたいですよね。
川尻
世の中が注目してなかったら復興が遅れてもいいのかと。あれはちょっとむかつきますよね。
──
ね。でもそういうのも体験として自分が得ておきたいんですよ。古民家だって体験しないと分かんないところが色々あるじゃないですか。
川尻
古民家リノベでも、まず古民家に住んだことありますか、というのを訊いて、無かったらまず古民家宿に行かれたらどうですか、というお話はします。
──
なるほど。
川尻
夏場とか、独特の涼しさみたいなのがあるじゃないですか。その心地よさを体験してほしい。
──
ああ、夏の心地よさか。なるほど。それは確かに。
川尻
そうそう。夏のなんとも言えない、ひんやりとした、あの爽やかな風を体感してほしい。

季節によって部屋を変える

──
僕わりと寒いとか暗いとかの問題解決を書くことが多いんですけど、今の視点って結構大事で、あの気持ちよさを感じたらまず古民家を好きになるじゃないですか。
川尻
そうですね。
──
だから順番でいったらそれがスタートですよね。
川尻
うん。で、冬はどうすんの? って訊かれたら、まあ一部屋くらい妥協して大壁の部屋を造ればいいじゃんって思います。
──
そうそうそう。
川尻
寝る時に寒い、というのはつらいと思うんで。だからリノベーションで、真ん中の一部屋くらいを大壁で断熱ぐるぐるして、そういうところを造ってもいいかなと。
──
さすがですね。僕も全く同意見です。僕も仕事部屋と寝室はバリバリ新築で、真冬は断熱された部屋ですやすや寝てますんで。
川尻
そうでしょ。冬はそれでいいんですよ。だから夏の家、冬の部屋、みたいなのがいいと思うんですよ。
──
わかるっす。
川尻
だって生き物もそうじゃないですか。川魚だって寒い時はあったかいところに行きますよ。同じところに留まってないですから。
──
そうやねん。
川尻
だって古民家って広いじゃないですか。そういう暮らしをしていいんですよ。
──
まじでその通りだと思う。
川尻
だから古民家がいくら素敵だからといって、一つも手を入れてはいけないとか、昔のままで、とは思わないです。そういう部屋をつくって、そこにまあ何でしょうね、薪ストーブでも置けば。
──
そうそう。それでいい。人間って部屋がいっぱいあっても使う部屋は二部屋くらいですからね。それを季節によって一番いい部屋に移り変えていく。
川尻
それが本来の家を使い方なんじゃないかな。夏は夏で涼しいところに……だからエアコン嫌いな人も最近は増えてきたけど、それなら古民家でそういう暮らしをしてみたらどうですか、くらいのことは言いたいな。
──
僕は古民家に住むようになってから、エアコンがまじでダメになりました。新築はエアコンなんですけど、本格的な加湿器でガンガン加湿しないと無理。冷房の設定温度も29.5℃なんですよ。
川尻
僕の事務所は28℃ですね。
──
それでも寒いでしょう。
川尻
寒くなりますね。
──
だから夏場はエアコンでおかしくなった身体を、時々古民家の母屋に行って、元に戻すんですよ。
川尻
ああ、それはいいですね。
──
さっきのフィンランドの話に戻りますけど、やっぱ人間の気持ちいいとか、気持ち悪いとか病むとかって、多分もう決まってますよね、なんか。
川尻
そうそう。やっぱり日に当たらないと生きていけないし、四季を感じないと日本人は体がおかしくなるんです。
──
いやでもさっきの窓の照明の話、衝撃やな。日本のマンションとかでも需要ないですかね。
川尻
いやー、日本人はあんまり気にしないですよね。引きこもってても別に。
──
まあ日本人は気持ち悪くなったら窓開ければいいし。
川尻
外出た時に真っ暗、という状況がないですからね。
──
それを考えれば、我々は恵まれてますよね。

新材を使う古民家再生

──
じゃあ最後に、これからの方向性みたいなのをお聞きしようかなと思うんですけど。
川尻
やっぱり古民家の再生っていうのをしっかりやっていきたい、というのはすごく思いますね。
──
はい。
川尻
さっきの林業の話ですけど、日本の森林っていうのは基本的に建材をつくるために木を育ててるわけなんで、その山という財産を次の世代に継いでいくためにリフォームなんかの仕事ができたらいいなと思う。
──
なるほど。
川尻
今は正直、林業的には、薪とかチップにする方が儲かるらしいんです。でもやっぱ柱とか、梁とか、本来の目的で使えるケースが少しでも増えれば。
──
うんうん。
川尻
古材を使い回すのも大事ですけど、新しい木、新しい材料を使うっていう状況を作りたい。古民家再生協会としてそういう活動をしたいと思ってるし、会社としても、自分は大工さんじゃないので直接どうこうするのは難しいんですが、そのシステム作りをやっていければと思います。
──
あの、僕も古民家直して思ったんですけど、やっぱ普通の家を一棟建てるのと、古民家を一棟直すのって、天然の木材の使用量が全然違いますもんね。新築はもうほとんどプレカットの集成材がバーッと配られてそれでパパッと作っちゃうじゃないですか。でも古民家は柱を継いだり足したり、建具を調整したり、とにかく全部本物の木を使っていく。
川尻
集成材を使ったらそこだけ保たないんですよ。家の寿命が圧倒的に違うから。
──
ですよね。
川尻
これからますます人口が減っていく中で、新築も減っていくし。技術継承して今の古民家を残していくっていう形であれば持続可能かなと思うんですけどね。
──
うんうん。
川尻
じゃあ古民家を直す以外に具体的に何をやっていけるのかというのは、まだはっきり描けてないんですけど、それは木に携わる仕事をしながら、また見つけていきたいなと思います。
──
おお。綺麗なところで終わった(笑)。
川尻
(笑)
──
いやほんと、いろいろ勉強になりました。ありがとうございました!

おわり

施工例







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※直接お問い合わせの際は「クロニカを見た」とお伝え頂くと
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代表 川尻陽介
創立 2014年5月15日
保有資格 二級建築士、伝統再築士
住所 〒818-0118 福岡県太宰府市石坂2-17-9
TEL/FAX. 092-923-5803
MOBILE. 090-4984-5248
公式ブログ https://ameblo.jp/kobo-iihatobu/

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