古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

越中古民家 株式会社アキ

全国古民家再生協会富山第一支部・支部長 加藤 明博

対応エリア富山全域

富山第一支部の対応エリア富山全域

木に宿る人の思い。

古民家アイコン

富山県小矢部市。この地方独特の「アズマダチ」と呼ばれる古民家、その構造的意匠である「枠の内」の家々が残る美しい風景の中に株式会社アキの社屋があります。古民家の移築再生を行う「越中古民家」を立ち上げた代表の加藤さんは材木屋の三代目。材木を中心に、私たちが忘れかけている「家」という大きなものの像を語って頂きました。

インタビュー

「散居村」と「カイニョ」の話

──
前に北陸自動車道をずっと走ってて、ふと左手を見たらすごいかっこいい古民家があちこちにある風景に出会って、その時すごく急いでたんですけど遅刻覚悟で高速降りちゃって(笑)、あちこち写真撮りまくったんですけどそれが加藤さんの会社のすぐ近くだったんですよね。
加藤
そうなんですか。それは嬉しいですね。
──
いわゆる「アズマダチ」、「枠の内」の古民家が、いい感じに点在しているんですよね。
加藤
散居村(さんきょそん)って言うんです。
──
ああ、やっぱり名前ついてるんや。
加藤
はい。それらの家々は住宅の周りに木を植えてるんですよ。
──
植えてた!
加藤
カイニョ(屋敷林)って言うんですけど。周りに木を植えて、風雪から家を守るんです。あと自分の田んぼを家の周りに集めるので、ぽつんぽつんと離れてるようになるんですね。
──
そういうことかー。いや僕、そこが他の地方の風景と全然違うなって感じたんです。ポツポツとあるんですけど、寂れてる感じがないんですよ。
加藤
ああ。
──
古民家って基本不動産屋が目を付けない交通に不便なところが残るじゃないですか。そういうポツポツと残される風景って何かやっぱり、人の気配がしないとか、取り残された家というか、そういうネガティブな雰囲気があるんですけど、でもここって全然違うし、むしろ豊かな感じがして、一棟一棟立派だし、何これって思って。
加藤
周りに木を集めるんで、家というより、小さい木々のかたまりがポツンポツンとあるんですよね。それが綺麗なんです。
──
そうそうそう。綺麗なんですよ。それで高速降りちゃったんですけど(笑)。それで実際近くで見た時に…僕はどうしても構造じゃなくてデザイン的に見ちゃうんですけど、やっぱり「枠の内」の見栄えが素晴らしいですよね。実際は構造上の理由があると思うんですけど。
加藤
「枠の内」の部分がすごく強くなるので、周りがそこに寄っかかって全体を支えるみたいな感じです。
──
なるほどー。それが古民家なんで、外側に構造が見えてくるじゃないですか。それがデザイン的にほんとかっこいいですよ。他の地域には無い見た目ですよね。
加藤
そうです。
──
やっぱりこういう風景、一棟一棟レベルじゃなくて、全体の風景が綺麗なんですよ。僕は今まで見た地方の集落の中でここが一番印象に残りました。正直羨ましいです。
加藤
嬉しいですね。地元のみんなにも伝えたいくらい(笑)。
──
いやほんとに。地元の方には逆に言ってあげないと、毎日見てる風景が素晴らしいってことをご存じない方も多いですから。
加藤
ただ現実問題、カイニョの木を切る人が増えてるんです。
──
あー。それはなんでですか。
加藤
一つは、大きい木が台風で倒れたりして危険だと考える人がいらっしゃるんです。でも昔はその木の折れた枝とかを燃料として使ってたんです。
──
ああ、そっかそっか。
加藤
でも現在はそれがメリットじゃなくてデメリットになってしまって、掃除するのが大変だとか、やっぱりそう感じる人が多いんです。
──
確かにまあそうでしょうねえ。
加藤
役所も大事な散居村なので、いろんな補助や活動もあって、ゴミが出ても引き取ってくれたり、なんとかして残そうと頑張ってくれてるんですけど。
──
それは素晴らしいですね。まあでもやっぱり、大事なのは住人の心の話で、落ちてくる枝=ゴミが嫌だ、というのはそうなんですけど、このカイニョ、この風景が素晴らしいから、枝や落ち葉の掃除くらいは我慢しようって、そう思えるかどうかですよね。
加藤
外からそう言ってくれる人たちがいないと、自分たちだけでは気付きにくいですよね。
──
よく日本人は地元のことを「こんな何もないところで申し訳ない」って言うじゃないですか。海外の人は逆で、自慢しがちなんですよ。
加藤
こちらでも地元を卑下して言う方は多いですね。
──
たぶんそれって、外から来る人が少ないからだと思うんですよね。ヨーロッパって陸続きだからいろんな国籍、いろんな文化圏の人たちが流動的に混ざるじゃないですか。だから自分たちの固有文化に気付きやすいんかなって思います。褒めてもらうことも多いだろうし。
加藤
それはありますね。あと日本人の謙虚さもあると思うんですけど、でもそれだけでは文化を守っていけないですからね。

インタビュー

古材にするのが目的ではない

──
僕ホームページ見させて頂いたんですけど、そういう中で、潰すしかなかった古民家を解体して、その古材を再利用するってこともされてらっしゃるんですよね。
加藤
うちは元々材木屋なんですよ。私が三代目で。
──
えっ、そうだったんですか! それは失礼しました。そら扱えますよね(笑)。
加藤
木が大好きなんです。いろんな方から、この木はいい木なのに潰すのはもったいない、もったいないって、そういう声を聞いてきた立場なので、それを何とかしなきゃいけないなっていうのが一番頭にあるんです。
──
木の強度の話も皆さん知らないですからね。伐採から100年、200年は強度が上がり続けるっていう。
加藤
木によって年数は違うんですけど、その古民家を解体する時っていうのが、ひょっとすると木にとっては最高に強い時かもしれないので、それだけ考えてももったいないですし。
──
うんうん。
加藤
見た目的にも長い年数が経って、すごくいい雰囲気が出てますし。
──
ですよねえ。僕は家が「製品」になったのって戦後だと思うんですけど、それと同時に構造材も製品になったと思うんです。で、製品を捨てるのってそんなに抵抗ないんですよね。古いパソコンを捨てるのって、うわあっ…ていう感じがないんですけど、自然のものを捨てるっていうのが…
加藤
なるほど。
──
自然のものを「捨てる」って何やねんと。自然はいつまでも自然で、ずっとそこにあり続けるものだから…
加藤
それに50年100年と家人と共に時を過ごしてきた古材なので、歴史がありますよね。私は解体する時に古材として引き取るんですが、まず一番最初に、その家の持ち主の方に、あなたの家でこの古材を活かしませんか、という提案をするんです。
──
ああー。
加藤
古材にするのが目的じゃなくて、まずはご自身で使って欲しいって思うんです。
──
そっかー。
加藤
それでもどうしてもダメな場合は、他の人のところに使ってもらうという。
──
なんか現代の家の建て方、考え方とはまったく違いますよね。加藤さんの仰る、材料のレベルで人の歴史や心が入ってるっていう感じ方、家づくりとは全然違うなって思います。
加藤
私が提案する家というのは、根本的にはそういうものがあります。お施主さんの好みはもちろん一番大事ですけど、新築でも古材でも、根本の思いは変わらないです。
──
なるほどー。まあ内装なんかは上っ面やから、住む人によってコロコロ変えていったらいいと思うんですけど、家っていう大きなものに対しては、敬意だったり、思いだったり、そういうものが入っていて欲しいし、そういう風に建てられた家ってたぶん残っていきやすいと思うんです。さっきの風景の話もそうですけど、まず建物が残っていかないと話にならない。
加藤
そうですね。

インタビュー

いろんな木に触れて欲しい

──
施工例を拝見したら、古材とか古民家だけじゃなくて今っぽいお家とか、色々手がけてらっしゃいますね。
加藤
基本はお客さんの気持ちが一番大事なので、お気持ちがはっきりしているお客さん、夢をお持ちのお客さんには、できるだけその夢を実現しようと頑張るので、結果的にいろんなお家になります。でも根っこが材木屋なので、いろんなところに無垢材を使わせて頂いています。
──
いやそういうのは大事ですよね。よく無垢材って言いますけど、みんなが言うのって床材じゃないですか。
加藤
ああ。
──
でも本来無垢材って構造材から始まって、細かい部分、建具枠とか、巾木とか、そういうのも無垢材でやってもらえると暖かみとか味わいが全然違いますもんね。
加藤
そうなんです。
──
それにたとえば子供が傷をつけたとしても、無垢材だったらそんなに気にならないし。
加藤
見学用に自宅のいろんなところに無垢材を使ったんですが、たとえば柔らかい杉の30mmの床板だと、生活がするとこんな傷がつきますよって見てもらうんです。
──
ほー。
加藤
逆に三階には傷がつきにくい堅木の床材を使って、両方体験して頂けるようにしてます。あと素足で歩くと、堅い木はひんやりして、杉の30mmだとこんな感触なのかって分かりますよね。
──
それはいいですねえ。そうやって経年の変化や肌触りを比べられる機会ってないですもんね。
加藤
前にお年寄りの方ですけど、30mmの杉の床材にしたら、偶然かどうか分かりませんけど、転んだんだけど怪我しなかったよって言って頂いたこともあります。
──
わかる。杉はそれくらい柔らかいですもんね。
加藤
ほんとに堅いのと柔らかいのとは全然違いますから、ぜひ体験して欲しいんです。
──
ですよね。僕の家は仕事部屋が杉、居間とキッチンがヒノキ、仏間がチーク、縁側がケヤキなんです。どれも全然違いますからね。
加藤
それもすごいですね(笑)。
──
特に夏は裸足なんで、ほんとに見た目だけじゃなく触感にみんな個性があって、歩くだけで楽しいんです。
加藤
それに「匂い」もありますよね。自宅には毎日住んでるのであまり感じないんですけど(笑)、見学の方が玄関に入っただけで「ああ、いい木の香りがする」って。
──
そうそうそう(笑)。僕も旅行から帰ってきた時に同じ感じになります。
加藤
もう建てて12年目なんですけど。でもまだそんな香りがあるんだなって。
──
いやあ、木の香りって無くならないですよね。うちも古材だらけで別に新しい無垢材をあちこちに使ってるわけじゃないですけど、それでも香りますからね。匂いってさっきの触感と一緒で、数値化できない、豊かさのポイントですよね。
加藤
そうそう。そうなんです。
──
自然素材の良さってそもそも数値化なんかできませんもんね。

インタビュー

自分の山の木を切る

──
加藤さんは三代目ということなんですけど、お生まれは富山ですか。
加藤
はい。地元から出たことがないんですよ。
──
あ、そうなんですか。いや、素敵な地域なんで出る必要ないですよ(笑)。
加藤
(笑)
──
創業っていつくらいなんですか?
加藤
昭和21年です。ほんとに山の麓の小さい材木屋で、山の持ち主の方が家を建てる時に、その山の木を切って出す、という仕事をやっていたみたいです。
──
すごいなあ。すごい建て方ですよね。
加藤
特に戦後なので、資材も無いってなると、自分の山の木を切るというのが合理的だったんですね。ただ製材の機械も無いので、ある程度の年数をかけて、人力で製材して家をつくっていたと。
──
木を乾かすだけで一年とかかかるんですよね。
加藤
荒挽きというか、大きく切って一年乾かして、さらにその間に曲がったり反ったりしたのを挽き直しして、きれいな寸法が出るようにしたんです。
──
そんなに手間をかけてつくられたものなんですねえ。
加藤
山の木も、自分の何代か前の人が植えたものを使わせて頂くわけで、なおさら大事にしないといけないって、そんなイメージがずっとあるんです。
──
そっかー。ほんとですね。そんな大切なものが解体屋のユンボでグシャグシャっと…
加藤
(笑)
──
(笑)
加藤
それはもう、たまらないですよね(笑)。
──
ほんまに(笑)。じゃあ小さい頃からそんな先代の仕事を見て育ったんですね。
加藤
そうです。まあその間に時代もずいぶん変わりました。昔は材木屋がお客さんに頼まれて、山の木を出したんです。それから大工さんに頼むのも材木屋の仕事だったんですよ。
──
そうなんですか! なるほどなー。まず材木屋が…
加藤
それが時代が変わって、大工さんがいろんな手続きとか見積とかをされるようになったので、材木屋はただ材木を用意するだけになっていったんですね。
──
それはやっぱり集成材が台頭してきて、木を頼まなくても家が建つようになったのが大きいんですかね。
加藤
そうです。
──
材木から製品になっていった。
加藤
そういう流れの中で、自分は親や先々代から言われたことはないんですけど、周りから「跡を継いでくれよ」という期待もあって…自分の中では、これからは建築士の資格を取らないとダメだなと思って、自分の代で本格的に建築の方をやるようになったんです。
──
そうだったんですね。それって何年くらいのお話ですか。
加藤
それは今から45年とか、もうちょっと前くらいですね。
──
僕が生まれたくらいですね(笑)。
加藤
うわ、それは怖いな(笑)。
──
大先輩ですね(笑)。

インタビュー

絶対に壊さないでくれ

加藤
私は最初、ビルを建てる会社で勉強させてもらって、一通りそこで学んでから、親父が身体を壊したのをきっかけに帰ってきたんで、木造のことを勉強し始めたのは少し後、24歳くらいからです。
──
そうなんですね。
加藤
それから大工さん、職人さんなどいろんな方にいろんなところで勉強させてもらって。
──
そんな風にいろんな現場やいろんな価値観の中にいらっしゃると、無垢材の良さってより際立つんじゃないですか。
加藤
私は集成材は絶対ダメって思ってるわけじゃないんです。たとえば大きなスパンの梁なんかは、無垢材を使うのは難しかったりするんで、その場合はお客さんにご説明して、集成材を使う場合もあります。そういう現代の素材を認めた上で、無垢材の良さを活かしていきたいなって。
──
なるほど。
加藤
ただ無垢材は本物の素材だからこそ、ずっと残せる。私が一番最初に「枠の内」の仕事をさせてもらった時もそんな話がありまして。
──
はい。
加藤
ご両親と同居している私の同級生の家なんですが、そこへ打ち合わせに伺った時に、そこのおじいちゃんが、家のことは息子に任せてるけど、この「枠の内」の部屋と材料は、自分の命の次に大事なんだと。
──
はーっ。
加藤
これは絶対に壊さないでくれって懇願されて。
──
へぇーっ。
加藤
それから材木の話、この木はどこのもので、どうやって用意したとか、そういった由来を話して頂いて。それを聞いた時に、この「枠の内」の部分なしでは、家族みんなが幸せになる家にはならないと思ったので、なんとかしてこの部分を活かそうと、そのままレッカー2台で吊って、基礎を作ったあとでまたそれを戻して…という家をつくらせてもらったことがあるんです。
──
いやー、すごいな。
加藤
あの出来事が、自分の中で、古民家とか古材とか、そういうことを真剣に考えるきっかけになったんです。
──
そっかー。
加藤
そのおじいさんは今もご存命なんですが、大変喜んで頂いて、今も良いお付き合いをさせて頂いています。
──
そんな工事、普通なら「できない」って言われますよね(笑)。
加藤
これだけは何とかしないといけないって思ったんです。
──
そういう話を聞くと、家ってそういうもんなんだなあって思いますよね。何かとても大きなものというか。
加藤
そうですね。
──
大きなものに包まれてる安心感とか、言葉にできない雰囲気みたいなものが古民家にありますけど、それもそんなお話と繋がってる気がします。
加藤
家に住んで頂く方の幸せが一番大事なんだと思うんです。その一番大事なところに、木や家を思う気持ちを持って頂いているというのがすごくありがたいですし、私たちはその気持ちに応えていきたいなと思っています。
──
いやー、今日はいろんなお話ありがとうございました。面白かったです!

おわり

施工例







越中古民家 株式会社アキ

※直接お問い合わせの際は「クロニカを見た」とお伝え頂くと
何かしら良いことがある気がします。

代表 加藤 明博
創業 昭和21年
設立 昭和63年4月2日
資本金 5,000万円
従業員数 11名
資格者 一級建築士 1名
二級建築士 3名
一級施工管理技士 2名
二級施工管理技士 2名
インテリアコーディネーター 2名
認許可 建設業許可:富山県知事登録 (特-3)第9036号
一級建築士事務所登録:富山県知事登録 第(8)861号
事業内容 住宅・店舗・集合住宅等の設計施工
新築注文住宅
増改築
リフォーム
古材買取・販売
住所 〒932-0862 富山県小矢部市五郎丸62
Tel.0766-69-8703
Fax.0766-69-8653
建築設計部 Tel.0766-69-1230
公式サイト https://etchu-kominka.com(越中古民家)
https://www.k-aki.com(本社サイト)
越中古民家 株式会社アキ /
全国古民家再生協会富山第一支部への
お問い合わせはこちら

古民家をお探しの方、直したい方、状態を調査したい方は
このフォームからご連絡ください。

    お名前

    ご住所(任意)

    メール

    電話

    内容

    ※情報はSSLによって暗号化され、安全に通信されます。

    pagetop