古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

株式会社 畑工務店

全国古民家再生協会京都第一支部・支部長 畑 哲也

対応エリア京都府・大阪府北部

京都第一支部の対応エリア京都府全域

本物の家づくりを楽しむ。

古民家アイコン

京都府亀岡市、畑工務店代表の畑さんは手刻みができる大工であり、シックハウスの研究者であり、介護保険事業も手がけていたりと、いろんな顔を持つ方です。多岐にわたるお話をお伺いして感じたのは、その底の方に流れる「お客さんのためになることをしたい」という気持ち。畑さんが辿り着いた答えは「本物の家づくり」でした。

インタビュー

大工は揺れ方を知っている

──
畑さんは、親御さんが大工さんなんですよね。
そうです。だから僕もずっとそういう業界に触れてて、工業系の高校の建築科に進んだんですけど、卒業する時に、設計に行くか、施工の方に行くか、どっちがいいってなって。
──
はいはい。
設計するんやったら面倒みたるで、というところがあったんです。施工はいきなり家に帰ってもあれなんで、どこかで修行させてもらってという感じやったんです。で、設計事務所ってその当時はあまり儲からない職種だったんですね。
──
へぇ、そうなんですか。
僕ら、今と昔の境目くらいに育ってるから、製図も手描きやし、で、設計士はエンピツと消しゴムだけあったらいいみたいな感覚、丁稚の感覚やったんです。勤めてもおこづかいもらう程度だったんです。
──
へぇー。
それに僕は早く仕事を覚えたかったんで、学校に求人を出してた一番小さな工務店に応募したんです。そしたらその日のうちに「すぐ来てくれ」と。それでそこに5年ほど勤めて、家に戻ったと。
──
家に戻るというのは、継いだってことですか。
そう。施工も今みたいに電気のドライバーとか、コンプレッサーとかも無くて、そういう道具がだんだん普及しつつあった時代です。だから今みんな職人を育てなあかんって言ってますけど、今の人は手刻みの経験がないからまず最初にそれを教えないといけないですよね。たぶん手刻みが当たり前という世界は、僕らの年代くらいが最後やと思う。
──
はー。そうなんですね。じゃあ当時から全部手刻みで。
うん、プレカットがなかったから。それに職人の世界は新しいものを毛嫌いするから、プレカットが出てからも「信用でけへん」っていう。
──
そうなんやー。
それと未だに丸太はプレカット屋さんがでけへんから、プレカットの普及は亀岡では遅かったかも知れへんね。
──
丸太って、梁とか、垂木を受けたりとか、そういうところに使うんですよね。
そうそう。古い家をやる時は手刻みの方が都合がいいし、あと大きな家をやる時は「地棟」って言って棟木のでかいやつを入れると、家が落ち着くね。どーんと。
──
へー。
大黒柱と同じような大きな木が、屋根の上に乗ってるんやね。建ててたらよく分かるんやけど、大工さんは壁がない状態で下から組み上げていくから、揺れるんですよ。
──
はいはいはい。
たとえば柱の寸法が一回り大きいだけでも、揺れ方が全然違う。
──
そうなんですか。
その地棟をぽんと置いただけで、揺れにくくなるんです。できてしまうともう分からへんけど、組んでる大工さんはよく揺れる家とそうじゃない家を知ってます。古い家は筋交いもないし固めないから、建ててる途中に分かるんです。

インタビュー

消えた「家の個性」

──
そんなんあるんやなぁ。これ、さっきインタビュー前にお茶飲みながら喋ってた話ですけど、そういうのも「家の個性」で、今はそういうのが消えていってるんですよね。
そうそう。もう個性がないんです。
──
すいません、その話をもう一度やってください(笑)。
(笑)さっき喋ってたのは、職人さんの話なんですけどね。職人さんは最初うちみたいな家に丁稚という形で入ってくるんですね。で、左官屋さんも大工さんも親方もいて。そこの家に、昔やったら中学校出た時とか出る前とかに、丁稚で職人として育ててもらって、ご飯も一緒に食べて、一緒に寝て…
──
はいはい。
その代わり給料というのはなくて、多少の小遣いをもらって、一人前になるまではそうやって暮らす。で、生活にしろ仕事の仕方にしろ、その親方によって全然違うから、家の外観を見ただけで、その家を建てた大工さんがどこの親方の元で修行してきたのか大体分かるんですよね。
──
それほんますごい話ですよね。
今みたいに京都の大工さんが大阪や兵庫県で仕事したりしてなくて、その村ごとに大工さん、左官屋さんが決まってたから。
──
なんかもうそれって、クラフト、民芸の世界ですよね。
そうそう。それが面白いんやけどね。床の間とかにも個性が出るし。
──
家に個性が無くなったというのは、お客さんが偉くなったというのがでかいと思うんですよね。教師や医者の地位が落ちたのと一緒で、職人さんがえらかったのが、お客様の方がえらくなっちゃって、家はお客様と営業担当で決めて、職人は金で雇った労働者みたいな扱いになっていったんじゃないですか。
そうそう。お金を中心に考えるとそうなりますわね。
──
民芸で言うと、商品じゃなくて、まずはモノがあって。暮らしの中から生まれてきたモノですよね。家も本来はそういうモノじゃないかと思うんです。
だから棟梁という言葉があるんやろね。棟梁が左官屋さんも選ぶし、屋根屋さんも選ぶし、チームをまとめてたんですけど、今みたいなお金中心主義だと、安い職人さんを誰でもええから連れてきて建てたらええわみたいな。チームで作らなくなりますよね。
──
うちとこの工務店はチームなんですよ。屋根はあいつや、左官は高くて腹立つけどあいつやって(笑)。
そうそう(笑)。
──
一般的な工務店さんって、今はやっぱりチームは組まずにひたすらコスト重視なんですかね。
まあ、工務店さんによるけど、そういうところもあるやろね。建売住宅をやるんだったらそうならざるを得ないやろうし。
──
僕も一回モデルハウス見に行ったことあるんですけど、チラシで「坪単価28万円!」とかあるじゃないですか。ああいうのって一体どうしてるんですか。
それは僕も思うね。
──
あははは(笑)
どう考えても計算上合わへんからね。まあ企業努力と、薄利多売かな。大手の下請けになったりすると、大手から安い職人と安い材料を支給されたりするんやろね。
──
なるほど。でもほんまああいうのってビビりますよね。モデルハウス見学しましたけど、一見、何も問題ないですもんね。僕ちょうど昨日サイ〇リヤでメシ喰いながら思ったんですけど…
(笑)
──
299円のドリア食べながらふと、これ何やねんって(笑)。
中身はほんまにドリアなんかと(笑)。
──
でも結構おいしいんですよ。

インタビュー

不動産屋が大工を選ぶ

自分らが始めた時にもね、最近の若いもんは…じゃないねんけど、変わりつつあったんです。当時は田舎に広い土地を持ってはって、地元の大工がそこに大家族が住む家を建てるっていう形やったんやけど、今は「工務店」という名称は別として、不動産屋さんが家を建てる。
──
あー。
土地も売るけど、建築条件付き。不動産屋さんが大工さんを雇うんやね。昔は自分の土地に家を建ててたから、不動産屋はいらんよね。
──
そっかそっか。
大工さんを先に選んで不動産屋さんを選ぶんじゃなくて、不動産屋さんを選んでから大工さんやから、お客さんが自分で大工さんを選ぶ権利がほとんどない。
──
そうかー。
そういう系統の不動産屋さんは家のことに詳しくないから、家づくりは今までと同じものを提案するか、クロスの種類を変えたりとかする程度で、じゃあ間取りを決めようかとなった時に、不動産屋さんとお客さんの二人で話してても、実際それが建築物として建つかどうかというのは分からへんのですよ。
──
実は注文住宅でちゃんと建てられる家ってめちゃくちゃ少ないんですよね。確か。
少ない。「なんとか工務店」っていう名前でも、実際は「なんとか不動産」から始まった工務店という場合もあるし。
──
そうなんや。
大工の方も逆に、そういう仕事に慣れてしまうと、自分たちが見積をすることを忘れてしまうんやね。毎日現場で言われた通りに働いてる方がラクやから。
──
あー、家の仕様もほとんど決められてるし。なんかそういうのって大手ショッピングモールが個人商店を潰しまくった構図と似てますね。
そうそう。
──
最初、不動産屋さんって土地の売買で儲けてるんかなって思ってたんですけど、実は建売を売るのが儲かるんですよね。土地は路線価で相場が決まってるからごまかせへんけど、上物はいくらでも利益乗せられるから。
そういうこと。それが建築条件付き土地というやつやね。「土地だけ売ってくれ」って言ったら「嫌です」と言われるか「じゃあ坪10万円ください」って言われたりする。
──
それ系の不動産屋さんが売ってるそういう土地って、がさっと買い占めて一斉に宅地開発するじゃないですか。僕はそういうのが嫌やったんですよ。宅地も家も金儲けの商品で、住む人の暮らしを考えてない気がして。
なんか、もっと楽しんで欲しいと思うね。土地探しにしろ、家づくりにしろ、材料選びにしろ。可能性は無制限にあるから。
──
ねぇ。今これ畑さん所有の古民家でインタビューしてるんですけど、ここには畑さんがつくったバーベキュー場とか、なんかよく分からない適当なお風呂とかがあって…
(笑)家一軒建てるとなったら大きなローン抱えるから、工事してる最中も決めなあかんこととか用意せなあかん書類とか色々あって、結構ストレスがあって、何千万の買い物をしてるのに全然楽しくないっていう。それはもったいないから。
──
せっかく家を買うんですからね。

インタビュー

シックハウスの研究

──
あの、「家は住めたらええわ」って人いるじゃないですか。僕、いっつも思うんですけど、いや、それやったら賃貸マンションでよくない??って。「住めたらええわ」な層って、どういう気持ちで家を購入してるんですかね。
うーん、まず「家が欲しい」というのが第一で、職場や学校が近いからとか、校外で車が二台停めれるとか、そういう「家」そのものとは関係のないところで家が売買されてるケースも多いやろね。
──
ほんまもったいないですよね。
今の家はビニールにくるまれた箱やっていう話をしたけど、僕がこっちに戻ってきた時に、後輩の子が家を建てたいっていう話があって、お金がないから建売を買ったわけやね。で、そこの子供がまだ小さかったんやけど、引っ越してきて家の中に入った時点で、その子が呼吸できなくなって救急車で運ばれた。
──
え、まじですか?
当時は名前がついてなかったけど、いわゆるシックハウス症候群。アレルギー反応が外に出るんじゃなくて、空気を吸った身体の中に出るから、腫れて呼吸がでけへんようになる。せやから後輩は新築をローンで買ったのに、子供が一度も中に入られへんかったんです。
──
えぐいなー。
ほんで相談に来た時に、僕がたまたますごい先生と知り合って。パハロカンパーナ自然住宅研究所の足立さんという方で、シックハウスの研究とかされてる方やねんけど、その人のアドバイスが、新築を手放して、そのお金で実家を改装してくださいと。
──
ああー。
それでその先生に教えてもらって、一緒に研究させてもらいながら今に至るんです。もう25年くらい経つけど。
──
へぇー。
たとえば当時は畳をい草じゃなくてコルクにしたり、断熱材にコルク入れてみたけど、材木やからいいってわけじゃなくて、漆なんか特にそうやねんけど、材木でもアレルギー反応出る人もいるし難しいんです。で、かわいそうなんは、子供の時にそういうきついものを一度吸ってしまうと、どんなものでも先に拒絶反応が出るようになってしまうんやね。
──
そうなんですか!
大人になるとマシになってくるねんけど、小さい時にひどい刺激を与えると、取りあえず入ってくるもんをいったん拒絶するから、全然関係ないもんでもアレルギー反応が出ちゃう。
──
そうなんやー。
その先生にはいろんな勉強をさせてもらったんやけど、たとえばアトピーの子供がいます、身体にいいって聞いたんで壁を全部珪藻土で塗りました、でも治りません、というので医者に行ったらお医者さんに「珪藻土がだめです」って言われたと。でも結局調べてみたら、珪藻土が悪いんじゃなくて、珪藻土についてるカビが悪かった。
──
へぇー。
材料ってちゃんと選ばないと、漆喰が合わない人もいるし。奥が深いですよね。
──
すごいなー。
職人さんってそういう一人のお客さんに出会って、何か症状が良くなったりすると、ものすごく嬉しいんですね。お医者さんにも治されへんかったのに、自分らが工夫したらその家に住めるようになったって。
──
そうでしょうね。

インタビュー

介護保険の矛盾

僕、介護保険の仕事もやってたりしたんですよ。介護保険が始まる前から団体を作っていろんな人とやってて。
──
え、そうなんですか。
介護保険制度が始まりますよっていうんで、パナソニックエイジフリー、当時は松下電工エイジフリーでしたけど、そこと提携してそのグループから何人か引き抜かれて、一緒に介護保険の住宅改修しませんかっていうところからはじめて。
──
へぇー。
でもやればやるほど、矛盾が出てくる。たとえば、足の弱い方が、誰にもお世話にならずに自分で立ってトイレに行けるっていうのは、ものすごく嬉しいことなんですよ。そのために手すりを一本つけてあげたい。そういうことをやるのに、みんなで考えてやってる時は良かったんやけど、それがビジネスになると、その手すりをつけるのに、まず現場の人間が行きます、ショップの人間も2人行きます、その上の本部の設計の人間も行きます、よそからケアマネさんも来ます、そんな感じで、手すり一本つけるのに5人ですよ。
──
(笑)
介護保険で補助金出るからいいんやけど、3,000円の手すりつけるのに、5万円くらいになるんですよ。申請出して図面描いてってやると。実際、介護の現場が求めることと、自分がやってることの矛盾が出てくる。実際この人が何をしたら喜ぶかっていうと、保険を使わへん方が…
──
なるほど(笑)。
だからやっぱり、お客さんが求めてるものを与えられるのは、制度じゃなくて、ほんまもんの素材を使った家やなって。介護もビジネスにせんとあかんねんけど、まっすぐやればやるほど矛盾が出てくる。
──
そうかー。
今日も現場に行ったら、基礎屋さんの年寄りの親方が木の型枠で基礎してはるんですよね。
──
ほー。
今やったら鉄の型枠が当たり前やけど、その人は木の型枠が大好きで、「わし、こっちで仕事できる時だけ息子に言うて現場に出させてもろてんねん」って。
──
(笑)
鉄で組むのは面白くないと。昔からの型枠について教えてもろたんやけど、ねずみ色の型枠は油が塗ってて塗料を二度塗りしたやつで、黄色のコンパネの型枠は使ったらすぐ駄目になるとか色々あって。
──
型枠ひとつでも色々あるんですね。
現代に求められる効率化やビジネスとは反対の、奥が深い手仕事です。

インタビュー

一階の雨漏りの話

──
なんか日本の建築現場って息苦しいというか、あんまりみんな楽しんでないように思うんです。僕はもっと楽しんでゆるーくやればいいのになって思うんですけど。
そうそう。
──
前にyoutubeでチェンソーの使い方を勉強してて、その流れで「木を切り倒したらミスって自分の家の方に倒れてきて家が壊れる事故集」みたいなのを見てたんですけど(笑)、海外の人って、自分の家が壊れた瞬間に爆笑したりするんですよ。
(笑)
──
僕びっくりして。もう全然感覚が違う。あれって自分で木を倒すような人らやから笑えるんかなって思うんですけど。
うんうん。
──
日本の人らって、家って超高級品みたいな感じじゃないですか。だからもし日本で同じことが起きたら、家主は泡吹いて倒れると思うんです。
もう人生終わったみたいな。
──
そうそう(笑)。でも僕はそういう感覚があんまりなくて、たとえば地震で潰れる時は潰れるし、そういうもんやろと。離れにしろ母屋にしろ、潰れたら潰れたで、でっかい空き地ができるから、そこでまた何かできるかなとか思うんです。
そうやね。日本人はそういう感覚がないね。遊ぶ心というか。
──
もう絶対に失敗したくない、1円も損をしたくないという感じですよね。
何かあるねそれ。失敗すると誰かが責任を取らなあかんようなシステムになっちゃってるんかな。施工業者なんか、設計者なんか分からんけど。
──
失敗したり、どこかが壊れた時に、誰かに責任を取らせるより、ああもうめんどくさいな、自分でやろか、の方が楽しく住めると思うんです。
さっきの化学物質過敏症の子の家でも、二世帯住宅にリフォームしたんやけど、一階に住んでる親御さんが「雨が漏れる」と。でもどう考えても部屋の真ん中で雨が漏れるはずがない。それで調べてみたら、二階に住んでる孫がおしっこしたんやね。板張りやから、その隙間から漏れてきたんや。
──
へぇー。
それが分かって親御さんは笑ってはったんやけど、でも隙間から何かが漏れたとか入ってきたとかクレームになったらかなわんから、今の職人さんは無垢材は使いたがらない。でこぼこするとか、棘が刺さったとか。
──
あー。
メーカーもんを使っとったら、何かあった時にメーカーの責任にできるから。メーカーにクレームがいくんですよ。
──
あー、そっか。そうですよね。なるほど。
板のこと、木のことを知ってるお客さんやったらええけど。
──
うちも工務店からの説明とか念押しがすごかったですもん。もうええっちゅうねん! て思うくらい無垢材の説明されましたね。「ここにこう貼るとこうなるぞ」「夏はこうで、冬はこうなる、それでもええんか」って。いやだから、もうええって!って(笑)。
そうそう。無垢も説明するんやけど、いざという時にどこまで説明したのかっていうところまで突かれてしまうと、それ以上言いようがないんよね。「隙間が開きますよって言われてたけど、こんなに開くとは思わんかった」て言われたらもうどうしようもないから。
──
うち、キッチンの床板が鳴るんですけど、大工が遊びに来るたび文句言ってますよ(笑)。
(笑)スギとヒノキやったらスギの方が柔らかいから、分厚いスギを張ると歩いた時に温かみを感じるんやけど、その代わりものを落としたら傷が付くし、醤油こぼしたらシミになるし。
──
やっぱそういうのって、僕ら施主の方に経験がないのも大きな原因ですよね。スギとヒノキの違いくらい誰でも知ってるっていう世界だったらうまくいくんでしょうね。

インタビュー

図面に無い仕事

たとえばこういう家のように100年経つと色が違おうが傷がつこうが気にもならへんねんけど、そういうのを味だと思ってくれればいいんやけどね。
──
僕も時々、床の傷とか汚れはどうしてますかって聞かれるんですけど、こういう100年ものの柱がある空間に毎日住んでるから、「傷」っていう概念がよく分からなくなってて…(笑)
(笑)自然素材は、全部を図面に落とし込めないんよね。昔は棟梁が図面を板に描いて、いろはにほへとって付けて感覚で家を建ててくれたんやけど、それを今は確認申請もちゃんとおろさんとあかんし、それ以上に、お客さんに説明するために細かい仕様書や何やらを作って渡して後からクレームが出ないようにする。でもそうする一方で、実際は図面にも仕事の内容が書き切れない。
──
と言うと?
こっちは真鍮釘で留めてる、あっちは留めてない、そういうレベルの違いは表現できない。そんなことをいちいち書くわけにもいかんから。
──
あ、そうなんですか。
公共工事でも今は小さい公共工事は国産の材木を使いましょうって決まってきてるから、京都府内はトイレとか作るのも木造が多いんです。でもそれを管理してる役所の監督さんとかは木造の図面は見られへんから、じゃあこの桁をどうやって留めますかってなった時に、仕様書にも図面にも書いてないんですよ。図面に釘が書いてないから釘留めじゃないですと。じゃあ木工用ボンドで留めるか、フィニッシュ(極細の釘)で留めてくださいってなるわけや。
──
ほんまですか。
大工さんはそこはボンドじゃだめですよ、釘で留めないと、っていうんやけど、役所は木造の経験がないし、書類上でしか判断しないから。
──
あー。
結局何をやってもクレームにならないんですよね。図面に無いから。逆に釘を打ったら「何を勝手に釘打っとんねん」て言われる。
──
なんかそもそも自然素材を使ったものを工業化する時点で、大きな間違いを犯してますよね。
自然素材をちゃんと扱おうと思ったらマニュアル通りにはいかなくて、そこに創意工夫が生まれて、それがさっき話してた「家の個性」というものにつながっていくんやね。
──
なるほどなあ。

インタビュー

自然の気持ちよさ

──
今のお仕事のメインは、新築とリフォームなんですよね。
そう。特に古民家をやる時は楽しいんですよね。いろんな人と関わり合いが持てたり。自分の知らんことを知ってる人らと話するのが面白いし。まだまだ勉強することがいっぱいあるし。今までしたことのないことをやりたいなって思ってて、こないだもドローンの講習会行ってきて。
──
ドローン!
ワクワクしたいんです。知らんことを覚えるのは楽しい。
──
僕もそういうタイプなんですけど、古民家っていうのは、相手が自然物じゃないですか。だから結構、無限に…
そう。無限。
──
古民家は人の手が作ったものですけど、ベースとなる素材は人の手が作ったものじゃないから。自然が相手だといくらでも楽しめますよね。
そういうことで言うと、今年はじめて数人でキャンプしたんやけど、そのうちの一人がもうプロみたいな人で、自分でナイフも作って燻製とかパスタのジェノベーゼとか色々作ってくれたんやけど、たいしたもん喰ってへんのにめちゃくちゃ美味く感じて。
──
(笑)
真っ暗なとこでランタンつけてみんなで火を燃やしながら喰ったら「うまいな~!」って。
──
あれ何なんですかね? 僕もそれすごい分かるんですけど。
家族連れが使うキャンプ場みたいなのもあるねんけど、その一角が一人キャンパーのゾーンで、ジムニーとかワンボックスとか停めてみんな一人でキャンプしてはって。ああいうのってお互い喋りかけたりもしないんよね。一人で何を考えてるんか、ああいう世界は俺にはまだ分からんけど。
──
たぶんあれって登山と一緒ですよ。僕の友達で山登りするやつがいて、冬山とか行くやつなんですけど、なんでそんなことわざわざすんねんと。家でコタツでみかん喰っとけと。
(笑)
──
何してんの?って思うんですけど、「景色とかきれいなん?」て聞いたりするんですけど、たぶんそうじゃない。本人は「すごい景色が綺麗やった」とか言うんですけど、景色が綺麗っていうだけであんなところに行かへん。何か他のもんがあるんです。
そこに山があるから…(笑)
──
いや、ほんまに。あれが究極の自然体験ですよね。その同じベクトルに自然素材の家があって、「自然素材の気持ちよさ」って安っぽいキャッチコピーみたいですけど、実際ほんまに気持ちよくて、そういう感覚が登山にしろキャンプにしろ、どこかでつながってるように思います。
なんか歳いってきたんか知らんけど、そういうのを強く感じるようになったね。昔はそんなこと感じてなかったけど、よく考えてみればそもそもたくさん自然と触れ合ってたね。川入って魚つかまえて、そのまま川から上がって山にクワガタを探しに行ったり。
──
はいはいはい。
今はもうそんなことでけへんやろけど。

インタビュー

木を舐める

──
僕の世代がそういうことをできたギリギリ最後の世代かも。僕も山に入って川で泳いで池でザリガニ釣ってましたから。でも今の子供たちってそういう体験の量が圧倒的に少ないから、なかなかキツいなと。
そうなんよ。川に入ったらダメやし、公園でボール遊びもダメやし。ゲームしてても怒られるし(笑)。
──
なんか手の平とか足の裏とかの触感も絶対退化してますよね。いろんな自然に触れてないから。
うちの親父のレベルになると、分からん木があったら、取りあえず触って、切って、匂いをかいで、舐めて、ねぶるんです。
──
えー! すごいなそれは。
昔っからの職人さんはそうやって調べる。昔は外材も入ってきてなかったから、地松を嗅いで舐めたりしてると、ベイマツが入ってきた時も、同じ系統の匂いやったり味がしたりするんやね。
──
(笑)すごいですね。
「これは松系やな」と。
──
(笑)
木の呼び方なんて材木屋さんとか輸入業者がなんぼでも名前を変えるから、回転寿司と一緒で。だから名前は知らんねんけど、〇〇系やということで覚えてる。
──
めっちゃおもろいですね。
まあ今はそういうことをしなくなったけど、でも住教育とか時代の流れで、そういう方向に戻ってきてる気はするね。保育園・幼稚園で自然体験を重視するところが増えてきたり。
──
そうですね。でも実際どうですか、工事としては、新築が多いですか。
いや、新築よりリフォームが多いよ。その中で古民家リノベーションも出てきてる。でも新しくそこに住みたいという人はまだ少ないかな。こないだ相談来はったんは、都市部に住んでるけど亀岡に古民家を買って引っ越したい、自然のあるところで子供を育てたいと。
──
僕なんかモロそれにカテゴライズされますよね(笑)。
(笑)色々幅もあるけど、別に家庭菜園まではしたくないけど、そういう環境で育てたいっていう。
──
そうそう。僕もガチ田舎暮らしではないですから。そういう考えの人たちも多いんじゃないかと思うんです。
建売の分譲地やと、規格があるからそこに住んでたら安全やし、住み方もみんな一緒やけど、古民家を買って地域に引っ越してきた時の予測はつかへんよね。
──
そうですね。
そこで躊躇するというか、やっぱりみんなが住んではるところで、みんなと同じような家に住んでたら一番安全やっていう考えが、まだまだ多いんやろうね。
──
僕なんか逆に、人生かけたローンでそんな保守的な選択はしたくないですけどね。
でも、そろそろ広まってきそうな気がする。
──
僕もそういう気はしますよ。
まあ、僕らが生きているうちに…
──
いや、もっと急ぎましょうよ!(笑)
(笑)

おわり

施工例







京都第一支部プロモーション映像

一般社団法人全国古民家再生協会京都第一支部
http://kominka-kyotochuo.org/

株式会社 畑工務店

※直接お問い合わせの際は「クロニカを見た」とお伝え頂くと
何かしら良いことがある気がします。

代表者名 畑 哲也
創業年月 1978年3月
法人登録 2017年6月
住所 〒621-0832 京都府亀岡市東つつじヶ丘都台3丁目6-6-3
TEL. 0771-22-5987
FAX. 0771-22-5058
公式サイト https://hatakoumuten.com

株式会社 畑工務店 /
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