古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

まさき工務店

全国古民家再生協会兵庫第二支部・支部長 正置 久

対応エリア兵庫県全域

兵庫第二支部の対応エリア兵庫県全域

古民家をちゃんと守っていきたい。

古民家アイコン

淡路島の北淡エリア、まさき工務店の事務所は日本の原風景のような景色の中にあります。1995年の阪神淡路大震災を乗り越え、どんどん変わっていった淡路島に対し、そこに大工として生き続ける正置さんにある思いが芽生えます。

インタビュー

阪神淡路大震災の体験談

──
正置さん、僕のいっこ上なんですよね。
正置
うん。
──
ずっと淡路なんですよね。
正置
ずっと淡路。
──
じゃあ阪神淡路大震災の時、19ですか。僕は18で、ちょうど大学受験の直前やったんです。受ける大学が西宮の方で、ぎりぎり試験の1日前に電車が復旧したんですよ。
正置
へぇー。
──
でももう駅前とか、ビルが傾いたまんまで、その下を歩いて行きましたね。
正置
わいはそん時は、千船におった。阪神沿線の。専門学校に通ってて。
──
あ、こっちに渡ってたんですね。でもまあ揺れたでしょ。
正置
揺れた揺れた。新築のマンションに住んどったんやけど、揺れた時に窓が全部開いて、そこから見える高速道路の明かりが火花散らしながら全部消えていった。
──
まじで?
正置
家の中の温水器が動いて、配管が切れて水浸しになって。
──
新築のマンションでそのレベルやったんですね。僕は南大阪なんで、そこまでじゃなかったんですけど。実家はどうやったんですか。
正置
実家は北淡ICの付近にあって、まあそれでも半壊やったかな。古民家やけど。
──
そっかー。いや僕、ブログとかで書いたんですけど、淡路でも車で走ってたら古民家いっぱい残ってるんですよ。震度7の直下食らって、なんでこんな残ってんねんという。安全です、なんて言えないけど、今回の能登半島地震もそうですけど、古民家は危険だっていう論調はやっぱりちょっと違うんじゃないかと。
正置
それなあ。僕も思いよったんは、大学の教授とかが古民家はあかん、て言うたりしてるけど、実際見たら、やっぱり手を入れてあげれば残るもんやと思ってるから。
──
なるほど。
正置
この今住んでる古民家も、その時は軒の柱が石から落ちたけど、軒を受けてる材が奥の方まで伸びてるから、落ちへんかった。家全体も歪んだけど、戻る力がある。
──
そうなんよね。

古民家

正置
あとやっぱり、瓦が落ちたから助かった。そういうことも常日頃から思とる。今やったらほとんど釘打ちやから、瓦が落ちない。それもどうなんかなって。
──
そこむずいんですよ。うちは土を下ろして、軽くして、その代わりに釘打ちしました。そのおかげで2018年の台風でも一枚も飛ばんかったし。
正置
どっちを取るかなんよなー。
──
そうなんですよ。でもまあ、古民家はいずれにせよ、ちゃんとメンテしていればそこまで危ないもんじゃないよって言いたいんですよね。こないだ石川県の東さんにインタビューしたんですけど、やっぱり主に倒壊してるのは古民家というよりも古家、戦後建てられた在来工法の和風の家を「古民家」って言ってるんじゃないのかって話になって。
正置
ああー。昭和の、40~50年前くらいの家やね。
──
一方、直撃食らってもまだこの古民家に住めてるっていうのが。
正置
瓦もそうやし、足下を固めてないのが良かったんかな、とも思う。

インタビュー

被災後の変化

──
そん時、現場見てどうでした? 被災して、実家に帰ってきた時。
正置
まあ若かったからねえ。当時は建築の専門学校行ってたけど、親が工務店してて、僕は絶対こんなんしたない、設計の方に行きたいって思って、学校に行ってたから……
──
あ、そうなんや。
正置
学生時分から「お前描いてみぃ」って言われてうちの近くの家も図面描いて、設計士がしたいなって思ってたんやけど、僕が戻れたんが半年後くらいかな。
──
まじかー。
正置
船着き場がもう、結構な被害で。そんでまあ、復興し始めてからの就職というタイミングで、親もやっぱり仕事を手伝ってほしいから、頼まれて。まあしゃあないか、という。
──
じゃあもう、震災っていうのがターニングポイントに。
正置
人生にすごい影響したんやと思う。
──
震災がなかったらそのまま設計士になって、神戸で働いてるかも知れませんよね。
正置
うん。
──
専門学校を出てすぐに手伝いに入ったんですか。
正置
そう。建ててる最中のものもあったから、まずはその傾きを起こすとか、そんなところから……
──
えぐいなー。あの時はみんな同時に家が無くなったわけやから、工務店とかどうなってたんかなって。大阪も6年前の台風で屋根屋がパンクして、電話線抜いたって言ってましたよ。
正置
そうなるわな(笑)。でもそれから、震災が淡路島をすごい変えたなって思うねん。それから4,5年くらいは手刻みしとったけど、震災が起きた地域って都市計画が入ってくるから……
──
あー! そっかー。
正置
そないなったら、一気にそっからハウスメーカーが入ってきて。それで初めて「プレカット」というのを見たんよ。
──
はあー。
正置
その時ってすごい画期的なことが始まった!って思ったんよ。
──
へぇーっ。またその時って、戦後と同じで、とにかく早く安く建てろっていう状況やったから……
正置
そうそう。
──
なるほどなー。
正置
だからうちの親父の代やったら、ちょっと待ってくれ、って言って待ってもらってたのが、プレカットが入ってきてからはそんなん言うたら「じゃあよそで建てます」みたいな世界。
──
えげつないなー。まあでもそれは悪いことじゃなくて、しゃあないよね、状況的に。それで一度入ってきた便利なものは……
正置
根付くんよね。
──
根付くよなー。
正置
そっからもう、小さい工務店とか大工は営業がでけへんから、軒並み無くなっていったんちゃうかな。

インタビュー

淡路島の空き家問題

──
すごい話やなー。それで風景が変わったと。それでこうして離れたところはポツポツと古民家が残ってるって感じですか。
正置
うん。古民家再生協会に入ってからは、やっぱり古民家が目に付くようになって、そう思ったら結構残ってるなって思ってるんやけど。
──
はいはい。
正置
そしてそれが空き家やったら、どうしたらええかなって思うし。たとえば倒壊した家屋があって、それがお寺の参道にかかってて、去年、お寺の人からうちに相談があって。
──
はい。
正置
それが11月くらいまで斜めになりながら建っとったんやけど、その下旬に、ふとした瞬間に全部倒れたんよ。市も注意喚起はしとったんやけど。
──
へぇーっ。
正置
そんなこともあるから、やっぱり空き家、古民家はちゃんと管理して、守っていかんとあかんのよ。
──
うちの近所も、子供らの通学路にある、思いっきり傾いててやばいなーって思ってた家が、やっと行政から指導が入ったのか、更地になってました。
正置
へぇー。
──
たぶんプレカットばっかり作ってる最中って、古民家とか目に入らんすよね。
正置
うん。なんでやろな。
──
意識してないんですよね。うちの集落も古民家なんか誰も意識してないし。でも一度気付くと、僕なんか車で道走ってても古民家探しますもんね。
正置
ああ(笑)。でも今、淡路島の値打ちのありそうな古民家は、逆にすっごい値段が吊り上がってる。
──
あーそうなんや。上がってるんかー。
正置
そこをどうしたらええんか……正規の値段はどこやねんって葛藤する。
──
さっきのメーカーもそうやけど、外から来た連中っていうのが余計なことをしますよね。ここ来るまでもなんかスタイリッシュで高そうな飲食店とか見かけたけど、あれ絶対に地元の人間じゃないっていう(笑)。
正置
そうそう。
──
淡路ブランドというか。
正置
だから普通に古民家に住みたい人らが買える値段じゃないんよ。
──
そうやなー。
正置
それで最終的には企業が買うとか。あと今は西海岸は栄えてるけど、あの人らは古民家を買って、潰して、そこに新しい店舗を建てる。
──
そっかー。
正置
だから栄えるのはええことやねんけど、どううまくバランスを取ってやっていくんかっていうのが難しい。
──
ちなみになんぼくらいなんですか。
正置
今年の頭に空き家バンクに出してる方が住教育セミナーに来てくれて、空き家バンクじゃ売れないから活用してくださいって来られた時の、空き家バンクに出してた価格が、1,700万円。明治元年の建物やねんけど、その価格を誰が決めたのかというと不動産屋。
──
あー。
正置
そこはトイレも無いし、高くて売れない。で、売れなかったらどうするのかというと、解体すると。でも細い路地の中にあるような古民家やから、解体費を見積もったら2,000万円。売れなかったら更地にしてコンクリを打とうと考えてるらしい。そやから3,000万円くらいいるねんな。
──
はー。
正置
そこまで考えてるんやったら、活用の道を探してあげたいなあって思うんよ。本人らも誰かに活用して欲しい、というのはあるんやけど、値付けが高くて売れない。
──
まあ、難しいところですよね。安すぎるのも僕は残らないと思ってて。
正置
うん。
──
でも不当に高いのもあかんのですよ。日本は南大阪の古民家、不便なところやったらタダ同然なんですけど、それもよくないなあと。
正置
あと淡路の人間的には、もしその家を売ったら、「あの人売ったんや」っていうウワサが立つから、簡単に安く手放したくないっていうのも、すごいあると思う。
──
なるほどなー。それは大阪でもあるっすよ。どこでもあるんちゃうかな。
正置
ああ、そうなんや。
──
なんかそういうのって、僕らの代になったら消える気もするんやけど。
正置
わいは全然そういうの無い。
──
無いでしょ。でもやっぱ僕らの親世代までは強烈にあるんやろなあ。
正置
僕は結局親と分かれて仕事して、嫁さんのところに拾ってもらって、こんな立派な古民家で住んでるから、この家は絶対守ってやりたいって思ってるけど。
──
うちはしょうもない実家で、適当に開発された土地に、ぽっと出の家が何棟か建ったうちの一つやから、思い入れはないんですよ。でもそうじゃない人たちの気持ちは分かるなあ。
正置
うーん。
──
僕は言い方やと思ってるんですけどね。「売り物件!」みたいな幟が立ってると、売って金つくって逃げるみたいな(笑)。
正置
そうそう(笑)。僕も言い方やと思う。
──
だから住み継いでもらうとか。譲り受けるとか。そういう言葉を使った方がいいんですよ。
正置
僕も言葉には気をつけながらやらんとあかんよね。

インタビュー

古い家のリフォームができない大工が増えている

──
今回、再生協会の支部を立ち上げられて、どうですか。
正置
僕なんか、近畿圏で一番最後に支部をつくったんやけど、周りには素晴らしい人たちがいて、支部としても完成されてるから、やっぱりそこまでは行きたいって思う。
──
いいですよね、周りとつながって情報を共有できるし。
正置
そやな。特に昔の人やったら、同じ業界で繋がるなんて無いし、褒めるとかも無いと思う。
──
ああ、そっか。
正置
僕らの世代くらいからかな、すごい人はすごいと褒めるっていうのは。
──
確かにギリ僕らくらいからかも。
正置
自分が大工になった時、材木屋に行ったら、今会員になってくれてる上林くんとかとも会ってたんやけど、親同士が一切喋れへん。
──
へぇーっ!
正置
そやから僕らも、その時は全然会話がないねん。
──
バチバチなんや(笑)。
正置
そうそう。だから親世代からしたら、今僕らがこうして協会で付き合ってるのを見たら、どうなってそんな風になったんや、って思ってると思う。
──
そっかー。正置さんの支部って、会員さん同士の絆がすごい感じられるんやけど、親世代から見たらそうなるんかー。
正置
そんな感じやろうな。
──
僕もいっつも思うねんけど、飲食店がマルシェとかよくやってるでしょ。あれ商圏かぶってるのにどんな気持ちでやってるんやろって思ってたけど、でもそういうことか。じゃあ僕の感覚はむしろ親世代……
正置
僕らは古民家っていう一つの中心になるものがあるから。でも古民家の活用、たとえば民泊とか、そういうのがいつまで続くんかなって。大原くんはどう思うん。
──
それは続くと思う。で、続かなくなる時が来るとすれば、古民家が無くなった時。
正置
あー。
──
ほんまに山奥にぽつんと一軒しかないとか、数が減ったらそうなるけど、僕は古民家の価値っていうのは今後上がり続けると思う。なぜかというと、戦後から今までに建てられた新建材の他の家の価値がどんどん落ちていくから。
正置
なるほど。
──
今から空き家が増えまくると、僕らの子供なんかもう新築で家建てないでしょ。お金もないやろうし。それで中古物件を探そうかってなった時に、家がみすぼらしいんです。でも古民家だけはずっと変わらん。だから続く。
正置
そうかー。
──
あとは職人がおらんようになったらアウトですよね。
正置
そうやな。協会の皆さん、職人の育成にも力入れてるもんね。
──
そうそう。
正置
自分は今も刻みよるけど、昔ながらの方法で刻んでるから、もちろん角材になっとるんやけど、墨打ってやってるから、いろんな人に見て欲しいって思ってるねんなあ。
──
正置さんが手刻みの大工だっていうことを知ってもらわないと。
正置
今、設計士になりたいっていう女の子がおって、その子が僕の現場におったんやけど、柱を一本抜く時に柱の型を取ったら「すごい!」ってなって。いやもっと手刻みですごいことしてるやつがおるから、見てきたらどうですかって。
──
あ、じゃあ上林さんのところとかに行ったんですか。
正置
そうそう。二回くらい行ったんかな。
──
そっかー。基本的に、周りに職人がおらんもんね。淡路って、さっきの話やと工務店がどんどん無くなっていったってことやけど、職人は残ってるんですか。
正置
んー、まあ、残ってるのは残ってるけど、少ないんちゃうかなあ。
──
あー。
正置
みんなよう言うんは、新築はできても古い家のリフォームができやん大工が多くなってきてる。
──
なるほど。
正置
僕らからしたら嘘やろって思うねんけど、そういう人たちが多い。しかも自分らと同じ年代やったりするんよ。
──
あー、そうなんや。そこはやっぱり、親方がやってるかどうか、ちょうど僕らの年代の親方くらいからプレカットが流行ったから、その時点でプレカットに乗り換えてたら、もう学べる機会がなかったんですよね。
正置
それプラス震災があったから、新築は多かったはずやけど、あの時に時間かけて家をつくるっていうのは……
──
選択肢として無いっすよねえ。そう思ったら、淡路島で手刻みできる大工である正置さんとか上林さんとかって、ほんと貴重な存在ですよ。
正置
わいら自分ではそうは思わんから恥ずかしくて……
──
ほら、いい職人さんってみんなそう言うんですよ(笑)。
正置
昨日もちょうど、わいは自分が木に書きよる数字も汚いなあって思ってて、僕から見たら上林の字はきれいやなあって思うねんって言ったら、上林が、自分も正置さんの字がきれいで、自分の字はきったないなあって思ってます、って(笑)。
──
(笑)いやでもほんまあれっすよね、手刻みできる大工って自分が手刻みできるのが当たり前やと思ってるし、もっとすごい職人を知ってるから、自慢しないんですよね。
正置
それはそうやね。
──
でも手刻みできない大工からしたら、すっごい技術なんだということを、ちゃんと言っていかないといけない。
正置
恥ずかしい(笑)。上林のことやったら言える(笑)。
──
(笑)

インタビュー

地震と台風と古民家

正置
あれだけしよるやつはなかなかおらんのちゃうかなあ。しかも屋根も入母屋やし。
──
あ、こっちも入母屋なんですね。大阪って全部入母屋なんかな? 兵庫は?
正置
入母屋ちゃうかなあ。あとはてらすかてらさんか。
──
てらす?
正置
こう、隅を反らせるというか。上げる。
──
うち、上がってないす。
正置
あっ、そう。へぇーっ。
──
そんで、屋根自体は丸くむくってるんですよ。でも和歌山は台風対策で反ってるんですよね。淡路は?
正置
むくってる。北淡はそう習ってきたけど、南ではちゃうんかも分からん。
──
あ、北淡は台風があんまり直撃せえへんのか。
正置
2018年の台風の時も、紀伊水道を上がってきたけど、こっちはそれほどの被害じゃなかったんちゃうかな。地元で消防団にも入ってるけど、その時は出動せえへんかった。
──
まじで? 全然違うな。うちは電柱20本くらい倒れて全国報道されたっすよ。
正置
まあ、風も怖いけど、僕は「地盤」にも注目して欲しいねんなあ。
──
ああ、それは時々言う人いますわ。
正置
メーカーだろうが何だろうが、それが淡路島と和歌山で同じ建て方しても、地面、地盤の違いで、絶対に違うはずやから。
──
地盤って大事ですよね。
正置
土掘って、杭打って、ほんまにそれだけでいけるんかって。
──
僕はいつも思うのは、古民家、集落がある地域って、何百年もかけて「ここ安全やな」って分かったところにつくられてると思うんですよ。
正置
うんうん。
──
だから古民家って地盤に関しては安心できるなって。一方で、その辺の山を削って無理な造成してる住宅地は怖いなって思うし。築100年なら100年耐えてきてるというのは、家自体の強さもあるけど、地盤もいいんやろうなって。
正置
そうやね。その土地の風土にも合うとるはずやし。
──
そう思ったら古民家って、数百年の技術の「答え」なんですよね。
正置
そもそもこんなに重たい屋根瓦を載せて、こんな空間を作れるだけでもほんまにすごいって思う。
──
そっか。壁ないもんね。確かに。
正置
そうそう。

インタビュー

──
この部屋、ぱっと見で古民家って感じしないっすよね。新築っぽい。
正置
いろいろ触ってるから。
──
半壊やったら、天井張り替えで、建具も新しくしたんですかね。
正置
柱と鴨居はそのまんま。骨組み以外は変えてるけど、構造的には一緒やな。この上が土天井のままやから。
──
いやでも、ええっすよね、こんな二間続いてる和室って。空間的にめっちゃいい。
正置
時代がまた巡ってきて、こういうのが流行ったりするのかもしれん。
──
みんな「落ち着く」って言いますよね。
正置
うん。あとは何やろ、土壁がどこまで復活するかかなあ。竹、貫を入れるってことが揺れにもええし。筋交いが無くてもいけるのは貫があるから。
──
やっぱ貫なんですか。
正置
そう。でも今やったら和室作りますって言ったら、石膏ボードやもんね。
──
うちもボードっすわ。
正置
日本ってそういう素材使ってるのにエコとか言うて、おかしいよね。建てるのはエコかも知らんけど、壊した時にそういうのがゴミとしてごっつい出てくる。
──
はいはいはい。
正置
土壁やったら水とか足せばまた使えるし。最初の頃は家づくりも面白かったんやろうなあ。棟上げするのに二、三ヶ月かけて、建ってからまた一年ほったらかして(笑)。
──
そういうのよく聞きますよね、土乾かすのに一年待ったとか(笑)。
正置
すっごい時代やったよね(笑)。うちも実家が震災で解体して、それから新築で建てたんやけど、やっぱり土壁にしたんよ。手刻みして、棟上げして。
──
おー。
正置
でも自分の家やから仕事優先で後回し後回しになって、やりかけで一年くらいほっといてたら、台風が来て土壁が全部落ちた(笑)。
──
ひどい(笑)。
正置
まあそれも土壁の土が落ちただけやから、もっかい塗ろかと(笑)。
──
僕の叔父さんのお店、台風で屋根が全部飛んで、そこに土砂降りで雨が降って、もうえらいことになったんですよ。壁、つまりボードもアウト、中の断熱材もアウト、基礎からは水が抜けへん、みたいな。
正置
今の家はそうやんな。
──
そんでどえらいお金がかかったって言ってたけど、それ古民家やったら、乾かしたらいける(笑)。
正置
いけるなあ。だから古民家は、災害に強いし、夏は快適やし、冬だけ工夫してやったら。
──
ここめっちゃぬくいっすよね。なんでやろ。
正置
そこストーブ当たってるからちゃうん。
──
いや、うちこんな設定温度20℃とかにならんっすよ(笑)。
正置
そんなん寒いやん(笑)。
──
建具を新調して隙間がない、サッシも入れてるからかな。さすが引き起こしただけありますね。全然歪んでない。
正置
うん。元々はだいぶコケてたんちゃうかな。
──
まあでも、直りますからね。すごいですよね。半壊って言われてたのに。
正置
うん。建具も削ったら直るし。住みながら直していけるし。

インタビュー

古民家をちゃんと残していく

──
今、工務店的にはどんな仕事してるんですか?
正置
今は一軒、築50年くらいの家のリフォームと、もう一軒は古民家で、民泊。
──
へぇー。
正置
そこは解体された後でうちが入ったから、足りてない梁とか、手刻みで全部足して。
──
まじか! すげー。柱も継いだり?
正置
そうそう。その時に、ようこんな分からんまま適当に解体したなと。
──
ああー。
正置
そういうのも怖いなと。
──
解体屋も知りませんもんね。で、解体屋が知らんということを、みんな知らんと思う。
正置
そうやんな。貫も切り落としてしまったり。
──
それって大工でも同じで、古民家を知らん大工は同じようなことをやるんですよね。
正置
ほんまそう。耐震とかも、もっとしっかり考えるように言うたらんとあかんし。
──
まあそんな感じで、古民家の仕事をしつつ、新築とか普通のリフォームもするって感じですか。
正置
そうやね。
──
でもお施主さんって、古民家と普通の家の区別、ついてないんじゃないですか?
正置
あー、絶対ついてない。わいがこうして喋ってるから、わいの周りは分かってくれてるけど。だからうちは、古民家に特化する工務店になってもいいんかなって思う。
──
そうそう。アリですよ。
正置
その方が、ちゃんと古民家を救えるんかなと思う。ちゃんと残していけるから。
──
そっすよ。
正置
わいはこの家、築80年って、人間で言うたらまだ24、25歳くらいやと思っとるけど……
──
そんな感覚は誰も持ってない(笑)。
正置
いや、持ってないから、それを教えてあげやんと。だってそんな若い子らを自分らで潰しよるんやで。
──
なるほどなー。
正置
直すにしても、その子の寿命を縮める直し方をしよるから。だから自分が古民家に特化して、ちゃんとしたらんと、地域に古民家は残っていかんなと。
──
そうっすねえ。
正置
あと自分がこの協会に興味を持ったんは、自立した「循環型建築社会」っていう考え方。それはすごい素晴らしいと思った。
──
そっかそっか。
正置
やっぱり使えるもんを使う、残せるもんを残す。自分らの世代だけじゃなくて、次の新しい担い手に、自分が建てた家でも、親が建てた家でも、その人らが頑張って建ててくれた家を、自分でも誰かでも守っていってあげたいなって思う。
──
いやー、最後にええ言葉を頂きました。ここで止めときましょ(笑)。
正置
(笑)

おわり

施工例







まさき工務店

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何かしら良いことがある気がします。

代表 正置 久
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