古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

中原工務店

全国古民家再生協会大阪第二支部・支部長 中原 啓尊

対応エリア大和川以南

大阪第二支部の対応エリア大阪全域

手刻みの仕事がしたい。

古民家アイコン

大阪府岸和田市、中原工務店の中原さんは地域に根ざす大工さん。今では希少になってしまった手刻みの仕事を求めて親方の元を離れ、23歳で独立されました。今や再生協会の支部長として、古民家を守り、地域を良くする活動に日夜奔走する日々です。そんな中原さんに、大工の話、地域の話、子供の話など色々お伺いしました。

インタビュー

大学進学をやめて大工の道に

──
中原さんは南大阪を担当する第二支部の支部長さんということで、以前から何かとお世話になっているんですが、今回満を持してのご登場ですね。
中原
はい。本日はよろしくお願いします。
──
まずですね、最初に確認しておかないといけないのは、中原さんのその両サイドの刈り上げが…
中原
(笑)
──
将来的に生えてくるのか、というところですね。
中原
(爆笑)
──
読者の方はそこを一番気にするのではと思うんですが。
中原
一週間経てば生えてきます(笑)。
──
あ、近々に(笑)。
中原
今日刈り上げたところなんで。
──
なるほど。インタビューのタイミングが悪かったんですね。ちょうど一番いかつい時に…
中原
(笑)
──
(笑)いやー、大阪第二支部をこのたび立ち上げられたということで、今回お邪魔したわけなんですが、設立おめでとうございます。
中原
ありがとうございます。
──
とりあえず、まず中原さんの経歴をお聞かせ頂けますか。
中原
はい。
──
僕あんまり最初に経歴をお聞きしないんですが、今回は中原さんがカタギだということを証明するために…
中原
(笑)まあ証明できるかどうかは分からないですけど…
──
(笑)
中原
地元岸和田の小中学校を卒業後、浪速高等学校に進学して卒業後、大工の道を志して修行に出ました。
──
最初についた親方が本格的な人だったんですよね。
中原
そうですね。手刻みをしている親方だったので…
──
でもその時代で手刻みって、もう珍しい存在だったんじゃないですか。
中原
そうですね、もうプレカットが流行ってたんで。だからすごいラッキーだったんです。
──
ラッキーですよね。
中原
元々、高三の時に、兄の幼なじみの大工さんのところにバイトに行ってたんですよ。
──
あ、それで。
中原
はい。その流れで大工の道へ。冬休みに同級生家で遊んでたら、そこのお兄さんに、親方から「誰かバイトおらんか」と電話が一本入ったんです。それで「ちょうどええやつおるで」と。
──
なんかそれって組長が「誰か活きのええやつおらんか」みたいな…
中原
そんな感じです(笑)。
──
(笑)で、そこから独立という感じですか。
中原
そうですね、そこからまあ、色々端折って、独立です。
──
いや、そこ端折らんといてください。その辺に何か怪しい部分が…
中原
何もないですって(笑)。
──
端折ると読者の方が不安になるんで…
中原
何もないですよ(笑)。いや、まあ、手刻みの仕事をしたかったんですけど、そういう仕事が少なかったんですよ。それで親方にもそういう仕事を取ってくださいって伝えてたんですけど、やっぱり難しくて。
──
なるほど。
中原
それで他の親方も探したんですけど、当時は景気が悪くて、なかなか見つからなかったです。その頃僕は21くらいなんですけど…
──
わかっ。
中原
親方のところを辞めるっていうのを、親によう言わんくて。
──
ああ。
中原
大工になるって、自分で言い出したことなんです。親はもう大学に行け大学に行けってずっと言ってて、試験受けて面接も行ったんですけど。
──
はー。そうなんですか。
中原
結局それを蹴って大工になったんで、なかなか自分の口からよう言わんかったんです。
──
いややなー。聞いてる方がしんどなるっすね。いややわあ、そんなん。21とかで言うの。
中原
そうでしょう(笑)。でもその時に嫁がね、もうその頃から一緒やったんですけど、まあ一回言うてみ、って。それで辞めさせてもらったんです。
──
ほー。
中原
で、これからどうしよっかなって思ってた時に、つながりのある別の大工さんから連絡があって、自分のところの弟子が独立するから、そいつを手伝ってやってくれへんかと言われて、それを引き受けたんです。
──
ふーん。
中原
そこから二年くらい経って、23で結婚する時に、あることがきっかけで独立する感じになりました。当時新築の工事をメインでやってて、皆さんローン組んで家建ててらっしゃるじゃないですか。その頃、自分は手伝いばかりやってて社員でもないし自営業者でもない、税金のこととか無頓着で、でもなんか結婚したら家を建てれるやろっていう…
──
(笑)
中原
そういう安易な考えで…(笑)
──
まあ23やからね(笑)。
中原
ほんと世間知らずで(笑)。それで結婚して、そこから一ヶ月ずっと自分の家を間取りをひたすら考えてて、嫁から「あんたほんまにいけんの」って心配されてたんですけど、いや、みんなローンとか簡単に通ってるし、とりあえずローン通すのに家のプラン無いとあかんやろって言うて。それで一ヶ月かけて間取りを完成させて、銀行に…
──
意気揚々と行ったんですね(笑)。
中原
行きました。ほな、駄目ですと(笑)。
──
無職やからね(笑)。
中原
それで慌てて独立しました(笑)。
──
(笑)
中原
独立に至るまではそういう流れです(笑)。

インタビュー

古い家を守りたい

──
いやでもすごいですよね。そこからずーっと今に至るんですね。
中原
大工になってやりたかったことが、自分の家を自分で建てたいっていうことやったんです。だからそこから一生懸命に働いて、納税して、二年後にローンを借りることができました。
──
社会人として認めてもらえた(笑)。
中原
はい(笑)。その時に隣町にハイツを借りて、生まれ故郷の岸和田積川町をはじめて出たんです。
──
隣町ですやん(笑)。
中原
いやでも一回も外に出たことがなかったんですよ。
──
へぇー。まあでも今までずっとこうして続けてこられてるってのは、やっぱり好きなんでしょうね。
中原
はい。好きですね。
──
そら納税する前に間取り考えてるくらいやから。
中原
(笑)
──
でも今回、全国古民家再生協会の支部長になったということは、一つのターニングポイントですね。
中原
そうですね。
──
協会に入られたのは、やっぱり手刻みの仕事をしたいからですか。
中原
そうです。手刻みもしたいですし、地元を良くしたいというのもあります。この辺でもハウスメーカーさんが建てる新築が多いんですが、古い家も守っていきたいし。
──
なるほど。岸和田も古民家がめちゃくちゃあるじゃないですか。
中原
ありますね。
──
でも世間の人はそれを知らないですよね。京都とか奈良とかじゃなくて、大阪の北の方と南の方って、友達の実家が古民家だとか、普通の光景じゃないですか。
中原
そうです。
──
その一方で、誰も知らないところで古民家が潰されまくってる。岸和田なんか土地値が高いから。
中原
いいところに建ってる古民家は更地にして売買の対象になりやすいです。でも僕らが住んでる地元は調整区域なんで、新しいものが建ちにくいんです。だから余計に、今あるものを使って町づくりをしたいなって思ってます。
──
中原さんって地元のことをすごい色々されてますよね。
中原
がんばってます。
──
僕あんまり把握してないですけど、たとえばこないだの出張駄菓子屋さんとか。駄菓子屋が地域から消えてしまったので、子供らを呼んで、ご自身でやってらっしゃるでしょ。あれ僕すごく良いことされてるなって思ってるんです。
中原
ありがとうございます。
──
他にも岸和田を盛り上げようとする有志の方々とつながって色々やってらっしゃいますよね。他に何されてますか。
中原
まあ子供会と、PTAは常に。あと祭りのことと…
──
あっそうか、祭りということで説明したらいいですよね。このビジュアルを。「祭り好き」って言っとけば「ああ、そっちか…」って(笑)。
中原
そっちです(笑)。

インタビュー

南大阪の古民家

──
あと岸和田の市長さんとか、自治体さんともお話させてもらってますよね。
中原
そうですね。足かけ三年でようやくお話を聞いてもらえるようになって。岸和田の古民家を残そうという有志の団体が今地元ですごくクローズアップしてもらってて、その代表もさせてもらってます。
──
そうなんですか。へー。
中原
岸和田のメディアには色々、広報誌やラジオやネットTVなんかにも出演させてもらってます。
──
こないだ僕も出させてもらった耐震についてのイベント、あれも市役所のイベントでしたもんね。
中原
担当の方がすごく理解してくれていて、協賛でやりたいって仰って頂いたというお話でしたね。
──
僕いつも思うんですけど、イベントに呼ばれて喋ると、みんな知らないんですよね。「知ってたよ」じゃなくて「知りませんでした」と。勉強になったって言われますよね。
中原
知ってることが当たり前だと自分らが思ってたことが、一般の方々には当たり前じゃないんだっていうことがよく分かりました。
──
そうそう。それが分かるだけで、見方が変わりますよね。
中原
そうなんです。
──
それに協会の全国の集まりに参加すると、全国規模でそういう話が聞けて。
中原
一気に全国レベルの情報が入ってくるので、僕だったらその中から大阪に合うものを選んで持って帰って、アレンジして、っていう。
──
古民家って地域によって意匠とかつくりが結構変わるじゃないですか。屋根瓦の色が違ってたり。僕も全国回らせてもらいながら、逆に自分の地域の古民家の特色に気づくことができるんですよね。
中原
それはありますね。
──
僕ら南大阪の古民家ってシコロじゃないですか。ずんぐりむっくりしてて、屋根がむくってて(丸まっていて)。
中原
そうですね。屋根と、あとは材料ですね。南大阪は農家さんが多いんですが、農家さんって負けん気が強いのか、どこどこのこんな材料を使って家を建てた、って話を聞いたらそれに負けへんように…
──
あー。ありますね。財力を競い合ってる感じ。
中原
南大阪で使われてる材木って、すごいええやつが多いんですよ。
──
そうなんですか。
中原
はい。もうほんまに、家の自慢というよりは材木の自慢。これはどこどこの木や、とか。
──
へぇーっ。あと特徴といえばあれですね、外壁が黒。
中原
腰板から上ですよね。この辺は黒が多いですね。なぜかは分かりませんが、左官屋さん曰く、白より黒の方が塗るのが難しいそうです。
──
あ、それ僕も言われました。漆喰で黒を出すっていうの、僕が今回つくった新築「和洋折衷の家」、中原さんにも工務店として助けてもらう予定ですけど、そこで漆喰に色を入れようといくつかサンプル作ったんですけど、難しかったんです。漆喰はどうしても白が勝つらしいですね。
中原
こないだ壁の補修で同級生の左官屋さんを連れて行ったんですが、そこも黒の漆喰だったんですよ。その時にも、仕上げるのがすごく難しいって。
──
この辺ってほんま白の漆喰って珍しいですもんね。
中原
個人的なことを言わせてもらえば、僕、黒はあんまり好きじゃないんですよ。
──
あ、僕もそうです。黒って暗く沈むじゃないですか。瓦にしても腰板にしても。そこにさらに黒やから、なーんかちょっと…
中原
でも普通の狭い宅地の家に黒を塗ったら暗ーい感じがしますけど、この辺って土地が広いから、光が当たるんですよ。だからそこまで暗く沈まない。
──
あ、そっか。それはあるかも。
中原
僕の勝手な考えですけど。

インタビュー

子供と家

──
逆に僕、新築した離れに和室をつくったんですけど、部屋の中を真っ白の漆喰にしたんです。新品の木材+白漆喰。
中原
はい。
──
そしたら見た目が完全に新興宗教の道場みたいになって…
中原
(笑)
──
あ、この組み合わせあかんかったんやと(笑)。それでちょっと聞きたいんですけど、新築の和室って壁に何塗ってます?
中原
真っ白は塗らないですねー。ちょっと緑系の聚楽とか。
──
あ、やっぱり。それ知らんかったんですよ。
中原
真っ白なクロスでもちょっとしんどくなるっていう方もいらっしゃいますし。
──
さらに子供がいたらとんでもないことに。
中原
うちの自宅も、白いトイレの壁にボールペンの落書きが。
──
わかります。僕もヒノキの床材に「大原」ってハンコつかれてますから。
中原
(笑)
──
こいつに印鑑渡したやつ誰やと(笑)。
中原
うちも知らん子供の名前まで書かれてますよ(笑)。
──
(爆笑)
中原
トイレにカレンダーがあって、ボールペンが置いてるんで、それで書きよるんです。
──
中原さんとこはお元気な三兄弟がいらっしゃって。
中原
めちゃめちゃ元気ですね。全員男、全員野球。
──
ええですねー。うちも兄弟のチビがいますけど、家づくりと子育てってやっぱり関係がでかいですよね。
中原
でかいですね。
──
作り手としても、子供がいる生活って自分でコントロールできないじゃないですか。やつらに荒らされるんで。
中原
はい(笑)。
──
そういう生活をしていると、そのハコとしての「家」っていう概念が変わってくると思うんですよ。なんか理想だけじゃない、地に足のついたものというか…
中原
そうですね。子供さんがいるご家庭に対しては、自分の子供と近いなって思ったら、適切な提案もできますね。でも、僕にしたってお客さんから学ばせてもらうことも多いんです。
──
そうですか。
中原
お客さんのご家族がどういう感じなのかっていうのを教えてもらって、あ、うちと全然違うなってこちらが気づいて、そこから新しい提案が生まれたり。
──
めっちゃおとなしくて勉強大好きな兄弟とかね。
中原
もうそれはうちと全く…(笑)
──
(笑)

インタビュー

過去の大工に学ぶ

──
ちなみに中原さんってどっちのタイプですか。こちらからグイグイ提案していく、教えていくみたいなタイプなのか、それとも…
中原
あ、逆です。まずお話を聞きます。
──
そうなんや。
中原
まずは要望を聞いて、それを反映したような図面をCADで描いて、それをたたき台にして進めていくみたいな感じです。
──
仕事的には、リフォームやったりフルリノベーションやったり、新築やったり古民家やったりみたいな感じですか。
中原
そんな感じです。なんでもやってますね。
──
今、再生協会に入られて、古民家の仕事も増えてきたと思うんですけど。
中原
はい。そうですね。
──
これまでどんな仕事されてましたっけ。
中原
協会に入ってからは少しずつ周りから「古民家のことならあいつに頼め」って思って頂けるようになってきて、ちょっとしたリフォームや農家さんの小屋の修繕とか、大きなリフォームまで、色々させてもらってます。
──
たぶん今まで、この辺の住人さんって相談できる人がいなかったと思うんですよ。不動産屋に相談したら潰して更地になるし、その辺の工務店に聞いても直せませんって言われたり。そんな状況ってあちこちで発生してると思うんですけど、そんな中で中原さんが声を上げることで救われる古民家ってたくさんあると思います。
中原
そうあって欲しいですね。救っていきたいです。
──
空き家めっちゃ多いですもんね。この辺も。
中原
多いんですよー。
──
この辺は空き家=古民家ですもんね。ここええ家やなーって思ってたら空き家になって、そのうち更地になって、半年後に建売が4棟建ってるみたいな(笑)。
中原
(笑)新築が悪いわけじゃないんですけどね。良いものは残していきたい。それに古い家を残すことによって大工の技術も守られていくんです。
──
ほー。
中原
自分は大工なんで、そんな家を触らせてもらったら昔の大工の技術が学べるし、それをまた僕が後世に伝えていくこともできるんですよ。
──
そっかー。解体とかリフォームとかやってる時に、僕は大工じゃないんで分からないんですけど、作業としては前の大工さんのやってることを追っかけていくみたいな感じですか。
中原
そうです。
──
じゃあその最中に発見とか、気づくこととかあるんですか。
中原
めっちゃありますよ! 解体は解体屋さんですけど、リノベーションなら自分で触った時、珍しい仕事、昔の大工さんの仕事の跡が出てきた時に、職人みんなで手を止めて、一時間くらいその仕事について話し合ったりします。
──
え、めっちゃおもしろいですねそれ。
中原
おもしろいですよ。その箇所を切り離せる時は切り取って持って帰ったり。
──
なんか考古学みたいですね。
中原
なんでここをこう納めたんや? とか、こういう処理をすればここを納められるんや、とか。表面から見た仕上がりが、裏ではこんなことをされてたんや、ってびっくりしますよ。
──
へぇー。
中原
こんなに手をかけられる時間がもらえてたんや、とか。
──
あー、丁寧に仕事ができた時代ってことか。
中原
そうです。いろんな発見がありますね。
──
いやー、いいお話でよかったです。これでどうにか読者の方々に、中原さんのイメージが「危険人物」から「地域の人気者の大工さん」くらいまでいけたかなって…
中原
いやちょっと待ってくださいよ(笑)。
──
でもほんと、僕も南大阪の人間として、地域の古民家を盛り上げていきたいなと思ってますので、今後ともぜひよろしくお願いします。
中原
こちらこそよろしくお願いします。
──
じゃあ最後にクロニカの読者さんに向けて何かメッセージを。
中原
えー、古民家のことでお困りだったり、何かご相談ごとがあれば、僕に会いに来てください。
──
実際に会って、墨入ってないか確認してくださいと。
中原
(笑)全部脱ぎますよ! 一緒に銭湯行きましょう!
──
断られるじゃないですか(笑)。
中原
僕どこでも入れますから!(笑)
──
いやー、さんざんいじったんで、最後にフォローさせてください。ほんまに中原さんはね、古民家のこと、地域のことを大事にするハートのある方ですよ。駄菓子屋もうちの子供らを連れて行きましたけどね、すっごい喜んでましたよ。あのおっちゃんのお店また行きたいって。その延長線上に地域のことがあり、その中に古民家のことがあり、それを地域の宝物として残していきたいと、そういう活動をされてるんですよ、ってことでいいですか?
中原
ナイスフォローありがとうございます。
──
てことで、今日はどうもありがとうございました。

おわり

施工例







中原工務店

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代表 中原 啓尊
住所 〒596-0104 大阪府岸和田市積川町24-1
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