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株式会社大室建築

対応エリア青森県青森市、弘前市、八戸市、むつ市、十和田市、五所川原市、三沢市、その他全国

宮大工が伝えたいこと。

古民家アイコン

青森県青森市の大室建築代表、大室さん。代々続く宮大工の家系に生まれ、今も仕事の半数は社寺建築に携わっているそうです。大室さんの多彩なお話は、私たちに「家とは何か」「日本文化とは何か」を改めて問いかけ、考えさせてくれます。クロニカ最長記録のロングインタビュー、余すところなくたっぷりとお楽しみください。

インタビュー

和鉄を集める

──
大室さんは宮大工ということで、色々お伺いしたいことがあるんですが。
大室
はい。
──
ホームページも拝見してますけど、メニューの順番がちょっとおかしいですもんね。「住宅」より先に「社寺建築」があるという。
大室
そうですね。昔から一般の住宅も建てていましたけど。今で言う「古民家」ですね。その手刻みなどの技術を、現代の在来工法にフィードバックしてる感じです。
──
なるほど。
大室
ちょっとしたところも手刻みなら可能なので、たとえば土台の柱のほぞ一つにしても、プレカットは5cmしか刻めないんですよ。てことは、三寸五分角(10.5cm×10.5cm)だと、深さが半分くらいにしかならないんですよ。
──
はい。
大室
それが手刻みだと端まで全部通せるんです。そうすると、水が中に溜まらないので都合がいい。まあ大壁なんで、水が入ってこないという前提なんですけど、もし入ってきても土台が腐りにくいんです。
──
貫通するから、水が抜けるんですね。
大室
そうです。あと柱の自立性も高くなります。
──
あの、早速面白いです(笑)。
大室
なので、同じ材料でまずいチャーハンと美味しいチャーハンができるんですね。
──
なるほどー。
大室
だからといって金物を全否定するわけじゃないです。やっぱり付ければ耐震的に固まりますので。僕は金物、たとえばナイフとか和釘とか刀とかマサカリとか、鉄も好きなんですよ。
──
え、そうなんですか。
大室
だって大工道具は鉄じゃないですか。
──
あ、そっか。
大室
鋼とかの知識もないといけないですし。古民家って「駒つなぎ」っていって馬の縄を繋ぐ金物があったり、和釘だったり、いろんな金物があるんですよ。農具にしても鎌、マサカリ、私たちの大工道具でも「ちょんな」とかがあるんで、そういう意味での金物ですけど。
──
そっち系の金物。
大室
昔の鉄っていうのは鍛造で叩いて作ってるんで、すごい丈夫っていうか…鉄として質がいいんですよ。化学的には今の鉄の方が純度が高いんですけど、質としては下がってるんです。
──
純度と質が比例しないんですか。
大室
塩と一緒ですよ。NaClが99%といっても、やっぱりにがりが入ってる方が美味しいじゃないですか。それと同じで、和鉄ってちょっと不純物が入ってるんです。
──
へぇー。
大室
だから古いお寺さんとか古民家とかを残念ながら解体する時に、和鉄が出てくると全部集めておいて、それをまた鍛冶屋さんに打ってもらってるんです。
──
すごいなー!
大室
打ってもらったものも大体20年くらいすると、しなみが出てくるんです。
──
シナミ?
大室
柔軟性っていうんですかね。打ったばかりだと硬いんです。節とかにカンッて当てるとポロッと刃こぼれするんですけど、それが20年くらい経つと柔らかくなるというか。
──
へぇー。
大室
なので、打ってもらったやつは20年後に使うように取ってあるんです。
──
やばい(笑)。
大室
今使ってるやつは、20年前に取っておいてもらったやつです。うちらが取ってあるのは、次の20年後に使う分です。
──
すごいことされてますね…。植林みたい。
大室
無ければすぐ使いますけどね。カンナとかノミはそうやって置いています。
──
まさか鉄の話から入るとは思いませんでした(笑)。
大室
(笑)
インタビュー

今の釘は寺社仏閣に使えない

──
僕も和釘は見たことありますけど、あれもずーっと後世に残るんですもんね。
大室
法隆寺でもまだ残ってますよ。あの、法隆寺は1本も釘使ってないって言いますけど、ところどころ釘打ってるんですよ。
──
そうなんですか。
大室
もう、最古の玉鋼ですよ。あれで刀を打つとすごい切れ味になるだろうと。
──
へぇー。
大室
和釘って、刀と一緒で断面がミルフィーユみたいになってるんですよ。叩いて作るので、ダマスカス包丁みたいに。一層ずつ錆びて取れていくんですけど、その一層がだいたい100年もつとか。
──
まじすか(笑)。
大室
鋳造じゃないので丈夫なんです。それに比べて、今の釘は質が悪くなってます。
──
そうなんですか。
大室
鋳造の釘は純度が高いですけど錆びやすいですし、釘も曲げた時に戻らないですよ。
──
いい鉄って戻るんですか?
大室
いい鉄というか、炭素が入ってるんです。たとえば節があるところに釘を打つと、節を避けて刺さっていくんです。
──
え、すごいな! ほんまですか!
大室
ほんまです(笑)。以前、270年くらい経って屋根が落ちちゃったお寺さんがあって、木が割れて垂木の断面が見えてたんですけど、ほんとに和釘が、途中の硬いところだけを避けてまっすぐ刺さってました。
──
ほおーっ。
大室
まあそうして実際に見てるし、自分たちも打ってて避けていくのが感覚で分かるんです。でも炭素量が多すぎると刺さっちゃうんですよね。反対に炭素量が無さすぎると曲がっちゃうんです。適切な炭素量だと、節をこう、ぺろんとなめて避けるんですよ。今の鉄釘は炭素が入ってないんで、ステン釘なんかも全然しなみが無いです。
──
すごいなー。
大室
刃物も釘も、昔は一緒だったんです。釘を研ぐと、刃物と同じくらい切れましたからね。鍛造で作り方が同じなので。
──
あの、僕のしょぼい話で恐縮なんですけど、大工さんに「ホームセンターで売ってる釘とか木材は質が悪いから使ったらあかんすよ」って言われて、衝撃だったんです。そんな発想なんかないですから。釘に「質」があるなんて…
大室
(笑)今は単価が安くて、大量生産できる「なんちゃって」製品が出回っていますけど、それでいいような状況なんですね。それほどもたなくてもいい、そういう材料を使ってるんで、日本の建築って30年40年しかもたないんですよ。
──
そうなんですね。
大室
今の釘の耐用年数って大体20年くらいなんです。
──
え、そうなんですか。
大室
環境のいいところではもう少しもちますけど。まあ30年くらいのサイクルで家を建て替えるので、それくらいしかもたない粗悪なものでもいいんです。
──
そっかー。
大室
100年単位で考える寺社仏閣じゃ、そんな釘はとても使えないですけど。
──
僕、自分が新築した離れの外壁を杉板の鎧張りにしたんです。その時に、最初釘をステンで打ってて、僕はステンが嫌だったのでストップストップ!て止めて、鉄釘に変えてくれって言ったんです。そしたら大工さんに「鉄釘なんかもたへんっすよ」って言われて、真鍮にしたんですけど。それが今の現場の常識になってるんですね。
大室
あと目的にもよるんですよ。ステンはずっと錆びずにキラキラしてるし、真鍮はくすんできますし、銅の釘もだんだん茶色になりますから。
──
そうそう。僕そのキラキラが嫌だったんです。
大室
ちなみに鉄釘は安定した黒錆が表面にかかると、それで表面が保護されて耐用年数が長くなるんです。お茶とか紅茶で煮出したものに釘を入れると黒錆になりますよ。道具なんかも、キラキラしてるものよりは、赤錆じゃなくて、ちょっと安定した黒錆が入ってると…
──
なるほどー。
大室
木の中入っちゃうと大丈夫なんで、釘頭とかをそうやって処理してあげる。
──
あの、これ……完全に鍛冶屋さんのインタビューですね。
大室
(笑)でもそういうところが分からないと、改修したものがおかしくなるんです。200年くらい経ったお寺のお堂なんですけど、いつ文化財指定されてもいいように、当時と同じ工法でやってくれって言われて。土壁なんかもうたわんでしまってたので、漆喰を下塗り、中塗り、上塗りと全部各層ごとに分けて回収して、やり直しました。下地も土壁に使う「めご縄」ってあるんですけど…
──
めご縄?
大室
はい、稲って途中までストローなんですけど、稲穂がついてる辺りは固いんですよ。それだけを使った縄があるんですが、それを作るために藁をもらうところから始まってます。
──
すごいなー。
大室
で、冬の間ずっと叩いて縄作って、その縄で壁下地を改修します。土も左官屋さんに教えてもらいながら土壁を塗る。そこも下見板の鎧壁なんですけど、和釘なんですよ。全部。
──
おお~。
大室
だから自分たちも和釘で打たないと駄目なんで、和釘はいつでも用意してますね。鍛冶屋さんに頼んで、冬の間のヒマな時に叩いてもらってるっていう(笑)。
──
なんかもうすごい世界ですね。真逆ですよね、今の一般的な家づくりとは。
大室
そうですね。でも改修していくと、やっぱりそういう壁にぶち当たるんですよ。和釘はホームセンターに売ってないし(笑)、作るしかない。作ってもらってる鍛冶屋さんは、たまたま県の文化財を改修してたんですけど、その並びにあった鍛冶屋さんで、お話したら作れるってことで、それからずっとお願いしてます。
インタビュー

青森の古民家の工夫

──
あの、そういうった職人さんってどれくらい残ってるんですか。僕、東北方面は行ったことがなくて、最北が新潟止まりなんです(笑)。なので東北の文化や古民家事情を全然知らないんですが。
大室
職人はあんまりいないですよ。茅葺くにしても、漆喰にしても、骨組みにしても。青森って田舎なので、残っているふうに思われるんですけど、元々人口が少ないじゃないですか。蝦夷っていう島流しの地域ですから。
──
ああー。
大室
あと青森は空襲もあったんで、古民家自体、市内にはあまり残ってないです。南部と弘前、北津軽、金木とかあそこらへんと、八戸のあたりですね。岩手に差しかかる辺りには多く残ってますけど。
──
そうですか。
大室
基本は茅葺きが多いですね。弘前の方は城下町だったので瓦葺きもありますけど。青森は雪が降るんで瓦が少ないんです。
──
僕、クロニカで自分の体験を書いてるんですけど、やっぱりそれは大阪の話で、青森とか全然状況が違うと思うんですよね。たとえば木の建具は隙間テープを貼ればいいとか書いてるんですけど、いやでもこれ青森じゃ通用せえへんやろな…って思うんです(笑)。
大室
(笑)青森は青森の工夫がありますよ。
──
それ、ぜひ教えてください。基本、木製建具はムリですよね。そんなことないんですか。
大室
まあ、基本ムリっすよ(笑)。
──
やっぱり(笑)。
大室
でも極力建具を干渉させないで、気流をコントロールする方法はあります。
──
ほう。
大室
建具ってお互いがぶつからないように一分(3mm)くらいすかせてるんですけど、そのせいで風が通るじゃないですか。なので、それぞれの内側の重なってる框部分に木を打つんです。そうすると真ん中は防げる。あとは両側の戸当たりのところ、方立(ほうだて)を一分くらい彫っちゃうんです。戸が少し入るように。
──
あー、なるほど!
大室
そうすると隙間が無くなるんです。
──
大阪ではそこまでやってるの見たことないですね。
大室
それでもダメだったら、戸当たりを打つ。
──
え、打たないんですか。
大室
いや、打った方が簡単なんですけどね。全体のバランスとか。建具のタチ(歪みのなさ)がよければ戸当たりは付けない方がいいですし。柱が戸当たりになってる場合だと、枠を回さない方がカッコいいじゃないですか。そういう納まりにもよりますし。
──
なるほどー。
大室
戸一枚にしても色々工夫があります。あとは内サッシつけるとか。
──
戸のお話のように、寺社仏閣の技術や知恵を一般住宅にフィードバックされてると思うんですが、他にも何かそういうポイントがありますか?
大室
たとえば栓打ちとかですね。さっきほぞの話をしましたけど、土台と柱を通して、そこに栓を打つと絶対に抜けないし、引っ張りの力があるんで、そういう建て方をすると金物が少なく済むんですよ。
──
金物よりも強度が高いんですか?
大室
いや、強度というより、柔軟性ですね。
──
あ、そっか。
大室
あとは切り込みでも、プレカットだとオスとメスをくっつける時に、ただカポッとつけるだけなんですが、私たちが刻む時はこう……なんて言うんですか、うーん、引っ張られるように…
──
え、どんな感じですか(笑)。
大室
斜めに切って、ぎゅっと締まるように入れるんです。
──
ああ、なるほど。そういう部分が技ですね。なんか寺社仏閣と一般住宅って部材にしろ費用にしろスケールが違うじゃないですか。だから合わさる部分がどれくらいあるのかなと思うんですが。
大室
いや、やってることは同じなんで、ジャンルは同じなんですよ。ただ材が大きいとか、反りがあるとかの違いだけで。
インタビュー

九代目を継ぐ

──
大室さんは家業を継がれてるんですか。何代目とか。
大室
自分で九代目なんです。
──
九代目。すごいですね。
大室
初代は弘前城の築城に携わって、三代は弘前にいたんです。
──
すごいなあ。
大室
でも築城に携わると、棟梁は殺されるんですよ。
──
えっ?
大室
中身全部知ってるから。
──
えええ! まじすか!
大室
それが嫌で逃げるんです。反対側の陸奥の方に。
──
なにそれ…
大室
で、陸奥の方に逃げて、少しずつこう…下ってきたんです。三代弘前にいて、それから逃げてきてたんで、逃げてる間は記録がないんです。それで青森に来て六代目なんで、三+六で九代目って言ってるんですけど。
──
すごいなあ(笑)。
大室
陸奥っていう、マサカリの方に逃げたんですけど、「大室」っていう名字が結構残ってて、船大工さんとか。それでほとぼりが冷めた頃に、大正時代に青森に落ち着いて、開業するんです。
──
あれですね、明治で政権が転覆してなければ、今も大室さんは命を狙われ続けてるわけですね(笑)。
大室
逃げ続けて、今頃どこにいるか分からんでしょうね(笑)。
──
(笑)そういう家系にお生まれになって、最初からこの道を継ぐという感じだったんですか。
大室
小学校の頃にもう「大工になりたい」って思ってました。
──
あ、やっぱり「なりたい」ってなるんですか。
大室
「大工になれ」とは一度も言われたことがないです。自分も息子に言うことはないです。
──
へぇー。
大室
自分はやっぱり先々代の棟梁とか、今の父親の背中見て、なりたいなあって自然に思いましたけどね。
──
それって素敵なことですね。
大室
それで今度は自分の責任で、息子に背中を見せられるかどうか(笑)。
──
僕の友人で、江戸から続く家業のあるせがれなんですが、街に出て遊びを覚えて(笑)、もうそこで歴史に幕を下ろしてしまったんですけど、ほんとに現代って何かを継いでいくというのが難しいなと思います。昔は情報もなくて選択肢もなかったですけど。
大室
自分は、継ぐ時には何も迷いがなくて、逆に、僕しか継げないじゃないですか。たとえば勉強すれば誰でもなれる職業とかじゃないので…大室建築を継ぐのは自分しかできないという、使命感が強かったですね。
──
ああ、なるほどなぁ。
大室
それが自分にとって価値があって、魅力がありましたね。
──
大室さんは当然、生まれも育ちも青森ですよね。
大室
そうですね。高校は津軽の高校を出て、それから仙台大学行って、体育学部なんです。陸上やってて、400m走で県の高校記録作ってしまったので、体育系に…
──
え! すごいじゃないですか。そっちの道は考えなかったんですか。
大室
いや、もう大学2年生の時に、もう学校辞めて継ぎたいっていう話をしたんですけど、あと2年我慢して卒業しろっていう。
──
へぇー、もうそれくらい思いがあったんですね。
大室
高校卒業の時も、大工やりたいって言ったんですけど、せっかく記録出したんだからって…(笑)
──
珍しいパターンですね(笑)。逆に家業を継ぎたくなくて親とケンカして、陸上の道に進んで…みたいな話は聞きますけど。
インタビュー

究極のデザイン

──
先代の背中を見てこられたということですけど、お父様はどういう仕事をされることが多かったですか。
大室
うちの親父の代までは社寺建築がほとんどだったんです。それで時々手が空いてる期間に、住宅を…でも私の祖父とかだと、一般の住宅は10棟も建ててないと思います。80年の大工歴の中で。
──
はあー。そうなんですか。
大室
で、うちの父親もそんなに建ててない。僕の代になってから、半分くらいに増えてきた感じですね。お寺さんも一通りやったんで。お寺さんは本堂と位牌堂があれば、五重塔とか鐘撞き堂とかはいらないんですよ。それにバブルが弾けたり、震災があったりと、時代の流れもありまして。
──
なるほどー。古民家のお仕事もその半数の中に入ってる感じですか。
大室
そうですね、ただ「古民家」というふうに思ってない方もいらっしゃいます。立派なお宅なんですけど「いや、こんなボロ家…」っていう感じで。どちらかというと恥ずかしいみたいな。
──
あー。その感覚ってもう全国的なんですね。大阪でもそうですよ。以前に岐阜の吉田さんも同じこと仰ってましたし。うちの集落の人はみんなモダンな家に建て替えちゃうんです。
大室
デザインということで言えば、僕はやっぱり、普遍的なのが好きなんです。変わらないデザインというか。一回、古民家の解体が決まってて、新築したいというお客さんのところに、一度見てくれっていうお話があって行ったんですけど、そこのお宅で言うと、右隣に改修した古民家があってまだ綺麗に住んでらっしゃるんです。左隣にもう解体した後の、築40年くらいの在来の家があって。
──
はい。
大室
で、今壊して新築すると、ゆくゆくまたこんな風に解体することになりますよって言ったんです。今すごくカッコ良くても、100年通用するデザインはないですから。ただ、今住まわれてる古民家は、改修すればずっともちますよと。まあそれ自体が気にくわないんだったらしょうがないですけど。
──
うんうん。
大室
五重塔でも本堂でも、普遍的なデザインって、1000年以上変わらないじゃないですか。そういうのって機能性もあるし気候風土にも合ってる、機能美っていうんですかね。その究極の形だと思うんです。
──
究極ですよね。その国で1000年を経過してなお愛されるデザインって、もう答えが出ちゃってると思うんです。だから海外の家って、それ以上答えを探さないんですよね。
大室
そうですね。
──
なんかよく「海外で発見された江戸時代の写真」とかあるじゃないですか。デジタル着色したりして。ああいうの見ながら当時の日本に思いを馳せるんですけど、お寺や神社の写真の時だけ「あれ?」ってなるんですよね。今と全く変わってないから、なんか誰かが撮ったその辺の旅行写真みたいに見える(笑)。
大室
確かに今と変わらないですよね(笑)。
──
しかもそれに誰も文句言ってないですよね。法隆寺ってさすがにちょっとダサくない? みたいな意見が出てこないじゃですか。古民家が嫌だからリフォームするっていうんだったら、法隆寺もリフォームした方がいいんかと。
大室
(笑)私たちもあのデザインって習ったものではなくて。垂木と垂木の間が「一支(いっし)」っていうんですけど、それが基準になります。今だと一支が一尺五寸三尺、四尺五寸六尺。その区切りだと建材が無駄にならないので。大体そういうのを基準に、あるところは一支が七寸五分であれば、柱はいくらで、柱の面は柱面の0.1で…というふうに全部決まります。社寺建築の「枡組」ってあるんですけど、枡の大きさだったり、全部大体決まってるんですよ。
──
決まってるんや。
大室
決まってるんですけど、その中で少しずつ棟梁が経験とかデザインとかを入れていくんです。
──
ああー。
大室
なので同じ五重塔でも、下と上で大きさがあんまり違わない五重塔と、もうぐわーっとスタイルの良い五重塔とがあったりします。
──
言われてみればそうですね。
大室
五重塔を並べて見てみると全然違うんですよ。私たちが建てた五重塔が、木造建築物で日本で4番目に大きいんですけど…
──
え! そうなんですか。
大室
はい、それこそ法隆寺や東寺のものと比べても全部違いますし。あの、上に行くに従って、一支ずつ抜いていくんですよ。垂木も一つずつ抜いていく。
──
あー、なるほど。その方が見上げた時に良く見えるんですね。
大室
で、みんな同じことやってると同じものになるんで、そこを一支と一分(約3mm)ずつ縮めてみたり。
──
一分!?
大室
一分ですけど、10本あれば一寸(約30mm)なんで。
──
いやまあそうですけど、そんな世界なんですか。
大室
はい。それくらいでも、見え方が変わってきます。
──
はー。
インタビュー

薬師寺金堂の話

大室
それで棟梁が経験を活かして図面引いたり、模型作ったりして、理想の五重塔を追求していたんですね。私たちは先々代の棟梁が追求したものをただ作っただけなんですけど。
──
僕、昔から奈良もよく遊びに行くんですけど、この世界に片足突っ込んでから初めて奈良に遊びに行った時に、改めて五重塔を見た時の衝撃がすごかったです。え、意味分からん! 何コレ! 垂木どないなってんの?って(笑)。
大室
(笑)
──
一人で騒いで嫁にめちゃめちゃ引かれたんですけど(笑)。
大室
もう少しすると、みんなと写真撮るところが違ってくるんすよ。
──
あはは(笑)
大室
隅っこの納まりとかをアップで撮り始めたらもうやばいです(笑)。
──
すごい分かります(笑)。いや、僕はもう今は多少は分かるんです。これ作った人バケモンやなって。
大室
うん。ほんとバケモノですよ。
──
ですよね。
大室
昔は携わる職人がみんな棟梁格だったんですよ。たとえば薬師寺とかでも、天皇陛下の命令で作ってるようなお寺なんです。そうすると金堂の前に大きい丸い石があるんですけど、お寺さんの僧侶ってそこの石までしか上がれないんですよ。そこから先は天皇か、天皇に仕えている人しか入れないです。
──
へぇー。
大室
今は修学旅行生がズカズカ入っちゃってますけど(笑)。昔はお寺さんですら、下の石に座って拝んでたんですよ。それくらいの空間をつくるという詔なので…
──
そっかー、恐ろしいなあ。
大室
そんな話なんで、もう、下手したら死ぬんですよね。
──
死にますよね。
大室
なので、全員が棟梁格。それをほんとの大棟梁がまとめてた。もういろんなところからほんとに名工って呼ばれてる大工さんだけを集めてるんで、棟梁はさらにその頭に立つ人、棟梁中の棟梁なんです。そういう人でないと、あれはできないですね。
──
なるほどー。
大室
たぶん、墨付けとか、みんなで情報共有はしてなかったんじゃないかって思います。もう、自分でそれぞれやってたんじゃないかな。解体して再建するときに、解体する時って高さとか細かくチェックしていくんですけど、なんか東と西で全然違ってて。
──
あー、そうなんですか。
大室
でも最終的には納まりが一緒になってて。
──
へえー。
大室
これは間違ったか、それぞれ別でやってたか、どっちかだって。
インタビュー

200年待ってほしい

──
うちの親方に聞いたんですけど、あの、「隅木(屋根を支える4隅の木)がだんだん下がってくるのを見越して、ちょっと上に上げとく」っていう話はほんまなんですか。
大室
ほんまです。
──
(笑)
大室
さっきの話の続きなんですけど、デザイナーと職人と建築士ってケンカするんですよ。で、僕はその間に入って、宮大工なんだけど建築士の資格も取って、監督の言ってることも職人の言い分も聞いて、バランスを取って建物を建てたかったんです。
──
そうなんですね。
大室
神戸の摩耶山に天上寺っていうお寺があって、そこの本堂とかをうちで建てに行ってるんです。淡路島の八浄寺の本堂なども建てに行ってるんですけど、その時に現場監督と棟梁がケンカするんですよ。隅木の位置が10cm高いって。
──
ああー。
大室
それを僕が「200年後にちょうどよくなるんで、200年ほど待ってもらえませんか」って。
──
(笑)
大室
誰も待ってくれないんです(笑)。あと一番端と端の柱も同じように一寸長いんですよ。普通の人が見ればまっすぐに見えるんですけど、一寸高いので、柱と柱のつなぎが斜めになってる。なんで長くしてるかというと、隅木を上げておくためなんです。
──
あー。
大室
柱を一寸上げれば、隅木は10cmくらい上がるんです。で、それが徐々に下がってくるんですが、そういうのは図面にないから、それを測って高い高いって怒るんです。図面の通りにやっちゃうと200年後におかしくなるから上げろっていうんですけど、「図面と一緒じゃないと困る」って(笑)。
──
(笑)
大室
そうやっていつもケンカするから、その中に入って説明しないとってずっと思ってたんです。西岡常一さんっていう法隆寺の棟梁がいらっしゃるんですけど、あの人が分かりやすい本を何冊か出してるんで、そういうのを渡して読んでもらったりしてました(笑)。
──
便利ですね(笑)。
大室
あの人たちが手がける仕事は国宝級のものなんで、教授とかが入ってくるんですよ。そうなるともうケンカばかりですよ。
──
でしょうねえ。
大室
ああいう人たちは頭でっかちだし、現場踏んでる職人も分かろうとしないし。だからそういう間を取り持つ人が、これは隅木が200年後に落ちるから大工さんが上げてくれてるんですよって教えてあげればいいと思うんです。法隆寺も解体するじゃないですか。それでもう一度組む時に、同じところに釘を打つんですよ。
──
それって、ありなんですか?
大室
大工仕事的には駄目なんですよ。同じところに打つと効かないじゃないですか。でも国宝なんで、勝手に変えるな、そこに納めろって言われる。それも大工が怒ったところですね。
──
ああー。
大室
だからそういう研究家と、現場とでは、全然感覚が違うんですよね。
──
それって永遠のテーマですよね。
インタビュー

家のわがまま、人のわがまま

──
そういう寺社仏閣の世界から見る古民家、一般住宅というのは、また違った感覚なんでしょうね。
大室
そういうことで言うと、和風と和式って違うんですよ。
──
ほう。
大室
在来工法でも和風の部屋があったりしますけど、和式じゃないんです。在来工法は伝統構法の簡略化バージョンなんです。考え方も全然違うやり方なので、「和式」と呼べるのはやっぱり伝統構法ですよ。
──
構法の問題なんですね。僕も一度ブログで「和風の部屋」と「和室」は何が違うのかっていう話を書いたんですけど。よくホテルとかで「和室:12部屋」とか書いてて、泊まってみたらこれ洋室に畳敷いてるだけやんけ! みたいなのあるじゃないですか(笑)。まず最低でも壁は真壁にして欲しいですよね。
大室
(笑)そういう今の住宅は、100年住んでも古民家にはならないじゃないですか。日本の住宅文化ってポキッと途中で曲がっちゃって、全然違うところを迷走してるんですけど、日本人って手が器用なんで、性能が良くなるんですよね。
──
はいはいはい。
大室
気密性は良くなっていくし、サッシの性能も上がり続けるし。車でも何でもそんな感じですけど。だからポキッと曲がった後に、変に住宅が高性能化しちゃったんですよね。
──
メーカーで研究開発してる人たちって、きっと毎日必死にやって、成果を出してるんですよね。でも、方向性が曲がってるんですよね。
大室
曲がってるんです。だから今、天然素材だ自然素材だって言っても、やっぱりハリボテにしかならないんです。もう一度ベクトルを元に戻さないと、本質的には調和ができないです。
──
なるほどなあ。方向性を元に戻した上で、そこから先の技術の進歩とか、新しい発明とかをやっていけばいいのにってことですよね。
大室
そう思います。
──
その考え方にはすごく共感できます。
大室
僕が一番気をつけているのは、建物のわがままと人間のわがままを、高次元で両立させるということです。
──
わがまま?
大室
建物のわがままを聞くと、古民家になるんです。通風がよくて、木が腐らない。でも冬は寒いんです。反対に人間のわがままを聞くと、冬あったかいのがいいと(笑)。
──
なるほど(笑)。
大室
今度はそのわがままばかり聞いていると、極端に気密とか高めてゼロエネとかになるんですけど、全部ベタ基礎にして断熱材でくるんで…というふうに作るんだったらプラスチックで作ればいいんですよね。でも建物は木でつくられているので、わがままを聞いてあげたいんです。今の住宅のままじゃ木を使う意味ないんすよ。
──
そうですね。
大室
なので、木を使うんだったら、多少は家のわがままを聞いてあげないと、家がもちませんよって。だからどっちも同じくらい大事なんですよ。
──
分かりやすい考え方ですね。
大室
車ってワックスかけるじゃないですか。家はワックスどころか誰も洗わないですよ。家の周りを一周すらしない人もいますよ。
──
あー、確かに。
大室
月に一回まわってますかと。まわらないですよ。車はしょっちゅう磨くのに、何千万もかけた家は、なぜか興味ないんですよね。玄関入って、あったかいとか寒いとかくらいで。外観を気にする人もいませんし、手入れもしないです。で、傷んでから大工さんを呼ぶんですよね。
──
言われてみれば、わりとみんなそんな感じですよね。
大室
家は面倒を見て育てていくものなんです。僕らは天然素材たくさん使うので、収縮とかあるじゃないですか。隙間も開きますし、大黒柱に割れが入ることもあります。そうすれば埋めることもできますし、季節が変われば元に戻ります、というお話をするんですが、隙間が開けばすぐクレームなんです。
──
そうかー。
大室
だからもう少し施主さんの方でも、家に対する愛着と、素材についての知識を持ってほしいなと思いますね。
──
ほんとそうですね。というところで、お時間が来てしまったんですが…絶対まだまだ面白いお話をお持ちですよね。
大室
テーマがあれば何時間でも。今回はちょっと短かったですね(笑)
──
ぜひまた個人的に色々教えてください(笑)。

おわり

施工例(法眼寺再建の工程紹介)

㈱大室建築

登録 建設業許可
青森県知事許可 (般-23)第100611号
2級建築士事務所
[青森県知事登録 第2794号]
所在地 青森県青森市岡造道3丁目7番5号
Tel・Fax 017-718-8018
090-2369-7498 (大室幸司 携帯電話)
090-2745-6026 (大室勝男 携帯電話)
役員 取締役会長:大室勝男
代表取締役:大室幸司
専務取締役:大室幸子
事業内容 ・社寺建築全般
・一般住宅新築増改築
・多世代住宅
・介護リフォーム
・古民家再生、再建、移築
・古民家鑑定(調査)
公式サイト https://www.oomurokentiku.com
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