古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

自然派ライフ住宅設計株式会社

日本伝統再築士会新潟支部・支部長 大沼勝志

対応エリア新潟県

新潟支部の対応エリア新潟全域

無駄なお金がかからないように。

古民家アイコン

新潟県新潟市、自然派ライフ住宅設計株式会社代表の大沼さんは、かつて年商155憶のビルダーの代表取締役でした。そこから一転、リノベ中心の小さな会社を立ち上げ、古民家再生や古材を扱うようになり、今に至ります。古民家リノベに対する大沼さんの考え方、その圧倒的な知識のほんの一部を、ショールームの取材記事として皆さんにご紹介します。

インタビュー

建築基準法の改正の影響

──
もうここに来るまでに面白い話をたくさん伺ってしまって、どの話からいこうかなという感じなんですが……この今の会社というのは新しく興されたんですよね。
大沼
そうですね。「夢ハウス」で社長をやらせてもらったあとにこの「自然派ライフ住宅設計」を立ち上げました。基本はリノベーションなんですが、新築もよく頼まれるのでやっています。
──
なるほど。
大沼
リノベーションの話も色々あるんですが、確認申請の手順というのがあって。お客さんのお話を聞いて、たぶん確認申請が必要だなと思ったら、まずその家を見る時に、法定調査というのがあるんですよ。
──
ほう。
大沼
たとえばその家の確認申請の書類があっても、それを信用しちゃだめなんです。なぜかというと、その通りにできてないことが結構多い。
──
そうなんや。
大沼
家が大きくなってたりとか、昔の大工さんだから、図面と実物が違うみたいなことも往々にしてある。たとえば見た目を良くするために柱をもっと長くしようとか、そういうのは良かれと思ってやってるんですけど、法律的には、それをすることで北側斜線が当たりますとか。
──
なるほどなるほど。
大沼
敷地から1m離さなきゃいけないのにそれが足りてなかったり、屋根の出が60cmになってるのに、和風住宅でそれだと見た目が良くねぇんだよって90cmになってたりするわけです(笑)。
──
(笑)
大沼
そういうところを全部チェックしないといけない。それが法定調査ですね。で、それをクリアにしてからやっとプラン作成に入れるんです。今やってるところも二階が道路斜線に引っかかってるんですが、確認申請を取るってことは、そこを削るという想定で進めないといけない。確認申請を出して、引っかかりました、じゃ遅いわけで。
──
はい。
大沼
そういうのを事前にチェックして、プランを作ったら、今度は全部をまとめた法定確認をするんです。四月の法改正でやっかいになったのが、防火もそうなんですが、採光、排煙の計算をしないといけなくなった。光の入り方、煙が抜ける面積とか、窓の大きさも位置も関わってくるんです。
──
ふうん。
大沼
そういう法定確認をやる中で、うちはまず最初に構造計算を先にやります。通常は工務店と設計士は別で外注になるので、構造計算は後回しになったりするんですが、うちは一気にできるので、基礎の補強の有無とか、面材の量とか、そういうのを検討します。
──
四月からの法改正で古民家も、結構な割合で確認申請を取らなきゃいけなくなりましたよね。
大沼
そうです。二階建て以上、300㎡までのところは壁量計算。300㎡以上は許容応力度計算が必要になってきます。
──
うちは平屋で200㎡以下なんですけど、それだとどうなるんですか。
大沼
それだったらいらないです。ただそこに増築で何かくっつけると、その全部の面積で捉えられるので、全体の確認申請がいるんです。今の基準に合わせることになるんですね。
──
なるほど。
大沼
役所によっては、地盤の安全性とか、基礎のコンクリートの強度とか、コア抜きして測んなきゃだめだったり。
──
えー!
大沼
だから、確認申請ってただ書類を作るだけじゃなくて、リノベの場合は現状確認っていうのが絶対に必要になるんです。地盤が悪かったら役所に「地盤改良してください」って言われちゃうかもしれない。「いやもう家建ってるんですけど」って(笑)。
──
(笑)
大沼
まあ自治体によってはそういうのはうまくかわしてくれるところもあるんだけど、都市部とかは書類上しか見ないで、国の基準に合わせろと一方的に言われたり。地域によって変わりますね。
──
やっぱそういうのに詳しい方だとやり方を知っているというか。
大沼
確認申請を出しました、はねられました、じゃあどうやって直そうか、ではもう遅いんですよ。
──
そっかー。
大沼
最初から「ここは引っかかるんじゃないか」とか、ある程度予期して進めないと、結局お金の問題につながってくるんです。お客さんからすれば、引っかかったので追加のお金くださいって言われても困るじゃないですか。
──
はい。
大沼
構造計算も同じで、中を開けないと梁の大きさが分からないから計算ができない、だから開けてから構造計算する、ってことは、設計の費用と構造計算の費用は契約とは別になってくるんです。しかもそれにいくらかかるかはやってみないと分からないって言われてしまう。それをうちは全部できるから、最初からそれらを見積に入れていく。役所は「時間」と「お金」のことは考えてくれないし、工事と設計のタイムラグが分かってないから、とりあえず確認申請を出して後で変更届を出せばいいやっていうのは書類上の処理では可能ですけど、現場ではお金の話が発生して、全然足りません、となる。
──
はいはい。
大沼
そうすると工務店が赤字を抱えないとしょうがないから、工務店は怖くなるんです。だからリノベーションの確認申請はみんな腰が引けるんですよ。
──
へぇーっ。
大沼
特に今回の法改正、柱の径の太さとか。これも計算方式が変わって、たとえば瓦屋根で、モルタル壁で、普通にやっていくと柱が4寸じゃないとだめだと。でも今3.5寸で建ってる家はどうなるんだと(笑)。じゃあ柱を全部取り替えて、って役所は簡単に言うわけですよ。でもそんなことできるわけないじゃないですか。そういうのが開けてからじゃないと分からないんなら、収拾付かないですよね。だから最初っから見越しておく必要がある。
──
そうですよね。だから今後はちゃんと触れる人がどんどん限られてきますよね。大沼さんは日本伝統再築士会の副会長をされていますけど、その立場で知っている情報を全国の人たちに伝える側じゃないですか。
大沼
はい。
──
そのグループ内では情報共有できてるけど、昔ながらの大工さんで、古民家直せますって言っても……
大沼
もうなかなか分からないと思います。実際私も国交省に行っていろんな話をしたり、実務で確認申請のために自治体に何度も行って話をして、あ、こういうところがやばいんだな、じゃあどうやって逃げようかな、とか(笑)、いろいろ考えながらやってるわけで、そういうことをできる人じゃないと難しいと思いますよ。
──
そうですよね。
大沼
大工さんは技術的にはできるんですよ。何でもできる。でも法的なところとか、お金のやりくりとか、とりあえずやったからお金ちょうだい、っていう世界じゃもはやないので。
──
それは完全に僕のパターンですけど(笑)。
大沼
積算ができるかとか、そういうのが今回の法改正で露わになる部分でもありますね。やり方が複雑になってしまって。今までのリノベーションは設計者判断でできたんです。でもその設計者っていうのがピンキリでバラバラなんで、役所としてもそこはきっちりさせたいというのがあります。特に国交省は「火」の問題をシビアに考えているんで、外壁だとか窓だとか、そういう部分はかなり厳しいですね。
──
あー、そうなんですね。うちの離れも設計士がダメで、外壁を張る直前に耐火ボードを入れないといけないことが分かって、めちゃくちゃモメましたね。誰がその追加の金を払うねんと。
大沼
そういうことになるんですよね。たぶん勉強してないんですよ。

インタビュー

ベタ基礎が良いとは限らない

──
大沼さんが実際に設計をされる時ってどんな感じなんですか。
大沼
自分は元々大工だったんですよ。うちの親父が実は、お寺を造るような大工だったんです。
──
え、そうなんですか!
大沼
なので田舎造りの建物をずっとやってまして、ただ親父が早くに亡くなっちゃって、大工を続けられなくなったから、現場監督やったり設計やったりしたんですけど、そのおかげで現場を知っているんで、たとえばこれくらいの柱間隔のところにどれくらいの梁が入っているか、みたいなことはおおよそのイメージががつくんです。
──
なるほど。
大沼
このおおよそのイメージで一回仮想で建てていくんですよね。ざっくりとした補強方法さえ考えていれば、逃げ道がいっぱい取れるんです。間取りを書いていく時もその逃げ道というものを考えながら書いていく。よく大工さんが見て、この柱は抜ける、抜けないってあるじゃないですか。
──
はいはい。
大沼
抜けない柱なんか一本もないんですよ。
──
そうなん!
大沼
抜く気があるか無いかです。それくらい手間をかける気があるかどうか。
──
そういうことかー。
大沼
補強すればいいんです。今のある梁の下にもう一つ添わせて二段にするとか。ちょうどこのモデルハウスのこの部分ですね。

インタビュー

大沼
いろんな方がいますけど、私はマニアックなことが好きで、誰もやってないようなことをやりたいんですよね。
──
さっきもご飯食べながら耐震の話を聞きましたけど、大沼さんのお話は僕も聞くのが初めての話がほんと多くて。さっきの周波数の話をもう一度聞かせてもらえますか。
大沼
こういうのがあるんですけど。
──
おっ、何ですかこれ。
大沼
長期優良型、建築基準法を満たした建物、古民家、この三つの揺れ方の違いが分かるものなんですけど。大きい揺れ方だと、このように古民家が大きく揺れるんですが……
──
ちょっと待ってこれ動画や動画(笑)。
大沼
だから地盤と、揺れ方なんですよ。その振動をどういう方法で消してあげるかというのが大事なんです。ただ頑丈につくればいいってものでもない。
──
ただ、古民家は200㎡以上、二階建てってなると、やっぱり基礎を作れって話になりますよね。
大沼
平屋で200㎡以上や二階建ての場合、確認申請が必要になるので、そうなりますね。そうなると費用が結構変わってきます。
──
屋根もお金がかかるけど基礎もかかりますよね。
大沼
ですね。特にリノベーション工事の基礎は機械が入れられないので手でやるしかないんですよ。スコップで穴掘ってつくっていくんで、手間がかかるんですよ。
──
あれってやっぱりジャッキアップして布基礎をつくっていくわけですか。
大沼
そうです。そのやり方もあるし、場合によってはそのままの状態でベタ基礎にする場合もあるんですけど。土と材木の隙間がどれくらいあるかです。これが新潟だと結構高さがないんですよね。
──
へーっ。
大沼
人が入れないケースが多いんですよ。そうなるとシロアリの問題が出てくるから、ベタ基礎の方がいいよねって形になることもあるし。……まあ実際は構造計算してるんで、ベタ基礎にする意味がなかったりもするんですけど。
──
え、そうなんですか?
大沼
ベタ基礎って構造計算の逃げ口でもあるんで。ベタ基礎ってコンクリートいっぱい使うんで、重くなる、つまり地盤にも負担がかかるんですよね。だから常にベタ基礎が正解ってわけでもないんです。布基礎でなるべく軽くして、計算してOKの状態に持って行くのが一番コスパがいいんですよ。
──
へぇーっ。おもしろ!
大沼
その基礎の計算をするのが面倒くさいからみんなベタ基礎にしてるんですよ。
──
そうすると今後、古民家は確認申請=ベタ基礎=ジャッキアップ=高額、とは限らないんですか。
大沼
結局、柱の一本一本の引き抜きの問題なわけだから、大事なところはがっちり固めて、中間のものは逆に耐力壁を付けずに力がかからないようにしておけば、べつに基礎いらなくない?となるわけじゃないですか。そういう風にすれば必要以上に基礎を作らなくてもいいケースもある。
──
すげえなー。やっぱちゃんとした人に頼むとそういうことになるんよなあ(笑)。
大沼
(笑)古民家はお金かけりゃ何でもできるんですよ。でも無駄なお金はかけてもしょうがないじゃないですか。
──
ほんとに。
大沼
たとえば新潟はどこでも地盤が悪いわけですよ。ほとんどの地域で地盤改良が必要になると思います。
──
え、そうなんですか。
大沼
そんな土地に新築を建てる時に、頑丈な基礎を作ったって……
──
はいはいはい。
大沼
杭で家は保つけど、基礎はその間にあるコンクリートの平面でしかないから。
──
そういうことですよね。
大沼
力がちゃんと杭に伝わればいいわけだから。なのに「ベタ基礎で頑丈です!」ってやっちゃうから、量が増えていって、過大設計になってることもあるんです。
──
なるほどねえ。
大沼
これがちょっと地盤の良いところ、たとえば姫路だとかになると、地盤改良しなくてもいいケースが増えます。
──
あ、岩盤があるから。
大沼
そうそう。そういうところでは、基礎を頑丈に作るというのには、意味があるんですよ。だけど新潟って「潟」っていうくらいだから、岩盤が無いんです。なので杭が大事なんですよ。
──
僕、前に能登地震の被災地に調査に行ったんですけど、湾岸エリアを見た時にそれはすごく感じましたね。もうこれは、基礎の下が揺れてると。
大沼
どうにもなんない。
──
そうなんですよ。浜手は電柱もグニャグニャでしたよ。あっちこっち向いて。
大沼
私も能登は行きましたけど、地面が盛り上がってたりすると、どうしようもないんですよ。だから地震が怖い、お金をかけて耐震を、っていう人はそもそも地盤が弱いエリアに住んじゃだめなんです。
──
ほんとそうですよね。
大沼
というかそもそも地盤改良って地震対策じゃないですからね。不同沈下対策なんです。
──
そうなんか!
大沼
何もしなくて傾いたものは保証が効くんですが、地震で傾いた家は保証されません。
──
へえーっ。
大沼
しかも、保証といってもたった10年間なんです。そのためにたくさんお金を払うのは……
──
いやー、そんなんみんな知らんよなあ。

インタビュー

古材活用を推進する理由

──
話は変わりますけど、大沼さんは古材も扱われているということで、そのお話もお聞きしたいんですが。今僕がいるこのショールーム自体も古い家から運んできた古材を使って建てられているんですよね。
大沼
そうですね。うちの会社は古材を使ったリノベーションと古民家の移築、どちらもやるんです。このショールームは前者の「古材利用」ということですね。我々は阿賀町と連携協定を結ばせてもらっていて、材料を使わせてもらえるお客さんを探すことができるんです。
──
ほー。
大沼
阿賀町は空き家率が今20%なんですよ。数で言うと約900棟、そのうち半分が茅葺き屋根に板金をかぶせたような家です。なので古材は今後ますます供給が可能になると思うんですが、現状、古材を使った新築というのは違法なんです。
──
そうなんですか。
大沼
リサイクル法違反。ごみで家を建てることになるんで。
──
そうなんやー。
大沼
なので古材を「ごみじゃない」と認めてもらうところから始めないとだめで、それは古民家再生協会の仕組みを使ってやります。うちは古物商の免許を取り、古材の両端を切って虫の有無を確認し、含水率とヤング係数を測って、材料のデータを取ります。それに対して古民家再生協会は最高1億円のPL保険を掛けるという形です。
──
なるほど。
大沼
古材利用を法的にクリアするのは、古民家再生協会じゃないと難しいんですよ。
──
古材をそもそもどこで手に入れればいいか分かんないっていう人も多いんじゃないですか。
大沼
まあ、近頃は古材を仕入れてる業者さんもいると思うんだけど、それは住宅じゃなくて店舗用だったりします。こういう確認申請取るようなものには本来は使えないので。それを可能にしているのがこの「古材倉庫」という仕組みですね。調査と管理をしていて、保険もあるという。
──
なるほどなるほど。
大沼
そういう形で、このショールームも建てられています。この家に使わせていただいた古材は元々こういうお宅のもので……

インタビュー

──
おーっ。
大沼
うちとしては、この古材利用をさせていただくことでありがたいのは、大工の育成ができることなんですよ。
──
ああ、たしかに。
大沼
前の会社の時に、大工さんも毎年10人くらい採用していたんですけど、大工の修行をして技術検定3級取りました、みたいな人も来るわけです。でも2年か3年で辞めちゃうんですよ。
──
えっ。なんでですか。
大沼
結局、やる仕事が誰でもできるようなプラスターボード張りじゃないですか。
──
ああー。
大沼
職人の仕事がなければ自分の技術も活かせないんですよ。だからかわいそうで。そんな大工さんに大工としての仕事を作ってあげたくて始めたのが古材利用なんです。
──
なるほど。素晴らしいですね。
大沼
墨出しをして、どう加工するかを下の人間に伝えていく。それが技術の伝承ですよね。
──
うちが世話になってる大工さんも腕はいいんですけど、毎日やってることはアルミの網戸の交換ですね(笑)。
大沼
(笑)努力して、技術検定3級を取ってるのに、毎日どれだけ早くプラスターボードを張れるかみたいなことを……
──
あれスピード重視らしいですからね(笑)。
大沼
こういう古材だとか移築だとかをお願いすると、職人さんは「こんなめんどくせえ仕事……」とか言うんですけど、でもニコニコしてるんですよ(笑)。
──
(笑)わかる。僕も自宅を直した時に職人さんにいろんなことやってもらいましたけど、「タイル張りなんか十年ぶりやぞ」とか言ってやっぱり喜んでましたからね。
大沼
そうなんですよ。
──
そういう意味では古材倉庫も移築も、みんなが喜ぶ事業になってますよね。

インタビュー

社長になって気付いた

──
大沼さん、何でもできるから、あちこちお手伝いで飛び回られてますよね。
大沼
そうですね。構造計算とか、図面作りのサポートとか、あと社員教育、役員の体制作りなんかもやってます。
──
へぇーっ。
大沼
大きい企業から今の小さい会社まで、いろんなことを体験してきましたから。
──
どういうルートで今に至ったんですか?
大沼
元々は大工で、親父が死んで現場監督をやるようになって、二級を取らせてもらって、それから一級も取って、自分一人でやるようになったんです。その時にたまたま同級生が大きい会社の設計室長をやっていて、外注で図面を手伝ってくれと頼まれまして。その仕事が一日に一軒のペースであったんです。
──
一日一軒!?
大沼
はい。一日に一軒、間取りを作ってパースを描いて、を繰り返していたんですが、自分の仕事もあるんで、夜にそれをやってたんです。毎日夜中まで仕事していて。
──
すごいな。
大沼
で、そのうちやり取りが面倒になって、その会社の事務所に机を用意したからって言われて、その会社の中で仕事するようになったんですが、いつの間にかその会社の保険証が出来ていた(笑)。
──
(笑)
大沼
だからアルバイトから社員になって、最終的に社長になったんです(笑)。
──
おもしろ(笑)。
大沼
そうして設計室に入った後、中国とやり取りするようになって、納め図とかを描くようになって、結局その図を説明するのに中国に飛ばされて(笑)。600~700品目の建築建材を中国人に説明しながら取引していたんですが、今度はその原材料を仕入れるためにロシアに行ったり、その材料で床板を作るためにロシアに工場を建てたり。
──
へぇーっ。
大沼
で、乗っ取られて火を点けられた(笑)。
──
例のその話は面白すぎるけど端折ります(笑)。
大沼
その後、会社内でリノベーションの部署を立ち上げたんです。それが数年でかなり成長して、社長になり、でも元々技術屋なんで、社長になったらつまんないんですよ。
──
社長になって気付いた(笑)。
大沼
それでこの会社を立ち上げたんですが、やっぱり面白いと感じることをしたかったんです。売上目標とかではなくて、最低限、生活ができればいいわけで。
──
うんうん。
大沼
お金のために仕事したくないから、うちは年間5棟しかやらないです。
──
そうなんやー。
大沼
その代わり1棟あたりの打ち合わせ数はめちゃくちゃ多いですよ。
──
すごいな。理想的ですよね。
大沼
再生協会に入って、古材利用とか、普通はできないことができるようになったので、あとはやる気の問題ですよね。やれます、どうにかします、っていう。
──
だからさっきの確認申請の話も、どうにかして法律をクリアしようかっていう。
大沼
そうそう。

インタビュー

高断熱の住宅の世界

──
あの、雑感として、今後古民家のリノベーションというものがどうなっていくのかをお聞きしたいんですけど。
大沼
うちのお客さんってリフォーム難民が結構いらっしゃるんです。
──
難民ですか。
大沼
古民家を直したい、暖かくしたい、という希望を伝えても工務店に「できません」「壊して新築の方がいいですよ」と言われた方々です。
──
あー。
大沼
それで、やってくれるところを探してうちに来られるんですが、難しいとかできないとか否定するんじゃなくて、できることを考えます。ただ実際問題、今後は確認申請のこともあって断る工務店がより増えてくると思います。
──
そうなりますよね。
大沼
簡単なリフォームなら請け負うけれど、大事な耐震だとか、断熱だとか、そういう部分がおろそかになるんです。そうなると古民家は寒いとか、危ないとかいう認識は変わらないでしょう。でも本当はそんなことはなくて、たとえばこの家は古材を使ってますけどHEAT20のG2(断熱等級6)ですよ。
──
僕、この家に来て上着を2枚脱ぎましたからね(笑)。
大沼
これエアコン一台ですよ。
──
え、まじで!? だって今日、外めっちゃ寒いですよ。それでこんな広い家で、しかも吹き抜けでしょ? 僕、ダウンジャケット脱いで、パーカー脱いで、今シャツ一枚で、それでもちょっと汗ばんできたから袖もまくってますけど。
大沼
(笑)
──
いや僕、薪ストーブをどっかで焚いてるんやなって思ってましたよ。それがエアコン一台って……
大沼
性能を上げるとこういう暮らしができるんです。あと無垢材をたくさん使うメリットとしては、新建材と違って蓄熱してくれるんですよ。
──
ああー。
大沼
この家はエアコンが20℃設定ですけど、このスギの床板の温度が…(と言って測定器で測る)24.4℃です。
──
えー! まじで?
大沼
床暖房みたいなものですよね。夏でも冬でもだいたい23~24℃くらいです。初めて来られる人には「これ床暖房ですね」って言われます。
──
いやそうですよ、だって暖かいもんこれ。
大沼
素材が柔らかいと、断熱材がわりになるし、熱を溜めてくれるから、床暖房はしなくていいんです。床暖房してもみんなわりと数年で止めるんですよ。光熱費が凄いから。
──
そうなんや。
大沼
そうじゃなくて素材をちゃんと選んで、無駄なお金をかけないようにしましょうと。家はランニングコストも大事ですから。性能の良い家と悪い家だと30年間で900万円くらい変わってきますよ。
──
まじすかー。
大沼
古民家でも暖かくしましょう、という提案はよくしているんですが、うちの古家のリノベは断熱材としてウレタンを吹くんですよ。
──
おお。
大沼
普通のウレタンじゃなくて硬質ウレタンといって、冷蔵庫に使われるものなんです。それを通常15~20mmのところ、60mm吹くんです。
──
(笑)
大沼
ウレタンは指で突いた時にヘコむのは性能が良くないんです。これは綿の断熱材の倍くらいの性能はあります。こういうのを外側から吹き付けて、隙間を全部塞ぐ。
──
ほー。
大沼
断熱材の扱いは、実は大工さんが入れるのを信用してないんですよ。
──
あ、それはちょっと聞いたことがある。ちゃんと効かすには専門の知識がいるんですよね。
大沼
綿の断熱材でよく間違われるのは、400mmのところに400mmの断熱材をきっちり入れれば100mmの性能になるんですけど、350の幅のところに400入れると67mmの性能しか出ないんですよ。
──
え、そうなんですか。
大沼
綿の断熱材って空気で断熱してるんで、余分に入れて押しつぶしちゃうと性能が落ちるんです。
──
なるほど!
大沼
300に400入れると性能が半分になる。なので綿の断熱材は入れる人によって性能が変わるんです。よくみんな隙間を作っちゃダメだという意識でやってるんですけど、強引に入れすぎてもだめなんです。それって結構難しいんですよね。
──
はー。
大沼
なのでその均一性を出すためにも硬質ウレタンを使ってたりします。
──
へぇーっ。おもしろい。

インタビュー

オリジナルの内装塗料

──
内装の話なんですけど、大沼さんの会社はオリジナルで塗料とか開発されているんですよね。
大沼
はい。この床もワックス塗ってるんですよ。
──
え、そうなんですか?

インタビュー

大沼
全然そんな感じしないでしょ。これは空気は通すけど水を弾くっていうワックスです。
──
え、すご。
大沼
表面に塗るワックスって自然素材系のものも多いですけど、自然素材って基本的にはサラダ油を塗ってるのと同じなんで、メンテナンスが大変なんですよ。上にサラダ油を塗っても浸透するだけじゃないですか。ほんとは表面にいくらか残らないといけない。なのでこれは微量の硬化剤を混ぜてあるんです。
──
へぇーっ。
大沼
まあ無塗装でも全然いいんだけど、お醤油をこぼしたりするとシミができて、そういうのが嫌な方もいるので。
──
僕もキッチンには塗りたいと思ってます。
大沼
あと壁材で「塗装屋が使える漆喰」というのもあります。
──
どういうことですか?
大沼
漆喰は左官屋が塗りますよね。でも左官屋って今単価が高いんですよ。大工よりも全然高い。だから、塗装屋でできねえかなって。
──
あ、そういうことか。
大沼
塗装の漆喰は世の中には既にあるんですが、大抵は水性塗料みたいなもので、下地が見えなくなるまで三度塗りくらい塗らないとダメだったりする。そこまでするんだったら左官屋と変わらないんで、一発で厚塗りができる、しかも原材料しか使ってないというものを開発しました。開発に三年くらいかかったんですけど(笑)。
──
すごいなー!

インタビュー

大沼
あとこれは浮造りのスギの床板ですね。厚さは3cmです。
──
分厚い。あ、これだけあるから蓄熱するんですね!
大沼
そうそう。

インタビュー

大沼
あ、ちなみに建具もうちは自分たちで作ってるんです。
──
そうなんや!
大沼
うちの建具屋さんが持ってる機械があって、一回図面化しておけば同じものが作れる。そうすることでコストを抑えられるんです。
──
へぇー。
大沼
建具って図面と実物のイメージが合わないんですよ。なので何種類か用意して、ここで実物を見てもらうんです。機械だけじゃなくて組子もできますよ。

インタビュー

大沼
古民家って建具が重要で、本来であれば既存の古いものを使いたいんですよ。だけどどうしても家の性能を上げると大壁仕様になってきて、建具の高さだけじゃなく幅も合わなくなる。なので、新品で同じようなものを作るということをやってます。
──
建具屋さんがいれば新品で作れるということも皆さんあまり知らないですよね。
大沼
そうなんです。

インタビュー

大切なお金の話

──
大沼
あとお金の話もよくするんですけど、予算って家単体じゃなくて全体で考えないといけなくて、やってみると途中でお金が無くなってストップ、みたいな話になることもあるんです。
──
またそれ完全に僕じゃないですか(笑)。
大沼
(笑)たとえば外構費って、みんな見ないふりするんですよ。
──
めちゃくちゃ分かる(笑)。500万とか言われても「いや、まさかそんなわけないやろ」って(笑)。
大沼
(笑)とにかく家具とかカーテンまで全部考えておかないといけないんですよ。あとは坪単価。
──
ああ、坪単価。
大沼
坪単価の計算って実は決まりが無いんで、ひどいところだと大工仕事が入ってなくて材料費だけで出してたりとか。何が入ってて何が入ってないか分からない、言ったもん勝ちなんですよ。
──
なるほど。
大沼
仮設、外構、消費税も別だったりとか。あと敷地が分からない、つまり給排水などの設備にいくらかかるか分かんないからゼロで計算する。
──
あー。ありそう。
大沼
お金が安い、単価が安いということをうたってお客さんを集めるところは良くないですよ。そうじゃなくて、どんな家が欲しくてどんなことをしないとダメか、が分かってそれでやっと費用が見えてきますからね。
──
みんな考えるのが面倒だから単純なものが好きですからね。坪単価100万円、とかね。その数字だけ見て高い安いとか。
大沼
あとハウスメーカーって引き渡しの時にこういう「住まいのメンテナンススケジュール」っていうのを渡すんですよ。
──
え、何これ。
大沼
10年後に何をしないとダメか、20年後に何をしないとダメか、というのがスケジュールに組み込まれてて、そのために今からお金を貯めていきましょう、保険をかけましょうと。
──
おお……
大沼
で、そのハウスメーカーの保険に加入させるんですよ。
──
えっぐ(笑)。
大沼
ようするに、建てた段階で、次の10年後の仕事、20年後の仕事を取るんです。
──
やばいな! ていうかこれ、10年のメンテ項目めっちゃありますやん。
大沼
そうなんです。これ実際にかかるお金を計算したら、30年間で1381万円かかるんですよ。
──
えー……
大沼
これをたとえば屋根は焼き瓦にして、外壁は撥水コートかけられるようにして、畳も和紙畳にすれば、メンテが半分になるんです。あと性能を上げれば電気代も安くなるし、HEAT20にしたら医療費も100万円くらい違ってくるというデータもあります。
──
へぇー。
大沼
その建てた家を10年後に売るんだったら分かるんですけど、ずっと住むんだったら最初にちゃんとやっておいた方がトータルでかなり得をするんです。
──
僕もいつも言うんですよ。僕は昔アーロンチェアを無理して買って、もう12年くらい使ってるんですけど、今の時点で1日38円ですもんね。
大沼
そういうことです。ちなみに私も使ってます(笑)。
──
タンスも結婚した時に一つだけぜいたくしようと思って楠の20万円くらいするええやつを買ったんですよ。それももう15年近く使ってますけど、いまだに毎日楠のいい香りに包まれて幸せで。椅子やタンスのように毎日使うものはケチらずに良いものを選んでおくと、毎日幸せで、長持ちして、長い目で見れば一日あたりの費用なんか微々たるものになるんですよね。
大沼
そうなんですよ。結局「時間軸」で物事を考えられるかどうかなんですよね。
──
いやー、今日は知らないことばっかり聞かせていただきました。僕まだこんなに知らんことあるんやって思って(笑)。耐震、地盤の話とか衝撃でした。
大沼
色々突き詰めていくといろんなことがあるんですよ。たとえばその耐震の話もまだ言うべきことがあって、実はよく市とか自治体とかでやってる耐震診断って正確じゃないんですよ。
──
え、どういうことですか。
大沼
だって普通の大壁の家って、見た目では筋交いが入ってるか分かんないでしょ。それを「ゼロ」で計算しちゃうんです。
──
そうなんや。
大沼
その段階でおかしいじゃないですか。あれをやると大抵が「地震に耐えられない家」になるんです。
──
見えなかったらゼロ扱いなんですか。びっくり。
大沼
しかもそれを補強したとしても、木材の補強は行って、基礎は何もしない。上物を固めれば固めるほど基礎に負担がかかるんですが、そっちの補強は誰も提案しないんですよ。
──
はあー。
大沼
壁を固めても、柱の引き抜きが強くなったりするから、基礎が割れますよ。
──
あ、そうか。躯体が固まると力の逃げるところが無くなって、基礎にいくんですね。
大沼
基礎も年代によってちゃんと鉄筋が入っているものもあれば無いところもあって、本来はそれで補強の方法が変わってくるんです。鉄筋が無いと、基礎が地震で持ち上がった時に割れるんですよ。でもそこまでの話はしてないだろうし、結局、やってることが中途半端なんですよね。
──
へぇーっ。じゃあ今後、確認申請の兼ね合いで古民家にもいくらかの基礎を、ということになればそういう知識も必要ですよね。
大沼
そうですね。確認申請は頑丈にしろっていうことだから、基礎の話になってきますね。
──
あの、これたぶん無限に面白いお話が出てくると想うんですけど、さすがに文章量的に限界を突破してるので、泣く泣くここでおしまいとさせてください(笑)。大沼さんのお話をもっと聞きたい人はぜひモデルハウスに遊びに行ってね、ということで。
大沼
はい、いくらでも話すことがありますよ(笑)。お待ちしてます。

おわり

施工例







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所在地 本社:〒950-0872 新潟県新潟市東区牡丹山4丁目2-4
ヤード:〒957-0045 新潟県新発田市荒川1510
TEL 025ー271-2027
FAX 025ー271-2028
営業時間 09:00〜18:00(水曜日を除く)
創業 2016年
設立 2018年10月12日
資本金 5,000,000円
公式サイト https://shizenha-life.jp/

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