古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

有限会社 山路工務店・結設計室

対応エリア三重県中南勢地域(津市、松阪市、伊勢市、鳥羽市、多気郡、度会郡)

自然の循環とともに暮らす。

古民家アイコン

三重県多気郡、有限会社山路工務店の四代目である小林さんは、その穏やかな物腰からは想像もつかないほど筋金入りの精神を持ち、実際に行動する人でした。古民家に住み、田んぼで米を育て、土鍋でご飯を炊く。ほんの数十年前は当たり前だった「自然のサイクル」の中で生きることを、もう一度私たちに思い出せてくれるお話です。

インタビュー

四代目の継承

──
今日はよろしくお願いします。早速ですけど、あの、御社サイトにビフォーアフター載せてはるじゃないですか。
小林
はい。
──
僕よく工務店さんのサイトとか見るんですけど、大体ね、僕の思ってるビフォーアフターと逆なんですよ。
小林
え、どういうことですか?
──
いい感じの古民家やなって思った写真がビフォーで、うわこれ台無しにしてるな、と感じた写真がアフター(笑)。そういうところがめちゃくちゃ多い。
小林
ああ…(笑)
──
でも山路工務店さんのは、ほんとにしっくりくるビフォーアフターで、さすがだなと。方向としては「元に戻す+α」という方法ですよね。
小林
そうですね。ある程度ルールというか、自分の決めごとがあって。
──
それってたとえばどんなところですか?
小林
まず、新建材は基本使わない。どうしても仕方ない時は使いますけど、基本は無垢材、自然素材。
──
はいはい。
小林
あと、昔のええところは残す。間取りは現代に合わないので触りますけど、構造躯体から壁の材料から、元のあったものの良さを残して現代に住みやすい古民家にする、というのがテーマです。
──
はいはいはい。元の良さっていうのも、「元の良さが何なのか」が分かってないと取捨選択できませんよね。
小林
元の良さに関しては、やっぱり一番勉強させてもらったのは全国古民家再生協会ですね。古民家鑑定士を受けて、会に入って、全国のメンバーの中には宮大工さんとかいらっしゃるじゃないですか。他にも左官屋さん、屋根屋さんから話を聞いて、勉強させてもらってます。
──
小林さんは設計メインなんですか。
小林
設計から現場管理から、打ち合わせから、全部やります。一番最初にご相談頂いたお客さんを、アフター含めて最後までお付き合いさせて頂くという感じです。
──
分業ではないっていうのはいいですね。
小林
分業は一切しませんね。
──
ちなみに、社長の山路さんとはどういうご関係なんですか?
小林
えっとね、血は繋がってなくて、ちょうど3年前、僕は前の会社で建築事業部のトップやったんですけど、役員にならずにそこから独立をしようとしたんですね。自分で色々やってみたかったし、古民家のこともずっと気になっていたんで。
──
あ、そうなんですか。
小林
僕、前の会社で自宅を新築を建ててるんですよ。その時にも一回迷って、古民家にするか新築にするか。
──
ああー。
小林
でも、子供のこと考えたら、住みやすい地域で新築かなって思って家を建てたんですけど、その独立しようかと思った時にもう一回いろんな考えが頭をぐるぐる回って…
──
ほー。
小林
今の会社は前の会社の外注先やったんですけど、当時、山路社長は三代目なんですけど跡継ぎがいなくて工務店を畳まないといけないっていう状況だったんです。それで僕が独立するって言った時に、じゃあうちに四代目としてやっていかへんかと。
──
なるほどー。
小林
僕もそこで改めて木の使い方、昔の大工さんから受け継がれてきたものを勉強できると思って、お願いしました。
インタビュー

築五年の自宅を売却

──
前の会社では普通の住宅を手がけてたんですか。
小林
新築、不動産、リフォーム。自然素材も使うんですけど、そこまでこだわりが強くないという感じで、新建材も結構使うので、自分的にはどうなんやろなって。新建材は循環せずにゴミになるし、自然に還らない家づくりを続けるのをどうにかしたいなって。
──
なるほど。その、ずっと「古民家」っていうのが頭にあったっていうのは、どっから出てきた感覚なんですかね?
小林
何やろなぁ。元々古いものが好き、っていうのがあったんですよ。僕は出身は三重県の伊賀市の方で、わりと古い家もよく見てきていて何となく馴染んでたし、田舎の方なのでニワトリやら何やらが身近にいて…
──
なんか友達の家がそんな家だったりしませんでしたか。
小林
ありましたね。立派な家だったり。すげえなあって。
──
僕もね、最初新築しようと思って土地まで決めて、契約直前まで行ったんですけど、なーんか違うかもしれないってギリギリで思い直して。なんか急に怖くなったんですよ。
小林
ほー。
──
で、ほんまに自分が一番好きな家って何やろうって考えていったら、小学生の頃に一番仲良かった友達が旧家に住んでて、そこに入り浸って縁側でずっとジャンプ読んでたんですね。なんかそれが「家」の原体験になって、それが自分の一番好きな家なんかなって。
小林
あると思いますね。何気なく過ごしていたのが記憶に刷り込まれてるんでしょうね。
──
小林さんの地域、古民家は残ってるんですか?
小林
山手に行けばまだありますね。
──
古民家再生の件数ってちょこちょこある感じですか。
小林
そうですね、まず僕が実際に古民家を買って、直したんですね。
──
えっ、そうなんですか。
小林
津市っていうところで自分で設計した家に住んでたんですけど、それを売ったんですよ。
──
え、そうなんですか! すごいな!
小林
(笑)築5年で…
──
えー!
小林
独立をする時に考えて、この先この家にずっと住むのか? って。でも独立したら古民家をやろうと思ってたんで、自分が住んだこともないのに人に言えないじゃないですか。古民家はいいですよって言っても、何がいいのか。工事は大変ですって、どこがどう大変なのか。それを知るために、家を売ろうと。
──
そこまでする人、いないですよ。なかなか。
小林
でもほんとに賭けみたいなもんで。その家もすぐ売れるか分からないのに、売れる前に古民家を買ってしまったんですよ。
──
まじっすか(笑)。
小林
で、買った以上はやらなあかんと。建てた家は人気のエリアやったんで、売れるやろうとは思ってたんですが、結構心配で…(笑)
──
(笑)いや、でもなんか僕と似てますよね。僕も買うてしもたんで、最後までやらんとあかんと。途中でこれもう全部更地にしたろか!って何回も思ったんですけど(笑)。
小林
(笑)うちの場合は事前にチェックして、躯体もしっかりしてたし、雨漏りもないし、足回りを直せば何とかなるやろという目星はついてたんです。で、協会で色々勉強させてもらったこともあるし、助けてくれる人もたくさんいるし、一回ちょっとやってみようと。
インタビュー

古民家暮らしのかたち

──
それでどうですか、直して、実際に住んでみて。
小林
むっちゃいいですよ。
──
ですよね(笑)。
小林
薪ストーブも入れて、循環というのを大事にしてるんで、なるべくガスとかに依存せず、木も周りから集めて、井戸水もあるし。
──
ええなぁ。
小林
ボタン一つでファンヒーターという世界とは、また違った感じにしておきたいなと思って。
──
ええことされてますねえ。たとえば災害で生活インフラが止まるという恐怖があるじゃないですか。僕よく思うんですけど、古民家に住んでると「なんとかなりそう」感がすごいですよね。
小林
そう、今インフラ止まっても当分生活できますよ(笑)。
──
(笑)
小林
薪もあるし水もあるし、電気だけはちょっと無理ですけど。でも昔はそうだったんですもんね。災害が来てもストップしないし、あんなに取り残されたりしない。地域でエネルギーが循環してましたからね。
──
そうですね。
小林
そういう生活も含めて、古民家暮らしかなって思います。
──
ほんまにそうですよ。家単位で考えちゃうんですけど、実際住んでみたら、いろんなことに巻き込まれるじゃないですか。ヘビと対決したりとか(笑)。
小林
(笑)そんな生活もふまえての古民家再生ですよね。
──
僕は古民家に住んで、生活の価値観がけっこう変わったなって思いますね。優先順位というか。今の家ってとにかく機能的ですけど、機能よりもデザインを楽しんだりとか、無駄なところを面白がったり…僕、魅力的な建築って無駄があると思ってるんですよ。
小林
古民家は魅力だらけですよね。新築から古民家に移った時にギャップがあったんですが、たとえば梅雨の湿気っていうのはほとんど感じないですね。床は杉の無垢材、壁は漆喰なんで、そういう材が調湿してくれてる。
──
はいはい。
小林
新築でも珪藻土を塗れば調湿効果があると言われてますけど、その下って調湿できないプラスターボードなんで。古民家の土壁は、どこまでいっても土ですからね。たぶん湿気を吸う量って全然違うと思います。
──
たしか1~2mmくらいですよね、プラスターボードへの上塗りの厚さって。
小林
そうです。全然量が違う。
──
気密ってどうされました?
小林
気密は、元々が木製窓じゃなくて、昔の中途半端なアルミサッシに替えられてたんで、そういうのは全部今の断熱サッシに替えました。隙間風は対策しとかんと、なかなか今の生活は厳しいかなと。
──
なるほど。じゃあ縁側の掃き出し窓とかは…
小林
そこも断熱サッシにして、でも外観的にはサッシが入ってるっていうふうには見えないように、外側に開け閉めできる木の格子戸を付けました。
──
ああー、そうするんや。雨戸みたいな感じですか。
小林
そうですね。そうしておいて中は内障子を付けるんで、そうすると外から見ても中から見ても、サッシが目に触れない。
──
なるほど。
小林
やっぱりせっかく漆喰壁で、鎧壁なのに、窓だけアルミサッシというのもちょっと。
──
そうなんですよね。そういうところは気にしてくれる人と、まったく理解してくれない人に分かれますよね。うちも同じように数十年前のリフォームでサッシに替えられてる部分が多かったんですけど、まあもうなんか、台無しになってて、しかもその周りだけリシンの吹き付けとかで、ほんま何やっとんねんと(笑)。
インタビュー

機械のいらない生活

小林
昔の古民家って、バランスが整ってましたよね。変なことはしてないから。
──
そうそう。
小林
そっから時代の流れでベニヤが貼られたり、変な洋風のタイルが貼られたりして。どうもあれが嫌で。当時は最先端で珍しかったんでしょうけど。
──
僕ね、いつも思うんですけど、あの時代は調子に乗りすぎなんですよ(笑)。1000年近く続いてきたもんを、その代がいきなりひっくり返せるわけないやんって。
小林
改修工事の時におばあちゃんなんかと喋ってると、ベニヤを剥がして元の土壁や梁が見えた時に「いやあもうそんなかっこ悪いもん見せやんといて」って言うんですよ。
──
ああー。すごいなー。
小林
その人たちにとってはただの汚れた梁、柱なんですよね。そこにピカピカの新建材をペタッと貼ると、きれいになったと言うんですよね。
──
今思ったんですけど、ていうことは、みんな元々梁とか柱を美しいって思ってなかったんじゃないですか。単に選択肢が与えられてなかっただけで。
小林
うんうん。
──
それでうまいこと手つかずで済んでたのが、新建材が出回ったことによって、みんな新しい選択肢に流れていったんじゃないですか。古民家がいいんだ、木の柱がいいんだって、昔から別に誰もそんなこと思ってなくて。普通に住んでいただけで。
小林
そうかも知れないですね。それで今はそういう家が無くなってきたことによって逆に、その良さが再発見されつつある感じですね。
──
そんな感じですよねえ。
小林
うちの社長とかも「昔は五右衛門風呂で、もうあれが面倒くさかった」って言ってますもんね。でも今それを知らない世代の僕らが入ると、薪のお風呂ってすごい芯から温まって、これはええなあって思いますもん。
──
へぇー。ご飯も炊飯器じゃなくて土鍋で炊くと美味しいらしいですよね。
小林
うちも炊飯器使ってないです。土鍋か無水鍋。1年くらい前にジャーが壊れて、「壊れるのってどうなんやろう」って(笑)。
──
やばいですね、その思考は(笑)。
小林
ちょうど三重県なんで、伊賀焼っていうのがあって。ちゃんとご飯が炊けるやつがあるんで、もうそれで。そっちの方が美味しいんですよ。
──
やっぱそうなんですか。
小林
ご飯を炊くのに、いちいち人が工場で作ったプラスチックのジャーを…
──
それ、だいぶやばいステージですね(笑)。
小林
(笑)
──
いやでも分かりますよ。youtubeとかでなんとか民族の狩猟風景とか見るんですけど、氷った川を掘って、銛で突いた魚がピチピチピチ跳ねてるやつを、その辺から薪集めてきて焼いて食う、みたいな。たぶんそれってめっちゃくちゃ美味い食べ方ですよね。
小林
実は一番ぜいたくなやつですね(笑)。
──
人間ってそこから利便性とか手軽さとかを手に入れて、代わりにものすごい本質的なものを失ってきたんやなって。
小林
それは無くなって初めて気付くんですよね。
──
僕、神戸のマンションに6年くらい住んでたんですけど、周りに土がないんですよ。植木の土を替える時にね、捨てるところがないんですよ。それで調べたらゴミの日に出してくださいって。
小林
ゴミですか(笑)。
──
そう。公園とか捨てに行こうとも思ったんですけど、田舎の公園と違ってがっちり整備された公園なんで、やっぱり捨てるところがない。それでしょうがないんで車に乗って、土のあるところを探しに行ったんですけど(笑)。
小林
(笑)
──
そういうのがしんどくなって、田舎に引っ越したんです。
小林
僕も前の新築で住んでた時は住宅街だったんで、僕らのちっちゃい時は田んぼにタガメがおったりミズカマキリがおったりしたんですけど、住宅街で育った子供はそういうのを図鑑でしか知らないんですよね。
──
ああー。
小林
そういう環境もどうかなっていうのもあったんですよね。ちょうど子供が小学生の時で。それで今は田んぼもやってます。
──
えっ、マジですか(笑)。
小林
でも食も大事じゃないですか。自分らの主食である「米」っていうのを、作り方も知らんというのはどうなんやろって。
──
古民家に移ったのと発想が一緒ですね(笑)。
小林
そんなに生産はしてなくて、基本は手植えで、昔の道具、足踏み脱穀機と、唐箕(とうみ。風力で穀物を選別するための農具)でやるんですけど、機械がいらないんです。田んぼを起こす時くらい。
──
へぇー。
小林
結構大変やけど、人の手だけでお米ができるんで。
──
インフラ停止どころか、飢饉が来てもいける感じですね(笑)。
小林
スーパーがストップしても、米作りと野菜作りができていれば…
──
やばいな。自治区作れますね(笑)。
インタビュー

人に見せて欲しい

小林
結構そういうのに気付いてる人たちがいて、30代40代の若者が僕らと一緒に色々やっとるんです。
──
あ、そうなんですね。
小林
そういう人らってやっぱり古民家に住んでるんです。
──
え、住んでるんですか。はあー。
小林
で、うちみたいにがっつり直す人もいれば、隙間風ピューピューのままの人もいるし。
──
古民家の断熱はそのどっちかですもんね。どっちの良さもあるし。
小林
そうですね。ただ、新築を建てようとしている若者に、同じお金で快適に住める古民家を用意してあげることができれば、選択肢がだいぶ広がるかなって思うんです。実際自分の家をモデルハウスにして、古民家なんやけど快適に住める、動線も今の形に変えられる、っていうことを見学会でやってみたんですけど、そしたらすごい反響で。
──
あー。
小林
議員さんや町長さんたちとかも見に来られるし、新聞社も来るし。そういうので知ってもらったら、うちのおじいちゃんの家もそうやな、うちの実家もこんな家やなって、そういう方に、直す前のうちの写真を見せてあげると、こうやって変えれるんやって驚かれて。
──
素晴らしいですね。
小林
みんな知らないんですよね。でも、それを知ってもらわんことには、古民家を残していきたいって言ってもピンと来ないですよね。
──
ほんとそうですよね。
小林
それに共感してくれた人が、新築予定やったのを止めて、古民家のおじいちゃんの家を改修してくれたりとか。
──
めちゃめちゃええことされてますねー。
小林
この前も行政と一緒にワークショップやったんですけど、あと2、3年で解体して更地にする予定の小さい古民家があったんです。そこが「何してもいいよ」って言ってもらってたんで、じゃあ天井をバラさしてくださいと。
──
ほー。
小林
例のごとくベニヤでベタベタに張ってたんですけど(笑)、これを剥がしたら梁が見えて天井裏もきれいに見えるやろなーと、それってみんな経験がないんで、ワークショップで集まった人たちに解体屋さんが付いてもらって、自分らでバラしてみてくださいって。
──
ああ、面白いですねそれ。
小林
そしたら、女子がすごくて。男の人はホコリも落ちるし、ちょこちょこやってすぐ逃げてくんですけど(笑)、わりと女性の方がバリバリバリ! って。それで剥がしてみると黒ずんだ梁で、それを見上げた時に、印象がガラッと変わるんですよね。
──
ほんまねー、あんなしょうもない薄皮一枚でね。でもやったことないと絶対分からんでしょうね。
小林
分からんでしょうね。ちょうど今日そのワークショップの参加者から連絡があって、うちの家を見てみてくれと。どうなるか分からんけど相談に乗ってくれって。とにかく、知らんだけの人たちがすごい多くて。
──
そうやねんなー。それをどうにかせんとなー。
小林
やっぱりこっちから発信していかんとあかんですね。発信力というのは大事やなと思います。その一環として、古民家再生させてもらったお客さんには、できるだけオープンハウスをお願いしています。
──
なるほど。教育も兼ねてですね。
小林
そうそう。「人に見せて欲しい」ってお願いしてるんです。「僕の家も見ましたでしょ」って(笑)。
──
ほんまや(笑)。
小林
でもそうお願いすると、逆に「ぜひ見て欲しい」って言ってくれる方も多くて。こんなに綺麗になったって。
──
はいはいはい。うちの集落でも古い家を嫌う人は多くて、暗いし、ジメジメしてるし、寒いし、新しい家に住みたいわ、みたいに言うんですけど、いや、直したらええやん! って。
小林
(笑)
──
そんな問題なんかすぐ直るで! って。
小林
そうなんですよね。良くなるんですけどね。
インタビュー

昆虫が戻ってくる田んぼ

──
僕らの世代ってITの進化とともにあったと思うんですけど、その反動で、僕はもういい加減「情報」とか「便利なツール」とかにウンザリしてるんです。
小林
あー。
──
今の高校生ってたぶん晩飯食ってから寝るまでの間、ずっとyoutubeとLINEでしょ。でも僕らが高校の頃って、その間にすごい自由な時間を持ってましたよね。
小林
そうですね。なんかいろんなことを頭で考えてたと思う。くだらんことからややこしいことまで。
──
それが大人になった時に、いろんなところで芽吹いてると思うんですよ。小林さんが古民家を選んだっていうのは、子供の頃から育んできた感性なのかも知れない。僕は、感性が育まれてない人は合理主義に支配されると思ってるんで。
小林
ちっちゃい頃からマンションで、壁に囲まれて育ってたらこういう道を選んでないかも知れませんね。
──
やっぱり田んぼでタガメを追いかけ回すぜいたくな少年時代が(笑)……タガメって今は絶滅危惧種ですよね。
小林
うちの田んぼは農薬とか除草剤は一切使わないんですよ。そしたら、戻ってくるんですよね。
──
えっ!
小林
ゲンゴロウとか、タガメとか。
──
戻ってくるんですか? え、じゃああれって薬使ってるからおらんようになってるんですか?
小林
そう。
──
へー! そうなんや。
小林
これって家でも同じことなんですよ。ビニールとか新建材をバンバン使った空間で人間が生きてるっていう状況が。田んぼの環境もそうなんですけど、虫が出るから薬を使います、それに耐える虫が出たらさらに強い薬を使います、でも実は、薬の替わりに手間をかければうまくいくんです。
──
はー。
小林
家もそうです。昔は手間をかけて世話をしたけど、今はしないですよね。だから除草剤的な発想で新建材を使うんですけど、それが身体や心にいいのかというと、どうなんやろって。
──
なるほどー。
小林
そこに気付くかどうかっていうのも、感性なのかも知れないですね。
──
たぶん自然の気持ちよさを知ってるからですよ。僕もちっちゃい頃は野っ原を走り回ってましたから。
小林
稲刈りして収穫して藁が残りますけど、昔はそれを家の土壁とかに使っとったわけで、すごい生活のサイクルがあるんですよね。
──
システムが完成されてますよね。
小林
そうやって日本人は家と生活の循環型社会を築けとった。すごい優秀な文化を持ってたんですよ。
──
はいはいはい。ほんまですね。
小林
でもそこに欧米の手法や考えが入ってきたことで、違う方向に行ってしまったと。
──
欧米は元々自然を循環させる気なんか無いですからね。自然は自分らの奴隷やと思ってますからね(笑)。
インタビュー

最後の工事の話

小林
前の会社でやった仕事の一番最後が、建て替えやったんです。
──
はい。
小林
それが古民家を壊して新築するという仕事で。一応設計も関わったんですけど、壊すときに梁が残ってて、それを見てたおかあさんが泣いたんですよ。
──
へぇーっ。
小林
ポロポロ涙を流して。それで「あ、これをやったらあかんねや」って思って。それが独立したきっかけの一つやったんです。それは強烈に頭に残ってます。
──
強烈ですね。
小林
こういうのは残さなあかんと思ったし、それを残せやんだ当時の自分がおって。知識も無いし、好きやけどどうしようもなかったっていう無力感があったんですよ。それで古民家の勉強をせなあかんと。
──
もうその時は何も言えないですよね。
小林
何も言えやんだっすね。先代が建てた家をバリバリ壊されるのを僕も隣で見てて。そのおかあさんが「なんか分からんけど涙が出てくる」って仰って。それはショックやったです。
──
家は生き物みたいだって僕も思うんですけど、そういうところを施主さんも本能で感じてるんでしょうね。
小林
そうやと思いますね。あの古民家の状態やったら、今ならちゃんと残せたやろうなって思うんですよ。でも当時は力が無くて…
──
あの、僕も40過ぎて、最近涙腺が弱くなってまして…(笑)
小林
(笑)いや、そん時は僕も涙出てきましたよ。何も声かけれへんし。
──
でもその方の家のおかげで、これからたくさんの古民家を残していけるようになったわけですよね。
小林
そうですね。もちろん新築もしますけど、新築もなるべく昔のやり方でやって、古民家はなるべく残して、次に繋いでいくっていうことをやっていきたいですね。

おわり

施工例

有限会社 山路工務店・結設計

会社名称 有限会社 山路工務店
建築事業所名 結設計室
代表者 代表取締役 山路 春夫
会社沿革 1930年             昭和5年創業
1995年2月 有限会社化『有限会社 山路工務店』に改称
2005年3月 建築士事務所登録 『有限会社山路工務店 二級建築士事務所』
2017年5月 建築士事務所名『結設計室』へ名称変更
所在地 〒519-2423 三重県多気郡大台町新田319
連絡先 0598-85-0069
事業内容 【古民家再生事業】古民家再生・調査・鑑定
【新築業務】新築住宅設計・施工、店舗設計・施工
【リフォーム事業】住宅・店舗リフォーム、水廻りリフォーム、大規模リノベーションの提案設計・施工、耐震工事、増改築
建設業の許可 三重県知事 許可(般-27)第13219号
建築士事務所 三重県知事登録 第1-2426号
古民家鑑定士 認定番号 KZ190152
伝統耐震診断士 認定番号 DT002993
既存住宅現況調査技術者 Mjk-K000611
厚生労働省認可登録番号 KK070245
公式サイト https://yamaji-koumuten.com/
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