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なぜ日本人は古民家を解体しちゃうのか考えてみた

座敷

昨日ぼんやりとそういうことを考えてたんですよ。
古民家、潰されがちじゃないですか。
あっちでもこっちでも、気付けば伝統的な古い家が取り壊されてて、洋風(?)のピカピカの新築が建ってるじゃないですか。
もうそういうのが戦後ずーっと続いてるじゃないですか。
今でこそ「古民家=おしゃれ」みたいな風潮も出てきましたけど、一昔前は「古民家=ダサい・恥ずかしい」だったじゃないですか。
なんで日本国民は自国の伝統を「ダサい」みたいに思っちゃうのか?
そんな国あります?
イギリスで紅茶がダサくなって代わりに番茶が主流になりますか?
アメリカで誰もバスケをしなくなって代わりに相撲が大流行しますか?
しないよね?
じゃあなんで日本だけ、古民家が潰されて、着物を着なくなって、番茶の代わりにロイヤルミルクティーを飲むようになっちゃったのか。
ということで、今回は日本人が古民家を、ひいては日本の伝統文化を軽んじてしまう理由について、僕なりに改めて考えてみました。
ではどうぞ。

まず、ぱっと思いつく理由はいくつかあります。

1. 江戸の建築はスクラップ&ビルドだったから?
2. 戦争に負けてGHQに洗脳されたから?
3. 戦後の住宅不足で「早く」「誰でも簡単に」建てる必要があったから?
4. 戦後現れた「ハウスメーカー」なるものが「新築最高!!」って宣伝するから?
5. そもそも日本国民は新しいもの好きだから?

はい。
まあこれらはよく言われてることだし、このブログでも何度か触れた話題でもあります。
が。
今回改めて一つ一つ検証していきますね。

【1. 江戸の建築はスクラップ&ビルドだったから?】
古来より日本の建物は木でつくられており、再利用可能な建て方で建てられていたと。
そしてこの国は地震大国であり、木造ゆえに火事も多かった。
だから日本人は古くから家を「ずっと長く住み続けるもの」というよりは「壊れたり燃えたりして無くなるもの」と考えてきたと。
江戸じゃ火事の時は延焼を防ぐために隣の建物を壊したんだと。
だから現代の日本人も、建物は守り続けるのではなく、壊して、建て替えるんですよと。
まあこういう論説があるわけです。
確かにすごい説得力ある。
これは「壊すことに抵抗が無い」という意味においては、正しい理由だと思います。
でも考えてみれば、だからといって日本人のこの感覚が「伝統を軽んじる理由」にはならんのです。
スクラップはいいんだけど、ビルドした時に、なんで伝統建築じゃなくて真四角のモダン風な家になるのかってことですよ。
なのでこれだけでは理由としては片手落ちです。

【2. 戦争に負けてGHQに洗脳されたから?】
これも僕の周りで時々話題になる説。
日本人をコントロールするには、まず天皇家の弱体化と、憲法整備と、あとは伝統文化の破壊だ。
と元帥がグラサンを外してニヤリと笑ったかどうかは知りませんが、確かにそういった趣向は無きにしもあらずだと思います。
でも実際、進駐軍みたいな連中が、1000年単位で培ってきたその国固有の文化を変えようなんて、狙ってできるもんかしら? とも思います。
実際、伝統建築が新しく建てられることを禁じた法律「建築基準法」は1950年に施行されていますが、試しに調べてみたらGHQよりも前の段階で「古民家やめよーぜ」の動きがあったことが分かったんです。
(この辺りの話は古民家の耐震性を語った記事に詳しく書いていますので下記リンクを参照してください。)
ということで、この理由も弱いかなと。

【3. 戦後の住宅不足で「早く」「誰でも簡単に」建てる必要があったから?】
そう。これは確かにそう。
戦後の焼け野原で、まずみんな何よりも家が必要だった。
日本が復興すればするほど、みんな家を欲しがった。
そんな時に、貴重な木材をふんだんに使って大工さんがじっくり建てていく伝統建築じゃ全然ニーズに合わなかったんですね。
とにかく誰でも簡単につくれて、めっちゃ早く建てられる工法が必要だった。
さらに戦後爆発的に普及した「新建材」がこのニーズにミラクルフィット。
ビニールクロスを使えば、漆喰が乾くのを待たなくていいんですよ。スレートの屋根にしとけば、土を葺かなくてもいいんです。
職人が一つ一つ制作する木製建具の代わりに、工場で大量生産できるアルミサッシを。
村のみんなで竹を編んで土を塗ってつくる壁の代わりに、工場で大量生産できる石膏ボードを。
そんなお手軽素材の登場とタイミングが合わさって、一気にこの建て方が広がっていった。という説。
これは戦後に伝統建築ではなくそういうお手軽な家がたくさん建てられた、という理由においては納得できるものです。
が、しかし。
やっぱり、古民家を捨てた、古民家がダサく感じるようになった、という理由としては弱いのですよ。
そんな上っ面のニーズや新技術だけで伝統という「感覚」を捨てられるかな? という疑問があるのですね。
たとえば仕事で急いでてすぐにメシを食わないといけないからコンビニに駆け込んで「一日の野菜の半分の量が採れる!中華丼」を温めてもらって駐車場で背中丸めて食うじゃないですか。
そん時にさ、おいしさなんか求めてないよね。
コンビニ飯は技術革新によってそこそこ美味しくなってるんだけども、その時の心情として、美味しいものを食べたいというよりは、とにかく今すぐに腹が膨れればいいって思ってますよね。
でも今の日本の現状って、その「一日の野菜の半分の量が採れる!中華丼」こそがあらゆる家庭で一番食べられている超人気の食事であり、おじいさんから若者、主婦、お子様にいたるまでみんなが駐車場で背中丸めて毎日そればっか食ってるみたいな状態なんですよね。
とりあえず新建材ですぐに建てる必要があった。それは分かる。
でもだからといって「それが一番いい」「むしろ今までのやつはダサい」という感覚になるのはなぜだ。
そこの謎がやっぱり、説明できないんですよね。

【4. 戦後現れた「ハウスメーカー」なるものが「新築最高!!」って宣伝するから?】
はい。
これは主に僕が提唱している説なんですが。
このブログで何度も書いている通り、「ハウスメーカー」というものは日本にしか存在しません。
海外は基本、地元のちっさい工務店なんですよね。
そもそもそんな新築しないの。仕事といえばほぼメンテなの。だからちっさい工務店があれば大丈夫なの。
ところがこの国ではいつからかハウスメーカーという巨大企業が誕生し、えげつない金額の広告費を使ってえげつないプロモーションを行っています。
その内容はもちろん「新築もいいですけど、古いものも大切に、メンテナンスして継いでいきましょうね」とかじゃありません。
「新築建てようぜ!!!!!!!!」
です。
「これは建て替えですね!!!!! 寿命です!!!!!!! 新築ッゥゥ!!!!!!!!!!!!(偏見)」というのが彼らの主旨なので、これも明らかに古民家の解体という流れに一役買っているでしょう。
でもさー。
ほんとに日本人が伝統を大事にしてたら、新築のプランを見た時に、ほぼ全員が「いや…こういうのじゃなくて…和風の家がいいんですけど……(困惑)」ってなると思うんですよ。
だって今の家なんか元々日本人と何の関係もないデザインやん。
冷静に考えたらそれってアフリカ人の家にパルテノン神殿を提案するようなもんでしょ。
そんなんどのアフリカ人でも困惑するでしょ。
でも不思議なことに日本人は困惑するどころか喜んじゃうんですよ。
パパさんもママさんも「新築!!!!!!!! 吹き抜け!!!!!!!! スキップフロアァ!!!!!!!!(偏見)」などと営業と一緒に叫んじゃう(偏見)んです。
この謎はやっぱり、ハウスメーカーの宣伝云々だけでは解けないですね。

【5. そもそも日本国民は新しいもの好きだから?】
これ。
最後の項目ですが、よく言われますよね。日本人は新しいもの好きだと。
先日某美術コレクターの人に教えてもらったんですけど、世界で何かが流行った時、レアなアイテムはひとまず日本に集まるんですって。なぜなら新しいもの好きの日本人たちが飛びついて買い漁るから。でも日本人は飽き性でもあるから、そこからまた世界に拡散していくんだって。
この逸話が示す通り、実際そういう習性は日本人にあるようです。よって、実はこの理由が古民家を軽んじる原因に一番近いのではないかと思います。
古民家は古い、つまりダサい。
モダン住宅は新しい、つまりいけてる。
古い=ダサい / 新しい=いけてる
という理屈もヘッタクレもない論理が、日本人の頭の中においては成立しているのだと。
あるなー。
これ、ある気がするぞー。
でね、
今回はさらにもう一歩踏み込んで、じゃあ、なぜ日本人は「新しいもの好き」なのか? ということを考えてみたんですよ。

もう結論から言っちゃいますが、それは「鎖国」が関係してるんじゃないか? と思ったのです。
これまで考察してきたように、日本人というのはちょっとおかしい。
大喜びでパルテノン神殿に引っ越すアフリカ人と同じくらいおかしい。
でも、ほんとに生まれつきおかしいのか?
2000年前から日本人はおかしかったのか?
僕はそうじゃないと思うんですよ。
日本人は元々おかしい民族なんじゃなくて、過去に一度、おかしい経験をした民族なんです。
それがすなわち、鎖国。
こんな政策をとった国、他にあります?
ほぼないんですよ。
200年以上の鎖国政策。
これ数字で書いてもピンとこないと思いますが、とんでもない期間です。当時の人々が20歳で子供を産んだと仮定すると1639年~1854年で実に12世代!
おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんの時代から鎖国!!
ガイジンなんかもう見たことないどころか口頭伝承の伝説になってるレベルです。
それだけの期間続いたこの異常事態が日本人のメンタルに与える影響は、先に述べたGHQやら、戦後のニーズやら、ハウスメーカーの宣伝やら、そんなレベルじゃないんですよ。
どういうことかというと、まず異文化についてめちゃくちゃ免疫が弱くなる。
だって国内で12世代にわたって純粋培養されてるもんね。
白人や黒人見ただけで泡吹いて倒れるくらいには仕上がってます。
ということは、裏を返せばめちゃくちゃ影響されやすいってことよ。
人は見たことのないものを見た時に大興奮するものです。
中学~大学の子らがキャアキャア騒いでるのってほぼこれが原因やからね。
生まれて初めて食べたモスバーガー!
生まれて初めて聴いたヒップホップ!
生まれて初めて見た京都の紅葉!
キャアキャア! キャアキャアキャアキャア!!
ってなるやん。
次の日にはもうダボダボの服着てキャップ斜めにかぶってモスバーガー食いながら京都行きの電車に乗ってるやん。
そらそうなるやん。初めてやねんから。
つまり!!
これと同じことが鎖国解除された日本全土で一気に発生したのではないか!! ってことだよ!

僕ね、今の集落に引っ越すまで、昔の人は伝統を愛して、それを大事に残そうとしてきたんだと思ってました。
でもどうも違うっぽいのよ。
この辺の地元の方々と喋ってたら、大多数の人に「伝統」という意識がないんですよね。
家は大事にするんです。立派な家だという自慢もある。
でも「伝統を守る」という感覚がない。
ようするに立派だから大事にするんであって、代わりに全然別の洋風のデザインの、それよりもっと立派な家があったら、そっちに飛びついちゃう。
そういうことから僕は、日本人は「そもそも選んでないのではないか?」という仮説を立てました。
大多数の人にとっては、伝統建築が素敵だから伝統建築を建ててきたのではなく、伝統建築しか無かったから伝統建築に住んできたんじゃないか? と。
この発見は衝撃でした。
しかしそう考えてみれば思い当たる節がある。
この国は建国以来一つの王族、しかも万世一系の血族が1500年以上にわたって統治するという冗談みたいな国です。
つまり一度も侵略を受けていない国ですね。
普通は何度もよその国に乗っ取られるんですよ。ある日突然ガイジンが押し寄せてきて、男は全員皆殺し、女子供は全員奴隷。みたいな。
そんなえぐすぎる歴史は、多かれ少なかれどこの国にだってあります。
でもこの島国の日本には奇跡的に無い。
ゆえに、外圧もない、移民もない、ほぼ単一民族のまま、2000年以上田んぼを耕してやってきた。
するとどうなるかというと、こうなります。

1. 固有の優れた文化が育まれる
2. その文化の価値に気づけない

優れた文化は生まれるんです。でも、それが大事なものだということが分からない。
外圧が無いから、侵略が無いから、それが守るべき自分たちの大切なアイデンティティだって気づけないんですよ。
文化的自意識が芽生えないまま、「結果として」素晴らしい文化が生まれただけということなんじゃないのかと。
さらに、そこに鎖国が拍車をかけた。
200年以上も目隠しして何も見せないでおいて、それからパッと目隠しを取ると、そこには見たことのない世界が遙か遠くまで広がっていた……
そんなん年頃の高校生じゃなくともキャアアアアア!! ってなりますよね。
この強烈な体験によって、日本人の民族性に「新しいもの好き」という属性が植え付けられたのではないか。

もしこの自説が正しいのであれば、日本を守るための「鎖国」という手段が、200年後の自国の文化を崩壊させる遠因になったという、なんとも皮肉な運命です。
が、2022年現在の僕はこの説を推しておきます。
もちろん実は完全に鎖国してなかったんだよ~とか、鎖国していた国は他にもあるよ~とか、細かいツッコミはたくさんあると思いますがそういうのは置いといて、日本人特有のメンタリティをざっくり把握するにはこういう考え方があってもいいんじゃないですかね。

いやー、ということは、古民家の解体を食い止めるのはなかなか至難の業ですな。
まあ今は文明開化どころかインターネットという最強ツールがあることだし、もはや海外の人を見て泡吹くわけでもないから、誰だってきっかけさえあれば古民家の価値を見直すことはできると思うんですよね。
そのためにはこうしてアホみたいな長文書いて、せっせと情報を発信することは無意味じゃないと思ってますよ。

てことで、僕の話は以上です。
また僕の中で新しい説が出てきたらご紹介しますね。
最後までお読み頂きありがとうございました。

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