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古民家リノベーション体験談36 解体屋さんの話

【前回までのあらすじ】一家離散

なんとか離れと庭が更地になったわけですが、今回は解体屋さんの話をしようと思います。
解体屋さんというのは、大工さんではなく、解体を専門にする人たちです。
作るのではなく、ぶっ壊すのが仕事。
そんなことを言われると何となくモヒカンでタトゥーで筋肉ムキムキなグラサンの方々がやって来そうな雰囲気ですが、実際は普通の兄ちゃんとおっちゃんでした。

以前少し書きましたが、僕は解体屋さんを工務店経由ではなく、自分でアイミツサイトを使って見つけました。
その結果100万円ほどサクッと浮いたんですが、安いだけに、うちの親方は「大丈夫か」と心配をしておりました。
基本的に工務店さんというのは、よその業者が入ってくることを嫌います。
当然です。
自分が使ってる業者であれば融通がきいたり、無理を言えたりするし、ダメなところと良いところも分かってるし、なんせコントロールしやすいんですが、全然知らない業者だとそうはいかないわけで。
なので僕を含めて不安要素はありましたが、結果から言うと、全然ちゃんと仕事してくれましたよ。
特におっちゃんはユンボの扱いが神がかってて、よくテレビでやってる「ユンボで紅茶入れる職人」みたいなレベルでした。それを見てた僕がもし小学生だったら将来の夢に「ユンボにのる」って書いてたと思います。
ただ解体屋さんは壊す専門なので、例えば壊した後で復旧させる箇所だったり、切り離しの部分というのは、大工さんを呼んで慎重にやってもらいました。

解体

そんな感じで一緒に工事をやってるうちに、僕も毎日現場に出てたおかげで仲良くなっていきました。
僕が解体について根掘り葉掘り聞くもんだから、ある日、じゃあ別の現場の見学に来る? ということで、近所の解体現場について行ったんです。
そしたらですね。
立派な古民家なんですよ。
すごいかっこいい数寄屋風の門があって、いい味の出た床板があって、型ガラス入りのかわいい建具があって、それを、解体屋さんが、バール振り上げて、
バキグシャボキバリバリバリガシャーン!!
ぼく「キヤアアアアアア!!」

その場にいた僕以外の全員が「?」という顔をしてました。
そりゃそうです。
その場にいる僕以外の全員が古民家を「ゴミ」だと思ってるんですから。
まさにこれは異文化同士の出会いです。
あふれる黄金を持っていたアステカ民族と黄金大好きスペイン人。
5cmの積雪ではしゃいで雪だるまを作る都会人とそれを冷ややかな目で見る雪国の方々。
みかんを6個パック¥298で買う一般人と採りきれなかったみかんが道ばたにゴロゴロ転がってそれを車が踏みまくって道が黄色くなってても何も感じない和歌山県民。
ああ、ものの価値とは。

とにかく僕はユンボの轟音に負けないように大声で「ストップぅぅぅ!!」と叫びました。
全員がこっちを見ます。
僕はみんなにどう伝えたら良いものか悩みました。この現場で突然アンティークの味わいとかエイジングの渋さとか日本の伝統文化とかを伝えるのも無理なので、

わし

これ

ほしい

ということだけを必死でボディランゲージで伝えました。
すると解体屋の兄ちゃんが腕組みをします。
あ、そうか、と僕は我に返りました。
ここは完全に他人の現場で、僕は完全に部外者です。ていうか業者でも何でもない不審者です。
「ほしい」とか言ったところで無理に決まってます。
僕が頭を抱えていると解体屋の兄ちゃんが言いました。
「いっすよ」
ゆるっ!
あ、でも住人の方が首を縦に振ってくれないと…
と思ってたら住人のおばちゃんが出てきて、
「ええで」
ゆるっ!
その辺のゆるキャラよりゆるい展開に僕は衝撃を受けました。
しかもおばちゃんは「あんたが使うてくれるんやったら嬉しいわ、なんぼでも持って帰り」と仰ってくれたので、遠慮なく使えそうなものを救助して持って帰らせて頂きました。

建具救出

これらの窓やドアやスノコは、メンテナンスで元の輝きを取り戻し、僕の家で毎日活躍してくれています。
今回はそんなお話でした。

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