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古民家に住んでますvol.14 続・台風で死にかけて雨戸つけた話

はい!!
ということで今回は台風で死にかけて雨戸つけた話の続きを書いていきたいと思います!
ちなみに僕は「はい! ということで今回は〇〇〇していきたいと思います!」っていう始まり方のYouTuberに対してもうちょっとそこは戦って人の真似じゃなくて自分なりの出だし文句を考えて欲しいなあと思っちゃうタイプの人間ですが、そんな話は本題と関係ないので割愛しますね。

雨戸の取付

今回は画像枚数多いんで飛ばしていきます。
まずですね、雨戸の無いところに雨戸をつけようと思ったら、鴨居と敷居がいるんです。引き戸をすべらせるための上下の溝ですね。
そしてあとは雨戸を収納する「戸袋」という箱。
必要なのはこれだけです。
で、
まずはここに雨戸用の鴨居をくっつけるために、この桟みたいな横木を取り外します。
ビス揉んでるところをこうして削って、引っこ抜くんですね。

この建物は新築の渡り廊下なんですが、構造も内装も外装も建具もぜんぶ木で作ったので、このように後付け&改造が簡単にできるのです。
これがもしサイディング+アルミサッシだったらもう何もできませんのでね、壁を全部はがしてサッシを全部シャッター付きのやつに総取り替えして100万円とかそんなことになっちゃいます。
なので僕のように最初からきっちり考えるのが面倒でまあ細かいところは暮らしながら思いつけばいいやというタイプの施主は、できるだけ自然素材で構成した方が潰しが効きます。

壁の下地

こちら、さっきの桟と外装の杉板を一枚分ペリッと剥がした図。
下地に防水シートが見えますね。
渡り廊下なんで、断熱はしてません。このシートを剥がすと中は空洞です。
そしてここに鴨居をガッチャンコすると。

鴨居をつけた

ガッチャンコ!
簡単そうに見えるでしょ?
簡単です。
あらかじめ部材さえ作っておけば工事自体は一瞬で終わります。

雨戸の敷居の取付

同じように下にも敷居をガッチャンコ。
ここもアルミの水切り材とかそんな今風のものはないので普通に木を取り付けただけ。
ベリーイージー。
ただでもこれを我々シロートができるかというと、鴨居と敷居の部材を作んなきゃいけないので、特に溝を掘らないといけないので、でっかい機械と道具が必要です。
プロに頼めば部材作りも含めて1日でやってくれるので、お金払ってやってもらった方がいいっすね。

戸袋制作

敷居と鴨居ができればもう雨戸を差し込むことができますが、その雨戸を収納するところも欲しいので、適当に壁に作ってもらうことにしました。
本来なら雨戸は「戸袋」と呼ばれる収納スペースがセットになってて、部屋の中から雨戸をスライドさせて閉められるのが普通なんですが、戸袋付けたら10万とか15万とか普通にかかるし、うちは雨戸閉めるのも台風が来た時くらいだし、ていうか戸袋をつける場所ないし、といった様々な理由により、とにかく手動で戸が横から入れられる場所があったらええわ、なんかその辺につけといて~、みたいな感じで大工さんにお願いしたんでした。

ところで、僕がいつも言ってる「戸袋っぽいやつをその辺につけといて~」みたいな指示ですが、これ普通に言ってますけど、なかなかできる大工っていないんですよ。
知らない人は信じられないと思いますけど、現代のほとんどの大工にそんな技術はありません。
なぜなら家づくりが工業化してるからです。
今の大工さんに求められる役割は、工場でつくられた部品をマニュアル通りに早く正確に組み立てることです。
だから部品もない、マニュアルもない、では何もできません。
「戸袋っぽいやつをつけといて~」の一言の中には、実はいろんな要素が入ってます。まずデザイン。次にそのデザインを実現するための構造。そして重い雨戸を何枚も保持できる強度の計算。それらを頭の中で組み立て、頭の中で図面を描き、現場で寸法を決めて、部材の仕様を決定すると、今度はその部材をノコギリやノミやかんなで刻んで作っていく……
うおお。
改めて書き出してみるとすごい。まさに職人って感じです。
うちの大工さん、いつもしょうもないスマホゲームばかりやっててダメな大人だと思ってましたが、実はすごいんです。
古民家を直そうと思ったら、こういう大工さんに頼まないと駄目ですね。

墨付け道具

そんな本物の大工さんはいろんな大工道具を使っています。
たとえば墨。
墨筆で床板に並びの文字を書いたり、墨壺と糸を使って柱に直線を引いたり。
今回も鴨居と敷居をつくるのにそういう道具を使ってるぽかったので、ついでに紹介しようと思って写真を撮ろうとしたところ、よく見ると墨壺じゃなくてなんか今っぽいやつを使っているではないですか。
僕は大工さんに言いました。
「そういうのちょっと絵的にバエないんで、もっと伝統的な職人っぽいやつ使ってもらえる?」
「えぇ~…」
「え? まさか持ってないの?」
「いやいやちゃんと持ってるっすよ!」
そう言って大工さんは道具箱をごそごそして「ほら」と言って墨壺を見せてくれました。

墨壺カッチカチ

墨カッチカチ。

雨戸の調整

さて、気を取り直して続きです。
これは何をやっているかというと国際的に禁止されてる児童労働というやつですね。
この雨戸、適当に拾ってきた雨戸なんで、うちの建具とサイズが合わないんです。
なのでこうして上下に木を足したり、逆に削ったりして、ちょうどいい感じに調整しているところです。
こんなところも木は本当にフレキシブルで気持ちいいですよね。
アルミサッシだと返品してサイズに適合する型番を再発注ですよ。
てか適当に拾ってくることすらできません。

なおこの調整は雨戸に限った話ではなく、ドアや襖や障子など、木製であれば大体の建具でこういうことができるのです。
どうしようもないのは「厚み」だけですが、その厚みもそこまでシビアに合わせないといけないシーンは、うちに関してはありませんでした。
古民家って良くも悪くもアバウトなんで、1mmの精度どころか普通に1cmくらい隙間あったりしますから、大体の建具は大体のところに入れることができるんじゃないかなと思います。

雨戸完成

からの、完成!!
ワーオ! めっちゃいい感じ!
さすが拾ってきた雨戸。既にエイジングバリバリなおかげで、新築なのに長年ここで村を見守り続けてきた歴史的建造物みたいな風格が漂ってます。
ちなみに雨戸入れはどうなったかというとこんな感じです。

雨戸入れ

これ、左側だけ壁がついてて、右側はあきっぱになってます。
普通に右側から雨戸を引き出して、よっせよっせと運んで、敷鴨居に差し込む方式。
まあうちはこれで充分。
ていうか、これ、皆さん気になるでしょ。
浮きまくってるやんけと。
エイジングのかかった壁に比べてピンピンの雨戸入れが浮きまくってるやんけと。
大丈夫。
以前「古民家リノベーション体験談116 隣の家に塀ができたんだってね」でご紹介したように、屋外の木材は一瞬でエイジングするんです。
その証拠となる一年後の写真がこちら。

一年後の雨戸入れ

うむ。
まああと2年ほどすれば完全に同化するであろう。

前栽の雨戸

ついでに同じように前栽の方の雨戸も調整して追加してもらいました。
この左半分のなんかキモい色の雨戸はもとからこの家にあったものです。
これも元々は木製なんですが、木が腐ることを嫌った前の持ち主の方が、腐らない金属板をお貼りあそばされ、風合いのある雨戸からキモい雨戸になってしまいました。
残念ながらこの金属板を剥がすのは難しいらしく、またどっかで雨戸が落ちてたら拾って調整して入れてもらおうと思ってます。

以上駆け足でご紹介しました雨戸づくり、いかがでしたでしょうか。
雨戸に限らず古民家はだいたい木なので、思いついた時に思いついたことをできる可能性が高いです。
うちもまだまだやりたいことがあるんですよね。
玄関脇の換気扇が料理の油を外に飛ばしてしまうので、油が飛び散らないようになんか工夫したり。
納戸の天井に穴を開けて屋根裏に登るはしごをかけられるようにしたり。
余りまくってるガラス戸やドアを入れておく建具入れを渡り廊下の外壁に増設したり。
いろいろあります。
これらはすべて「使ってる素材と仕上げが木だから」気軽にできるんです。
外壁も、天井も、木材そのまんまなので、切ったり穴開けたり釘打ったり、もっというと穴開けミスったり釘を打ち間違えたりしてもOKなので、自分でも気軽にできるんですよね。

家を好きなように改善できるということ。
しかも自分でやってもいいし、大工さんにも気軽に頼めるということ。
これは1回くらいじゃそれほどメリットに感じられないかも知れませんが、これが何年も、何十年も同じ家で暮らしていくと、ボディブローのように効いてきます。
実際うちも完成してたった数年ですが、既にいろんなところに手を入れています。
これが全部できなかったとしたら、なんとまあ息苦しい家だと感じたことでしょう。
僕はこういう点においても、ああ古民家で良かった、と思いますよ。

おわり。

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