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古民家の天井の低さについて

えー、これは以前に読者様からリクエストがありまして、「古民家の天井について語って欲しい」と。
僕の比類無き正確な記憶力ではたしか天井の低さ?について?だっけ?と明確に記憶しているので、今回はそういうお話です。

もーほんとにブログ7年も書いてると記事を書く前に「どうせ過去に書いてるやろ」と思って自分で記事検索するんですが、天井の低さについては、きっちりと喋ったことがないっぽくてびっくり。
まあ優先順位はそこまで高くはないものの、一部の方にとっては由々しき問題、それが天井の低さ。
一部の方というのは八村塁とかオオタニサンとかチェ・ホンマンみたいな方々、つまり「デケェ人」ですね。まあ2m超えなくても185cmくらいでもちょっと不便なんですよ古民家は。
なぜなら100年前の日本人男性の平均身長は156cm(自分で調べてびびる)。古民家はその辺りに最適化されているので、たしかに天井は低い。
でもぶっちゃけほんとに問題になるのは天井じゃないのです。どんな古民家でもおそらく天井は2m以上あるので、仮に八村選手が古民家に住んでも、立った瞬間に首が天井板を突き破ることはないです。
圧迫感あるなー、これ高くなんねえかな、くらい。
で、実際問題になるのが差鴨居の高さなんですね。
みなさん知ってますか差鴨居。
鴨南蛮が有名な京都の老舗の料亭とかじゃないですよ。簡単に言うと襖や障子のレールの上側のやつ(=鴨居)がぶっとくなって構造材を兼ねたもの、です。
それが部屋の四方にぐるっと回ってる。古民家は得てしてそういう構造をしてます。
で、ガイジンさんが頭ぶつけて「Oh!」っていうのはいつもその部分。
古民家の建具って共通の規格があり、たいていが五尺七寸(五七)=約173cm、五尺八寸(五八)=約176くらいなんですよ。
つまり差鴨居の高さもそれくらいしか無いので、デケェ人は部屋を往来するたびにちょっとかがまないといけない。
じゃあリノベ時に撤去すればいいと思うでしょうが、差鴨居は構造材なので動かせません。
なのでストレスに耐えきれず怒り狂ったチェ・ホンマンが頭突きで差鴨居を破壊しようもんなら家が崩壊して首が天井板を突き破るでしょう。
なのでそこはもう諦めてください、というところです。
ちなみにこれ、ほとんどが工事でどうにかなる古民家の、数少ない「どうにかならないところ」なので覚えておいて損は無いです。

さて本題の天井ですね。
このように、建具の寸法で鴨居の高さが決まってる古民家は、必然的に天井の高さもだいたい決まってきます。
まあ例外はありますよ。金持ちの豪邸でアホみたいに天井が高い家とか、地方によっては二階に蚕部屋があるせいで天井の低い地域とか、体験上はありましたけど、まあ概ね平均して2m20~30くらいじゃないでしょうか。知らんけど。
現代の一般住宅の平均が2m40だそうなので、まあそれに比べたら古民家は低めですよね。
でも正直そんくらいの差は誤差ですよ。
なぜ誤差だと言い切れるのかって?
なぜなら僕は部屋によって天井の高さが2m10~4mというオモロい家に住んでいるからだ!
そんな僕がはっきり断言しよう!
人間同じ家で毎日暮らしてたら天井の高さなんか気にするより先に毎月の銀行残高や先行きの見えない今の仕事のことやケンカが絶えない夫婦仲のことで頭がいっぱいになるんだ!!
……という身も蓋もない話は置いときましょか。
話を戻すと、まあ2m20~2m50くらいのレンジならあんまり気にしなくてもいいんじゃないですかってことです。

でね、その前提で最後に大きなポイントをお伝えすると、日本の和室というのは、1000年かけて洗練されたもので、当然その寸法も完璧に計算され尽くしたものであるということです。
ガチの和室設計業界では、天井の高さは部屋の広さや柱の太さによって厳密に決定されるそうです。
この国にはそういう完成された文化があるのです。
寸法ナメたらあかんすよ。
古民家をリノベでまるごと大改装♪とか言ってるとチェ・ホンマンみたいな先祖に殴られますよ。ほんとに。
なので僕としては、どうしても気になるとか、どうしても立った時に首が天井板を突き破るとかじゃなければ、天井の高さはできれば触らない方がいいと思っています。
いろんなことをやらかした僕のリノベーションですが、実は和室のしつらえや構造、寸法自体はまったく触ってないんですよ。
もうそこは日本人の文化であり心であるので、最大のリスペクトをもって「元通り」を目指しました。
僕の座敷のこの天井の高さ、この建具の高さ、この床の間の幅、それらにはすべて意味があり、そこに洗練があるのだと思ってます。
実際、和室は天井低い方がカッコいいし、落ち着きますよ。ちゃぶ台生活なら特に。

ということで、これが元のリクエスト通りの話だったのかは謎ですが、今回は天井の高さにまつわるお話でした。

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