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古民家リノベーション体験談117 座敷と漆喰

【前回までのあらすじ】通行人のお年寄りと目が合った時に相手があまりに目を逸らさず平気でじっと見てくるので絶対に先に目を逸らしてしまうんですがあの人らのメンタリティどないなってんの

カビ臭との戦いから始まったこのリノベ体験ブログ。
解体、離れの新築、風呂、寝室、脱衣所、渡り廊下、トイレ、居間、庭、キッチン、土間、玄関、仏間ときて、ついに最後の部屋のご紹介になりました。
それすなわち座敷。
もうここ以外の部屋はピッカピカになっています。
これが本当のラストステージです。
ゼルダで言うとボスの鍵を使って入る円形のでっかい部屋です。
ドラクエで言うと「おろかな人間どもよ…ここまで来れたことは褒めてやろう…」って言われる部屋です。
そう、今こそ!
今こそ仲間たちのすべての力を合わせて!!
いくぜ!! 伝説の合体技シャイニング……
あ。
おれ一人やったわ。

和室の漆喰塗り

ということで一人きりのクリスマスと正月をこの部屋で漆喰塗りながら過ごしましたよ。
ちなみにこの一年前の元旦も離れ寝室の漆喰を一人で塗ってたような気がするけど気にしないぜ!
でもまあ実際「一人」っていうのはこたえます。
日中は職人さんたちが現場にいるのでいいんですが、こういう自分のDIY仕事っていうのは職人さんたちが帰ってからやることが多いので、基本的に一人なのです。
でもインスタとか見てたらなんか知らんけど皆さんけっこう仲間呼んでやってますよね。
なんなんですかあれ。
なんで手伝ってくれる仲間とかいるんですか。
僕べつに友達いないわけじゃないけどみんな東京とか名古屋とか普通に住んでるとこバラバラやし土日も店開けてたり育児中やったりしてそんな僕がDIYやるから手伝って~とかしょうもない理由で気軽に呼べるような友達なんか周りにおらんのですが。
なんであんないっぱい人集まってみんな笑顔なんですか。
金ですか。
やっぱり金で雇ってるんですか。
なんだ、やらせか。よかった~!(ちがう)

そんな話はさて置き、漆喰ですよ。漆喰。
ちょうど一年前に母屋の漆喰を塗りすぎて肩を痛めて一年間肩が上がらなかった漆喰ですよ。
やっと完治したと思ったその古傷にさらなる負荷が!!
古傷開いちゃう!!
でも僕には最高の仲間たちがいないので古傷パックリ開かせながら一人で全部塗りました。
元旦のしんと静まり返った空気が辛すぎて一人でiPadでミスチル流して絶叫しながら塗ってました。
たぶんご近所さんにはヤバいやつが引っ越してきたと思われたことでしょう。
近所の皆様、その節はすみませんでした。
僕はもう大丈夫です。
部屋きれいになったし。
肩も上がるし。

リノベーション前の座敷

こちらはリノベ前の座敷です。
写真では分かりづらいですが、壁にシミができて薄汚れており、床はカビ天国で死んでます。
そして有名な絵師に描いてもらったという壁の絵も湿気によってまっ茶っ茶。
実はこの壁、もうどうしようもないから全部剥がしてやり直そうと思ってたんです。
もう触ると簡単に破れるし、なんか汚いし、大工さんも「これどうします?」とか言いながらペリペリ剥がしてて、「おっ、剥がれる剥がれるw」とか言ってて僕も一緒に「うわ、めっちゃ剥がれるwww」とか言って遊んでたんですが、新しい畳が入った瞬間、なんかこの空間が見違えて良くなって、そうするとこの茶色の壁までもすごくいい雰囲気に見えてきて、畳屋さん、親方、僕の全員が「この壁は残した方がいい」となったんですね。
その畳が入った直後の写真がこちらです。

畳が入った直後の座敷

どうですか。
床がきれいになると、壁紙が汚い、という感じではなく、味がある、みたいな感じに見えませんか?
このようにリノベーションは床一つで空間を甦らせる力を持っているんですね。
だから皆さん、オンボロの家を見ても、決してダメだとか、壊した方がいいとか、簡単に決めつけてしまってはいけませんよ。
汚らしいと感じるそれは、実はちょっとしたことで見違えるかも知れないのです。
人間の脳ってアホですからね。

では最後にもう一度、座敷のビフォーアフターの写真を見比べてみてください。

壁紙を破る前
壁紙を破った後

ザ・覆水盆に返らず!!
あの時ペリペリ剥がして遊んでた俺たちのアホーー!!

仏間と座敷

ということで座敷完成しました。
座敷なんてもう最初から完成されてるから、僕のやったことは漆喰塗って、柱を雑巾がけして、畳を入れただけ。
ケヤキの彫り物の欄間も、畳の床の間も、座敷を囲む縁側も、立派な槙の木がある前栽も、これでようやく陽の目を浴びることになったのでした。
そもそもこの縁側と座敷が気に入って、この家を買うことを決めたのです。
この縁側が手に入るならと、思い切ったわけです。

これまでブログでご紹介してきたように、僕は自分の趣味をいろんな部屋に爆発させて、いろんな部屋をつくってきました。
でもこの座敷でボケーと座って庭を眺めている時に、一番強く思います。
「なんでみんな古民家に住まへんのやろ?」と。
「なんでこんな素晴らしいものが、土地代だけでタダで売られているんやろ?」と。
そして「なんでみんなと同じくらいのローン組んでるのに、自分だけこんな豪邸に住めてるんやろ?」と。
僕は地主の息子でも社長の息子でもない、普通の家庭に生まれ育った人間なので、変な話ですがいまだになんかちょっと、この仏間と座敷は落ち着かないというか、申し訳ないというか、そんな気がしてしまうのです。
自分が買って直して住んでるんだから堂々とすればいいんですが、あまりにも他の友達たちとの住環境が違いすぎてて、なんかおれ、早く死ぬんちゃうかなとか、バチ当たるんちゃうかなとか、たまに思います。
でもたぶんそうじゃないんです。
今の日本の状況、「古い家はゴミ」という価値観が、このミラクルを可能にしているんです。

僕が5年ほど前にこの家に巡り会い、この座敷と縁側を目にして購入を決意してから、リノベ-ション工事は常にこの部屋がゴールでした。
この部屋が立派に再生されて、自分のものになって、使えるようになる日がくることをずっと夢に見て、それを心の支えにしてやってきました。
僕は時々、このカビだらけ、ゴミだらけの座敷に入り、バラ板の弱っているところを踏み抜かないようにブルーシートの上を歩き、部屋の真ん中で腰を落として周りを見回してみて、実際に座敷に座ってる感じを何度も空想したものです。
何年も空想の中だけにあった座敷が、こうして目の前に現れ、自分の生活の一部になっている。
どこか落ち着かないのは、まだあの頃の空想の余韻が残っているからかも知れません。

いっけね、ついおセンチになっちゃった。
まあ今回くらいはおセンチでもいいんじゃないでしょうか。
なぜなら次回で最終回だからだ!
ついに迎える大団円!
古民家リノベーション体験談の愛と感動のフィナーレ、乞うご期待!!

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