古民家に住んでますvol.7 DIY(自分でやります)
今回はタイトルの通り「DIY」について、僕の話と実践をご紹介したいと思います。
古民家再生において、必ずと言っていいほど発生するファクター。
それがDIY。
もちろん1億持ってたら話は別ですよ。ここでは皆さんが1億持ってないことを前提に喋りますが、
なぜDIYが必須になるか分かりますか?
それは、一般の家における「ちょっとここ直したいな」という問題の発生頻度が1とすれば、古民家においてはそれが10くらいになるからです。
何のこっちゃ分かりませんね。
簡単な話です。
普通の家でたとえば10坪の庭があったとしましょう。
そこに雑草が生えたと。
まあそれくらいは日常で処理できるレベルですよね。
10坪の場合は、洗濯物干す時についでに抜いたり、ヒマな時にちょいちょい世話するくらいで済みますから、誰もそれを「問題」としてカウントしません。
ところが古民家では庭が100坪になります。
目の前に広がるのは×10倍の雑草。大草原です。
なんかもう庭見ながらぼんやりとここにヒツジとヤギを投入すればいけるんかな、あれ、ヤギが食べるのって紙やっけ、草は食べんのやっけ、食べるのは白ヤギさんだけやっけ、じゃあ黒ヤギさんとヒツジを飼えばいいのか、てかヤギとヒツジってどこで売ってるん? などとわけの分からないことを妄想してしまうほど、無視できない日々の大問題となります。
その結果、
1. 庭師を呼ぶ
2. ヤギとヒツジを呼ぶ
3. 自分で必死で草引きしつつ自分でできる対策を考える
というソリューションになるんですが、ここで1億持ってない人の多くは3番の選択肢になるわけですよ。
自然物である庭を例に挙げましたが、古民家も充分自然に近い存在です。
人工物ではなく、自然物に囲まれて生活できるおかげですんごい落ち着くし、ヒーリング効果も高いんですが、その反面、きっちり計算されたプロダクトではないので、毎日暮らしているとちょっと直したいところも出てきます。
例えば戸のすべりが悪いとか、隙間があるとか、漆喰が剥がれてるとか、天井から土が落ちてくるとか、網戸が欲しいとか、そういうところですよね。
そういう「ちょっと直したいとこ」が出やすいということに加え、さっき書いた通り、その対象エリアが大きい。
単純に床面積なんて普通の家の2倍くらいありますし、建具の数もはるかに多いと思います。
「戸に隙間がある」×15枚とか。そんな世界です。
そういうのをどうにかするためにね、毎回大工さん呼んだり、左官屋さん呼んだり、解体屋さん呼んだりできるのかって話ですよ。
お金の問題で普通呼べないじゃないですか。いや呼ぶ人もたくさんいるけども。
少なくとも晩飯に最近やたら鶏のムネ肉が目立ってきた我が家では呼べません。
だからね、「自分でやります」ってなるんです。
住んでる人のタイプに関わらず、このパターンは多いと思います。
なぜかというと古民家は木と土でできているが故に、削ったり切ったり塗ったり釘を打ったり、けっこう誰でも自分でやれてしまうからです。
さてこちらをご覧ください。
これは僕の道具小屋です。
いかにもDIYな雰囲気の道具類が置かれています。
これを見た人はこう思うでしょう。
「はいはいDIYね。こういうのが好きな人なんですね~。でもあたしは興味ないから。ノコギリ(笑)とか無理だし。ごめんなさい」
はい。そんな反応ですよね。知ってます。
なんで知ってるかって?
俺もDIY興味ねぇからだよ。
僕は小さい頃から手先が器用でもないし、ものをつくることが大好きでもないし、いつか自分一人で小屋を建ててみることが夢……でもありませんでした。
ていうか体を使うことが大嫌いです。
マラソン見ながら「え、みんな車に乗ればいいのに……車の方が速いのに……」とマラソン選手を勝手に気の毒がるような人間です。
人生のできる限りの時間をソファに横になってポテチ食べながらマンガを読むことに費やしたい人間です。
そんな人間がなぜ道具小屋が必要になるほど道具を持っているのかというと、古民家に住んだことによって、必要に迫られたからなのです。
すごくない?
この量の道具が全部「必要に迫られて買った」ものなんですよ。
だってぼく、古民家に住み始めた頃、何にも持ってなかったんですよ。
はさみとセロテープくらいしか無かったですよ。
それが数年でこれ。
「田舎のおっちゃんはなぜあんなに何でもできるのか」という長年の疑問がありましたが、僕はそれを身をもって理解しました。
そうか、やる必要に迫られるからや…
でも安心してください。僕はこれだけははっきり言えます。
誰でも「田舎のおっちゃん」になれるのだと。
マウスとキーボードしか触ったことのなかった人間が、必要に迫られた結果、たった数年でレーザー墨出し器を持ち歩いて耳にエンピツを刺してユンボを操縦するようなキャラに変貌したのです。
人間の適応力ってすごいよね。
ということで、僕がやるDIYはすべて嫌々やるものです。
一度たりとも「好きでやった」ことはありません。
必要に迫られてやるのです。
僕に1億あれば今すぐこの道具小屋を破壊して今後すべての作業を人にやってもらうでしょう。そして長年使い込んだインパクト、丸ノコ、差し金などの道具類がゴミ袋に入れられていく様子を、きっとめっちゃ無表情で眺めていると思います。
でも考えてみてください。
DIYって本来そういうもんじゃないの?
DIY民の最高ランクであるアメリカ開拓民や北海道開拓民がめっちゃ木を切って家を建ててる時にインタビューされたとして「DIYの本当の楽しさは身体を動かし、ものづくりを五感で感じられる瞬間ですね」とか笑顔で言わへんと思うんですよ。
めっちゃ無表情で家作ってると思うんですよ。
だから僕は本来のDIYというものを、古民家暮らしを通じて体験しているわけです。
無表情で。
ああ、長くなってしまった。もう9月に入ったので早めに木製網戸制作の話をしたかったんですが…
まあいいや。次回に持ち越しです。