古民家リノベーション体験談61 当時の暮らし
【前回までのあらすじ】家の掃除における人類最大の敵は粉塵
今回は、当時の僕の暮らしについて書こうと思います。
まず最初に言っておきますがハンカチ必須です。
これを読むと誰でも僕のことがかわいそうでかわいそうで号泣してしまうので絶対に電車の中で読まないでください。
てか、
これを読んで「ああ、やっぱり古民家リノベって大変なんだ、やめとこ♡」とか思われると困るんですが、そもそもこんな状況に陥ったのは完全に自分のせいなんですよ。
よって同情ゼロでOK。
むしろ反面教師として、皆様のお役に立てれば何よりです。
時は数年ほど遡ります。
当時の僕たちは古民家を購入したものの、母屋はカビの臭いで住めそうになく、なんとかギリ住めそうな築30年程度の離れに家財道具を運び、そこで1年ほど生活していました。
生活してると言っても借り暮らしです。
食器や家電など必要最低限の家財道具だけ出して、汚れだらけのクロス壁を綺麗にすることもなく、ダニがわきまくる畳で子供がダニに噛まれまくっても我慢し、ムカデが這い回る風呂に入り、母屋を通る時は息を止めてダッシュする、そんな日々でした。
これがもうすんごいストレス。
風呂に入るには母屋を通らないと行けないんですが、風呂上がりに幼子を抱いて、カビの胞子が漂う中を、ボトボトに濡れた髪のままダッシュする時に髪に胞子が付着するんちゃうん?とか思います。
こんなこと書くと元の持ち主さんに失礼なんですが、他人が数十年住んでた一軒家に掃除もなくいきなり入居した場合、綺麗好きでなくても僕と同じくらいのストレスは感じると思います。
とにかくその1年は「自分たちの元の生活」を封印し、水面に顔だけ出して、できるだけ動かずに最低限の呼吸だけをしているような状態でした。
なぜ改善しなかったのか? と言いますと、離れはどうせ解体するし、母屋はリノベーションすることが決まってたので、綺麗にするだけお金がもったいないと思ったからでした。
だから何もしなかったのですが、何もしないというのはつまり「自分の部屋にしない」ということで、「自分の部屋ではない部屋」「自分の家ではない家」という状態が1年続いたということです。
これ分かりますかね。
お伝えするのが難しいんですけど、どんな家でも「自分の家」となれば、クロスを張り替えたり、徹底的に掃除したり、バルサン焚いたり、DIYで棚とか作って、自分たちのものを飾ったりできると思うんです。
でも僕たちはあくまで「他人の家」に借り暮らしをしている状態。
前の家の玄関に飾ってた猫の人形、日めくりカレンダー、ポストカードなどは全て積み上げられた引っ越しダンボールの中。
お気に入りのカーペットもダニがうつるのでダンボールの中。
置く場所のないソファや本棚も母屋にブルーシートをかけて放置。
つまり、これまでずっと見慣れてきた「自分の家のリビング」「自分の家の寝室」がどこにもないという状態が1年続いたということです。
これこそが苦しみの根源でした。
なにを大げさな…
と思うかも知れませんが、同じ状況になったことのある人なら分かるはず。
自分の家がないということが、これほど辛いことだとは思いませんでした。
これ理屈じゃないんですよね。
なんか本能です。たぶん。
そんな1年が過ぎ、いよいよ元の離れを解体し、新しい離れの工事に着手することになったんですが、今度は住む家が物理的に失われます。
それで僕たちはとりあえず僕の実家の6畳間に身を寄せることになりました。
これは理想の暮らしを手に入れるための大いなる第一歩だったので、もちろん喜ぶべきことだったんですが、今度は自分の部屋どころか、ありとあらゆる家財道具が母屋のブルーシートの中に詰め込まれ、手持ちの家財道具が服だけという生活になったわけです。
これはねー、ほんとキツかった。
せめて食器だけでも自分のものを使っておくべきでした。
自分の箸で、自分のお茶碗でご飯を食べることの大切さ。
これを皆さんにお伝えしたい。
何言ってるか分からんでしょうが。
もうなんか感覚が狂ってくるんですよ。土台が無くなるみたいな。小学生ならこの時点で泣いてますよ。
マジでもう『火垂るの墓』とか冷静に見れませんもん。
自分の実家に身を寄せといてコレですからね、震災の被災者の仮設暮らしとか、ほんともう想像を絶する辛さですよ。この種の辛さは報道では絶対分かんないですよ。
つまり何の話かというと、タイムマシンがあったら、確実にアパートかマンション借りてるわってことです。
もちろん二重家賃でしんどいですけど、まっさらな「自分の家」ですからね。この借り暮らしのしんどさに比べたら安いもんです。
もしリノベーション工事の際に僕のように借り暮らしをしないといけなくなったら、メンタルの弱い人は「居候」は避けて、ちゃんと部屋を直すなり、別のところで借りた方がいいですよ。
特に古民家リノベーションは日数がかかるからね。
あ、この話長くなりそう…
すみません続きます。