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古民家リノベーション体験談73 屋根屋さんの親方のこと

屋根工事

【前回までのあらすじ】うちの屋根は100年前にその辺の廃材でどうにかこうにか作った屋根


初めて会った時、開口一番「僕と出会えてラッキーですね」と笑顔で言った屋根屋さんの親方。
僕はこの人からも非常に多くのことを学びました。
たとえば、今流通している新しい瓦のこと。
「メーカーは焼いた温度をカタログに載せてるけど、それがほんまなんかどうかは簡単に信用でけへん。そういうのは俺らは叩いたら分かるから。音が違う」
とか。
そんなん言われたら「ほえー」って思うじゃないですか。
たとえば、地震被害のこと。
「震災で神戸も東北も熊本も行ったけど、古民家ばっかり潰れてるってことは無かったなあ」
とか。
「報道が腹立つわ。瓦屋根で倒れてるのなんか一部やし」
とか。
「今の家はぐしゃっと潰れへん。倒れる時もそのままコケる」
とか。
ちょっと立ち話するだけでも、喋ってたら「ほえー」が止まりません。
この辺の数々の貴重な情報は、ご本人に掲載許可を取ってないので裏ブログでご紹介しますが、まあとにかくそんな歯切れの良い言葉からビシビシと感じる「プロ」感。
「プロフェッショナルとは?」て聞いたらすぐ答え返ってきそう。
てかそのうち取材されそう。
確かに今こうして振り返ってみれば、屋根工事だけじゃなくいろんなことを教わったということも含め、「出会えてラッキー」だったのです。

でね。
前々回の通り、僕は「シュッとした葺き方」がいいと伝えました。そんで親方も「そういう葺き方やったるわ」と。
そこにさらに僕は、「瓦の再利用」も要望として入れました。
僕の目から見れば、もう寿命だと言われて降ろされる瓦の中にも、なんかまだ使えるやつがあるんじゃないかなって思えたんですよね。
すると親方、古い瓦を再利用するには土をゴシゴシ取らんとあかんし、その分だけ手間かかるし、結局お金はそんなに変わらんぞと。
うーん。
でもなー。
なーーーんか、もったいないんよなあ。
なんか、どっかに使われへんかな?
とか僕がゴニョゴニョ言ってると、それを見てた親方が「ほんなら一部やけど、古いやつ使おうか」って言ってくれました。
「雨漏りに関係ないところに使ったる」
ワーイ!

その時、僕はそれがどういう作業なのか全然分かってませんでした。
リノベ雑誌によくある「これは元々あったものを再利用したんです~」みたいなノリで気軽に頼んでしまったんですが、実際は気軽にできる作業じゃなかったようです。
瓦って、降ろしてみるとすんごい枚数があるんですよ。
その土を一枚一枚落とすんだから、親方の言った通り、お金的には日当と瓦の購入金額が同じくらいになるんでしょうね。
親方、その日から古い瓦の中で使えるものと使えないものを選別して、庭に黙々と積み上げていきました。
そして選別作業が終わると、その辺のビールケースを椅子にして、庭の隅っこで一人で瓦の土を落とし始めたのでした。

瓦の土落とし

雨の日も、風の日も、一人でゴリゴリと土を取り続ける親方。
屋根職人さんたちが休みの時も、一人で現場に来て、隅っこに座ってゴリゴリと土を落として、夕方になると黙って帰っていく親方。
そりゃ施主さんが頼んだことだから、
仕事で日当をもらえるから、
普通に仕事してるだけといえばそうなんですけどね、
でも僕は毎日黙ってゴリゴリやってくれてる親方の姿を見て、何か、頼まれた仕事をやってるだけではない、それ以上の何かを感じました。
何を感じたのか、今だに言葉にできませんが。


ある日、親方はほとんど独り言のように僕にこう言いました。
「一生にいっぺん、こんな仕事してもええやろ」と。
僕にはそれがどういう意味なのか分かりませんでしたが、親方の一生にいっぺんの仕事がうちの屋根なんだなあと、ありがたく思ったのでした。

次回、そんな過程で仕上がった屋根の写真をご紹介します。 つづく。

屋根屋さんの親方に教えてもらった、あんなことやこんなこと。
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