古民家とインテリアデザインの話
先日円満終了した「古民家リノベーション体験談」。
これで書くことなくなったかと思いきや全然そんなことはなく、引き続き色々書いていきたいわけですが、今回は「随筆」というカテゴリをつくり、古民家にまつわるエッセイ的なものも書いていこうかなと思います。
内容はまあ僕の思ったこととか、日々考えてることとか、そんなんです。
体験談では工事の過程を追いかけてきたわけですが、現実にこれを書いている僕はもう古民家に何年も住んでいて、既に何kgも太っているわけです。
これからはそんな現在の僕のリアルをお話していこうと思っています。
てことで随筆カテゴリ1発目の今回は、板張りの洋室になっちゃった仏間とその隣のゴリゴリの和風空間である座敷の、その整合性というか、古民家における和洋折衷について書いてみます。
こちら、以前アップした写真。
洋間と座敷のハーフ&ハーフ。
今回の話の結論は皆さんがこの写真を見て感じた通りです。
べつに何の問題もありません。
でも一般的には洋室と和室が隣り合ってるのは「問題がある」と思われがちです。
だから人はそこに段差をつけたり、壁をつけたり、なんかちょっと工夫した方がいいんじゃない? と思ってなんかちょっと工夫します。
しかし結果はご覧の通り、畳を板張りに変えてソファを置いても、空間的にまったく問題ありません。
ではなぜ何の問題もないのか?
そして問題のある和と洋の組み合わせとは何か?
まず最初に、我々には「和風と洋風は合わない」という常識があると思います。
たとえばコース料理を頼んで前菜、アスパラガスの冷製ポタージュ、季節野菜のサラダ、オマール海老のボロネーゼ、の次にメインとして熱々のおでんが出てきたら誰でも困惑しますよね。
つまり基本的に和風と洋風は合わないのです。これはみんな体験的に知ってます。
だから建築的にも合う合わないが存在します。
そして建築的に合う合わないというのは、「デザイン」と「素材」の話に大きく分けることができます。
デザインは合うけど素材が合わないとか。
素材は違和感ないけどデザインが浮いてるとか。
でね、
実は、古民家においては「デザインが合わない」ことはあんまりないと思うのですよ。そりゃ古民家にニンテンドースイッチ本体は似合いませんけど、極端な組み合わせは置いといて、現代の我々が入手できる家具とかインテリアで「デザイン的に」合わないってことはほとんど無いんじゃなかろうか。
なぜなら古民家、古い日本の建築デザインって、意外と超シンプルなんですよね。
もちろん凝った格子細工や彫り物はポイントで使われてますけど、基本的には単純な直線と曲線で構成されるめちゃくちゃオーソドックスなデザインです。
汎用性が死ぬほど高いのです。
だからアールヌーヴォーだろうがニトリだろうが、どんな「デザイン」もある程度は受け入れてくれるんですね。
じゃあ「素材」はどうか?
たぶん一般的に「洋物と和物が合わない」と感じるのってこの素材の要素が大きいんだと思います。
和風のものって基本的に木や石や土や陶器なんです。服だったら綿、絹、麻ですよね。つまり自然物由来のものが圧倒的に多い。
対して洋物っていうのは、プラスチック、ポリプロピレン、ポリエチレン、ビニール、ステンレス、アルミ、じゃないですか? 服だってポリエステルやポリウレタンが多用されてますよね。いわゆるケミカル系の素材です。
「洋物と和物が合わない」の正体はたぶんこれです。
ニンテンドースイッチ本体だってオール木製だったら古民家に馴染んでます。
つまり「デザイン」ではなく「素材」が合わないんです。
洋物だって100年前は木、石、レンガ、鉄、革、でしたから、バリバリの洋物デザインでもそれが100年前のアンティークだったら素材が自然物になるので、全然普通に合います。
それが僕の基本的なインテリアのルール。
センスのある人だったらアルミもプラスチックも合わせていけると思いますが、誰でも簡単にできるのはシンプルに素材を合わせることだと思います。
そんでね、
それが前提なんですが、さらにもう少し話を続けると、
古民家というハコに関しては、実はもうちょっとキャパが広いです。
さっき書いた「馴染まない、合わない」ものでも、実際は強い違和感や嫌悪感を感じるかというと、感じません。
「まあいける」って感じで、ぶっちゃけ何でも合っちゃいます。
なぜかというと、古民家というのは自然素材でつくられた家だからです。
自然というのはめちゃくちゃキャパが広い、懐が広いんです。自然の中に置いてすごい違和感、嫌悪感があるものってなかなか無いんですよ。
たとえば自然そのものである「庭」。
庭という風景に何を置いたら違和感が出るでしょうか。
アルミの物干し台、いける。
ナイロン地のテント、いける。
車、いける。
洗濯機、いける。(実際置いてた)
南アメリカ旅行の土産にもらった未開部族のトーテムポール、いける。
ね?
このように、自然の許容範囲ってすごいんですよ。
でも逆の場合はそうはいきません。
都内のホテル最上階にあるガラス張りの会員制バーに未開部族のトーテムポールは存在できないのです。
そういうわけで古民家はインテリアデザインのハコとしてはとっても優秀です。
インテリア好きの人は古民家に住むといろんな可能性が広がって絶対に楽しいはず! と思います。
だって100年前のアンティークや、60年代ミッドセンチュリーや、ポップアートやジャパニーズモダン、東欧もの、中国もの、南米トーテムポールまで何でも置けるし、試せるんですよ!
そのキャパを支えているのが自然素材でつくられた古民家という空間。
実際、僕は部屋ごとにいろんな国、いろんな時代をミックスして、インテリアを楽しんでます。
以上、今回は書き終わってみれば「和洋折衷」どころじゃなく、あらゆるインテリアを受け止めてくれる古民家のお話でした。
おわり。