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古民家の選び方2 環境・方位編

冬の西日
(冬の西日)

今回は「環境・方位」についてお話します。
といっても鬼門にキッチンは作るなとか水回りに黄色のものを置けとかそういう系ではありません。
日照や生活環境のお話です。

今日の一般的な住宅街においては、ある一定の基準によって家が建てられています。一定の日当たりがあり、一定の道があり、隣家とも一定の距離をとることが法律で定められているからです。
ところが古民家物件においては全くそうではありません。
無法地帯です。
なんでもありです。
世紀末救世主伝説です。
ということで、自己防衛(セルフディフェンス)のスキルが必要になってきます。

現代のような明確な法律がなかった100年以上前、地方においては土地の境界線もありませんし、日照権もありません。みんながみんなアバウトに、なあなあでやっていました。
それはひとえに「集落のみんなが知り合い」だったから成立していたのだと思います。
「法律」というものは、その地域のコミュニティが存在しない、または崩壊している場合に重宝されるものです。
つまり大量の余所者をコントロールする術として「法律」=「ルール」が必要になってくるんですね。
移民で成り立っているアメリカなんかその最たるものですよね。「訴訟大国」と呼ばれるあの国では、司法によるトラブル解決が日常茶飯事です。
同じことが日本の東京にも言えるでしょう。東京の契約重視の商習慣が気に食わんと、よく大阪の商売人が愚痴ってるのを耳にします。

ところが今や、大阪を含む日本の地方でもコミュニティの崩壊が始まっています。
少子高齢化で本来家を継ぐはずの子供がおらず、古民家が潰され、そこに建売が5~6戸建ち、土地に馴染みの薄い30代家族が引っ越してくる、なんて光景は僕の地域にもたくさん見られます。
すると急に隣家同士がギスギスしはじめます。
「お隣の木のせいで日当たりが悪く迷惑している」とか、「バーベキューの臭いが洗濯物について困っている」とか、「リビングの真正面に物置小屋を建てられて景観が台無しに。思い切ってローンを組んだ新築の家ですが、今は帰宅するのも嫌でカーテンを閉め切っています。毎日涙が止まりません」とか、いわゆる発言小町的な案件が多発しているのはそういうことです。

ところが、古民家物件はそんな世界とは遠く離れています。
うちなんか裏の家がまだ薪でお風呂を焚いてるので、毎日夕方になるとモクモク煙が上がり、その煙の臭いが家の中に充満します。あとどこでも普通に落ち葉を焼いてるし、裏の竹藪からは無限に笹の枯れ葉が降り注ぐし、近所の水路から蚊が大量発生してるし、たぶん発言小町的な人がこの家に住んだら一日で憤死するでしょう。
でも別に僕はなんとも思いません。
だって他人じゃない、付き合いのあるご近所さんだから。迷惑かけたりかけられたり、お互いさまだから。
ご近所さんからはいつも野菜もらうし、うちもお土産配るし、庭でバーベキューもするし、その影響で数日後にお隣さんもバーベキューしたりするし、人間の付き合いはそういうもんだと思うからです。
基本的に、こういう考え方をする人は古民家暮らしに向いていると思います。

余談ですが、べつに僕たち夫婦の人柄が超よくて、超フレンドリーで、みたいなことでもないんですよ。
だってぼくら都市部のマンションに住んでた頃、お隣さんが誰か5年間知りませんでしたもん。
廊下ですれ違っても無視ですよ。
人間って、環境で結構キャラ変わったりしますよ。

でね、物件選びの話ですが。
そんな具合なので、日照やら越境やらが野放しになってる物件が多いと思います。
特に土地の境界線なんか「うちのおじいちゃんはここやって言うてた」みたいなレベルです。
また、100年前とは住環境が大きく変わっていることもポイントです。
100年前は見晴らしがよく、日照も充分だったのが、今は住宅や商業施設ができて条件が大きく変わった、という古民家もたくさんあるでしょう。
うちも80年くらい前に竹藪が生まれたらしく、タイトルの写真の通り、冬の日照が短いのが悩みになっている僕は、毎日オーディンを召喚して竹藪を斬鉄剣してもらうイメージを描いて暮らしています。この家が建った頃は藪も周囲の家も無かったはずなので、今となっては土地に対する家の建て方がベストじゃないんですね。
そういうことも多々ありますので、できれば春夏秋冬の日照や、周辺の環境チェックはしておいた方がいいです。
そのポイントをおさえていれば、普通の住宅地よりもはるかに面白く、自由で、個性的な、古民家ならではの住環境を楽しめると思います。

 

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