海外の衝撃的な事例から思う綺麗好きな日本人の車と家の話
えー、今日はですね、賛否両論というか、まあ何も断らずに喋ると確実に炎上する案件について、取り扱っていこうと思います。
えっとですね。
まずはじめに、これは車を「移動手段」としてではなく「目的」として愛でている方々には関係のない話です。
そういう人たちは愛ゆえに車を大切に扱うし、常にピカピカに磨いてあげるのも当然ですよね。
分かりますよ。
「見てるだけで美しい」とかそういう気持ち僕も分かります。
僕の場合は服がそれですね。
服が好きなので、自分が着なくても、ハンガーに飾っとくだけで嬉しいし、もちろん汚れや日焼けなんかには気を遣います。
でもそういう人って全体から考えれば一部だと思うんですよ。
でね、
今回はそういう特殊な人じゃなくて、車をあくまで「移動手段」として、道具として使う一般的な人について話します。
はいこちら。
知ってる人は知ってる、おなじみの僕の車です。
外観だけでなく、中身も相当です。
この車は買ってから15年くらいになりますがたぶん一回も洗車してません。
足元のシートも洗ってないし、洗ってないっていうか砂利とか泥とかで半分くらい埋まってるし子供が土だらけの靴のままあちこち蹴りまくるのでなんかもう近所のおっちゃんに乗せてもらう農作業用の軽トラみたいな風合いになってます。
カーナビなんかもちろんついてません。
カーステです。
カーステも接触が悪くてちょっとした段差で音が途切れます。
時計は合わせ方が分からないまま15年乗ってます。
燃料計も壊れてるので給油のタイミングは勘です。
ご覧のように嫁が思いっきりぶつけまくるので左の窓が半分しか開きません。(車検は通るらしい)
前を通る近所の子供にも「うわ! この車、じこしてる!」とかいろいろ言われます。
それでも、僕は気にならないのですよ。
まあ実際「車がかわいそう~」とかいう小学生の声が聞こえてきた時には玄関飛び出していってそいつら全員正座させて説教してやろうかと思いましたけど、でも気にならない。
なぜか。
それは僕が、海外における車の扱い方を知っているからだぜ。
結論から言うと日本人の「綺麗好き」というのはちょっと異常なんですよね。
僕が実際に体験した例を紹介します。
イタリアのシチリアに行った時、ぶらぶらと街角を歩いてると、おばあちゃんがお兄さんの車の縦列駐車を誘導してたんですね。オーライオーライとか言って。そんで、誘導してるのおばあちゃんだし、危ねーなと思って見てると、案の定、ゴン! と後ろの車にぶつかってしまったんです。
うわっ! と思って、事の成り行きを見守ってると、ぶつけたお兄さんが車から降りてきて、おばあちゃんの方に向かって、「ありがとー」と手を上げたんですね。
そして笑顔で手を振り返すおばあちゃん。
いや…
おまえら……
てか後ろの車の人……
とか一瞬思ったんですが、どうもこの感覚って日本人だけで、話を聞くとみんな駐車はぶつけて停めるらしいっすよ。「え? そのためにバンパーがあるんでしょ?」って言われましたよ。
すごくない?
だって日本ならほんの少しコツンと当てただけで相手がぶち切れて110番で警察呼んでサイレンならしてパトカーが到着して保険屋もやって来て大騒ぎになるじゃないですか。
同じ先進国で、オシャレな車に乗ってて、この感覚の違いはなんなのかと。
当時のスナップ。この白い車がどうやって外に出るかというと、前の車をぐっと押して、出ていくわけです。
これはイタリアだけじゃなくフランスでもアメリカでも同じっぽいです。
僕の車を見て、いろんな人に「直した方がいい」「みっともない」「ちょっと怖い」「引く」とか言われてきましたが、海外によく行く知り合いだけは、「いい感じに味が出てる」「直さん方がカッコいいよ」と言ってました。
なのでどうも、その辺の感覚が決定的に違うようです。
そもそも車に限らず日本人は「ピカピカ」「傷一つない」という状態が異様に好きなんですね。
ゆえに街も綺麗で、外人さんがびっくりすると。
でもその反面、「綺麗警察」みたいになっちゃってて、前述の通り目視できるか分からんくらいの傷でパトカーがやって来る。
僕、はるか昔、海外オークションでアメリカからカメラを仕入れてた時代があるんですけどね、まー向こうの人のつけるランクほど当てにならんもんはなかったですね。
実際「Exellent mint condition A+++++」(新品みたいなレベルだよ! めっちゃきれい!)という表記が日本で言うところの「ランクC」(目立つ傷・汚れあり。実用可)くらいですね。
まじで。
たまに日本人から仕入れることもありましたけど、もう日本人相手の商売はほんと気楽ですよ。梱包も丁寧で、品物も「多少の傷があります」とか書いてても基本めちゃくちゃきれいやからね。壊れてないし。ニポンジンサイコーデスネー!
という、そんな経験があるのです。
あ、僕は別に欧米が正しくて日本が間違ってるみたいな、すぐに「海外では……」とか言っちゃう外国かぶれの人じゃないですよ。
自分の感覚として、道具は使ってナンボなので、そんな見えない傷まで気にするのもちょっとなぁ…と思ってしまうのですよ。
とはいえ、確かに、僕以外の人はみんな僕の車を「やばい」「怖い」と思ってる。
仕事で初めて会う人のところにこの車で行くたび、僕の社会的信用度が47%くらい下がってる。
あと気付けば隙間風もひどくなってきたし20万km越えてるしクラクションもつぶれた。
これではまずい。
ということで、こないだ車を買い替えたんですね。
15年落ち、中古で車両本体38万円の車ですよ。
全然期待せずに「ハンドルとアクセルとブレーキとタイヤがついてたらええわ、あっあとワイパーも」みたいなノリで中古屋に見に行って、案内されて、担当の若い兄ちゃんも「まあ古い車ですし、10万km走ってて、あちこち傷もありますよ」とか言ってて、全体的にテンション低めで案内されたんですが、兄ちゃんが「こちらです」と言ってその車を見た時に僕はほんとうに衝撃を受けました。
おいこれ新車やんけ!!!!! と。
固まってる僕の横でテンションの低い兄ちゃんが説明します。
「まあ、ご覧の通りちょっと傷が多くて…」
「どこですか」
「え?」
「いや、傷が多いって」
「こことか、こことか…」
「え?」
「え? いやほら、この辺りにたくさん…」
「え? どこですか?」
「え?」
みたいな。
その時に、さすがにちょっとこの世界観は狂ってるんじゃねえかと思っちゃいましたよ。
まあ僕の両目が眼精疲労で腐ってただけかも知れませんが。
その後、無事に納車され、正常に動く燃料計、正確に合ってる時計、生まれて初めてのカーナビ、さらに後ろについてるカメラという、ハイテクすぎる現代の車を手にした僕は「このままいったらそのうち空飛ぶんちゃう?」と逆にちょっと引いてるわけですが、
ようするに今回何の話をしてるのかというと!
賢明な読者の方々はお気づきの通り!
日本の! 家の! 話なんだよ!
現在のクロス壁にちょっとでも傷がついてたら即クレームな顧客体質、
子供が無垢の床板にソースをこぼして大騒ぎするその感覚、
そういうふうに暮らしてるとしんどくないっすか? ということです。
日本にずっと住んでるとわかりませんが、もっと楽に暮らしてる人たちも大勢いるんですよと。
だからべつにクロスが破れようが、床板にソースの跡がつこうが、それを見て眉をひそめる人たちの異常な感覚に合わせて自分がしんどい思いをすることないぜと、僕は言いたい。
え?
でもやっぱり周りの人のことは気になっちゃう?
そういう人はぜひ古民家を選んでください。
古民家を選べば、初めから穴が開いてたり、天井裏を誰かが走ってたりして、その辺は自動的にめちゃくちゃになるので、らくちんですよ。
家って美術品じゃなくて、生活するための道具ですからね。
使ってナンボの道具です。
古民家はそういう視点で言うと「長年使い込まれて味が出た、使っててとても気が楽な道具」なのですね。
また長くなっちゃいました。すみません。
最後のオチですが、そんな僕のピカピカの新車ちゃんも、たぶん嫁が光の速さで当ててボロボロになるという事実。
またそうなった時に、写真撮って、同じ記事を書こうと思います…
おわり。