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地元の工務店さんに指示を出そう

やー。この話、しようかしまいか迷ったんですけど。
なぜならクロニカはいろんな地元系の工務店さんとお付き合いがあるので、露骨に地元系工務店の至らなさをあれこれをえらそうに語ったら夜道を歩けなくなるんですよね。
ということでこの物語はあくまでフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
ていうかほぼ僕の体験や見聞きした話に基づいてるという前提で、語ります。

これ何の話かというと、地元系の工務店さんにお任せしちゃうとほぼ自分の想像している感じにならないので、具体的に指示を出した方がいいですよってことなんですが、まず最初に言っときたいのは、「悪気」のある工務店さんはそうそうない、ということです。
皆さん「地元工務店」って聞くと坊主頭でガタイのいい親方がダボダボの職人ズボンを穿いた金髪の若いやつの頭を金槌で殴ってるめっちゃ怖い人たちって思うじゃないですか。
え? 思わない?
それは失礼しました。
そう、実際は、この令和の時代にそんなコンプラをフル無視したような工務店さんはレアです。
僕のお願いしたあの親方でさえたまに僕に敬語出てましたから。
おそらく今の平均的な工務店さんは、エアコンの効いた観葉植物が置かれた事務所で、若々しく物腰の柔らかい人が担当になって、親身に話を聞いてくれて、 職人も施主の前で煙草を吸わず、社長も敬語を使ってくれて、普通にいい人たちだと思うんです。
なので「悪気」や「悪意」はそうそうないと思うのですよ。
ただ。
悪意が無いからといって、あなたにとって理想の家が建つとは限らない。
ここが大事なところ。
特に今から話すのは、設計士さんと一緒に建てる前に仕様をガチガチに固めるのではなく、直接社長や大工さんとざっくり打ち合わせるタイプの工務店さんに関する注意事項となります。
仕様と予算をガチガチに固めると大体大丈夫なんです。
でも新築と違って、古民家リノベーションはそこまでできない、したくない、分からない、となるのが常。
なので設計士さんの活躍よりも、現場の大工さんの判断が大きい。
だから大工や社長と直接打ち合わせる、あるいは自分が一人親方の大工さんに直接頼む、という感じになるケースがよくあるんじゃないかなーと思ってます。
今回はそんな僕のようなケースに該当する方々に役立つ情報となっております。

前置きが長くなりすぎました。
夜道対策です。
それでは本題に入っていきます。
えっと、まず大前提として、工務店さんと施主が気にするところがそもそも最初から思いっきりズレているという話をしたい。
工務店さん、大工さんが一番気にするのは「建物としての質」です。
これを聞いて「だよねー」と思える方はいいんですが、「?」と思った方はやばいです。
建物としての質。
それはすなわち、我々施主が一番興味ないところ。
我々は家の見た目とかオシャレさとか便利な間取りとかステキなキッチンとかお日様の射し込む緑溢れるリビングで家族団らんとかペットも走り回れる庭とかそういうことを重視するじゃないですか。
でも工務店さんや大工さんはそんなこと1mmも興味ないですからね(偏見)。
施工側が気にするのは、雨仕舞! 耐久性! 納期! クレーム! なのです。
とにかく雨が入らないこと。すぐにダメにならないこと。納期が守れること。クレームが起きないこと。
古民家系の工務店さんであれば、そこに「構造材の質」や「自然素材」という要素も重視されますが、まあとにかく「見た目のオシャレさ」とか「緑あふれる暮らし」みたいな軟弱なモンは一瞬で無視される世界です。
工務店にとって家とは、建つか、潰れるか、という命がけの戦いなのです…!(ちがうよ)

「いい家づくり」という定義は千差万別。
雨漏りしない、長持ちする、クレームの少ない家が「いい家」だと思っている工務店さんに「いい家にしてください!」と丸投げするとそういう仕様の家が完成します。
もっと言えば、我々の「いい家」だって人によって全然違うものです。
部屋が広い方がいいという人もいれば、狭い方が好きだという人もいます。
僕が衝撃だったのは、普通トイレに窓はあるやろ、と思っていたら、ある人が「トイレに窓があると落ち着かない」と仰ったことです。
そんな自分にとって「当たり前すぎていちいち言うまでもない」と思っているところに落とし穴があるのです。
なのでまず一番最初の作業としては、お互いの「いい家」観を話し合い、すり合わせていくことが大切だと、僕は自分の古民家リノベ体験を通じ、身に染みて感じました。
考えてみれば当然です。
三代続く焙煎士さんの豆を取り寄せてそれをハンドドリップで煎れたコーヒーを嗜む僕と、毎日その辺の缶コーヒーをがぶ飲みしてるのをかわいそうに思ってわざわざハンドドリップでそのこだわりコーヒーを煎れてあげたところ一口飲んで「まずっ」と顔をしかめた大工、その二人の好みが同じなわけないんですよ。
なので僕は毎日ケンカしまくりながら、工事を進めながら、リアルタイムでそのズレを修正していきました。
するとすごいもので、最後の方は大工さんが僕の好みをちゃんと理解してくれて、僕が目をギンギンに光らせてなくてもわりとちゃんと収めてくれるようになったのでした。

で、僕が思うに、今から僕が誰か初めての大工さんに工事を依頼するのであれば、個別の事象をいちいち指定するんじゃなくて、全体の価値観を説明していくだろうなと思います。
どういうことかというと、たとえば具体的にキッチンはこれがいい、ということじゃなく、こういう世界が好きだとか、この家具よりこの家具の方が好みだとか、この店は嫌いでこの店は好きとか、なんというか、自分の属性を伝えていくと思うのです。
全体的な好みを理解してもらえてないと、指定していないところで全然思ってた感じにならないんですよね。そして指定していないところというのは工事中に星の数ほど出てきます。
キッチンを指定しても、キッチンの床がイメージと違ってたり、キッチンの窓の大きさが違ったり、窓の高さが違ったり、ということが多発します(設計士さんが入ってても施主は窓の大きさや高さを寸法だけでイメージできないのでやっぱり人任せになるし、出たとこ勝負になる)。
でもその時に「施主は明るいキッチンが好き」「というかとにかく明るい家が好き」「自然素材が好き」「多少高くても自然素材を優先する人」という属性が相手に伝わっていたら、大外しはしないんじゃないかと思いますし、逆にこっちが工務店さんの好みを知ってたら「キッチンだけはこうしてね」みたいに先回りして指示が出せると思うんですよね。

てことでまず第一は「お互いの『いい家』観をすり合わせよう」ということでした。
なぜか長くなったぞ。
次回に続きます。

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