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地元の工務店さんに指示を出そう・その2

前回に続き、今回も地元系の工務店さんに古民家リノベをお願いする際の指示の出し方のコツをお伝えしていきたいと思います。

あ、前回言い忘れたんですけど、まず大大大前提として、その工務店さんが「伝統構法」について詳しいということは必須条件ですよ。
古民家は今の家とは構造が全然違うので、その構法に詳しくないと間違った直され方をされます。
でもそういう知識を持った工務店さんや大工さんは今や珍しい存在なんです。
うちの「古民家に強い工務店・設計事務所」コンテンツに載ってる方々はもちろん大丈夫ですが、ご自身で探される場合は、うちのサイトで伝統構法をしっかり勉強したのち、工務店さんに「伝統構法って何ですか?」と訊いてみればいいと思います。
その時にその答えが「あー、デントーコーホーね。はいはい。知ってますよ。あれおいしいですよね!」とかだとアウト。
逆に古民家の構造についてあれこれ熱く語って教えてくれるようであれば合格です。

でね、
そんな合格ラインの工務店さんが見つかったとしても、好みの家をつくってもらえるかはまた話が別。
古民家リノベは一日にして成らず。
構造の問題をクリアしても、次はデザインや好みの問題がやってきます。
実生活でもこういうことはよくありますよね。
機能はバッチリなのに外観がイマイチ…
味は美味しいのに見た目の色合いが…
本当に優しくて話も合って性格もいい人なのに顔だけがどうしても…
でも正直、結婚して20年近い僕からすれば顔なんざただの飾りなんですよね。共同生活を20年も続けてりゃ相手の顔面なんかどうでもよくなりますね。そんなことより冷蔵庫をいっぱいにしないか、落ちたものをちゃんと拾うか、洗濯物を溜め込まないか、定期的にホコリを拭く習慣があるか……
おい古民家リノベの話をしていたのになぜ俺は悲しい気持ちになってるのだ。
ちゃうやん、
何の話やっけ、
とにかく機能と見た目は別物だってこと! です!

ということで見た目をどうにかしたい。
だから自分の好みを工務店さんや大工さんにどうにか伝えたい。
そんな時に、前回書いたように、ネットや雑誌の切り抜きを見せて、自分が好きな世界観を伝えていくことは大事です。
でもそれだけでは不十分。
なぜなら地元系工務店さん、大工さんは、見せられた雑誌に載ってる古民家リノベ写真の、エイジングのかかった床板の風合い、かわいい格子の入った古い木製建具、陰影礼賛なほの暗いムード、そういうものを基本的に「直すべき箇所」として認識しているという、恐るべき可能性があるからです。
この写真ちょっと見てくださいよ~これめっちゃステキで~とあなたが並べた古民家ビフォーアフターの写真は、工務店さんや大工さんにとっては、たぶんビフォーとアフターがに見えてます。
そして「おっ、いいですね~」と言われて、あなたもそれに気付かず「いいでしょ~」と喜ぶ、そんなやばすぎる状況に陥るわけです。

地元系工務店さん・大工さんにも、もちろん古民家の自然素材が古びた雰囲気を愛する方々はいらっしゃいますし、僕がご紹介する人たちはみんなそうです。
が、
そうでない、真逆のセンスを持つ施工業者がたぶんその10倍は存在します。
いくら伝統構法に詳しくても、いくら古民家をリノベしまくっていても、「ピカピカの新品の方がええに決まっとるやろ」というセンスなのです。
これが難しいところなんですよねぇ。
その価値観ってなかなか揺るがないんですよ。
なぜならそれはもう「センス」なんだから、言葉で説明しても理解できないのです(我々がそのセンスを理解できないのと同じように相手もこちらのセンスを理解できない)。
こっちがいくら「古い感じが好きで~」「これとかめっちゃエモくて~」「これとかめっちゃ雰囲気あるじゃないですか~」と言っても、「指示」としては全く伝わりません。
じゃあ具体的に一つ一つ指示していくのか。
というとそれはそれで難しいですよね。だって我々は素人なんだから。どんなものがあるのか、それをそこに使っていいのかどうか、高いのか安いのか、全然分かんないんだから。
てことで、
僕がそういう問題をざっくり解決する魔法の言葉を教えます。
これ言うとまじで一発です。
それは「できるだけ新建材を使わないでほしい」という一言です。
この魔法の言葉を伝えた瞬間に、工務店さん・大工さんは「え?」となって完全フリーズします。
この言葉がどれくらいの効力があるかというと、偶然バーで知り合ったすごいグルメに詳しくておすすめのバルとか隠れ家的なフレンチとかを会うたびに教えてくれるおじさんに初めて食事に誘われた時の「あっすみません、言ってなかったですよね、わたし既婚者なんです」くらいのインパクトはありますね。
その瞬間おっさんの中ですべてが崩壊。
かわいそう。
はよ言うたれよ。
じゃなくて、工務店さんからすれば「新建材を使わない」という選択肢は全然頭にないため、それらを使わないで欲しいと伝えることによって、自分たちが普段やってる家づくりとは全然違うことになるぞ、という事実を認識してもらえるのです。
新建材。
つまりアルミサッシやクッションフロアやビニールクロスや樹脂製の巾木やフラッシュドア。
それらを使うな……だと……?
ということです。
言い換えればこの条件を飲める人、つまり「あっ、じゃあ旦那さんも一緒に食べに行きましょうよ!」と言える人こそ本物のグルメ好きであり、「新建材を使わんかったら全部本物の木になるぞ、高なるけどええんか?」と口では文句を言いながら内心はテンション上がってる大工、それこそが本物の大工さんなのです。

思うに「新品ピカピカは素晴らしい」という発想の諸悪の根源はこれらの工場で作られる新建材なのですよ。
工場で作られるものは新品の方がいいに決まってるやん。
でもそれ、古なるやん。
飽きるやん。
家潰されるやん。
そんでまたピカピカを求めて新築するやん。
という負のサイクルによって儲けてきたのが住宅建設業界なのです。
で、
我々古民家好きは、そんなサイクルと美的価値観にNOを突きつけるような人たちだと思うので、まずは僕らはそこにはいませんよ、ということを知ってもらうことが大事です。
その時にめっちゃ有効なのが「新建材きらい」という一言。
実際にはアルミサッシや水回りなど、新建材をゼロにすることは難しいと思いますが、自分たちの属性を示す言葉としてはほんとに便利なんで、ぜひ使ってみてくださいね。

その呪文を唱えた瞬間、現場には自然素材が溢れるようになります。
この時点で8割は成功。
残り2割は「古さ」へのアプローチ。
ですが、またまた長くなっちゃったので、次回へ持ち越しです…

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