古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

内覧じゃなくて一般公開されてる古民家の見学方法

直近3回にわたって「古民家を内覧する時のチェックポイント」をご紹介してきましたが、今回は内覧じゃなくて、普通に公開されてるお家を見学する時にどうすればいいか、について解説していこうと思います。

普通に公開されてるお家っていうのはあれですよ、旅行先で見かける「旧〇〇家住宅」とか「〇〇邸」とか「〇〇庵」とかいう入場料300円くらい払って入るやつです。
こんなサイトのこんな記事を読んでる皆さんはきっと古民家が好き、すなわち「家」に興味を持っている方々だと思いますので、旅先ではご当地グルメよりもそういった〇〇家住宅、みたいなところに行きがちだと思いますが…
え?
ご当地グルメの方が好き?
知ってる。知ってるけどごめんちょっと黙ってて。話進まんから。

でさ、
〇〇家住宅とか〇〇邸とか、行くじゃないですか。
そしたらすごいお屋敷だったり、でっかい洋館だったり、巨匠の代表作だったりするじゃないですか。
そんで中入ってうわ~素敵~ってキョロキョロしながら適当にiPhoneで写真撮って「#旅行#旅行好きな人と繋がりたい#旅コーデ#旅スタグラム#誰かに見せたい景色」ってタグ付けてインスタ投稿するじゃないですか。

でもね、それじゃダメなのですよ。
いやダメじゃないけど、この古民家ガチ勢クラスタにいる皆さんにとっては、それだけで済ましちゃうのは非常にもったいないのですよ。
なぜなら!
そういうすごいお家っていうのは!
「細部」の宝庫だからだ!!!

とか急に言われても何のこっちゃですよね。
説明しよう。
ものの見方には大きく二つの種類がある。
すなわち、マクロとミクロである。
このうち人が建物を見学する時にもっぱら使われるのがマクロ的視点。
前述の「うわ~素敵~」と言いながらiPhoneのカメラを向けている時、人は、実は、その空間のどこも見ていないのである。
まーそれは当然ですね。
建築物って巨大すぎて、目に飛び込んでくる情報量が多すぎるのよね。
だからもう脳がパンクしちゃって、ふんわりとしか全体を捉えれない。
そんなことないよと思いますか?
じゃあちょっとこれ見て。

富田林寺内町

これは僕が撮った富田林寺内町のとある古民家の写真ですが、素敵ですよね。
ね。
これパッと見て「あら素敵♡」って思いましたよね。
じゃあ、この家の何がどう素敵なのか、誰かに説明できますか?
たとえばこれまで一度も古民家を見たことがないブラジル人と電話してて(Zoom禁止)、口頭で、この家がどう素敵なのか、正確に表現できるか? ということです。
きっと大多数の人が「ジャパニーズ~、トラディショナル~、えっと、タタミ~、ニンジャ~」とか言ってしまって、さらに向こうに「オー、アイラブニンジャハウス~」とか気を遣われてしまって、ああ、自分はこの家のことを何も分かっていなかったんだな、と絶望することでしょう。
でね、
「その家の好きなポイントを自分で説明できない」、これこそが問題なんです。
僕が何を言っているかお分かりでしょうか。
ようするにそれって「自分が工務店や設計士さんに正確に好みを伝えられない」ということなんですよ。

なぜ説明できないのかというと、答えは簡単です。ミクロ的な視点が欠けているからです。
「あら素敵♡」の中には、自分がどの要素にどう好ましいと感じたのか、という情報が隠れています。
この画像を見てください。

富田林寺内町

これはあなたがこの写真を見た時に視覚的に捉えたポイントの一覧です。本当はこの10倍ほどありますが便宜上カットします。
で、これらのうち、どこが一番気に入ったのか、どこをスルーしたのか、どこが特徴的でどこが珍しいと感じたのか、というのを自分で分析していく視点があるかどうかで、家づくりのクオリティが劇的に変わります。
この写真を見て、縁側がいいと思ったのか?
縁側は縁側でも、縁側の建具が引き込まれているのがいいと思ったのか? それとも床板の色合いが良かったのか? あるいはL字型に回っているのがいいのか?
右の部屋の暗がりが好みなのか?
視線が奥まで通り抜けるのが好きなのか?
照明器具がいいのか?
照明器具のデザインがいいのか? それとも設置位置がいいのか?
などと突き詰めて考えていくと、やがて自分の好みやその家の造り、家のデザインというものが分かるようになってきます。
そして分かってくると相手に言葉できっちり説明できるんです。
工務店の親方には「縁側の建具を引き込めるようにしてください」と。
そしてブラジル人には「ニンジャ本人が豪邸に住んでいるわけではないのでニンジャハウスという呼称はおかしい」と。

ああ…
あと何枚か写真を用意してたんですが…
長くなりそうなので前後編に分けます…
毎度毎度すんません…

つづく…

pagetop