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古民家リノベーション体験談40 古民家と新築の建築確認申請

【前回までのあらすじ】右、いや、やっぱ左、いや、やっぱり右!

前回は全国の彩香さんに失礼な記事を書いてしまいすみませんでした。
離れのプランが決まり、位置も決まり、見積もらって、新築ローン申請、からの解体着工なんですが、その前に大切なお話が一つあります。
そう、それは銀行にローン申請に行く時にめっちゃ羽振りのいいっぽい派手な服装で行くのかすごい質素な服装で行くのかどっちがローン通りやすいか夫婦で意見が割れてモメた話…
ではなくて「建築確認」のお話です。

建築確認。
この単語、初耳の方も大勢いらっしゃると思いますが、この国で建物を建てる時にほぼ必須。
簡単に言うと、建物を新築したり増築したりする際、その建物が現在の建築基準法を守っているかどうかを確認するための手続きです。
これをやってくれるのが設計士さん。
僕も構造計算、図面作成、そしてこの書類関係では設計士さんに大変お世話になったんですが、
まーそこでも色々ありました。
僕が実際、新築の建築確認申請を出してもらおうとした時に、「古民家の母屋がある」という理由で引っかかったのです。
なんでも古民家は存在自体が「既存不適格建築物」と呼ばれ、法律に適合していないので、なんか触ろうとすると色々とイチャモンつけられるらしい。
役所いわく、

1. 離れと母屋をくっつけると新築じゃなくて増築になるから母屋の耐震性を現行法に適合させろ~とか。
2. それが嫌なら母屋の確認申請書類を持ってこい~とか。
3. それが無理なら母屋が建築基準法施行前に建てられたものだと証明してみろ~とか。

なんじゃそれ。
順に回答しますと、

1. 大金かけて壁だらけにしろと?
2. 100年前に確認申請があったと?
3. やってやんよ

ということで選んだというか選ばされたのは3番。実際は色々とやり方があるそうですが、まず証明できるものを探してくださいと設計士さんに言われたので、取りあえずそれに従うことにしました。
ただ、
向こうの言い分が納得できませんわね。
まず「既存不適格」っていう呼び方。
おかしくない?
後からできたのは法律の方でしょーが。
古民家からすれば「いや、お前が合わせろよ」って感じですよね。
でも建築基準法くんは後から来て「ハイ!今決めた~! お前今日から違法な! だから俺の言うこと聞けよな~!」って。
古民家くんからすれば「は?」ですよ。
ついでに僕も「は?」ですよ。
昭和の子供かよと。
某オレンジ色のガキ大将ですら21世紀にもなってそんなハラスメント言いませんよ。
この辺の法律や役所の対応は言外に「古民家とか潰せよ。めんどくせぇからよ」と言ってるように思えてしまった僕は、
よっしゃほんじゃ証明したろやんけ、と3番を決意したというわけです。
まあ証明したところで事態が好転するとも思えませんでしたが…

この家が1950年以前に建てられたものだということを証明する。
まず真っ先に思い浮かんだのは、大工さんのこと。
幸いこの家を建てた棟梁の子供、すなわち今の親方のお父さんがご健在で近所に住んでいて、当然うちの家が1950年以前から建ってるのを知ってるはず。
なのでその人を証人として役所に連れて行きます、と言ってみたんですが、なんと「そういうのは駄目です」と言われてしまいました。
は?(2回目)
なんで?
その家を建てた張本人の子供が言ってんのに、それが証拠にならんってどういうことよ?
これ何? かぐや姫の蓬莱の木の枝を持ってこい的なやつ?
ぐぬぬぬぬ…
情報……
情報強者をなめるなぁぁ!!
ということでぼくの超絶ITスキルを駆使して見つけたのがこちら。

https://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1

テッテレ~。国土地理院提供、地図・航空写真閲覧サービスぅ~。
説明しよう!
このサイトは過去に空軍などが撮影した古い航空写真を誰でも気軽に閲覧できるサービスである!
土地を買う時にその土地の過去の状態を調べることができて便利だし、地元の駅前の50年前の様子とかが分かるので、画面見てるふりして仕事をサボりたい時に最適だよ!
ではさっそく1950年以前の写真を検索。
クリックポチ。
あ、あったあった。
ほらこれ!
ここにある!
おれの家が!!

航空写真

僕はこれをプリントアウトして赤マジックで「ここ!!!」と記入して設計士さんに渡しました。
まあ正直これだけでは同じ家かどうか証明できないので効果は微妙だと思ったんですが、設計士さんの交渉がうまかったのか、こっちの執念が勝ったのか、めんどくさいからこの手の人にこれ以上絡みたくないと思われたのか、なぜかこれでOKが出て、その後も文句は言われませんでした。
success!!

僕はこのモノクロの航空写真をプリントアウトしながら思いましたよ。
なぜみんな古民家に住み続けないのか。
なぜ美しい日本の風景が失われていったのか。
それは我々住み手の意識の低さもありますが、まず何より、何よりね、法律やろと。
古民家にまつわる法整備がきっちりなされていない。この国固有の伝統建築物である古民家は、なぜか法律上では存在を無視されているんです。
適法にできないから潰すしかない。
そんな家もたくさんあります。
役所っていうか、これそもそも国が古民家を全力で潰しにかかってるよねと。
そんな忸怩たる思いを禁じ得なかった、新築の確認申請のお話でした。

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