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古民家リノベーション体験談19 古民家の耐震性について2

渡り廊下の簾

【2019年追記】古民家の耐震性について、めっちゃ詳しい特集記事を書きました。併せてお読みください。

【前回までのあらすじ】古民家はみんなが思ってるほど地震に弱くないよ

前回は「耐震」と「免震」の違いを軸に、古民家の地震に対する考え方をご紹介しました。
今回はそれをもう少し掘り下げて話します。

現代の住宅設計の基準となる「建築基準法」が制定されたのは1950年(昭和25)。
敗戦し、辺り一面が焼け野原の時代、新たに制定された基準法に基づき、ここから日本の風景が急速に変わっていくこととなります。
当時は文化、経済、思想など、あらゆるジャンルで「欧米化」の波が押し寄せていました。
それはGHQの指針でもあり、敗戦国感情でもあったと思います。
その大きな波は建設業界にも波及しました。
建築基準法が目指したのは、これまでとは違う欧米の世界。
つまり脱・伝統建築、=耐震の世界です。

まあその当時どんな雰囲気だったのかは分かりませんが、戦後わずか70年で日本の風景が一変したことは確かです。
もし浦島太郎が1944年に竜宮城に向かっていたら、帰ってきた時には村が郊外型アウトレットモールになってたり自分の家がdocomoショップになってたりして、玉手箱を開ける前にショック死していたと思います。
今僕たちが目にしている街の風景は、戦後一気に広まった「耐震化」、それに伴って洋風建築ぽい家があっという間に建ち並び、さらに改正された建築基準法によっていつの間にやら伝統建築が建てられなくなっていたという、そんな流れの結果なのです。

なんでそんなことになっちゃったのか。
これには様々な理由が絡み合っていると思います。
たぶん敗戦が一番の理由ですが、実際、人間の進歩?の過程として「人権意識」が高まることは必然だっただろうし、その結果生活スタイルが「みんな一緒の部屋」から「個室」のアメリカ風になるのも必然だっただろうし、前に書いたように第三次産業の隆盛で「家」にいる時間が減ったということもあるし。
あとですね、いわゆる「建売分譲住宅」が爆発的に広まったのが1960年代なんですが、その原因は当時TVで放映されていた『奥様は魔女』などのアメリカドラマが、戦後日本人の「家」観に大きな影響を与えたと言われています。アメリカの優雅な暮らし、そして「マイホームを持つ」という夢が、戦後から復興を遂げつつあった日本人の琴線にミラクルヒットしたんですね。
あ、話がずれてきた。
耐震の話でしたね。
なんせそういう流れの中、気付けば日本でも「耐震性の高い家」がスタンダードになっていて、そんな家に生まれ育った人々が古民家を見た時に「うわ、耐震性なさそう…」と眉をひそめるという構図になったわけです。

ところが僕が自分で調べた限りにおいては、古民家は免震性があり、そこまでビビることはないんじゃないかということが分かってきました。
ほんとにねえ、いろんな本を読んだし、いろんな人に話を聞きましたよ。
ところがそのたびに混乱していくわけです。
みんな言うことバラバラなんですよ。
古民家は筋交いが無いから危ないとか、筋交いはいらないとか、固めれば大丈夫とか、固めたらいけないとか、まず基礎を作れとか、いや基礎は壊せとか、鉄骨を入れろとか、鉄骨なんか意味ないとか、
もうね。
理論も方法も様々で、ハウスメーカーもそれぞれ独自の方法をアピールしてて、学者の言うことと現場の人間が言うことが違ってて、現場でも設計士と大工の意見が割れたりしてます。
なぜこんなに意見が割れるのかというと、やっぱりトライ&エラーができないということと、もう一つは当時の職人の理論というのが、簡単に証明できないからだそうです。

1000年かけて受け継がれてきた職人の技術や勘所。そういうのを、後から分析してもものすごい労力と時間がかかり、現実的ではない。
簡単にデータ化できないから、建築基準法としては扱いに困るわけです。
だったらもう全部禁止にしちゃえと。
乱暴に言うとそういうことです。
何やってんだかねぇ。

で、データ化できないなら、実験するしかないでしょ。
ということで、すごい実験をやってるところを見つけてしまいました。

防災科学技術研究所

いかがでしょうか。
ご覧の通りガチです。
ドメイン見てください。「go.jp」です。ガバメントです。
サイトの作りからして「公的」感がプンプンします。
こちらは阪神淡路大震災後に設立された、建築物の耐震性能を研究する大型施設らしいです。
この研究所のやってる実験というのがすごい。実際に伝統建築を建てて、それをグワングワン揺らすっていう。
いや、なんぼかかるねんと。
でもほんとにやってます。
さすがガバメントです。
このページで実験動画を公開されていますので、興味ある方はぜひご覧ください。
リストの真ん中くらいに、古民家と同じ「伝統的木造軸組構法住宅」がいくつか含まれています。
それが阪神淡路大震災と同じ揺れを受けた時に、どうなるのか?
youtubeにもアップされたものがありましたのでご紹介します。

いかがでしょうか。
皆さん正直ちょっと引いたのではないでしょうか。
ご覧の通り、めっさ揺れてます。
壁が無いので耐震性はありません。
まるで瓦を乗せたプリンです。
でもよく考えてみれば、耐震じゃないんです。最初から耐える気ゼロなんです。
めっちゃ揺れながら、誤魔化してるんです。
それは周りから本気でこづかれてるのに「やーめーろーよー」とか言いながらニヤニヤ笑って誤魔化しているいじめられっ子のようです。
それでも、彼は最後まで倒れませんでした。
先生はそんな君をバカにはしない!! (抱擁)

はい。
まあそういうことで、古民家における地震への考え方というのは多種多様ですが、それなりに大丈夫っぽいよ、というのがこの記事の結論になります。
この長文をここまで読んで頂いた方はほぼ全員お忘れかと思いますが、結局何の話かというと、リノベーションプランの話ですよ。
この結論を得たことで僕は「1980年代に建てられた離れを解体して、1930年代に建てられた母屋を残す」という判断に至ったのでした。
話なっが!!

次回はようやく時間軸を元に戻し、リノベーションプランの最終局面へと続きます。

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