僕はどうやって古民家をリノベしたか・その1「僕が古民家を選んだ理由」
この古民家リノベブログも早いものでスタートから6年半が経ちました。
6年半ですよ奥さん。
6年半つったら体長7mmくらいだった生き物が小学校に入学して幼なじみと初恋済ませるくらいの歳月ですよ。
すごいよね。
で、それだけの期間書き続けてくると、「これはもうさんざん書いたからええやろ」ということが増えてきます。
特に基本的な内容であればあるほど、その傾向は強くなる。
古民家を直す時にどこから直せばいいのか?
古民家をどうやって探せばいいのか?
予算をかけない方法は?
何を優先するべきか?
みたいな話って、ほんとにもう何度も何度も書いてきたんですよね。だからもう全員知ってるだろうと、書き手である僕は考えてしまいます。
が!
よくよく考えてみれば読者様というのは常に流動するわけで、書き手のように、同じ読み手がずっと最初から読み続けているわけではない。
1年前から読んでくれている人もいるし、昨日はじめてクロニカを知った人もいる。
昨日も「大原さんの家って、床は全部無垢にしましたか?」というご質問を頂いて、僕はハッとしたんですね。
そうか。それを知らないのかと。
知りようもないのかと。
最近は過去記事発掘回も月に一度やってるし、以前も「過去記事を探すのは検索窓使ってね!べんりだよ!」という話もしてるんですが、その話すら過去のアーカイブにどんどん流れていって消えていくんですよね。
ということで、今回から不定期に、「僕はどうやって古民家をリノベしたのか」というお話を改めて語っていこうかなと思います。
クロニカの記事は最初から全部読んでます、というやばい奇特なクロニカマニア(略してY.K.K.M.)の方々には大変申し訳ないのですが、やっぱ今現在、古民家に住みたい、リノベで困っているという方々の即戦力になりたいと思っているので、繰り返しになりますが何卒ご容赦くださいませ。
あ、一番参考になる「古民家リノベ体験談」は繰り返して語るもんじゃないので、僕がリノベでどんな体験をした(どんな目に遭ったか)を知りたい方はこちらからどうぞ。
てことでまず第一発目のお題は、
「なんで古民家に住もうと思ったんですか?」
という話。
これ今だによく訊かれるんですよ。
こないだも「新築しようと思ってたんですよね? それがなんで古民家になったんですか?」と二人の方にそれぞれ質問されました。
Y.K.K.M.の方々はご存じの通り、僕は最初、ゴリゴリの新築派でした。
時間をかけて土地を探し、住宅地の50坪ほどの土地を見つけ、親も連れてきて、ここに決めた!となり、設計ソフトでその土地に合わせた新築プランを何通りも考え、新築の暮らしをワクワク想像して、あとは契約の電話をかけるだけ、というところまでいってました。
ところが、僕がかけたのは「じゃ~もうそこ抑えちゃってください☆」という電話ではなく、「やめます」「……は?」「私、気付いたんです。真実に。だからやめます」「え?」「ガチャツーツーツー」みたいな電話でした。
不動産屋の兄ちゃん、あん時はほんとすまんかった。
その時、いったい自分に何が起きたのか?
そこなんですよね。
ちょうど和歌山の集落を車で走ってて、立派な古民家を見かけて、なんとなくぼんやりと走ってたら突然「あれっ? おれ新築建てようとしてるけど、新築建てたら、もう一生あんな家に住めないってことよね?」と思って、「そんなんは嫌だ!!!」となったのが直接の原因なんですが、
その時に初めて、実は自分が古民家に住みたがっていたことに気付いたと。
じゃあなぜそれまで気付かなかったんだと。
これが謎。
誰かに理由を聞かれるたび、当時をリアルに思い出してみようとするんですけど、たぶん、洗脳状態にあったと思うんです。
家族ができて、ローンを組んで、家を建てましょうと。
家を建てるなら、大手HMか、地域に根ざした工務店さんですと。
オシャレな家の施工例はこんな感じですと。
南向きの土地を選んで、夏は涼しく、冬は暖かい、動線が考え抜かれた家づくりをしましょうねと。
太陽光パネルならこれだけ得をしますよと。
断熱効率の違いでここまで光熱費が変わるんですよと。
耐震等級1と3の違いはこれくらいあるんですと。
新築した友達が言うには、一番やって良かったのは浴室乾燥だと。
そういう情報が、家づくりを考え始めた時に、雑誌やスマホから怒濤のように押し寄せてくるわけです。
そんなん無視できます?
できませんて。
流されますって。
僕もそれで気付いたら南向きの住宅地を見つけて新築プランを何通りも作ってましたよ。
なんか、太平洋戦争ってこんな感じやったんかなって思いました。
今から振り返ってみればなんであんなバカなことしたんだって思いますけど、あの当時、あの全体的なムードの中、それを疑える人が何人いたのかってことですよ。
戦争どころかこないだもみんなが鍋焼きうどん頼むからほんとは天ぷら定食食べたかったのに「あっ、じゃあ僕もそれで!」って言っちゃった僕なんか、絶対に「あっ、じゃあ僕も鬼畜米英で!」て叫んでますよ。
僕が古民家好きなことを完全に忘れてしまってたのは、つまりそういうことなんですよね。
でも僕は本当に運良く、自分を取り戻すことができました。
取り戻したのはいいんですが、国が推奨するルートから外れちゃったんで、一人でやるしかない。
なんの情報も、味方もいない状態で、小さいボートで荒れ狂う大海原に漕ぎ出すという、まさに脱p(自主規制)のような状態でした。
でもほんとにね、脱pしてみたらびっくりしましたよ。世界はこんなに広かったのかって。
こんなにいろんな家が、いろんな住み方があるんだって。
古民家なんてべつに特殊な家じゃないんですよね。
ほんの数十年前まで日本人全員が古民家に住んでたわけですから。
ほんと、洗脳が解けて、俺は今まで何をやってたんだ……てなりましたよ。
僕が古民家を選んだのはそういういきさつでした。
はい、ということで必要以上に長くなってしまいましたが、第一回目はそんなお話でした。
この基礎シリーズは連続じゃなくて、ちょこちょこ不定期にやっていきますね。
ではまた次回!