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古民家リノベーション体験談25 続々・リノベにかかる費用の話

柱のシール

【前回までのあらすじ】リノベーション費用大公開の巻

第3回目となる今回は、費用そのものではなく、費用対効果、というところに踏み込んでお話をします。
費用対効果。すなわちコスパ。
この言葉が世間に出回って何年経ったでしょうか。
この言葉のおかげで、世界中の聡明な人々が無駄にお金を使わなくなりました。
この言葉のおかげで、人々が家に絵画を飾ることはなくなり、高い服を買わなくなり、男性が女性をデートに誘わなくなり未婚率が増え少子化が加速して年金制度が破綻したと言われています(嘘)が、
今はそんな合理主義の時代です。

ところがその合理主義とは真逆を行くのが古民家です。
うちのお向かいさんなんか、同じ場所に家を建て直す時、「土を乾かす」ためだけにプレハブで一年待ったそうですよ。
いかがでしょうか。この清々しいほどのコスパ無視っぷり。
大工さんは何日もずっと木を眺めて考えていたという話も聞いています。
これがソフトウェア開発会社だったらたぶん裁判になってます。
今はさすがにそこまでのんびりではありませんが、でも結構そういう部分は残っていて、なんかもう「坪単価」っていう単語を出しにくい雰囲気はありました。
ちなみにこれ言うと99%の人に驚かれますが、うち、母屋の工事の見積がありませんでしたからね。
「ありえへん」と言われたこともあります。
「それ騙されてるで」と言われたこともあります。
でも僕は「こんなもん色々めくってみやな分からんし、見積もり出したら高なるし、かかった分だけ請求するわ」という親方に「ええよ」と答えました。
だってどうせ詳細な見積書出されても判断できませんから。
それにいい評判もよく聞いてたし、村の中で悪いことなんかでけへんという親方の話も納得いくし、色々とね、そういう雰囲気があったんですね。
まあこれは極端な例かもしれませんが、古民家を扱うっていうのは計算通りにいかないものだと思います。親方の言う通り、屋根をめくってみたらボロボロだった、床を剥がしてみたら井戸が出てきた(実話)、水道管が新しくてそのまま使えてラッキーなど、工事終了までにはいろんなイベントが発生するのです。
ちなみにうちの場合、結果的には途中でお金が足りなくなって「渡り廊下か玄関かどっちか諦めろ」(実話)ってなったんですけど、その話はまた後日。

そのように思った通りにいかない古民家ですが、さらにもう一つ、思った通りにいかないものがあります。
それは、慣れです。

何度かこのブログで喋っていますが、人間は慣れる生き物です。
「なんやねんこの温泉熱すぎるやろ!」と思っても20秒後には肩まで浸かる生き物です。
「あたし動物苦手なんだよね、なんかコワイしマヂ無理」と言っていても弟が子犬を拾ってきた一年後には「チョコちゃん行くよ〜☆」とか言って毎朝散歩に連れて行く生き物なんです。
つまり。
古民家リノベーションのプランを立てる時、どうしてもここだけは譲れない、絶対にどんなにお金をかけても直したいんだ! とあなたが強く思っている部分は、一年後には「……何だっけ?」みたいになってる可能性があるということです。
あな恐ろしや。

実際、僕も最初に見た時に「これは許せない!!」と感じた居間のアルミサッシが結局そのままですけど、あの時に感じたはずの嫌悪感は今や1mmもありません。
逆に当時のピリピリした自分を振り返って「大丈夫かおまえ」と肩に手を置きたい気分です。
居間のど真ん中にある柱に貼られた志村けんのシールもそのままです。
剥がせばいいんですけど、剥がす理由がない。
なぜなら何とも思わないから!
ほーら恐ろしいでしょう。
あなたのそのリフォームプラン、本当にそれでいいんですか…?(悪魔の笑み)

でもまあ無理はないです。
誰だって数千万円かけて自分の夢を実現しようとしてる時に、手を抜くことは考えられません。
常に全力で前のめりで、あれが嫌だこれも気に入らない、自分の理想はこうなんだ!という世界に入っていくのが自然でしょう。
でも、人間は慣れるのです。
そこを見誤ると、あちこちで無駄な工事をしてしまう可能性があるのです。

最後にもう一つ。
古民家というものは、様々な人間が様々に暮らしてきた歴史があります。その歴史が、ダサいリフォームや駄目な管理方法なんかに表れていたとしても、それを全否定して自分の思うがままに変えてしまうのも、ちょっとどうかなと思ったりします。(今だから言えることですけどね)
自分の借金したお金をどう使うのか。
過去の否定のために使うのか。
あるいは、次の未来のために使うのか。
目の前の建物を否定さえしなければたくさんのお金が浮くでしょう。
また一方で、否定しておいて良かったと思えることもあるでしょう。
その見極めが肝心であり、それは施主本人にしか分かりません。

僭越ながら僕が皆様にアドバイスしたいことは、どこにいくら使ったという情報よりもむしろ、こういった費用に対する考え方です。
僕はたくさんのお金を借りて、たくさんの無駄な出費をしました。
それはいい経験でもありますが、無知ゆえの失敗でもあります。
ここを読んで頂いている皆様には、ぜひ僕の体験を活かして、クレバーでスマートな古民家ライフをenjoy it! して頂ければと思います。

以上、長々と3回にわたって続きました費用の……あ、まだ話すことあるわ。
つづきます。
(えぇ…)

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