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僕が古民家を選ぶまで その2

前回までのあらすじ】新築するよ! → 古民家が目に留まる → あれっ?

何が「あれっ?」だったのか、その時はよく分かりませんでした。
家に帰って風呂に入りながらその違和感について考えてみたところ、どうもそれは予想以上に大きな違和感というか、この半年ほど土地探し、家づくりに奔走していた自分の土台をひっくり返すような、何か決定的な「気づき」のような感覚であるように思えてきました。
ちょっと待てと。
おまえ、何やってるの?
本当にそれでいいの?
一生そういう家に住むの?
おまえは本当に本当にそういう家が好きなん? ほんとに?

「そういう家」というのは、リビングに積み上げられた色とりどりのパンフレットに載っている「今風のシュッとした家」のことです。
当時の僕はそういう家ばかり見て回って、頭が完全にそっちの世界に染まっていたのですが、その自問自答は僕に重大なことを教えてくれました。
そうだ。
僕はべつに今風の家が好きなのではない。
どの雑誌を読んでも、どのモデルハウスを回っても、みんな似たような家で、似たような街に暮らしてるのを見て、「自分もそうしないといけない」と思い込んでいるだけだったのだ。
そう気付いた僕は稲妻に打たれた感じで「あ、ちゃうわ!!!」と叫んだのでした。

僕の生まれ育った街は大阪の南の方にあり、古くからの村があちこちに点在する地域でした。
僕の実家はよくある普通の一戸建てでしたが、小学校の同級生は大きな旧家に住んでいる子が何人もいて、その中でも特に大きな旧家に住む子が、僕の一番の友達でした。
その子の家は学校から近かったので、学校が終わるとすぐに僕はその大きな旧家に行って、縁側に座って日が暮れるまでジャンプを読んだり、テレビが置いてある離れでゲームをしたり、ほぼ自分の家レベルの扱いで過ごしていました。
当時は子供だから、べつに家に対してどうこう思ったりはしません。でも、雨の日に軒下の濡れ縁に寝転がって、空から降ってくる雨粒を眺めながらマンガを読んでたことや、大きくて薄暗い台所のこと、外にあるトイレや五右衛門風呂のことなど、今でもすぐに絵をかけるくらい脳裏に染みついてるんです。
普通は小学校時代の記憶なんて、ほとんど覚えてないし、思い出す機会もありません。だけど僕はたぶん「あれっ?」と思ったあの瞬間、子供の頃に過ごした風景を思い出したんじゃないかと思います。

自分にとって「家」というのはああいう感じなんじゃないのか?
自分は本当は、ああいう家に住みたいんじゃないか?
そんな気持ちに気付いた瞬間、はっと目が覚めた気分でした。
それ以来、積み上げられたハウスメーカーのパンフレットが、どう考えても自分にそぐわないように思えてきたのです。

離れ
(などとさんざん語っといて結局離れを新築した人)

つづきます

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