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古民家リノベーション体験談99 VS雨

【前回までのあらすじ】今でも時々土間を作業場に戻したくなる瞬間がある

第二期工事が始まるまでの1年間、前回の通り僕は土間を通り抜けまくる風と戦っていたわけですが、それとは別にもう一つ強大な敵が時々我が家を襲っていました。
それは雨です。
普通の家にお住まいの皆さん、なんのこっちゃ分からんでしょう。
は? 雨?
屋根があるから平気じゃん?
と思うじゃないですか。
雨は屋根があったら大丈夫。そう考えていた時期が僕にもありました。
その考えはあめーんだよ!!
雨だけにな!!!

皆さんは雨が降ったら緊張しますか?
しませんよね。
でも当時の僕は大雨のたびに緊張してました。
なぜ皆さんが緊張しなくてもいいかというと、雨水が完全にコントロールされているからです。
空から降ってきた雨は屋根に当たり、屋根を流れて樋に入り、それが地面にある雨水枡に流れ込みます。庭に直接降り注ぐ雨水も、庭にある会所に流れ込みます。
そうして枡や会所に流れ込んだ雨水は、そこからさらに地下や外掘の溝に流れていく。
実はこういう水のルートを誰かに作ってもらってるから緊張せずに済むんです。でも当時のうちは樋も雨水枡も会所も全部ありませんでした。
自然がコントロールされていないというのはかなり危険な状態です。
動物園だって檻によってコントロールされているからこそ、家族連れがおやつ食べながら楽しめるわけです。
ところがもしも檻がなかったら?
家族連れが逆にどうぶつたちのおやつになってしまって三面記事を飾りますよね。
樋も雨水枡も会所もないというのはつまりそういうことです。
コントロールされていないものの怖さ、伝わりますでしょうか。

だいたいね、古民家リノベやってる時に、水のことなんか頭に無いわけですよ。
それにまさか工事が途中で止まるなんて思ってなかったから、予算のこともあって後回しにしてしまったんですね。
それが間違いでした。
雨が降ると普通に家の中に水が入ってくるんです。
「えっ?」ていうくらい入ってきます。
海水浴に行ったら砂のお城とかつくるじゃないですか。んでそこに波が来て「わ~やめろ~」とか言ってキャッキャウフフするじゃないですか。
あれを2300万かけた実際の家でやる感じ。
大雨の日、嘘みたいな量の水が床下に浸水してきて、思わずキャアアア!! て叫んでクワ持って外に飛び出していってずぶ濡れになりながら排水用の溝を掘った日のことを僕は忘れません。

治水

この塀の下あたりに、外堀の溝に繋がる排水口があったので、とにかく溢れる雨水をそっちにやろうと思って必死に掘りました。
でも勾配(傾斜)がちゃんとついてないのでなかなか流れてくれないんです。
この時に職人さんたちがよく口にしていた「勾配取れてる」ということの大切さを思い知りましたよ。
勾配マジ大事。
木造建築、特に古民家には水が大敵です。
僕は必死にクワを振り上げながら、勾配が取れなくてもせめて会所があれば、会所さえここにあれば…!! と泣きながら…
あ、
「会所」って分かります?
こういうやつです。

会所

これもめちゃくちゃ大事。
とにかくどんな手を使ってでも雨水をここに流し込めば何とかなるという魔法のシステム。
これほんとね、皆さんにお伝えしたいです。
古民家リノベーションは増築部分を解体することも多く、その際に元々あった会所が破壊されたり、そこに繋がってた排水管が壊れたりしがちです。
うちも会所自体はあるけどもう死んでるとか、詰まってるとか、そういうことがありました。
なのでまず解体する時にちゃんと水道だけじゃなくて排水のルートも考えて確保しておくこと!
そうしないと僕みたいにずぶ濡れでクワ振り上げる羽目になりますよ。

雨樋がない

あとですね、雨水と戦うことになった原因の一つとして「樋が無かった」ということがありますが、実はこのようにわざと付けなかったところもありまして。
なんで付けなかったのかというと、

1. 雨樋ってダサない?
2. 雨が軒先からポタポタ落ちるのって素敵やん?

という理由からです。
もちろん親方はこういう感覚的な話が大嫌いなのでアホか正気かと怒られましたが、押し通しました。
で、実際住んでみてどうだったかというと、半分正解、半分不正解って感じ。
実際、雨がポタポタと落ちるのは素敵です。
薪ストーブの火を眺めるのと同じで、軒先から落ちる雨粒も、いつまでも眺めていられます。
それにデザイン的にも軒先がシュッとしててかっこいい。
その点は正解。
でも大雨とか台風の時には「ポタポタ」どころじゃなく「ドバジャアアア!!」ってなってその勢いに本能的に身体が固まるので、その時は樋が欲しいと本能的に思ってしまいます。

ちなみに樋が無いってことは、地面に直接落ちるということなので、そこの受け皿が必要です。
渡り廊下については、このよう古瓦を再利用して犬走りを作ろうと思いました。

渡り廊下の犬走り

ちょうど雨粒が落ちるところに砂利を敷いて、こんな感じで瓦を並べてオシャレ建築家がデザインした風にしようと思ったのですが、あいにくこの部分はクラッシャー(砕石)を撒いたカッチカチエリアなので地面が固く、なかなか施工が進みません。
なので週末を使って少しずつ進めていくことにしました。
そして4年後の完成形がこちら!

犬走り

逆に壊れとるがな!!
すみませんカッチカチでしんどいので放置してました。
そうして4年の歳月のうちに子供に踏まれたり大工さんに踏まれたり自分で踏んだりして気付いたら崩壊してましたとさ。
誰かやってこれ!!
焼肉おごるよ!!

また長くなってしまった。
ということで今回は「雨」にまつわる治水のお話でした。

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