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古民家リノベーション体験談92 渡り廊下は必要

【前回までのあらすじ】今まさに弱火にしようと思ってたところにAmazonが届いてついつい箱の中身を確認している間にも鍋は焦げる

第一期工事、いよいよ大詰め。
今回から渡り廊下について語っていきます。
その前にまず確認。渡り廊下は必要。
うむ。
玄関は不要。
うむ。
…うむ? 玄関いるよ?
え?
渡り廊下をつくるなら、玄関は諦めろって?
ええっ?
お金がなくなったから、玄関か渡り廊下のどっちかしか作れないって?
そんなことが、この21世紀の情報化社会で起こりえるの???

という茶番はもういいですね。
起こり得ました。
では、いよいよ覚悟を決める意味も込めて、皆さんぜひご一緒にご唱和ください!
せーの、
「玄関は不要!!」

いや、いるっちゅうねん。
でも以前に書いた通り、途中で資金が底をついちゃったんですね。
それもこれも見積をしてもらわなかったからなんですが。まあいけるやろ~みたいな僕と親方のどんぶり勘定の結果、ちょうど母屋の屋根が終わったあたりで、何やら不穏な空気が立ち込めてきて、居間とキッチンに取りかかる頃には、「あ、これあかんわ」と気付いていたのでした。

で、生活に直接関係のないところはもう後回しにしようと。
具体的に言うと土間と、仏間と、座敷です。
こういう遊びの場はお金が貯まってからでええやんかと。
何よりもまず、生活に必需である部分を直しておけばいいんだと。
そう思っていたある日、親方が請求書を持って現れ、開口一番「ごっつい金額になっとるぞ」と言われました。
そうです。
現場に来ない親方、仕事終わりのパチンコのことしか考えてない大工、そして目の前の仕事がいくらかかってるのか見当もついてないくせにあれをしろこれをしろと指図しまくる施主。
この三者が生み出すイリュージョンが、現実の数字となって返ってきた瞬間でした。
僕はおそるおそる請求書に書かれている金額に目を通しました。
でも、あまりピンと来ないんです。
だってどうせ元々すべての金額がエグい桁だし、なんかもうマヒしてるし、それにあといくらかかるのか知らなかったから。
ボケーとしてる僕に、親方はこの金額が指し示す、ものすごくシンプルな結論を伝えてくれました。
「玄関か渡り廊下、どっちか諦めろ」

家というものは、実はとてもたくさんの要素で構成され、絶妙なバランスの上に成り立っています。
我々が「そこにあって当然だ」と思っている部分が一つでも欠けると、実は大変なことになるのです。
たとえば皆さんの自分のお部屋。
そのお部屋の床、そこにあって当然だと思ってませんか?
ベッドで鼻ほじりながらYouTube見てる時に突然「10秒後に床が消えるからよろしく」って神に言われたら、いや、ちょ、まっ、ってなりませんか?
「玄関がなくなる」というのは簡単に言うとそんな感じです。
成り立ってません。
家が。
まじで。

そんな究極の二択で、なぜ我々が「玄関」を諦め「渡り廊下」を選んだのか。
玄関はいる。
玄関がないと雨風はもちろん、人間を含むいろんな生き物も自由に出入りできて困る。
でも渡り廊下がないと、「真冬のどしゃ降りの夜中に目が覚めておしっこに行きたい時に雨がっぱ着て豪雨の中をずぶ濡れになってガチガチ震えながら母屋のトイレに行く」というミッションが発生し、その場合僕はおそらく泣きながら漏らすことを選ぶだろうと思ったので、人間の尊厳を守るべく、渡り廊下を選ぶことになったのでした。
ひどい話や…

二者択一

ということで、残ったお金で渡り廊下つくることにしたぜ!

当時のインスタ

当時のインスタ。
これ、母屋と旧離れをぶった切った跡です。
見えているのは旧トイレの壁とドアですね。
ここに渡り廊下をつなげて、どっかに開口部を設けるんですが、なんかもうわけ分からんすぎて笑えます。
これもう火ィつけて燃やした方が早いで、などと施主が煽る中、大工さんは粛々と壁材を剥がしていきました。

渡り廊下接続
渡り廊下接続

はい。なんかちょっと牛肉の部位の説明図みたいになってますが、こういうことです。
玄関にも同じことをしましたが、がっつり入り組んでいる建物を斬鉄剣するとこうなるんですよ。
無茶やっとるなー。
で、僕は渡り廊下とこの壁を全部ガラスの掃き出し窓にしようとしました。
そしてイラストを描いて親方に見せたところ、言われました。
アホかと。

この二本の柱は抜けません

親方いわく、この二本の柱は抜けんと。
なるほど。
てことで、この隙間にガラス建具を入れたり、廊下の開口を作ったりすることになったのですが…
あれ?
離れの方の開口があそこやんな?
これ、ずれてない??

という不穏な空気のまま、続きます…

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