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古民家リノベーション体験談75 リノベにかかる費用の話part2

【前回までのあらすじ】屋根がシュッとしました

さて今回は久しぶりに費用について。
本人にとっては見ると胸が締め付けられるようなタイトル画像でお送りします。
古民家再生費用に関しては過去にもいくつか書いてますのでこの辺から続く記事もご参照ください。

さて、無事に瓦屋根の葺き替えが終わり、いよいよ母屋内部のリフォームへと進んでいくわけですが。
新築したばかりの快適仕事部屋でPCの前に座り、ここは畳を板張りにしてェ~、ここをトイレにしてェ~、玄関は土間にしてェ~、と夢いっぱいで図面と各資料を眺めていた僕はふと、
ん?
という引っかかりを覚えました。
その時に僕が見ていたのは見積表。
見積表といっても、母屋の改修は「かかった分だけ請求」方式にしていたので正確な数字もなく、僕がネットで調べた大体の相場と、親方に「なんぼくらいかかりそう?」と聞いてその場で返ってきたどんぶり勘定が基準の最高に曖昧な数字だったんですが、
ふとですね、あれ? これ足りるの? という胸のざわめきを感じたのです。

その時の残金は500万円。
自己資金&親ローンで土地を取得して、さらに信金から2000万円借りて、解体と離れ新築と屋根葺き替えして、残り500万円。
う~ん…
500万円で母屋リノベーション…
足りるんかこれ…
(神の声「足りひんよ!」)
古民家リノベーションといえば安くできるみたいな世間イメージがあるけど、ほんまに500万円でできるんかこれ…
(神の声「だから足りひんって! おーい!」)

正直、2000万円借りれた時点で僕は勝利宣言出してました。
銀行さんが貸してくれるかどうかが重要で、借りることができたんならもうあとは消化試合やと。
だって土地はもう入手してるし、あとは小さい離れをつくって古民家を直すだけ。どう考えても余裕で家がつくれるだろうと。
今思えば一体何を根拠に余裕ぶっこいてたのか分かりませんが、それまで200円とか2000円とかの世界で生きていた人間が、突然2000万円を手に入れたわけです。
すなわち「20,000,000円」ですよ。
ビジュアルで示すと宝くじにあたった人の通帳みたいに、

*48,912*
*36,232*
*16,232*
*8,232*
*20,008,232*

っていう状態なわけですよ。
「あ、これ人生完全勝利やん…」って思ってもしょうがないじゃないですか!
これ焼肉何回行けるねんと。
むしろ焼肉店オープンできるやんけと。
おそらく、その完全勝利っぽい雰囲気が「残金500万円」という現実を直視できずにいた大きな原因だと思います。
結論から言いましょう。
500万どころちゃいましたわ。
そこから300万借りて、それでも足りずに、さらに500万借りましたわ。
ぶわっはっはっは。
笑うしかねぇ。

まあ最後の500万円はもうここまできたらなんぼ借りても一緒じゃボケと思って逆上して特注スチールサッシやら大谷石やらヘリンボーンやらと贅沢な仕様にしたせいでもありますが、
まーうちの物件は最低でも1000万円はかかりましたね。
古民家再生。
屋根抜きでね。
つまりその時の残金500万円の、実に2倍は必要だったわけです。
気付けよ俺。
と思いますが、素人だったんだもの、気付けないですよ。
そこを管理するのは本来なら工務店さんなんですが、「かかった分だけ請求」方式により、工務店はそんなことを神経質に気にする必要もなくなる。
だって見積がないんだもの。

古民家再生って普通のリフォームと違って物件が100年以上経ってるわけで、屋根とか床下をめくってみないと分からない部分が多いので、工務店側からすれば見積なんてしたくないし、そもそも正確に出せない。
だから何かあった時のバッファを見込んで、高めの価格を出さざるを得ません。
僕も仕事では見積する側なので、よーく分かります。
自分以外の人が作ったものを触るのはとにかく怖いのです。中身がどうなってるか全然分からない。だから中身がどうなっていても大丈夫なように、見積を高く設定して「まあこれくらい高めの金額を出しとけば何があっても損はせんやろ」みたいな額になることが多いのです。
うちの親方はそういうこともあって、かかった分だけ方式を提案したんだと思います。そして確かに、支払った金額は、見積をしてもらっていたらもっと高くなっていたと思います。
が、しかし。
金額だけ見ればお得なんですが、この方式の最大のデメリットは「見通しをミスる」ということですね。
全体の見通しを立てて、お金をかける配分を考えて、費用を抑えて賢くお金を借りるということが、まったくできなくなるのです。
特に僕のように、仕様を工務店任せにせず全部自分で指示するタイプの人間が見通しのないまま工事をスタートさせると、どれだけかかるかも知らないままやりたい放題やってどんどんお金が無くなってどんどん借りてという、結果から見ればただのアホみたいな人になってしまいます。
いくら個々の工事費が安くついたとしても、借金まみれになってしまうと元も子もありませんからね。

そうして僕の右脳がフルスイングしたようなアホな家ができたわけですが、まーそのおかげで雑誌やムック本でもご紹介頂き、こうして皆さんに情報をお届けする側にもなれたんですけどね。
人生何がなんだかです。
きっちり見積してくれて、フォローも万全な工務店さんを選べば良かったのかというと、それは僕には分かりません。
その工務店には一緒にケンカしながら家づくりしてくれる大工がいなかったかも知れないし。
職人さんたちに混ざっていろんな経験ができなかったかも知れないし。
いつまでも地域になじめず、孤立してたかも知れないし。
めっちゃ無難な家ができて、無難に暮らしてたかも知れないし。
何か別のトラブルが起きてたかも知れないし。
だからわかんねっす。
人生なんてそんなものですよね。

「プロに聞いてみた」コンテンツで皆さん口々に仰ってるのは、家っていうのは、完成した商品を買うんじゃねえんだと。
一緒に作っていくもんなんだと。
つまり、我々施主は一体何にお金を払うのか? ということですよ。
購入した資材にお金を払う。
設計にお金を払う。
職人さんに日当を払う。
それはまあそうでしょう。でもそれはむしろ、工務店が払うお金のことですよ。
我々施主がお金を払って手に入れるものは、そういったお金の集合体である「成果物としての家」だけではないと思います。
いろんな人たちと出会ったり、
ものづくりの現場に触れたり、
家族のあり方を考えたり、人生を考えたり、
なんかそういうたくさんの体験も同時に手に入れるわけですから、
アイミツとか、坪単価とか、そういう露骨な金銭的な発想から少し離れた方が、いい家づくりができると思いますよ。
まあ見積はあった方がいいけどな!

ということで、古民家再生の費用の話part2でした。

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