古民家再生、古民家物件、リノベーション情報など。

本当に良いものは埋もれがちって話

今日はタイトルの通り、広告宣伝業界の片隅にいるこの僕が、本当にいいものって見つかりにくいんですよ、って話をしてみようと思います。

えっとですね。
まず「広告」っていうのがどんな時に発生するのか分かりますでしょうか。
何かを売りたい時?
ノンノン。
何かを広く訴えたい時?
ノンノン。
その二つは間違いではありませんが、広告の発生理由としてはノンノンどころかメンズノンノンです。
広告が生まれる時!
それは!
売りたいものが放っておいても売れない時だ!!!

何言ってんのこのオッサンそんなの当たり前じゃんきも、と思われるかも知れませんがそれが真実です。
いいですか、あなたの目につくほぼすべての商品は、広告されたものです。
SNSのタイムラインに流れ込んでくる良さげなコスメやおトクな回線やオシャレな家具や便利そうなキャンプ用品、それらはすべて「広告」なんです。
何言ってんのこのオッサンそんなの当たり前じゃんきも、と思われるかも知れませんが、それを「広告」だと認識できているかどうか。
その商品、いいですよね。アイドルとかモデルとか使って、キラキラして、良さげですよね。
でもそれらは広告なので、つまり、売れてないんですよ。
いや、売れてないは言い過ぎか。
それを売ってる人が満足するほどには売れてないか、今から売り出すのにほっといても売れそうにないから金の力で売ろうとしている、
だから広告を打つんです。
実際、良さげなコスメが5億個売れてたら今頃社長はドバイにビル建てて札束の風呂に入ってるのでインスタにチマチマ広告打ったりしてないですよ。
5億個売れてないから、広告を打つんですよね。
考えてみてください。常に行列のできる人気ラーメン店がテレビCMしますか?
しないでしょ?
やる必要ないからですよ。
テレビCM打ったラーメン店が人気になって行列ができることはあっても、行列ができるラーメン店がテレビCMを打つことはほぼない。
これが真理。
だから僕は基本的にテレビで放送されました!系のラーメン店には行かないし、ロゴがいい感じでクオリティが高くお金のかかってそうなめっちゃでっかい看板があるラーメン店にも行きません(すごい偏見)。

……あれ?
なんでおれラーメン屋について語ってんの?
とにかくまあ世の中ってそんな仕組みなんですけど、悲しいかな広告っていまだにすんごい有効で、それが良いとか悪いとかに関係なく、みんなの目に留まった順から売れていくわけです。
一方、目につかないものは売れにくいんですよ。
ほんとに良いものは基本的に口コミで広がるんですけど、広がらないものもあるんです。
たとえばうちが世話になってる大工さん。
大工さんの口コミは地元の村の間では広まりますけど、村の外へは広がりません。
ちょっとこの写真見てください。

これは僕が愛用しているアンティークの折りたたみ踏み台になる便利なチェアなんですが、このチェアの脚と脚をつなげる、階段がくるっと回転するための丸いバーが、うちのアホ…じゃなくてうちの愛らしい息子たちに折られてしまったんですよ。
容疑者二人とも否認してるので犯人不明のまま時効成立したこの事件、ずっと直したいと思いつつも、「ここにミラクルフィットする丸くて固い棒」を見つけるなどDIYでどうにかできるレベルじゃないので放置してたんですが、いつものように仕事をサボりにうちに来た大工さんにダメ元でチェアを見せてみたら「直しましょか」と。
まじで?
大工さん、そんなこともできるん?
と半信半疑で預けたんですが、その翌日、軽トラが家の前にやってきて、「直ったっす」と。
実際写真の通り、あっさり直りました。

拡大。
よくこんなミラクルフィットする棒があったな~と言うと、いや、作ったんですと。
まじで?
僕は大工さんの倉庫にあるいろんな機械類を思い出し、そっかすげえな、こんな真ん丸に加工できる機械があるのねと、でもよくこんなぴったり直径を合わせられたな~と言うと、いや、削ったんですと。
は?
「削ったってどういう意味?」
「いやだから、削ったんすよ。手で」
「手で?」
「手で」
「角材を?」
「はい」
「丸く?」
「はい」
「…どうやって?」
「いやこんなん一瞬で出来ますって」

うせやん!!!

ということがつい先日あって、それで今回こんな話をしようと思ったわけなんです。
あのね、うちの大工さん、まったく有名じゃないんです。
知名度で言えばたぶんうちの小学生の下の子と同じくらいです。
事務所は親方が身体壊しちゃってずっと閉まってるし、大工さんもヒマすぎてパチンコばっか行ってるし、客観的に見た場合、職人としての信用度はうちの小学生の上の子と同じくらいです。
ですが!
彼は普通にこんな仕事ができるんですよ!
この時はさすがに僕も感心してしまいました。
それと同時に、こういう職人が世間に知られないまま埋もれていることもまた痛感したのです。

なぜなら彼らは、自分たちのことをすごいなんて全く思ってません。
角材を一瞬で丸く削って椅子を直すことが、誰でもできることだと本気で思ってるんです。
ゆえに自分でアピールもできないし、宣伝なんて考えたこともないのです。
「大原さん、最近、パチンコ調子いいんすよ!やっと勘が戻ってきて勝ちまくりっす」と満面の笑みで言う大工さんが勝ちまくってる以上に負けまくってることに気付いていないのと同様、彼らは自らの価値に気付いておりません。
それを拾い上げ、求めている人々に届けるのが、本来の広告の仕事だと僕は思っているのです。

本当に良いものは、このようにして埋もれていることが多い。
逆をいえば、埋もれているからといって、それが悪いもの、信用できないものとは限らないということです。
口コミ0件の焼肉屋は行くの怖すぎる。
それなら口コミ63件で☆3の方がまだ安心できる。
それは分かる。
でも腕のある職人や地域密着の工務店なんか口コミ0件なんてざらにあります。
その近くに☆4.1の工務店を見つけたらとりあえずそっち行っちゃいますよね。
でもその時に「埋もれている」「人気が無さそう」という理由で☆0を拒絶すると、ひょっとしたら本当に良いものを見逃してしまうかもしれませんよ。

ということで、今回は広告っぽいお話でした。

オチ。
修理の報酬に焼肉おごることになって、大工が美味いとおすすめの焼肉屋に行ったらイマイチ…
焼肉屋の口コミってまじでアテになりませんよね…
「あんまり美味しくなかったっすね」
ってお前が言うな!!

おわり

pagetop