古民家リノベーション体験談116 隣の家に塀ができたんだってね
【前回までのあらすじ】「TM革命」ってなんや
HEY!!!
ということで今回は塀のお話です。
このオープン外構なご時世、リアルに隣の家に塀ができることは少ないと思いますが、うちは作りました。
なぜかと言うと通りから丸見えだったからです。
塀が無いお家の方が圧倒的に多い現代において、塀の有無はさほど問題にはならないでしょう。皆さん小ぶりな窓に、カーテンどころかシャッターまで付いており、目隠しも防犯もバッチリです。
しかしうちは古民家。
表通りに面してるのは縁側なので、目隠しどころか壁がありません。オールガラス張り。
服装で例えるなら、現代の皆さんが春先に軽いニットのカーデを羽織ったレイヤードコーデを楽しんでいるのに対し、こちらは全裸です。
丸出しです。
丸出しが丸見えなのです。
なので、塀を作ることにしました。
これが当時の状態。ブルーシートの部分は工事してきれいになったものの、この丸出し構造は変わっていませんでした。
なので塀を作ることにしたんですが、実際にお金が用意できたのは一年後。
その間ずっと丸出しの生活を続けていました。
なぜ僕が平気だったかというと、うちは塀どころか玄関の壁がまるごと無かったので、塀とかはわりとどうでもよかったからです。
ただ、通行人の皆さんとはよく目が合いました。玄関と塀が破壊された家に、どうも普通に人が住んでるっぽいと。中から何か声も聞こえると。散歩中にそんな家を見かけたら誰だってちょっと覗いてみようかなと思うでしょう。
そして覗いてみると、暗がりの奧からこちらを見ている二つの瞳…
ヒイイィ!
怖がる通行人と恥ずかしがる住人!
この毎回誰も得していない状況を打破するために、仏間と座敷の工事の際に、遂にここを塞ぐことにしたのです。
それでどんな塀を作るのかというと、もちろん一番安いやつ。
既存の立派な塀が途中でぶった切られてるので、同じ仕様の塀を作るのがベストなのは分かりきってましたが、ご予算がございません。
なので選択の余地なく、一番安いやつです。
それすなわち昭和の板塀。
ドリフのコントの背景によく出てくるあれです。
安いと言いますけど、僕はああいう板塀も大好きなので、てかむしろ土と漆喰のやつより好きなので、もう全然板塀でOKでした。
着工。
さすが一番安いやつと言われるだけあり、秒で工事が終わってしまったので施工中の写真はこれしか残ってませんでした。
からの、完成!
うむ。なかなか良いではないか。
まーこれも頭に乗せる瓦をちょっと大きくしすぎたとか、もうちょっと線を細くしたかったとか色々ありますが、概ねこれで良かったのかなと思います。
なお「板塀」と一口に言っても結構いろんな種類の板の張り方があるので、これから板塀を作る人はぜひ調べてみてくださいね。
あとこの木戸はどっかから拾ってきたやつです。
たぶん室内用だったんだろうと思いますが、これまでの経験で室内用の木戸を外に放り出してもわりといけることを知っている僕は、この風情のある引き戸を塀に使いました。
しかしそうなると気になるのは色の違い。
ピンピンの新材と、いい感じに古びた引き戸の、う~ん、どうしよっかな、のコントラスト。
板塀、また全部塗る?
いやー、塗らなくてもいんじゃね?
と面倒くさがってるうちに3年が経ち、今どうなってるかというと…
ダハハハハ!
一瞬でこんなんなったよ!
塗らなくて正解!
いやー屋外の経年変化ってすごいですね。塀がまるごと一瞬で馴染んだっす。
これは前栽の方から見た塀の裏側。
裏はこのように既存の塀とくっつけて、しっかりした柱で支えています。
まあそれはええわ。
それはええねんけど、問題はこの支えの根元にあるコンクリ。
これ、最初、エッジの立ちまくったピンピンの正方形だったんですよ。
図で表すとこんなんですよ。→ □
鼻歌を歌いながら真四角の型枠にコンクリ流し込んでる大工さんを見て、ふと嫌な予感がした僕は聞きました。これは何かと。
すると、土台のコンクリですと。
さらに僕は聞きました。これは、つまり、このまま固まるのではないかと。
すると大工さんが答えました。固まるっすと。
あっか~ん!!!
という僕の叫び声が久しぶりに静かな村に響き渡りました。
いやだって考えてみてくださいよ。ここ、純和風の庭ですよ。四季折々を感じ、花鳥風月と侘び寂びを愛で、自然とともに暮らす日本人の心ですよ。
そこにあんた、ピンピンに角の尖った灰色の物体(四角)が存在していいはずがないでしょ!
と僕がわめき散らすと大工さんは言いました。
「じゃあ固まる前に型枠取って、角とったらいいっすやん」
「それいつよ!」
「えっーと、今からやったら明日の朝5時くらいっすね。そんくらいやったらまだ削れますよ」
「ほな悪いけど頼むで」
「いや、僕ら寝てますってwww」
というやり取りを経て、まだ薄暗い朝の5時、パジャマ姿の施主様は庭の隅にうずくまり、一人で金槌を振り下ろして「ドチッ、ドチッ」と固まりかけたコンクリの角を殴る音を朝靄の村に響かせるはめになったのでした。
ほんまにもう、わしはいつまでこんな目に遭うんやと。
もう工事終わりかけちゃうんかと。
そんな思いで作りあげた作品、タイトル「自然石っぽいコンクリ」。現在の写真にて、その溶け込みっぷりを今一度ご堪能ください。
ということで、無事に塀ができましたとさ。
めでたしめでたし。