古民家リノベーション体験談58 大工さんのこと
【前回までのあらすじ】離れ外壁のシミは涙のあと
建て方、洗面、お風呂、和室、外壁と紹介してきました離れの工事もいよいよ佳境ですが、この辺で少し、うちがお世話になってる大工さんのことについて紹介しておきます。
以前からちょこちょこ登場しているうちの大工さんですが、本人には完全に未承認、ていうかこのサイトを見たことがありません。笑
それゆえ表のブログでは書けることは限られてるんですが、可能な範囲で書きます。
というか、褒めます。
彼が普段どれほどパチンコやツムツムやしょうもない野球アプリでしょうもない時間を過ごしているかは置いておいて、今回は褒めます。
うちがお世話になってる大工さんは、うちが工事をお願いした工務店に所属しています。
その工務店社長である親方は元々大工ですが今は現場には出てません。で、実際に施工を行う専属の大工さんが彼だけで、あとは規模に応じて応援を呼ぶ形になります。
これは中小工務店ではよくある形ですね。
電気屋さんも水道屋さんも外構屋さんも左官屋さんもブリキ屋さんも、みなさん複数の工務店の仕事をこなし、あっちこっちに飛び回ってるわけです。
そんな中、「大工」という職業は特別なように思います。
社長含め大工さんが一人もいないという工務店さんはないんじゃないでしょうか。(知らんけど)
「大工」は工務店の要というか、住宅建設の中心になる職種なんですね。
そんな大工さんですが、近年は本物の技術を持った人が激減しています。
これまで何度も触れていますが、プレカットという施工方法が定着し、プラモデルのように番号順に木を組み立てるだけで家ができてしまうので、木のことを知らなくても、木を扱えなくても、大工を名乗れる時代になっているからです。
番号が振られたマニュアルを見ながらでしか家を建てたことがない、そんな大工さんは古民家リノベーションができません。古民家を正確に扱えるのは、木の特性を知り、古民家の構造を知り、経験を積んだ本物の大工さんだけなのです。
僕が選んだ工務店には、運良くそういう本物の大工さんがいました。
彼は僕より何歳も年下なんですが、そして人生の半分くらいの時間をパチンコとツムツムに費やしているんですが、それでも、古民家を一棟まるまるさわれる腕前を持っていたのです。
プレカットであれ何であれ、本物の大工さんは木が好きなので木のことを気にします。
前にも書いたとおり離れの構造材は無垢材と決めていましたが、そのおかげで和室の柱にもアホほどカンナをかけてくれてました。
それはもういいから他のことやれって言っても、かけてくれてました。
おかげで和室の柱はツルッツル。
実は僕の実家は隣と裏を違う工務店さんに挟まれた環境でして、朝から晩まで木の匂いとかんなくずと機械加工の爆音に包まれて育ったんですが、こういう木くずを眺めながら、僕は昔の工務店の風景を思い出していました。
そうそう。
家づくりって、こんな感じだったよなあって。
短納期、狂いの少なさ、施工費の安さという面で集成材やプレカットが支持されるのはもっともだと思いますが、こうして自然によってつくられ、人の手によって加工された柱を時々すべすべ撫でてみると、何とも言えない「落ち着く感じ」が脳の中にじんわり広がってくるのを感じます。
やっぱり新築と言えども、そういう要素があると無いとで全然違うと思うんですよ。
その「自然」と「人の手」が合わさった、というかそれだけで構成された「古民家」においては、どこに触れても「落ち着く感じ」があるのは当然と言えるでしょう。
現代の住宅でも、可能な範囲でそこに近付くことができたのは、何より本物の大工である彼のおかげだと思っています。
……いやー、褒めた褒めた。
一生分褒めたぞ。
寸法をミスったり、建具の取付がヘタクソだったり、去年の大型台風の時に塀が倒れかかってSOS電話したらパチンコ屋にいて「こっちも停電してて打てないんスよ~笑」などとLINE返してきて何の役にも立たなかったことなどは置いておいて、やはり家づくりは大工さん。
これに尽きます。
工事が終わって数年経つ今でも、しょっちゅう家にやって来ては、無駄話のついでにあちこちチェックして帰っていきます。
こういう距離感も中小工務店ならではですね。
まあ僕のように人手が足りないという理由で電話がかかってきていきなり真夏の解体バイトに駆り出される(実話)ほど距離が近くなりすぎるのもどうかと思いますが、家は建てて終わりではありません。
自分がその家に住む限り、一生メンテをして付き合っていく存在なのです。
それすなわち大工さんとの付き合いも同じように続くということ。
自分の家を一生任せられる、そんな大工さんに出会えるかどうかも、家づくりの大切な部分かなと思います。
死にかけた解体バイト現場