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古民家リノベーション体験談57 外壁は板張り

【前回までのあらすじ】 深夜和室のドアを開けてから自分の布団にたどり着くまでどこに誰が倒れてるか分からないので一歩ずつ確認して歩くし実際時々踏む

今回は離れの外壁について。
工事の進捗が最近ちょっと前後してるので、ここでおさらいします。
まず夏に旧離れの解体と新築の建設が始まり、住むところがなくなって一家の放浪が始まりました。
そして夏の終わりに壁がついたあたりで、ユニットバスの納品が遅れて工期が1ヶ月伸びました。
それからやっと工事が再開されるんですが、今回お話するのは工事が再開した後、ちょうど冬がやってきたあたりです。

新築の壁ができた

親方がどっか行ってた1ヶ月の間、僕は何をしていたのかというと、薄暗くてカビ臭い母屋で一人、背を丸めて仮設電源で夜中まで仕事をしていたのですが、それと同時に、次の段階、つまり「外壁の仕上げ」をどうするかで日々頭を悩ませていました。
外壁の仕上げ。
皆さん家の外壁って気にしたことありますか?
ないですよね。
今目を閉じて、ふと考えてみてください。ヨーロッパの町並みの壁は石造り、レンガ造りですよね。アフリカの壁は土とかうんことかですよね。インドネシアは藁とか葦とかですよね。
あれ?
じゃあ日本は?


なんやっけ、なんかクリーム色の……
なんか四角い柄みたいなんがついた……

とか思うじゃないですか。
そう。
そこですよ。そこなんです。
僕が現代の日本の住宅で最もダメだと思っている部分、それがすなわち「なんかよく分からん素材でできたよくわからん四角い柄みたいなんがついた壁材」なのです!!

何のことかピンとこない方は「サイディング」でぐぐってください。
今の日本の新築住宅の外壁のおよそ95%(適当)はこのサイディングという素材で作られているのですが、まあ何というか……そこに全く「美」を感じません。
しかも「日本」の要素もゼロ。
なんかパッと見の美的クオリティが、その辺の駐車場の管理事務所の外壁と同じレベルじゃないですか。
こんなことを言うとサイディングメーカーさん、サイディング大好きな工務店さん、新築を建てたばかりの95%の施主さん、ついでに駐車場の管理事務所さんを思いっきりdisることになりますが、すみません。これに関しては僕は怒ってます。
なんでこんなことになってしもたん?と。
ほんと一体誰が始めたんですかね。こんなこと。
日本の風景が180°変わってしまった元凶はこれだと思ってます。

せめてヨーロッパやアフリカや東南アジアのように、自然素材で作っとけば良かったんでしょうけど。
それを耐久性がどうとか、手間がどうとかで化学製品にしちゃった。
その瞬間、前にも書いた通り「変化ではなく劣化」する壁になってしまったんですね。選ぶ理由であったはずの耐久性ですが、いくら素材として耐久性が高くても「みすぼらしくなる」から結局替えたくなるんです。
たぶん世の中のどこかにはオッシャレーなサイディングはありますし、それに似合う建築もありますが、そういう個人プレーではなく、日本の一般的な人たちが選びやすく、日本の景観を飾るに相応しいベストな素材がこれかというと、まさかそんなことはないと僕は思います。
じゃあどうすんだと。
長持ちして、コストも安くて、日本らしく、さらに景観も良くなる、そんな魔法の素材があるのか! あったら出してみろ! と言われるでしょうが、この外壁に関しては「そんな素材は、ありまァ~す!」と言うことができます。
えっと、木の板。
以上。

杉板

ということで木の板です。
杉板。
長持ちするし、安いし、何十年経ってもかっこいいのに、皆さんなんでこれ選ばないんですかね??
建築の謎ベスト5に入る謎です。
名建築も一般住宅も、昔はみんなこれでやってたのにね。
張り方は縦張りとか簓子張りとかありますが、一番手間のかからない鎧張りに決定。

で、僕はこれに自然塗料を塗ることにしました。
洋風にしたけりゃ鎧張りにペンキ塗ればいいんですが、古民家なのでそれっぽい塗装に。
ちなみに先日の漆喰もそうですが、とにかくお金がないのですべての塗装は自分がやるという前提。
その流れでこの外壁塗装も僕が担当することになったんですが、
えぐかった。
えぐかったよー。
あのさ塗料ってさ二回塗りでさ木の板もさ表裏があるからさつまり二回塗り×表裏=4回塗りなんだよね。
つまり作業としてはこの写真の量の4倍ですよ。
しかもこれ、写ってるのでまだ半分の量やからね。
すなわちこの写真の8倍塗ったってことやからね(?)。
もうわけが分からないよ!!

外壁塗装現場

右で僕が塗料を塗って、塗ったやつを真ん中に置いて、乾いたら大工さんが張っていくシステム。
完全にライン工場の奴隷です。
雨が降ったら土間で塗って、太陽が出たら外で塗って。
ちょっとでも手を休めると大工さんから「板減ってきてますよ!! 早く!!」と無慈悲な怒号が届きます。
折しも季節は12月。
白い息をかじかむ指先に吹きかけ、震えて泣きながら塗ってました。
あの時パトラッシュが足元に来てたらそのまま死んでたと思います。

鎧張り
鎧張り完成

からの~、完成!!!
どうよ!!
ええやん!!
どう考えてもこっちの方がええやん!!
ということで死にかけた甲斐あって、素敵な外観になりましたとさ。
結局これが気に入って、渡り廊下もこの仕様にしましたが、古民家とも相性いいですよ。

あのですね、これ真剣な相談なんですけど。
これ読んでる「古民家にちょっと興味あるけどまあ自分が住むなら新築よね~」派の皆さん! 古民家に住めとは言いません! ただ、今から作るその家の外壁、木にしませんか?
ほんとに。
それだけで今の日本の街並み、かなり良くなると思うので。

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