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古民家リノベーション体験談48 今そこにある壁

【前回までのあらすじ】世の中ゼニやがな~

前回、わずか1日で上棟しちゃったマイホーム。
素人としては、ビジュアル的にはもう大工さんの仕事がほぼ終わったように思います。もうそんなにすること無いんちゃうんかと。
でも実際はそうではありませんでした。
上棟の翌日も、大工さんは大好きなパチンコに行かず、ちゃんとうちに来てくれました。
まあそりゃそうです。
壁とか、床とか、まだ色々ありますもんね。

さて皆さん。
突然ですが、皆さんは「家」という物体についてどういうイメージをお持ちでしょうか。
なんかこう…「自分の手には負えない巨大な何か」みたいなイメージじゃないでしょうか。
自分が生きている世界と関係ない物質でつくられた、自分が触ってはいけないもの、みたいな存在じゃないでしょうか。
僕はそうでした。
自分の住んでる家だろうがケルンの大聖堂だろうが同じ「建物」というカテゴリに放り込み、自分には関係ないものと思い込んでいました。
特に「壁」とか。
今この文章をお読みの皆さんがどういう場所でこれを読んでいるか分かりませんが、一度スマホから目を離して周りを見回してみてください。
そこは自宅のマンションですか?
それとも近所のスーパー?
それともスーパーの事務室?
まさか交番の取調室?
ひょっとして檻の中?
まあどこでもいいんですが、どんな空間にも、そこには必ず「壁」があります。
その「壁」のことを、あなたはこれまでの人生で、おそらく一度も考えたことがないはず。
そう、壁はいつでもあなたの傍にいるのです。
でも誰にも気付かれない。
コンビニの売り場に並んでる習字用の半紙くらい気付かれない。
ということで、今回はそんな報われない「壁」のことをご説明します。

まず、壁の材質は大きく分けて3種類あります。

1. コンクリート
2. 土壁
3. 石膏ボード or 構造用合板

1のコンクリートに関しては、木造住宅じゃない建物、たとえばさっき出てきた近所のスーパーや取調室ですね、ああいうコンクリート造でつくられた建物の壁は、コンクリートです。
天井も壁も床もコンクリート。それがいわゆるRC造と呼ばれる建物。
2の土壁については、古民家の壁はぜんぶこれ。柱と柱の間に竹を網の目に組んで、そこに土をペタペタしていくやり方。仕上げに漆喰を塗るのでつるつるで美しいですが、中は全部土です。
対して3の石膏ボード or 構造用合板という壁。これが今日の住宅で使われる材料ですね。
それがどんなものかと言うと、「板」です。
ただの板。
嘘つけって思うでしょう。
たとえば自宅の壁をはがしたら、中から「壁」としか言いようのない物体が出てくると思ってるでしょう。
違いますよ。板が出てくるだけなんです。
ほら。こんな感じで。

石膏ボード

この薄緑色の部分が「石膏ボード(プラスターボード)」と呼ばれる板です。
取りあえずそれを表裏にペタペタ貼っていくわけです。
しかもこの板、近所のホームセンターに売ってます。
誰でもお安く買えます。
ね?
簡単なんですよ。
あとは外と中の仕上げですが、内装がペンキ仕上げなら、ボードの上に直接ペンキ塗るだけっすよ。
まあボードとボードの間に断熱材やら防水シートやら色々入りますが、皆さん今後は木造の壁を見たら基本的に、
「板やん」
と思って頂いて結構です。
ちなみに古民家再生においても、新しい壁を作るとなった時、大体が石膏ボードか構造用合板になると思います。
コスト的に土壁を選べる人は少ないんです。
古民家の壁としてはもちろん土壁の方がいいに決まってますが、専門の職人が朝から夕方まで何日もかけて少しずつ仕上げていく土壁に対し、石膏ボードは僕がメダカの餌を買いにホームセンターに寄ったついでに、メダカの餌と同じくらいの金額で手に入ってしまうのです。
メダカもびっくりです。
もちろん資本主義の敗北者である僕に、選択の余地はありませんでした。

新築の壁

天井断熱

ということで我が家もペタペタ貼られていきます。
二枚目の写真は、ボードの内側に胴縁と呼ばれる細い木材を渡して、その隙間に断熱材を放り込んでる写真です。
屋根材がペラペラで空気層の無い二階部分なので、きっちり天井で断熱しときました。
「断熱」の話はまた長くなるので次回にしますが、ほんと古民家とは対極の絵ですね。
宇宙服着てるようなもんですよ。

木の梯子

ちなみに余談ですが、離れの二階部分には、ずっとこの木の梯子で上り下りしてました。
ふーんと思うじゃないですか。それがどうしたん?と。
「木の梯子で二階を見に行く」ということを、僕はよくやってたわけです。なぜなら二階から大工さんに「大原さーん! ここどうやるんすかー!」ってしょっちゅう呼ばれるから。
まあそれはよろしい。
問題は、

1. 年季の入りまくった木の梯子が異常にグラグラする
2. 二階の床がない

ということです。特に2番は致命的です。
ところどころ、気持ち程度にベニヤ板みたいなのが張られてましたが、気分は完全にマリオです。
梁の上を歩くたび、おれこれ落ちたら上から点滅しながらまた降りてくるん?とか考えてました。
これが大手ハウスメーカーだったらたぶんこの記事を公開して1時間後には大炎上してTwitterでトレンド入りしたあげく株価が急落してえらいことになってたと思いますが、地元の工務店さんを使うと、このようにいろんな体験ができるんですね。
いや、実際いい経験だったと思いますよ。
おかげで毎日「床」のありがたみを感じてますから。

つづく。

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