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倚松庵に行ってきた

ついにきた俺たちの倚松庵回!
さあ待ちに待った倚松庵回ですよ皆さん!
僕もいつ書こうか何年も前から考えてその機会を虎視眈々と……
え?
倚松庵を知らない?
ていうかそもそも読み方が分からないって????
バカヤローーーーーー!!!
こんな古民家のサイト見てて古民家に興味ある人間が倚松庵を知らないなんてことが許されると思うのか!!!!
許す!!!!!!!

ということで倚松庵に行ってきました。
もう既に冒頭から倚松庵倚松庵言いすぎてこれ下手したら公式サイトより検索順位上に来るんちゃうん、とびびってますので少し真面目にご紹介していこうと思います。

まず倚松庵というのは「いしょうあん」と読みまして、かの文豪、谷崎潤一郎(引っ越し魔)が一時期暮らした神戸市東灘区に現存する名邸です。
名作『細雪』の舞台となっていますので『細雪』が好きな人はおそらく玄関を入って廊下を見た瞬間にフオオォォーッ!!! こっ、これが幸子と!! 雪子ちゃんと!! こいさんが歩いた廊下なのかッッ!! とテンションが振り切れてたぶん建物の見学はまともにできないと思いますが、『細雪』読んだことある人って今やほぼいないのではと思うので、皆さんは普通に建物の見学ができると思います。
ていうか『細雪』読め。
まじで読め。おすすめ。

倚松庵

外観。
ほらもう素敵すぎる。既に。
中に入る前に興奮マックス。見てるだけで卒倒。
という冒頭からのテンションの高さからお分かりの通り、これ、僕が日本で一番好きな建物です。
この入り口から上げ下げ窓見えるでしょ。
この邸宅は当時の文化人がよく好んで住んだ、和洋折衷の形式なんですよ。

倚松庵は土日なら誰でも入れます。無料です。
周りになんもない住吉川のほとりにぽつんとあるので、基本空いてます。
阪神魚崎駅から徒歩数分。車はP無しなので周囲の少し離れたコインパーキングに停めてちょっと歩く感じです。
お客さんが他に誰もいなければ谷崎の著書を読んだりソファで寝落ちができます。
夏は近所の子供たちが庭で蝉取りをしてます。
何年か前に行った時は受付のおばちゃんに干し柿もらいました。
そんな平和な場所です。
僕がここで大々的に紹介することにより人々が押し寄せインスタの聖地になったら嫌だなって思ったんですが、よく考えれば僕にそんな影響力はなかったので普通に紹介します。

門をくぐって、アプローチに沿って少し右に向かうと玄関があります。

倚松庵の玄関

はい優勝。
なんなんこの玄関。
素敵すぎ。
なんでドアなんですか。しかも真鍮ドアノブなのに障子風の比率の格子がついたドアだと!?
誰やこれ設計デザインしたやつ。
出てこい。
ひれ伏すから出てこい。

倚松庵の外観

こちらは南側の正面から。
玄関は和風の格子でしたが、このリビング・ダイニングの窓はすべて洋風の格子です。
ちなみに枠が白いのは塗装ではなくガラスを押さえるためのパテ。
こういう古い建具を買った時はパテがカチカチになってボロボロ劣化してますが、なんとホームセンターで現行品で売ってるので、自分でパテをやり替えることができます。

まあそんなことより、こんな窓が使われているリビングなんて外から眺めているだけでも倒れそうなのに、中に入ったら一体僕はどうなってしまうんですか???
と興奮しすぎて苦しくなっている方のために、早速中に入っていきますね。

倚松庵玄関

玄関。
見てこのつつましさ。
このつつましいサイズ感。
これこそ僕の求める理想の古民家像。
なんですが、こんなにインテリジェンスあふれるつつましさを持った古民家など南大阪には無いので、うちは玄関どーん、土間ボカーン、みたいな感じになっちゃいました。
でも僕は、本当はこんなこぢんまりした玄関に憧れているんです。
小さい、狭いことをマイナスに捉えていないのがこの時代の都市空間のインテリジェンス。
それは奇しくも谷崎が『陰影礼賛』で主張した「暗がりの美」と根が同じ話ではないかと思います。
「阪神間モダニズム」と呼ばれたこの辺りの様々な名邸には、こういう美意識が根付いていたのではないでしょうか。

倚松庵リビング
倚松庵リビング

こちらがリビング。
ご覧のように、外側からm……
あっ! しまった!
何の前置きもなく素敵すぎるものを見せてしまった!!
皆さん大丈夫ですか!!
意識ありますか!!!
意識を失ってしまった人、申し訳ありませんでした。一日も早いご回復をお祈りいたします。
なんとか意識を保てた人、おめでとうございます。これがリビングです。
外側から見た上げ下げ窓は、中から見れば濃い茶色に塗られ、和洋折衷の空間に見事溶け込んでいます。
もう既にお気づきの方がいらっしゃるかと思いますが、当時の邸宅に和洋折衷の家は数あれど、この家こそ僕の空間デザインに最も重要な影響を与えた建築なのです。
僕がプロデュースしている和洋折衷の家でも完全にこの世界観を継承し、上げ下げ窓も採用しております。
あ、ちなみに先日行った時はたまたまこのリビングで何か谷崎関係のイベントをやってらっしゃって中に入れなかったので、この二枚の写真は数年前に撮ったものです。
子供ちっさ。

倚松庵ダイニング

こちらがダイニングルーム。
ぐおお…
素敵すぎる…
この五畳ほどのこぶりなサイズ感…そして右隣の和室の壁を一段引っ込めてその出隅に上げ下げ窓をLに回しているこのハイパーセンス…
誰やこれ設計デザインしたやつ。
出てこい。
弟子にして頂きたいから出てこい。

倚松庵の縁側

倚松庵の縁側

さっきの右手のドアから、この隣の座敷の縁側につながってます。
ダイニングの洋風ドアから、縁側ですよ。
この完全に和の空間であるはずの縁側に、意匠に違和感を持たせずダイレクトでつなげてるって…
うう…
ううあああ……
ゴフッ!!!(吐血)

すみません最高すぎて意識を保つことができません…
今回『細雪』要素を排除したにも関わらず建築的な解説をほとんどしてないという、もはやただのファンが聖地巡礼ではしゃいでるだけの役立たずブログになってしまいました。
けど、あこがれは止められねぇんだ!

次回に続きます…

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