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続・倚松庵に行ってきた

倚松庵回、続編です。
前回はめちゃくちゃテンション高いわりに内容のうっすい話で大変失礼いたしました。
今回は大丈夫です。
今の季節、朝晩の寒暖差アレルギーで鼻のムズムズが止まらなくなった僕が、2分に1回のペースで訪れるくしゃみの衝動に耐えながら、今これをとても低いテンションで書いているからです。
ということで、後編スタート。

倚松庵の縁側

↑これは前回の投稿で載せた写真ですが、洋風のダイニングの洋風ドアを開けたらそこは縁側。
この縁側は四畳半ほどの座敷に面しています。
それがこちら。

倚松庵の座敷

ここは数寄屋のような趣のある座敷です。
つい先ほどまで洋館にいたはずなのに、ドアの向こうに本格的な和室をつくるこの感覚は素晴らしい。
僕が思うに、和室というのは、天井、壁、床の間、障子、欄間、畳、床柱、そのうちの何が欠けても和室にならないんですよね。
そして「和室」というスタイルを崩すことは本当に難しい。
自分流にアレンジしようものなら、「オリジナルの素敵な和モダン空間」ではなく「ただ単に崩れた和室」になってしまうという怖さがあります。
1000年以上の洗練はハンパじゃないです。
だから僕は自宅の座敷もまったく手を加えませんでした。
座敷に関しては、たぶんそれが正解です。

倚松庵の廊下

座敷から家の中の廊下へ出たところ。
昨今の住宅には「廊下」という無駄なスペースはありません。
今あなたがビルダーに新築の相談をすると、少しでも部屋を広くして、少しでも無駄の無い動線が考えられた、完璧な間取り図が手元に届けられるでしょう。
しかしこの写真を見てみてください。
何か魅力を感じませんか?
廊下って、本当に「無駄」ですか?
僕は廊下がめちゃくちゃ好きです。
理由は分かりません。
めちゃくちゃ好きです。

廊下の突き当たりには勝手口と手洗いがあります。
こういう木+モルタルのデザインも本当に素晴らしいですね。
たとえばよくある「ファミーユ(仮称)」みたいな洗面台セットは収納もあって三面鏡もあってLEDが付いててお手入れ簡単でシャワーもあって便利ですが、ファミーユ(仮称)を見てほうっとため息が出たり、いつまでも眺めてしまったり、写真を撮りたくなったりしませんよね。
ものが人間にもたらすものは、利便性だけではないのです。

さて次は二階に上がって…
え?
マジでテンション低いやんって?
そんな真面目な文章ばっか読まされても疲れるって?
シャラップ!!!
ここまで書いてる間に俺がいったい何回くしゃみしたと思とんねん。
ヘッキシ!! ヘッキシ!! 言いながらどうやってテンション上げろっ中年。
はあ、ティッシュ鼻の穴に詰めて横になりたい…

さて僕の鼻の穴については置いといて、こちらは二階の階段を上がったところ。
こういう柵もめちゃくちゃ好きです。
なぜ好きなのかは説明がつきません。誰か説明してください。
こういうのに憧れて自宅の離れの階段にはアイアンフェンスを設置しましたが、やっぱ全然違うのよね。そういうことじゃないんだよな。

倚松庵の二階の和室

三間ある二階の、一番広い部屋。
見ての通り最高です。
これ、なんで最高に感じるのか分かりますか?
分からんでしょ?
答えは木製窓の配置と木製窓の低さと木製の欄干。
こういうのを新築でやろうとしても非常に難しいので、こんな部屋がある古民家を見つけることができればそれはほぼ勝ち確。
ちなみに倚松庵はゆるいので、他のお客さんがいない時はこうしてごろごろさせて頂いております。

倚松庵の二階の縁側

ハイ!!!
優勝!!!

この家二階にも縁側あるんですよどう思いますか皆さん!!!
こんなん優勝じゃないですか!!!
ということでこの写真見た瞬間にくしゃみ止まって急遽テンションぶち上がってしまったんですが、
いやー、昔のすごい家ってほんとアイデアの宝庫ですね。
僕の企画デザインした和洋折衷の家、二階建てプランもあるんですけど、もちろんこの「二階縁側」を採用させて頂きましたよ。

倚松庵の二階縁側

この、外と中のよく分からない曖昧な空間。
この縁側に立つと思うんです。ここ、外なの? 中なの? と。
これこそが日本家屋の素晴らしい特長であり、海外の住宅には無いセンスなんですよね。

以上、二回にわたってお届けしました倚松庵のご紹介、いかがでしたでしょうか。
またくしゃみ出てきたのでテンションは低めですが、寒暖差アレルギーをお持ちでない方は、今の季節に倚松庵に行くときっと最高の気分になれると思います。

新築やリフォームについて情報を探そうとすると、ネットにしろ雑誌にしろ、すでに誰かの手によって取捨選択されて整えられた情報しか見つかりません。
本当に自分が好きなものは何か。
本当に自分がやりたいことは何か。
それを知るためには、足を使って、いろんな優れた家を自分の目で見て、経験することが大切です。
実際の家々には、きっとあなたが思いも寄らなかった発想や、見たこともない構造、誰も知らない間取りや素材が見つかることでしょう。
一つの家を見るたびに、一つ自由になっていく。
僕はそうして自分の家を自由につくっていきました。

ということで、この記事が、皆さんの足を動かす一助になれば幸いです。
おわり。
ヘッキシ!!!

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