古民家の選び方3 屋根編
(かっこいい屋根職人さん)
今回は屋根瓦のお話です。
屋根と瓦の世界は、たぶんみなさんの考えてる50倍くらい奥が深いです。
まず、屋根の種類の主流だけで片流れ、切妻、入母屋とあります。次に屋根材の主流3タイプ。瓦、ガルバリウム、スレート(カラーベスト)。そして瓦の材の種類。いぶし瓦、陶器瓦、セメント瓦など。プラス葺き方の種類。本瓦葺き、桟瓦葺き、などなど。
さらにそれらの組み合わせごとにメリットやらデメリットやらコストやら耐久性やら耐震やらデザインやら、
ね?
全部頭に詰め込むと古民家好きが古民家嫌いになるレベルです。
とても全部の話を書ききれませんので、追々折に触れて語っていくとして、ここでは「古民家の選び方」に関係ある話だけをしようと思います。
実は「屋根」というのは「古民家の選び方」において、ある部分で最も重要な要素です。
本当に重要です。
これ、知ってる人は知ってます。知らない人は当時の僕のように全く知らずに、物件内覧の時にスルーしてしまいます。
「大きな屋根に包まれる安心感」とかじゃないですよ。
ある部分とは何か。
それは…
マネーです。
何の話か分からんでしょう。結論から言います。
瓦に寿命がきている場合、瓦代、施工費、処分費、野地張替や垂木調整の大工手間など合わせると、瓦葺き替え費用が400~800万円程度かかります。
うそーん。
僕も親方に言いましたよ。「うそーん」て。
400万あったらイタリアに半年行って現地のピザとパスタ毎日食べ歩いてビーチサイドでジェラートほおばって高級ホテルのオーシャンビュー背景に「今日もやることなくてヒマ(笑)」とかインスタに自撮り投稿できますやん!
それが屋根て!
でもそれは常識だそうです。
もちろん僕はそれを全力で回避しようとしましたが、誰に訊いても、本当に誰に訊いても「屋根だけはケチるな」と言われ、諦めました。
今はケチらなくて良かったなあと思いますけど。
屋根って「木造建築」の中で一番大事な要素なんです。木造建築がどれほど雨に神経質に作られているのか、僕は家づくりを通して初めて知りました。
現場では「雨仕舞」という単語がよく登場します。どれだけ雨が入ってこない作りにするか、いろんな職人さんが腐心します。水の入りそうなところをブリキで巻いたり、駐車場や庭、縁側にも少し勾配をつけて水が外に流れるようにしたり、板塀にも屋根をつけたり、あらゆるところで雨水への対策が行われているんです。
その根幹となる大元が「屋根」。
これがダメだと話にならない。
特に大きな雨漏り跡がある物件なんかは絶対に葺き替えるべき。
そして、葺き替えるならリノベーションしてる今やった方がいい。
というのが、僕がヒアリングした全員の総意でした。
それで葺き替えの見積をとってもらったんですが、やっぱり普通に数百万円の見積が上がってきました。
うそーんと思いました。
それで瓦以外の選択肢、例えばガルバリウムやスレートにしようと全力で調べましたが、結局、瓦にすることに。(追々詳しく書きます)
で、
ここで選び方のポイントです。
ここまで読んで頂いた方には説明不要ですね。
その物件が過去に屋根を葺き替えてるか葺き替えてないかをチェックすべし!!
まじで!!
ということです。
もちろんその物件が気に入ったのならそこを購入すべきですが、もし二軒のうちどっちか迷ってて、まだ屋根の状態を考慮していないのなら、屋根を見るべし!です。
いや、見るってどうやって見んのよ。
と思うでしょ。
簡単っすよ。
ね?
これは自宅の屋根を葺き替える前と後の、GoogleMapの画像です。
このように、古い瓦屋根はまだらになってます。
以上。
ありがとうGoogle先生。
あ、べつに古い瓦だからって即アウトなわけじゃないですよ。
日本中の寺社仏閣やってるうちの屋根屋さんの親方が言ってましたけど、瓦って少なくとも50年もつんです。
実際、購入したこの物件なんか90年間そのままでしたからね。だから「さすがに90年経ってるからなあ…」という理由もあって葺き替えましたけど。
だから瓦が古いとアンラッキーじゃなくて、「瓦を葺き替えたばかりなんです」という物件を見つけたらスーパーラッキーだということです。
それだけで数百万ゲットですからね。
ちなみに余談ですが、現代の日本において、平均的な建売住宅の屋根はスレートという、10年程度ごとにメンテナンスの必要がある安価な材で作られています。
せっかく瓦屋根の優れた技術がある日本において、なぜ瓦が主流にならないのか。
それは目先の価格競争に負けるからですよ。
家でも家電でも、商業主義の現代はなんでもそういうことになってますね。
ああいやだわ。
僕がなぜ瓦を選んだのか、という理由については、他にもたくさんありますが、人それぞれ、重視するポイントや感覚は違うので、万人にとって瓦がベストだとも言い切れません。
ただ瓦屋根でいくと決めているのであれば、物件探しの際に「瓦のコンディション」という要素を念頭においているだけで全然違いますよ。
もしこのブログを読んで、実際に数百万円得したよ! という方がいらっしゃるなら、
1割ください。
おわり。