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リノベーション費用を最小限で済ませるための考え方

座敷の照明

さて今回はよくあるリノベ費用の問題について、できるだけ最小限で済ませたい人のための発想というか、コツをご紹介します。

まず、家づくりというのは大きな足し算です。
たとえば新築でも、ボロボロの古民家を直す時でも、そこに「自分が欲しいもの」を足していく作業がすべての基本になると思います。
古民家リノベの場合は「解体」という引き算もありますが、でもまあ大体は足し算ですよね。あれが欲しいこれも欲しいという。
で、
当然ながら欲しいものを増やせば増やすほどお金がかかる。
欲しい欲しいという欲望がそのまま金額になって跳ね返ってきます。
つまりめちゃくちゃ乱暴に言うと、リノベーション費用=あなたの欲望の量、といっても過言ではないでしょう。
「マイホーム」について、すごい憧れがあり、夢があり、欲望が渦巻き、いつかこんな家に住みたいと長年理想を抱き続けていた人ほど、リノベーション費用は高額になっていきます。
高額になるのが分かっていても、これまで蓄積された憧れと夢と欲望が地獄の蓋を開けたかのように無限に吹き出し、脳のコントロールが奪われて冷静な判断力が失われ、ふと気付けば身の丈にまったく合っていないどえらいローンを抱えて…
いやそれわしやがな。
わしの話やがな。

という自分の体験から思うんですけどね。
欲望をどれだけ客観視してコントロールできるかって話です。
僕は何も欲望それ自体を否定するわけじゃありません。
欲望に身を任せるのは気持ちがいいものです。
毎日糖質を制限して体重計に乗りダイエットアプリにコツコツと数値を入力し、ああ辛いな、今日も鶏のムネ肉とサラダしか食ってねえわ、ああ、もう、もう限界だ、もう嫌だ、おれは人間をやめるぞ! ジョジョォーッ! と叫んでマクドナルドに駆け込みビックマックとポテト(L)とマックシェイク(バニラ)を貪り食った時のうっひょおぉぉうんめぇぇぇという快感は何物にも代えがたいですよね。
でも、こと家づくりに関しては自制も大事です。
自分の体脂肪率はあとからどうにでもなりますが、住宅ローンの借入額は、あとから泣いてもどうにもなりません。

で、自制の方法ですが。
結論から言うと、「困ってること」以外はとりあえず無視しようぜ、ってことです。
これだけ書いても何のこっちゃ分からんと思うので説明します。
まず、日本は資本主義国家です。
すなわちマネーを稼いだ者が勝ち、マネーを持たない者は死ぬ、という大きなルールで生きています。
なので、お金をもらう側と、お金を払う側、国民全員が知らずのうちにこのどちらかに属し、お金の奪い合いに参加(以下1,500文字ほど省略)

たとえば炊飯器。
炊飯器の機能自体はもう何十年も前に完成されてるわけですよ。電気でご飯が炊けるっていう。
でも、それじゃ売れにくい。
じゃあどうするかというと、そこに「ごはんふっくらイオン」とか「ピピッとお知らせアラーム」とかいう新しい機能をつけます。
新しい機能が付くと、前の商品が古くなり、消費者は「たった5,000円の差なら断然ごはんふっくらイオン機能がついた新機種を買うべきだと思います。私は旧機種も持っていますが、確実に炊き上がりのふっくら感が違うし、もう旧機種には戻れません」みたいなレビューを書いてくれるので、商品が売れるのです。
やがて皆さんもご存じのように、一年も経たずして「ごはんふっくらイオン機能」は「ごはんふっくら&ツヤツヤ! イオン機能」に進化します。
そうするとまた消費者は「新しく搭載されたごはんふっくら&ツヤツヤイオン機能ですが、実際に使ってみたところ今までとレベルが違いすぎてびっくりしました。ごはんが本当にふっくらして、ツヤツヤしているんです! 私は旧機種も持っていますが、古い方は妹にあげることに決めました笑」みたいなレビューを書いてくれるので、また商品が売れるのです。

世の中のほぼすべての消費活動はそうやって回っています。
必要から生まれる需要ではなく、むりやり需要を生み出してるんですね。
そうして何機種も世代交代していくと、やがて人は「ごはんふっくらイオン機能」系が搭載されていない炊飯器など、もはや炊飯器ではない、くらいに思い込んでしまいます。
これがいわゆる「欲望の固定化」(今名付けた)ですね。
この令和の時代、人の欲望はそのほとんどが「誰かにつくられたもの」なのです。

さて話は変わりますが僕の車。
僕の車は超ボロいことで有名です。
2006年製造、走行距離21万キロの、そこら中で社用車として使われてるタイプの普通車にかれこれ15年くらい乗ってます。
嫁が史上最高に運転がヘタでボッコボコ当てまくってるのでボッコボコです。ドアが思いっきりへこんで錆びて、後輪のホイールカバーは無くしたままです。なんかもう中東の武装勢力に使われてたみたいな風格さえ漂っています。
雑誌の撮影でも「すみません、その車、どこかに移動してもらえます?」と言われました。
さらに見た目だけではなく、機能的にもかなりアレです。
ドアを思いっきり当ててるので、助手席の窓が半分しか開きません。
まあそれはいいんですけど、燃料計も壊れてるので、ガソリンを入れるタイミングは勘です。
もちろんカーナビなんか最初からありません。カーステです。そのカーステも接触が悪くてガタガタ揺れると音が飛びます。
あと最近ついにクラクションが鳴らなくなりました。
僕はそんな車に乗ってるのですが、この「少しずついろんな機能が失われていく」という現代社会を逆行する体験は、僕に「無くても意外といける」という事実を気付かせてくれたのでした。

たとえば助手席の窓が半分しか開かなくてもそんなに困らんのです。
カーナビなくても平気なんです。
燃料計も走行距離さえ記録しておけばまあまあタイミングが分かるんです。(季節によって若干変わるので注意)
クラクションですら、意外にも「ああっ! めちゃくちゃ困る! どうしよう!」みたいなシーンはない気がします。(道交法違反&車検通らんけどな)

このように、世の中には「あった方が便利なもの」であふれかえっていますが、そのほとんどは「無くても困らないもの」だったりします。
ご存じのように僕は家づくりにおいては、ほとんどゼロから時間をかけて一つずつ基本機能をゲットしていきました。
「二階の床」ができた時はもう落下を気にしなくて済むと喜びました。
真冬に「電気」が通った時はわりとガチで命が助かりました。
母屋に「壁」ができた時はもうこれで強風に怯えなくても済むと心から安心しました。
「水道」が開通した時はやっとコンビニ飯から解放され、洗濯もでき、お風呂まで入れるようになりました。
そして1年ぶりに「玄関」ができた時はその異常な安心感に震えました。

こういった体験をしてきた僕は自信を持って言えます。床と、屋根と、壁と、電気、水道、玄関はぜったいにいると。
しかし、それ以外のものについては、そこまで必須ではないよねと。
このレベルまで削ぎ落とした時、古民家リノベーション費用は限りなく安い金額を指し示すでしょう。
それがその人にとっての「基準値」です。
それ以外のものについては「有料オプション」であり、もしかしたら、この長きにわたる消費社会生活において、あなたが「必要だと思わされている」ものかも知れません。
なぜなら世の中は、誰かが誰かに「こんなにいいものがあるよ、これがあると便利だよ」と囁き続けることで、経済が回っているからです。

めちゃくちゃ長くなりましたが、ここで最初の言葉に戻ります。
リノベ費用を最小限にしたいのなら、「現状困ってること」以外はとりあえず無視しようぜ! です。
僕は玄関とか電気がなくてめちゃくちゃ困りましたけど、たとえばそのカワックがほんとに必要なのか?
そりゃ無いよりあった方がいいでしょうけど、今、困ってますか?
「あかん…どうしても風呂と服が乾かん…もう終わりや…」
とか思ってますか?
思ってないなら、たぶんカワックが無くても幸せに暮らせますよ。
ということです。
なので、「これはあった方が便利」ではなく「これがないと困るかどうか」という視点で考えてみると、違った答えが出てくるかもしれませんよ。

以上、ダラダラ書いたわりに、そんなもん知っとるわ! という内容だったかも知れません。
すんません。
僕は欲望のままに突き進んで欲望をそのまま反映した唯一無二の家を手に入れましたが、お金に関してもっと賢く家づくりをしたい方は、今一度、この「困るかどうか」の法則を思い返してみてくださいね。
おわり。

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