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続・射水市の笹川建築さんが古民家を直しています

さて今回は前回に引き続き、射水市の笹川建築さんによる古民家(豪邸)の大規模リノベーション工事のレポートです。
前回は僕があの有名な「富山ブラック」を食べて感動し、大阪の人たちにも同じ感動を味わって欲しいという思いでスープを一から開発、試行に試行を重ね…
ってなんでやねん。
すみません気が緩むとすぐに興味が食に移ってしまう僕(@過去最大体重)です。
ラーメン食べたい。
ブヒッ。

では気を取り直してリノベ工事レポ。
前回では豪邸豪邸と書きましたが、工事中の写真なのでいまいちピンとこない方も多かったかもしれません。
そんな方にはぜひこの写真をご覧頂ければと思います。

立派な梁

どーん!!
めっちゃ立派な梁どーん!!
もいっちょ貼っときましょか。

「枠の内(わくのうち)」

ばーん!!
なんか分からん格子がばーん!!
すごいですよね。これぞ北陸の古民家って感じ。現代の住宅ではまず感じることのできないダイナミックなぶち抜き空間です。
なんか分からん格子がステキ~とか言ってたら、クロニカでご紹介してる福岡のやまぐち建設代表の山口棟梁にこれが「枠の内(ワクノウチ)」という建て方であることを教えてもらいました。
皆さんも覚えておいてください。ワクノウチ。

謎の小部屋

はいこれ。
ご覧のように古民家系男子が大好きな「二階あたりにある行き方が分からない謎の小部屋」ももちろんご用意しております。

この扉のすぐ下を左右に通っている馬鹿でかい構造材は「差鴨居」っていうんですが、こんな規模のものを差鴨居と呼んでいいんですかと聞くと、まあ、胴差し、平もん差しやね、という答えが返ってきました。
「普通なら間口(部屋の幅。柱と柱の間)が二間(約3.6m)だけどこれは二間半飛ばしてるから、そのぶん背が大きめになってる」
だそうです。
ちなみに中心的な大きい梁のことを「うし梁」と呼ぶらしい。でも笹川さんの親方のところでは「やすめ」と呼んでいたらしく、地域や親方によって呼称が違うそうです。
そういうのも規格化されていない古民家のおもしろいところですね。

階段まだ

作りかけの階段から二階へ。
作りかけなので段がなく、代わりに適当にかけたハシゴを「ヒイイイ」と半天狗みたいな声を出して登っていきます。

階段を移動させた

で、階段を上がったところの反対側に同じような階段っぽいスペースがあったので、ん? もしや…と思って聞いてみたら、やっぱり「階段はこっちに移しました」とのこと。下を通り土間にするために階段の場所を変えたんだそうです。
ってさ、「階段の場所を変えた」って簡単に言ってますけど、そんなことできるの?? というのが我々施主の感覚だと思います。
でもできちゃうんですよねー。
それは単純な構造ゆえにいくらでも改築の自由が効く古民家と、笹川さん率いる笹川建築の本物の大工さん集団がなせる技。
普通のその辺の家の階段を、普通のその辺の工務店さんに「場所変えてー」って言っても無理ですよ。
逆に言うと、古民家の工事は階段の位置をサクッと変えてくれるような大工さんに頼みましょうね。

あと、「できちゃう」という意味で言えば、この階段の周りにあるかわいい柵。
こういう手すりの装飾は専門の職人さんがいて、今では誰も作れないと思うじゃないですか。
そんなことを笹川さんに言うと、「俺はやれる自信あるよ」とのこと。
まじか!
「装飾から何から、何でもできんと棟梁にはなれんです」

笹川建築 笹川さん

「大工にもいろんなタイプがいて、見本があればつくれる人でも、違うデザインでつくってって言われたらできんです、となるけど、俺はデザインも加工も自分でやりたいタイプ。自分はこういう技術をただ言われたままやるだけの職人じゃなくて、後世に残したいと思ってる職人なんで、じゃあそのためにどうせんなんかっていうことを、いつも考えてます」
おぉ…
笹川さんといえば休憩所のストーブで焼肉パーティしてる人というイメージでしたが…
おみそれしました…

二階からの眺め

階段を登った正面、二階縁側から庭を見下ろす。
まーほんと古民家って窓が大きいよね。
庭が完成したらこの二階縁側もさぞ素晴らしい空間になることでしょう。

二階座敷

これが二階の部屋空間です。
二階にも床の間のある座敷があります。
さらにこの次に紹介しますけど、一階にも三つ目の座敷があるんですよ。
今で言えば「リビングが3つある家」ってことですね。ゴイス!

三つ目の座敷

これが先ほど書きました三つ目の座敷です。
前回の記事でご紹介しました座敷が青色だったのに対し、こちらは赤色。
なかなか見ないカラーリングですが「海側の家は派手な色が多い」とのことです。
そういうのも面白いですよね。住人の好みじゃなくて、「海側の家は」っていうところが。
やっぱり古民家って住人のものじゃなくて、その地域が持つ文化であり、共有財産だったんでしょうね。

家の中に軒がある

最後に通り土間を歩いて外に出ようとしたところ、えっ、何コレ。
家の中に軒がある……
「あ、ここの通りは外部として考えてるんです。ここのエリアは一般に開放するんで、みんな気軽に中に入ってきて、勝手に座って集まってもらえればいいなって」
ほえー。なるほど。
外空間だから軒があるんですね。これも中と外が入り混ざった古民家ならではの発想、感覚ですよね。
おもろいっす!

家の中に軒がある

「垂木にもちょっとした装飾が入ってるんです。銀杏面って言って、大工のこだわりですね」
おー、ほんとだ。
細かいところにも手を抜かないというか、気配りがあるというか、大工さんが仕事を楽しんでされてる感じが伝わってきますねぇ。

ということで駆け足でご紹介しました射水市の古民家リノベの現場。
こちらは民泊複合施設「禅楽」としてこの春にオープン予定です。
完成したら皆さんぜひ光の速さで宿泊予約を入れて射水市に行ってみてください。そして「日本のベニス」と称される美しい海と街並みを堪能し、富山ブラックをキメたあと、この豪邸がどのようなお宿に生まれ変わったのか、このブログの話と照らし合わせながら古民家の空間を楽しんで頂ければと思います。

笹川さん、分かりやすい解説とご案内、どうもありがとうございました!

おわり

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