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ちゃぶ台考

古民家といえばちゃぶ台!
かどうかは知りませんが、古民家に引っ越してきてから古道具のちゃぶ台を7年以上愛用し続けている僕が、ちゃぶ台についてちょっと語ってみようかなと思います。
床+ちゃぶ台はゴロゴロできて最高だぜぇ~という過去記事はこちら。

古民家には無垢材の床とちゃぶ台がまじおすすめ
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さて、夏真っ盛りですが。<br> この季節になると我が家では毎年決まって発生する現象があります。<br> それは霊…<br> ではなくて、これ。...more

この過去記事では海からビキニが消えてラッシュガードだらけになってしまったという話をしましたが、人間の慣れとは恐ろしいもので、2年経った現在ではその事実を受け入れている自分がいます。
僕も大人になったものです。
というか大体僕は若い頃から一貫して「なぜビキニは平気で下着は恥ずかしいのか問題」についてさんざん周りの人に語ってきたわけですが、同じ面積の布で同じものを隠すのに、なぜ片方はポスターになり、なぜ片方は警察に捕まるのかという…
あっちゃうわ、ちゃぶ台や。
ちゃぶ台の話ですね。失礼しました。
皆さん一度ビキニのことは忘れて頂いて、あと「ビキニ 女性」の検索で飛んできた皆さんはその軽薄な煩悩を振り払って頂いて、僕と一緒にこの深遠なる日本の文化について考えていきましょうね。

ちゃぶ台

さて、ちゃぶ台です。
うちで長らく愛用しているこのおちゃぶ。半径90cm、高さ23cmという、古き良き日本ならではのサイズ感。
特に高さ23cmはなかなか無い。
新品で探すと30cm以上しか見つからんのですが、これは古家具なので昔のサイズ。
このサイズ感がほんとに良いのですよ。
なお半径90cmは子供たちが大きくなってきた今、正直あと一回り欲しいところ。
なので僕が企画デザインした「和洋折衷の家」ではちゃぶ台を100cmでつくりました。
まあそれはさておきこのちゃぶ台。
購入して何年か経った時にうっかり石油ファンヒーターの熱風に当てすぎて天板の片側が反っちゃってお茶碗にお箸を置くとちょっと笑うくらいのスピードで転がり落ちるこのちゃぶ台。
うちではここでご飯を食べて、ここでおやつを食べて、ここで子供たちが勉強して、ゲームをして、この周りでゴロゴロ転がって、というふうにちゃぶ台が一家の生活の中心となっています。
部屋がいくつもあって、ソファも何台もある僕の家ですが、常にみんなが集まるのはこのちゃぶ台なんですよね。
僕、そういう暮らしって、西洋的な世界観とほんとに真逆だと思うんです。
どっちがいいとか悪いとかじゃないけど、ちゃぶ台って、日本的な感性を象徴してるんじゃないかなって。
たとえばうちのキッチンにはイギリスアンティークのテーブルセットがあるんですけど、椅子の背もたれがこういう角度なんですよ。

イギリスアンティークのチェア

お分かりでしょうか。
もうこんなん確実に背筋ピッシーてなりますよね。
「だらけることを絶対に許さない」というイギリス貴族の矜恃を感じますよね。
で、このテーブルで食事をするとこんな感じになるわけです。

がんも

背景にはクラシックが静かに流れてて、ナイフとフォークの微かな金属音を立てながら、息子に「…学業の方はどうだね?」と目線を合わさずに呟く感じですよね。
あ、何食べてるか知りたいですか?
がんもです。
がんもどき。

がんも
嫁が焼いたがんもですら何かしらのオードブルに見えてしまうのがイギリスアンティークの恐ろしさです。

で、これがちゃぶ台になるとどうなるかというと…

ちゃぶ台で食事

こうなる。
さっきの背筋がピッシーとなったイギリス貴族のテーブルに比べ、こちらはあらゆる力を抜きまくって地球の引力に身を委ねた結果肉体が地面に引っ張られてギリ床板で止まっているという状態です。
イギリス紳士の方から見ればきっと汚物のように見えることでしょう。
しかし僕は言いたい、腹いっぱいになった直後にそこからシームレスに横になってスマホをダラダラ見れるというこんな素晴らしい人生なら汚物で構わないと!!

もちろん食事だけじゃなく、他のシーンでもちゃぶ台は最高です。

ちゃぶ台で宿題

たとえば宿題。
子供たち、特に男の子っていくら怒っても宿題をしませんよね。
そんな時に役立つのがちゃぶ台!
宿題をほったらかしてマンガを読みふける子供の後ろに音も無く回り込み、素早く片手でアームロックを決め、空いた片手の指先で無防備な脇腹を激しく刺激すると…
え?
ちゃぶ台関係ないって?
そんなことないですよ。テーブルと椅子だったらそのまま倒れ込んでグラウンド勝負に持ち込めないじゃないですか。
なので子供たちの宿題もちゃぶ台一択ですね。

ティアキンプレイ中

宿題が終わったあとのゼルダも当然ちゃぶ台がおすすめ。
リアルなオープンワールドと美麗なグラフィックによって最高に高まった没入感により知らず知らず前のめりになって気付けば身体の半分以上が天板の上に乗ってるという、そんな小学生ならではのアホなムーブを可能にするのがこのちゃぶ台です。

そして子供たちを寝かしつけたあとは親たちの時間!
と思ったら既に嫁が落ちとる!
本人のプライバシーを尊重してモザイクをかけたら床に撒かれた汚物みたいになってイギリス紳士が悲鳴を上げそうな画像になりましたが、この写真をよく見てください。
いやモザ部分は見なくていいです。
ちゃぶ台に注目してください。
これ、場所がずれてますよね。つまり簡単に場所移動できるんですよ。
場所移動っていうか足で蹴っ飛ばしただけなんですけど。
このように、ごろ寝をしたい時は足で蹴って向こうにやることが可能。
そんなおそるべきフレキシビリティを持つガジェット、それがちゃぶ台なのです…!!

つーかさ、僕の言いたいことはそんなことじゃないのよ。
ちゃぶ台って丸いやん。
つまり「円」よね。
円って、角がないから、使う時にポジションを決めれないんよね。
誰がどこに座るっていうのが、大体決まってるけど、ピシッと決まってるわけじゃないんです。
ご紹介した数枚の写真を見てみても、ポジションもへったくれもないことが分かって頂けると思うんですが、僕はこの「ポジションが流動的」という性質こそが、非常に日本的ではないかと思うんですよね。

西洋においては、いろんなものがピシッと決まってます。
リビング。キッチン。書斎。子供部屋。それらはすべて壁で仕切られ、交換可能ではありません。
家の外と中も切り離されていて、テーブルの座席も一人一人決まっていて…
それは「ルール」であり、「理」じゃないですか。
対して日本ってすごく流動的というか、自然的というか、まあ座席に関してだけ言えば家長制度のアレで厳格に決まってたりしましたが、それよりもっと前の根っこの部分で、なんというか「複雑さ」「曖昧さ」を許容して、自然な状態を尊重している気がするんですよね。

家の仕切りも紙で出来てたり、縁側空間が外か中か分からなかったり、とにかく「線引きをしない」ということによって生まれるこの曖昧な感じというものが日本文化の本質ではないかと思う僕は、実際にそういう暮らしを始めてみて、ああこれは「巣」だわ、と思いました。
それはすなわち住居が住居となる前の世界。
竪穴式なんちゃらの世界です。
木と土で周りを覆って、床に座ってみんなで暮らす。
自然を崇拝し、自然と敵対せず、自然と共存する日本の本来の住文化は、遡っていけば「巣」にたどり着く。
住んでてめちゃくちゃ気持ちいい、めちゃくちゃ楽、落ち着く、そんな僕のリアルな感想は、家が巣であることを思えば当然なのかも知れません。
そしてちゃぶ台の形である「円」、生きとし生けるものが円となるその形こそが、日本の精神の象徴なのではないかと思うわけです。
だって自然のありのままの姿って「円環」ですからね。
そういえば日本の通貨の単位は「円」、これもまた象徴的な話です。
僕は古民家に暮らしながら、そんな自然に身を委ねる生活の気持ちよさを日々実感していますよ。

ということで最初のビキニからよくこんな高尚っぽい話に持っていけたなと自画自賛しつつ、今回のちゃぶ台考を終えたいと思います。
また次回。

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