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古民家を内覧する時の注意点【やりがちな失敗編】

仏間と縁側

僕、こんな立場なんで、よく古民家の売り物件を見学するんですよ。
といっても購入者としてじゃなくて、購入者さんの隣でチェックする係なんですけどね。
友達や知り合いから「買おうと思ってる家を見てくれ」ってお声をかけられるのです。
そんで僕も古民家好きだから一緒に行くんですけどね、まー皆さん、びっくりするくらい、その家をちゃんとチェックできてない。
それはある意味当然なんです。
僕だってそうでした。
なので今回は、なぜ購入者がチェックできないことが「当然」なのか、そして具体的にどこをチェックすればいいのか、について解説していこうと思います。
これは長くなるので前後編に分けますね。

さて、まずは内覧に向かった人たちが家をまともにチェックできない理由から説明します。
2022年現在になっても、なかなか市場に出回らない古民家。
日夜ネット検索しまくっても気に入った物件は出てきません。
ちょっといいなと思っても、写真をよく見たらボロボロだったり、周りを調べてみたら車が入っていけなかったり、近くに学校がなかったり…
そんなある日、あなたはついに、いい感じの古民家を発見します。
価格もOK、エリアもOK、外観も内観もすごい好みで状態も良く、庭も素敵だったとして、あなたはどうしますか?
もちろん光の速さで不動産屋に電話をかけ、「あのっ、ホームページ見たんですけどっ、ここ見学することってできますか!?」って言いますよね。
そしたら不動産屋のおっさんは「あ~、そこね、はい、まだいけますよ。でも昨日問い合わせあったから、見るなら早い方がいいね」とか言ってフカしてきますよね。
そしたらあなたは「えっ……そうなんですか! 分かりましたあの、もう、すぐ見たいんで、明日とかいけますか!!」ってiPhone握りしめて焦りますよね。
そうして迎えた内覧当日。
あなたの期待値はMAXです。
不動産屋の車に同乗して、坂道を登って、やがて見えてくる古民家…
お~~~!
やっぱり素敵やん!
外観の雰囲気にうっとりしながら、鍵を開けてもらって中に入ってみると、またしても写真で確認していた通り、あなた好みのデザイン。
「うわ~、実際に見ると写真よりもすごい素敵~!」という感動が再びあなたを襲います。
その様子を一歩引いたところで観察してる不動産屋のおっさん、ここぞとばかりにカマしてきます。
「この物件って人気で~、あなたの後にもあと二人案内する予定なんですよ~」
この時点であなたの興奮と焦りは限界突破しています。
もう既に「ここっ、かっ、買いますゥ!!」という本能の叫びを、理性でギリギリ押しとどめてる状態です。
その理性とは「なんとなく内覧当日に即決してはいけない気がする」という、特に根拠も何もないアレなので、非常に弱いです。
なんとか平静を装って家に帰っても、数日経ったら「数日考えたからOK」ということで吹き飛んでしまうタイプの理性です。
それに、数日でも迷ってるうちに他の人に買われてしまうかも知れない……!!
という不安が両肩にのしかかってくるのです。
どうでしょうか。
こんな状態で、果たしてその物件を冷静に「見る」ことができるでしょうか。
結論から言えば絶対むりです。
むり。

こういった一連の流れからくる話は、「施主ゾーン」と同じく、古民家を探している人なら誰でも陥るゾーンです。
この心理状態を僕は「内覧ゾーン」と名付けよう。
内覧ゾーンに入った人間は、その物件が自分好みであることに感動を覚え、その物件がまるで自分に出会うことを待っていてくれたかのように見え、勝手に運命的なものを感じてしまうのである!
が、
ちょっと待って欲しい。
それって高校生が好きになったクラスメートに感じる恋愛感情とほぼ一緒ちゃいます? と。
それって恋は盲目状態ちゃいますかと。
そういう時、数々の内覧に同行してきた僕は、めっさ醒めた目で、舞い上がる客と不動産屋のやりとりを眺めているのです。
で、
舞い上がる人にアドバイスをするならば、高校生の恋愛に対するアドバイスとほぼ同じになっちゃうんですよ。
つまり、

1. そいつは運命の人ではない
2. 外見に惑わされるな
3. 落ち着け

です。
まず1については、条件もいい、価格も合う、見た目も好き、気に入った、今まで探してきてこれ以上のものは見たことがない。
果たしてそんな物件が、あなたにとって運命の家なのかというと…
まあ、んなこたぁないんですよ。
冷静に考えたらさ。
何十万棟と古民家を見てきた人がそう感じるならそうかも知れんけどさ。たかだか数軒、十数軒しか見てないでしょ? それで運命とか、これが最高だとか、そんなん分からんよね。
だからその物件を見つけたのは「たまたま」なんですよ。それ以上でもそれ以下でもないっす。
たまたま見つけて、たまたま自分に合って、でもたまたま誰かに先に買われてしまった、ただそれだけのことで。
べつにその物件はあなたにとってオンリーワンだったものでもなくて。
もっと他に選択肢は無限にあって。
少し待てば別の「たまたま」がやって来るんですよね。

次。2。外見に惑わされるな。
写真で見るより素敵な外観! 中に入ったら思っていたよりも素敵な内観!
いや、それは当たり前や。
あんさんが気に入って選んだ物件が気に入るデザインなんは当たり前や。
そして写真よりも現物がええのは当たり前やでな。
花火も写真より実物見た方が感動するさかいな。
ということです。
そりゃ中にはSNSのプロフ詐欺みたいに写真だけすごく綺麗に撮れてて、実物見たら「えぇ…」という場合だってあるかも知れませんが、ここで僕は言い切っておこう。
不動産屋のおっさんや営業の兄ちゃんが撮る写真は基本めっちゃ下手なので高確率で実物の方が素敵です。と。
プロが撮ると現物よりも良く見えるんですけど、この場合は逆なんですよ。
なので「実際に見るともっと素敵~☆」とか思ってテンション上げちゃだめ。
それ当たり前やからね。

そして最後の3。落ち着け。
まじで。
とにかく落ち着かないことには何も目に入ってこないのです。
で、落ち着くにはどうしたらいいかっていうと、その目の前の古民家を、自分がやっと見つけた運命の物件ではなく「嫌いなやつが住んでる家」だと思えばいいのよ。
嫌いなやつが住んでる家にはケチを付けたくなるよね!
そして嫌いなやつが住んでると思ったら、必死であらを探して「すごい古民家に住んでるって聞いてたけど、あちこちボロいし、よく見れば立地も悪いし、大したことないわね~(笑)」みたいな嫌らしい目線になれるよ!
というアドバイスです。
とにかくそれくらい醒めた目で見てください。
そうすれば目がキラキラしていた時には見えなかったたくさんの細部が見えてくることでしょう…

ようするにテンション下げたもん勝ちなんですよ。
でもそれが難しい。
だってあまりテンション下げすぎるとそもそも自分は古民家に住みたいのか? ていうか家が欲しいのか? え、もうどうでもよくない? いやなんかもう家探すのダルいしこのまま賃貸でええっすわ、ってなりますからね。
だからテンション高くないと買えないんですよね。
それに、実は自分が見て「ビビッときた」というのはめちゃくちゃ大事なのです!
逆にそれが無かったらスルーしてもいいかも知れません。
それくらい「直感」というのは大事。
なので僕が言ってるのは「ビビッときたにも関わらずそれを超マインドコントロールでいったん思考の脇に置いて、嫌いなやつの家のあら探しをする感じで家を見よう」というなかなか難易度の高いお話なのです。
でも実際そうだもんなあ。
これ、難しいけどマジで実践した方がいいんですよ。
だって家って高校生の恋愛みたいに付き合って一週間で別れたりできんからね。
なのでこれから家探し、古民家探しをされる皆さんは、可能な限りこういった精神状態で内覧に臨まれることをおすすめします。

さて次回は、無事に嫌らしい目線を獲得した皆さんが、具体的にどんなポイントをチェックすればいいのか? についてお話します。
乞うご期待!

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