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古民家の臭いについて話します

臭いというのは不思議なものです。
目に見えず、そこにあるのかないのか、人によっては気になったり、気付かなかったりするあやふやな存在です。
嫁に「今日息臭いで」と言われて自分の息の臭いを嗅いでも何も感じず、子供に「お父ちゃんのバスタオル臭い」と言われてバスタオルを顔に押し当てて思い切り鼻から息を吸い込んでも完全にノースメルだし何だったらちょっといい香りがする、みたいなことは皆さんもご経験済みかと思います。
このように臭いというのは恐ろしいものです。
そしてもちろん新築にも古民家にも臭いは存在します。
今日はそんなお話です。

上の過去記事のように、僕は古民家を買ったあとにカビ臭と戦うはめになりました。
しかしこの強烈なカビ臭もほんとに人によって感じ方が違うらしく、うちの大工さんとは

「え? なんか臭いします?」
「いやいやいや、めちゃくちゃカビ臭いやん! カビの臭い知らんの?」
「いやカビの臭いくらい知ってますけど、この床下なんも臭いしませんよ」
「それマジで言うてるんやったら今すぐ耳鼻科行った方がええで」
「大原さんこそ鼻の中にカビ生えてるんちゃいます?」

と揉めるくらいに評価が分かれました。
で、
臭いに気にならなかったらいいんですが、臭いの怖さっていうのは一度気になってしまった時、わりとどうしようもない、というところだと思います。
僕の場合も上記のように臭いの除去には床下の土を全部引っ剥がして入れ替えるというどえらい苦労を強いられましたし、できることを完璧にやったはずが、今でも雨が降るとトイレ前あたりにほんのりと床下のカビ臭が漂ってきます。
臭いの正体ってなんか超細かい粒子みたいな感じ(文系)ですからね。
完全除去なんて無理なんですよ。
僕の場合はカビ臭でしたが、もし皆さんが内覧した古民家の家の臭いが気になった場合は、ひょっとしたらその臭いとは大なり小なりずっとお付き合いしていくことになるかも、くらいには思っといた方がいいかもです。

そんなことを書くと「え~そんなのやだぁ~、あたしやっぱ新築ぅ~」となりますが、新築だって臭いがあります。
僕にとってはそっちの臭いの方がムリめでした。
その臭いは何かというと化学臭!
ベニヤとかクロス壁とかクッションフロアの接着剤とかなんか分かんないですけどそういうピリピリした刺激臭です。
僕、新築そっ〇〇さ〇で直した古民家のオープンハウスに行ったことがあるんですが、玄関ドア開けた瞬間に超くっせぇ化学臭が目と鼻を貫き、びっくりしました。
よく見ると古民家なのに新建材だらけで、まるでマンションみたいな雰囲気に変貌していたんですが、そのせいで古民家の木の匂いが死んで代わりに接着剤の臭いが充満してたんですね。
僕は心の中で叫びましたよ。
これのどこがそっくりさんなんだ!! と。
そしてそのあと「いや、タイトルが『新築そっくり』だから合ってるやん!! 俺が間違ってるわごめん!!」と。
いやでもビジュアルが古民家だから、見た目の臭いのギャップがちょっと、戸惑うんですね。
ビジュアルと臭いは一致しておいて欲しいですよね。
だってたとえば火葬場に炭火焼肉の臭いが漂ってたらなんか変な空気になるでしょ?
何の話や。
じゃなくて、問題は、新築の臭いは臭いだけじゃなく、シックハウス症候群という人体の健康にまで害を及ぼす可能性があるってことです。
それで僕は古民家というか自然素材の方に流れたのでした。

そんじゃどっちを選べばいいのよ! ということですが、気になる臭いのない古民家か、自然素材だらけでつくられた新築。ですね。
古民家って家の臭いがしてくっせぇんじゃないの? とお思いでしょうが、くっさくない家もたくさんありますし、何よりヒノキとか自然素材を使ってリノベーションすればそれはそれは良い匂いの空間になります。
たとえばうちは床材一面にヒノキを使いましたが、天井も腰壁もヒノキにすると、入った瞬間にヒノキの香りに包まれて心と肉体が浄化されるレベルでヒーリングされます。
僕は何度かそういうお宅にお邪魔したことがありますが、特に古民家はそんな自然素材をあちこちに使いやすいんですね。
たとえば新築だと法令とかで燃える材は内外に使いにくいですし、一年中エアコンで温度管理する家の無垢材の扱いには注意や工夫が必要だったりしますが、古民家ならもともと無垢材でしか作られてないので相性バツグン。
思う存分、肉体浄化をして頂けます。

これは余談ですが、僕ら結婚した時に何か一つぜいたくなものを買おうということで、25万円もするクスノキのタンスを買ったんですね。
クスノキってすごくいい香りで、匂いも強くて、防虫効果もありますよと。
実際引き出しを開けたら中からふわあってクスノキの香りが部屋中に漂うんですよ。
それを買って、もうどれくらいかな、15年くらい経つんでしょうか。
いまだにその匂いは変わらず、引き出しを開けた時にふわあっていい香りがして、「うほっ…」って恍惚の表情になりますからね。
クスノキのタンスは本当に買って良かったものの一つです。
でもさ、みんなそんなこと知らんからさ、いきなりタンスに25万は出せんやん?
これ買いますって言った時、「いまどきこんなタンス買うてくれる若い人おらんから嬉しいわ~」と仰ってたその大きな家具屋さんも15年の間に潰れましたよ。
古民家も同じように日々あちこちで潰されてます。
直したらヒノキの香りに包まれることをみんな知らんからね。
でも「香り」の気持ちよさを一度知っちゃうと、もうそれが無い生活には戻れません。
だって「〇〇だからお金が浮く」とか「〇〇できるから便利」とかそういう理屈のレベルじゃないんですよ。嗅覚ですから。理屈の上にある本能に直接作用しますからね。

ということで皆さまにはぜひ古民家を無垢の木でリノベーションして頂き、毎日「うほっ…」って思う暮らしを実現して頂ければと思います。
おわり。

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